↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
PR
53/135

第53話 地下の扉と最初の商人

「……ようやく来たか」

地下室に響いた声に、蓮たちは一斉に固まった。

「今の……」

「父さん……?」

蓮が一歩前へ出る。

しかし、扉の向こうから返事はない。

「蓮、待って」

ミリアが腕をつかんだ。

「罠かもしれないよ」

「でも……父さんかもしれない」

「……うん」

ガルドが古い写真を見つめる。

「俺は、この男を見たことがある」

「本当に?」

「ああ。ただし……」

ガルドは眉をひそめた。

「俺が子どもの頃だ」

「じゃあ、この写真の男は……?」

「分からない」

そのとき。

スマートフォンが震えた。

【新規情報】

【佐伯一郎】

【第一世代・境界商人】

【危険度:不明】

【時間情報:不安定】

蓮は目を見開いた。

「時間情報……不安定?」

「どういうこと?」

リナが首をかしげる。

スマートフォンには続きが表示された。

【この場所では、過去・現在・記憶が混ざる場合があります】

「……なるほど」

ガルドが腕を組む。

「俺が子どもの頃に見たというのも、あり得るってことか」

「じゃあ、写真の男が本当に一郎さんなのかは……」

「まだ分からない」

蓮は扉を見た。

そして、古い鍵を取り出した。

「でも、行くしかない」

「蓮」

ミリアがうなずく。

「一緒に行くよ」

「私も!」

リナが手を挙げる。

「もちろん私もです!」

セレナも続いた。

「私は蓮様の――」

「待って」

蓮が止める。

「その先は言わなくていい」

「未来の妻です!」

「言った……」

ガルドがため息をついた。

狼王が横から口を挟む。

「我も行くぞ」

「狼王も?」

「当然だ」

「でも地下だよ?」

「……」

狼王が少し黙った。

「階段は嫌いだ」

「そこは普通なんだ……」

蓮は思わず笑った。

張りつめていた空気が、少しだけ和らいだ。

「よし。行こう」

古い鍵を鍵穴に差し込む。

カチッ。

扉が開いた。

その先には――

長い地下通路が続いていた。

壁には古い文字が刻まれている。

『商人は、最初に売るものを考えてはいけない』

「……?」

蓮が読む。

さらに進む。

『まず、相手が何を必要としているかを知れ』

「これ……」

蓮は立ち止まった。

「父さんが俺に教えたことと同じだ」

その瞬間。

通路の奥から明かりが灯った。

一つ。

二つ。

三つ。

そして最後の明かりがついた先に、小さな店があった。

「店……?」

リナが驚く。

看板には、

【佐伯商店】

と書かれている。

蓮はゆっくり近づいた。

「……ここにも」

店の中には、古い商品が並んでいた。

米。

布。

薬。

工具。

そして――

一本の鉛筆。

ガルドが息をのむ。

「……これだ」

「何が?」

「俺が子どもの頃に持っていたものと同じだ」

ガルドは鉛筆を手に取った。

「これを……誰かからもらった」

蓮は尋ねた。

「誰に?」

ガルドは答えようとした。

しかし、その瞬間。

店の奥から声がした。

「商人なら……」

全員が振り返る。

「必要なものを、必要なだけ届けなさい」

「誰だ!」

狼王が低く唸る。

店の奥に、一人の老人が立っていた。

白い髪。

古びた商人服。

そして胸元には――

佐伯家の紋章。

蓮は目を見開いた。

「……佐伯一郎?」

老人は微笑んだ。

「その名を知っているのか」

「写真に……」

蓮が写真を取り出す。

老人は写真を見る。

「懐かしいな」

「……!」

「この写真を、まだ持っていたか」

「じゃあ、本当に……?」

老人は答えなかった。

代わりに店の商品棚を指差した。

「蓮」

「はい」

「お前は、商人として何を売る?」

突然の質問だった。

蓮は少し考えた。

「……必要なものです」

「それだけか?」

「それだけじゃない」

蓮は笑った。

「欲しいものも売ります」

「ほう」

「でも、無理やり買わせたりはしません」

老人の目が細くなる。

「では、ここで商売をしてみろ」

「ここで?」

「そうだ」

老人が店の扉を開けた。

その向こうには――

巨大な町が広がっていた。

しかも。

町の人々は全員、蓮たちを見ている。

「……客?」

蓮がつぶやく。

老人が笑う。

「そうだ」

「一郎さん……」

「この町で、必要とされるものを売ってみなさい」

スマートフォンが鳴った。

【特別クエスト】

【第一世代商人・佐伯一郎の商売試験】

【制限時間:12時間】

【目標:町の人々が必要としている商品を見つける】

【利益目標:100ゴールド】

【失敗条件:無理な販売を行う】

蓮はスマートフォンを見つめた。

そして――

ニヤリと笑った。

「……商売なら」

「蓮?」

「得意分野だ」

セレナが目を輝かせる。

「さすが私の未来の――」

「セレナ、店番お願い」

「はい! 喜んで!」

ガルドも腕まくりをする。

「久しぶりに、本気の商売をやるか」

ミリアは商品を並べ始めた。

リナは町を見回す。

狼王は店の前に座った。

「我は看板を担当する」

「それ、気に入ってるんだ……」

蓮は笑いながら店の前に立った。

「さあ――」

異世界商人の商売が始まる。

そして町の奥では。

誰かが蓮たちを見つめていた。

「……やはり来たか」

その人物の手には――

蓮の父が持っていたものと同じ、古い鍵が握られていた。

「佐伯の血を継ぐ者よ」

小さな声が響く。

「お前は、父親のところまで辿り着けるかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。