第41話 セレナ、まさかの妻気取り!?
竜王国で恋騒動勃発!
翌朝。
「おはようございます、蓮様♡」
「……おはようございます」
店の扉を開けた瞬間。
セレナがいた。
しかも――
エプロン姿だった。
「……何してるんですか?」
「今日から私も店員です♡」
「聞いてませんけど!?」
セレナは当然のように店内へ入っていく。
「蓮様のお店をお手伝いするのは、妻として当然ですから」
「妻!?」
店内が静まり返った。
ミリアが振り返る。
「つ、妻……?」
ルナリアは目を輝かせた。
「えっ!? 蓮に奥さんができたの!?」
「できてません!」
蓮は即座に否定した。
「私と蓮様は、まだ婚姻していません」
「まだ!?」
「そこを強調しないでください!」
セレナはにっこり笑った。
「時間の問題です♡」
「問題しかない!」
ミリアが頬を膨らませる。
「蓮さん……」
「ミリア、違うからな」
「……本当に?」
「本当!」
するとセレナがミリアに近づいた。
「あなたも蓮様がお好きなのですね?」
「えっ……」
ミリアの顔が赤くなる。
「そ、そういう意味じゃ……」
「なるほど」
セレナはニヤリと笑った。
「ライバルですね」
「ライバル!?」
蓮が頭を抱える。
「なんで商売の店で恋愛バトルが始まってるんだ……」
そこへ――
「蓮!」
竜王とルナリアがやって来た。
竜王は店内を見て、エプロン姿のセレナを見る。
「……何があった?」
ルナリアが小声で答える。
「セレナが蓮のお嫁さんになるんだって」
「なるほど」
「お父様!?」
竜王は腕を組む。
「商売に熱心な娘なら、悪くは――」
「竜王様まで!?」
蓮が叫ぶ。
竜王は笑った。
「冗談だ」
しかし、その直後。
店の外から大勢の声が聞こえてきた。
「セレナ様がいるぞ!」
「本当だ!」
「蓮様の店に毎日いるらしい!」
「二人は結婚するのか!?」
「ええ!?」
蓮が外を見る。
いつの間にか、人だかりができている。
セレナは胸を張った。
「皆さん!」
「はい!」
「私はこの店を守ります!」
「おおおお!」
「蓮様を支えます!」
「おおおおお!」
「そして――」
セレナが蓮の隣に立つ。
「いつか蓮様の妻になります!」
「うおおおおお!」
「違います!」
蓮の叫びが王都中に響いた。
しかし――
その騒ぎが思わぬ方向へ展開する。
商業組合から、慌てた男が走ってきた。
「蓮さん!」
「どうしました?」
「大変です!」
男は息を切らしている。
「竜王国の三大商会が、あなたの店との取引を申し込みたいと言っています!」
「三大商会?」
竜王が眉を上げた。
「もう動いたか」
「え?」
竜王が蓮を見る。
「この国でこれだけ売れれば、大商人たちが黙っているはずがない」
セレナが嬉しそうに笑う。
「さすが蓮様です♡」
「いや、俺は普通に商売してるだけなんだけど……」
そこへ商業組合の男が続ける。
「さらに!」
「まだあるんですか?」
「竜王国の各都市から、出店要請が来ています!」
蓮は目を丸くした。
「各都市?」
「はい!」
「港町、鉱山都市、北の交易都市、そして竜族の聖都からも!」
ミリアが驚く。
「一気に支店が増やせるじゃないですか!」
蓮はスマートフォンを見る。
ピコン。
【支店開設候補を確認】
【竜王国】
【候補都市:4】
【現在の支店数:1】
【最大支店数:3】
「三店舗まで……」
ガルドがここにいたら、絶対に喜ぶ。
蓮は少し考えた。
「まずは……」
地図を広げる。
「港町」
「海!」
ルナリアが反応する。
「それから鉱山都市」
「鉱山なら保存食や作業用品が売れそうです」
ミリアが頷く。
「最後は交易都市」
蓮が指を置いた。
「ここなら、他国にも商品を流せる」
竜王が満足そうに笑う。
「いい判断だ」
セレナは蓮の横で地図を覗き込む。
「では、私は蓮様について行きます」
「セレナさんは王都の店をお願いします」
「……」
セレナの笑顔が消えた。
「嫌です」
「即答!?」
「妻は夫についていくものです」
「だから妻じゃない!」
「では婚約者ということで」
「もっと違います!」
ルナリアが笑い出す。
「セレナ、面白い!」
しかしそのとき。
スマートフォンが再び鳴った。
ピコン。
【商業接続の急速拡大を確認】
【境界安定度】
【81% → 85%】
そして――
【警告】
【竜王国・北方地域に異常な境界反応】
蓮の表情が変わった。
「北方……?」
竜王も画面を見つめる。
「北には……」
一瞬、沈黙。
「何があるんですか?」
蓮が尋ねる。
竜王は低い声で答えた。
「昔から立入禁止になっている場所がある」
「なぜ?」
「理由は誰も知らない」
竜王は地図の北端を指した。
「ただ一つだけ、古い伝承がある」
「……何です?」
「そこには――」
竜王が言葉を止めた。
「異世界への扉がある」
蓮のスマートフォンが赤く光った。
【第八接続候補】
【反応地点を更新】
【竜王国・北方】
蓮は地図を見つめた。
商売のために広げた店。
新しい支店。
そして――
その先にある、謎の扉。
セレナはそんな緊張感など気にせず、蓮の腕に抱きついた。
「蓮様♡」
「……何ですか?」
「北方にも一緒に行きましょうね」
「セレナさん……」
「妻として♡」
「だから違うって!」
竜王国での商売は――
ついに、新しい世界への扉へとつながり始めていた。




