第46話 海へ出発!異世界商船と大量仕入れ
「海へ行く!」
北方の山から戻った蓮は、港町の店に戻るなり宣言した。
ミリアが驚く。
「いきなりだね……」
「父さんが残した記録に書いてあったんだ。母さんを探すなら、海へ行けって」
リナも地図を広げる。
「『境界の始まり』……この先にある」
地図には、海の先に薄い光の線が浮かんでいた。
ガルドが腕を組む。
「問題は一つだ」
「何?」
「船がない」
「あ……」
全員が黙った。
すると――
「船ならあるぞ」
後ろから声がした。
「海斗さん!」
佐伯海斗が港へ入ってきた。
「話は聞いた。お前たちが海へ行くなら、私の船を使え」
「本当に?」
「ああ。ただし条件がある」
海斗は真剣な顔をした。
「船に積む荷物を、商人として選べ」
蓮は笑った。
「それなら任せて」
■異世界航海用・仕入れ開始!
蓮は店の倉庫を開けた。
「まず、水!」
「当然だな」
「保存食!」
「うむ」
「レトルト食品!」
「それも必要だ」
「カップ麺!」
ガルドが眉をひそめる。
「海で食べるのか?」
「お湯があれば食べられる」
「……便利だな」
さらに――
ティッシュ。
ウェットティッシュ。
ゴミ袋。
ラップ。
アルミホイル。
洗剤。
スポンジ。
歯ブラシ。
石けん。
タオル。
電池。
LEDライト。
乾電池式ランタン。
ロープ。
軍手。
レインコート。
救急用品。
そして――
「プリン!」
セレナが勢いよく箱を抱えた。
「これは絶対必要です!」
「いや、航海に必要か?」
「必要です!」
「……」
セレナは真剣だった。
「船旅には心の栄養が必要です」
ミリアが笑う。
「蓮、入れてあげようよ」
「じゃあ……少しだけ」
「やった!」
セレナが大喜びする。
ガルドが呆れた。
「お前は本当にプリンが好きだな」
「商売人にとって、好きな商品を広めるのは大切な仕事です!」
「それは正しい」
ガルドが真顔でうなずいた。
「……そこだけは認める」
■そして問題の商品
蓮は最後に、倉庫の奥から一箱を持ってきた。
「これも持っていく」
「何だ?」
海斗が箱を見る。
「種です」
「種?」
「野菜の種」
海斗の顔が変わった。
「なるほど……」
蓮は説明した。
「海の向こうに人が住んでいるなら、食料を毎回運ぶより、自分たちで作れるようにした方がいい」
海斗はしばらく黙った。
そして笑った。
「それが佐伯家の商売だ」
「え?」
「必要なものを届けるだけではない」
海斗は種の箱を指差した。
「次に必要になるものまで考える。それが商人だ」
蓮は父の言葉を思い出した。
――母さんを見つけても、絶対に境界を壊すな。
「……分かった」
蓮はうなずいた。
「売るだけじゃない。相手の生活を考える」
スマートフォンが震える。
【商業活動を確認】
【長期交易適性:上昇】
【第八接続候補との相性:96%】
「96%……」
ガルドが目を見開く。
「かなり高いな」
「ってことは……」
蓮は海を見る。
「この海の向こうに、本当に境界の始まりがある」
■異世界商船、完成!
数時間後。
港に一隻の大きな船が停泊していた。
船体には佐伯家の紋章。
船倉には、日本の商品がぎっしり積まれている。
食品。
日用品。
衣類。
医療用品。
工具。
種。
そして大量のプリン。
「……プリン、多くない?」
蓮がつぶやく。
セレナが胸を張る。
「売れます!」
「まだ相手がどんな人たちか分からないぞ」
「甘いものは世界共通です!」
ガルドが腕を組む。
「……確かに」
「ガルドまで納得しないでよ」
全員が笑った。
そして――
「出航するぞ!」
海斗の声が響いた。
帆が上がる。
船がゆっくりと港を離れる。
ミリアが手を振る。
「蓮! お母さん、きっと見つけようね!」
「うん!」
リナは地図を見つめる。
「……海の向こうに、何かある」
狼王は船の甲板で風を嗅いだ。
「……懐かしい匂いがする」
「懐かしい?」
蓮が振り返る。
狼王は海を見た。
「昔、この海の向こうから……黒い霧が来た」
全員の表情が変わった。
その瞬間。
スマートフォンが警告音を鳴らす。
【緊急警告】
【前方に境界反応】
【巨大】
【接続率:99%】
蓮は海の先を見る。
水平線の向こう。
海そのものが――
ゆっくりと割れていた。
「……海が……開いてる?」
巨大な光の扉が、海上に現れる。
その中央には、佐伯家の紋章。
蓮の父が残したものと同じ紋章だった。
そして――
扉の向こうから声が響いた。
『佐伯の商人よ』
蓮は息をのんだ。
『商品を持ってきたか?』
蓮は思わず笑った。
「……もちろん」
船倉を振り返る。
「俺は商人だからな」
しかし次の瞬間。
スマートフォンに、もう一つの表示が出た。
【注意】
【この先に、母親の生命反応を確認】
蓮の笑顔が消えた。
「……母さん」
海の向こうに――
母がいる。
そして、その扉の奥には、
父が残した最後の商売が待っていた。




