第5話 プリンの時代、終わる!?
「……これが、次の商品だ」
蓮がテーブルの上に置いた。
白い箱。
中に入っているのは――。
プレミアムロールケーキ。
「…………」
モモが固まった。
「…………」
セレナも固まる。
ミリアとリナは首を傾げた。
「これは何ですか?」
蓮は笑った。
「日本のコンビニで売ってるスイーツ」
ガルドが覗き込む。
「ケーキ?」
「そう。しかも、かなり人気がある」
蓮が袋を開けた。
ふわっ。
甘い香りが広がる。
モモの羽が――。
ピタッ。
止まった。
「……」
蓮が嫌な予感を覚える。
「モモ?」
「……プリン」
「うん?」
「プリンより……」
モモがロールケーキを見つめる。
「こっち」
「え?」
モモはゆっくり飛んでいき――。
ロールケーキの前で叫んだ。
「おいしそう!」
「おい」
蓮が慌てる。
「プリンは?」
モモは振り返った。
そして――。
「プリンの時代は……」
一拍置いて。
「終わった」
「早い!」
ガルドが吹き出した。
セレナも笑う。
「モモちゃん、ついに乗り換えましたね!」
「乗り換えって言うな!」
蓮がツッコむ。
モモはロールケーキの前から動かない。
「ください」
「……一口だけな」
蓮が小さく切って渡す。
モモが食べる。
「…………」
静寂。
そして――。
「ふわふわ……」
「どう?」
「甘い……」
「うん」
「クリーム……」
「うん」
モモの目が輝いた。
「最高……」
「そんなに?」
モモはロールケーキを抱えるようにして叫んだ。
「私は今日から――」
「ロールケーキ派!」
「プリンは!?」
蓮が叫ぶ。
「たまに食べる」
「たまにになった!」
一同が大爆笑した。
しかし――。
その様子をじっと見ていた男が一人。
クロウだった。
「……面白い」
「何が?」
「その商品だ」
クロウはロールケーキを見つめる。
「この世界にはない」
「そうだろうな」
「つまり――」
クロウが金貨を一枚置いた。
「売れる」
蓮はニヤリと笑った。
「その通り」
「何個ある?」
「今は……」
蓮はバッグを確認する。
「十個」
クロウが即答した。
「全部買おう」
「え?」
「全部だ」
「そんなに?」
「この世界の人間が一度食べたら、もう戻れないかもしれない」
「そこまで?」
モモが横から叫ぶ。
「戻れない!」
「お前が言うな!」
蓮は笑いながら商品を並べた。
そして――。
試食会が始まった。
最初にやって来たのは、村の子どもたち。
「これ、何?」
「ロールケーキ」
「甘いの?」
「食べてみて」
ぱくっ。
「……!」
次の瞬間。
「おいしい!」
「もっと食べたい!」
大人たちも集まってくる。
一個。
また一個。
あっという間に売れていく。
「蓮さん!」
セレナが叫ぶ。
「売上がすごいです!」
「いくら?」
「もう金貨八枚です!」
「八枚!?」
ガルドが笑う。
「これは確かに商売になるな」
クロウは腕を組んで頷いた。
「プリンを超える商品が出てきたか」
モモが胸を張る。
「当然」
「モモ、誰目線だよ」
そのとき――。
スマホが鳴った。
【新商品による商業反応を確認】
【商品名:プレミアムロールケーキ】
【人気度:急上昇】
【異世界商業価値:非常に高い】
そして最後に――。
【新規顧客層を確認】
蓮は画面を見つめる。
「……新規顧客?」
遠くから、大勢の人影が近づいてくる。
先頭にいたのは、豪華な服を着た女性だった。
「その白い菓子――」
女性がロールケーキを指差す。
「全部、買い取ります」
「全部!?」
蓮が驚く。
女性は微笑んだ。
「私の国では――」
「このような菓子は、王族しか食べられませんから」
蓮の目が輝く。
ガルドがニヤリとする。
クロウも笑った。
「なるほど」
「新しい市場が見つかったな」
そしてモモは――。
ロールケーキを抱えながら、小さく呟いた。
「……プリン」
「ん?」
「やっぱりプリンも食べたい」
「戻るの早すぎるだろ!」
森に蓮のツッコミが響いた。




