第60話 家族に挨拶!そして、異世界商売へ――
境界が安定した。
黒い亀裂も消えた。
そして――
蓮たちは、ようやく帰還路の前に立っていた。
「……本当に終わったんだな」
蓮が振り返る。
父と母が並んで立っている。
「そうね」
母が笑う。
「もう大丈夫」
父も頷いた。
「蓮のおかげだ」
「俺だけじゃないよ」
蓮は仲間たちを見る。
ミリア。
リナ。
ガルド。
海斗。
狼王。
そして――
「セレナ」
「はい!」
セレナが勢いよく手を挙げた。
「私も頑張りました!」
「うん。かなり頑張った」
「では!」
セレナが蓮の両親の前に立つ。
そして突然――
深々と頭を下げた。
「お父様、お母様!」
「え?」
蓮が固まる。
「私は、佐伯蓮様の――」
「セレナ!」
蓮が慌てて止める。
しかし遅かった。
「未来の妻です!」
「…………」
沈黙。
父が蓮を見る。
母も蓮を見る。
蓮は必死に首を振る。
「違うから!」
セレナが首をかしげる。
「まだ、です」
「“まだ”って何!?」
ミリアが笑いをこらえている。
リナは完全に笑っている。
ガルドは腕を組んでいる。
「なるほど」
「ガルド、何がなるほどなの?」
「面白くなってきた」
「面白がらないで!」
狼王まで口を挟む。
「我も蓮の家族として挨拶したほうがいいか?」
「狼王はいいよ!」
「なぜだ」
「余計ややこしくなるから!」
父が突然笑い出した。
「ははは!」
「父さん!?」
「いや……」
父は笑いながら蓮の肩を叩いた。
「お前、ずいぶん賑やかな仲間ができたな」
母も笑っている。
「みんな、蓮のことを大切にしてくれているのね」
ミリアが少し照れながら答えた。
「はい」
リナも頷く。
「蓮は私たちを助けてくれました」
ガルドは笑う。
「そして商売仲間でもある」
狼王は胸を張った。
「看板狼だ」
「そこはまだ言ってるんだ……」
セレナが元気よく続ける。
「私は未来の妻として――」
「はいはい」
蓮は苦笑した。
「みんな、ありがとう」
少しだけ静かな時間が流れた。
父が蓮を見る。
「これからどうする?」
蓮は少し考えた。
そして――
笑った。
「商売する」
「商売?」
「うん」
蓮はスマートフォンを取り出す。
「俺、日本の商品を異世界で売る」
父が頷く。
「そうか」
「もっといろんな人に、必要なものを届けたい」
母も笑った。
「それが蓮の選んだ道なのね」
「うん」
父が蓮の背中を押す。
「なら、行ってこい」
「父さん……」
「もう俺たちのことを心配する必要はない」
母も手を振る。
「たまには帰ってきなさいね」
「もちろん」
蓮は笑った。
「日本のお土産も持ってくるよ」
母が嬉しそうに聞く。
「何を?」
「プリン」
「ふふっ」
その瞬間。
セレナが飛び込んできた。
「私もプリンがいいです!」
「セレナは異世界に住んでるでしょ!」
「では毎日ください!」
「商売だからお金払ってね」
「はい!」
ガルドが笑う。
「それでこそ商人だな」
蓮は仲間たちを見る。
「じゃあ――帰ろう」
「うん!」
ミリアが答える。
リナも頷く。
ガルドも続く。
狼王は堂々と歩き出した。
セレナは蓮の隣を確保している。
そして蓮は、最後に両親を見る。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
帰還路の光が、全員を包んだ。
――そして。
蓮たちは、異世界の町へ戻ってきた。
店の扉を開ける。
「……帰ってきた」
懐かしい店内。
商品棚。
帳簿。
そして――
大量の注文書。
蓮は目を丸くした。
「え?」
ガルドが一枚取る。
「これは……」
「何?」
「商売の依頼だ」
次々と注文書を確認する。
「石けんを大量に欲しい」
「こっちは保存食」
「別の町からも注文が来てる」
「竜王国からも来てるぞ」
蓮は笑った。
「……仕事、いっぱいあるじゃん」
セレナが嬉しそうに言う。
「大繁盛ですね!」
ミリアも笑う。
「これから忙しくなるね」
蓮は店の看板を見る。
そこには――
【佐伯商店】
と書かれている。
蓮は胸を張った。
「よし」
「これからは――」
「本気で異世界商売を始めよう!」
その瞬間。
スマートフォンが鳴った。
【新規依頼を確認】
【依頼主:未知の異世界商業組合】
【依頼内容:この世界に存在しない商品を販売してほしい】
【報酬:金貨1000枚】
蓮の目が輝いた。
「金貨1000枚!?」
ガルドが笑う。
「蓮」
「ああ」
「商売の時間だ」
「行こう!」
店の扉が勢いよく開く。
新しい世界。
新しい商品。
そして――
新しい商売。
蓮たちの本当の異世界商人生活は、ここから。
番外編が始まります。ここからは蓮達が色んな異世界へと行き商売、冒険が本格的に始まります。良ければ又立ち寄ってくださいね。




