↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
PR
57/135

第57話 父が母を探し続けた理由

蓮と父親は、最深部へ続く通路を歩いていた。

後ろにはミリアたちが続いている。

しばらく進むと、父親が足を止めた。

「蓮」

「うん?」

「少し話しておきたい」

父親は壁にもたれた。

「母さんを探していた理由を」

蓮は黙って聞いた。

「俺は、母さんが境界に入ったあと、ずっと帰りを待っていた」

「……どうして、すぐ探しに行かなかったの?」

「最初は行けなかった」

父親は苦笑した。

「境界を無理に開けば、別の世界まで巻き込まれるからだ」

蓮は以前聞いた父の言葉を思い出した。

「だから商人の道を使ったんだ」

「そうだ」

父親はうなずいた。

「世界と世界をつなぐには、二つの方法がある」

「二つ?」

「力で扉を開く方法と――」

父親は蓮を見る。

「必要なものを届けて、相手から必要なものを受け取る方法だ」

ガルドが口を挟む。

「商売そのものが、境界を安定させるってことか」

「その通りだ」

父親は笑った。

「俺は母さんを連れ戻すために、ずっと商売を続けていた」

蓮は驚いた。

「じゃあ……父さんが各地で商売していたのも?」

「ああ」

「全部、母さんを助けるため?」

「そうだ」

蓮はしばらく黙った。

「……なんで俺に言わなかったの?」

父親は少し寂しそうに笑った。

「お前には、お前の人生を歩いてほしかったからだ」

「……」

「境界を守ることを、お前に押しつけたくなかった」

蓮の目に涙が浮かぶ。

「でも俺、結局ここまで来たよ」

「ああ」

父親は笑った。

「だから、もう安心した」

ミリアが静かに尋ねる。

「お父さんは、蓮さんが商人になることを望んでいたんですか?」

「いや」

父親は首を横に振った。

「商人になれ、と言ったことはない」

「じゃあ……」

「自分で選んでほしかった」

蓮を見る。

「商人でもいい。冒険者でもいい。日本で普通に暮らしてもいい」

「……」

「ただ、自分で決めてほしかった」

蓮は笑った。

「俺、自分で決めたよ」

「何を?」

「異世界商人」

父親が吹き出した。

「そうか」

「うん」

「なら、それでいい」

そのとき。

リナが何かに気づいた。

「蓮!」

「どうした?」

「前!」

全員が振り返る。

通路の先に――

大きな光が見えていた。

その中央に、人影が立っている。

「……母さん?」

蓮が駆け出す。

しかし父親が腕をつかんだ。

「待て」

「どうして?」

「まだだ」

父親は険しい顔をした。

「母さんを囲んでいる境界の力が強すぎる」

スマートフォンが警告を鳴らした。

【境界固定を確認】

【対象:佐伯母】

【帰還には境界固定の解除が必要】

【残り時間:12時間43分】

「……12時間」

蓮が画面を見る。

父親は静かに言った。

「ここからが本当の最後だ」

その瞬間。

光の中から、懐かしい声が響いた。

「……蓮?」

蓮の目が大きく開く。

「母さん!」

光の向こうから――

母親の声が聞こえた。

「来てくれたのね……」

蓮は拳を握った。

「迎えに来たよ」

父親も隣に立つ。

「一緒に帰ろう」

すると母親は、少し悲しそうに笑った。

「二人とも……ありがとう」

そして――

光の奥から黒い亀裂が広がった。

ゴゴゴゴゴ……!

スマートフォンが激しく鳴る。

【境界崩壊速度:上昇】

【残り時間:12時間】

蓮は驚いた。

「母さんを助ければ、境界が壊れるの?」

母親は首を横に振った。

「違う」

「じゃあ、何が原因なの?」

母親は黒い亀裂を見つめた。

「まだ、あの子がいるの」

「……あの子?」

母親の表情が変わる。

「境界を食べ続けている存在が」

蓮は息をのんだ。

――境界喰らい。

まだ完全には消えていなかった。

そして、その黒い亀裂の奥から――

小さな声が聞こえた。

「……商人……」

蓮は顔を上げる。

「……俺を呼んでる?」

父親が言った。

「蓮」

「うん」

「最後の商売だ」

蓮はゆっくり笑った。

「分かった」

そして、リュックの中を確認する。

「だったら――」

「必要なものを、届けに行こう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。