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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第30話 ガルドの秘密――もう一人の商人

巨大な扉が、ゆっくりと開いていく。

その向こうに広がっていたのは――

街だった。

しかし、普通の街ではない。

空は真っ黒。

建物は半分が崩れ。

道路には、誰もいない。

なのに。

街のあちこちに、明かりだけが灯っていた。

「……誰もいないのに、明かりがついてる」

ミリアが呟く。

リナは震えながら地図を見る。

「この場所……地図にはありません」

狼王が低く唸った。

「何かいる」

その言葉と同時に――

ガルドが一歩前へ出た。

「……この街」

「知ってるのか?」

俺が聞く。

ガルドは答えなかった。

ただ、街を見つめている。

「ガルド?」

「知らない」

「じゃあ、なんでそんな顔してる?」

「……」

ガルドはしばらく黙った。

そして。

「昔、夢で見たことがある」

「夢?」

「ああ」

ガルドは苦笑した。

「子供の頃から、何度もな」

俺は驚いた。

「子供の頃から?」

「同じ街だ」

ガルドが街を指す。

「同じ建物」

「同じ道」

「そして――」

ガルドが中央を見る。

「いつも、あそこに誰かが立っていた」

街の中央。

巨大な塔。

その最上階に――

黒い影が立っている。

「境界喰らい……」

俺が呟く。

しかしガルドは首を振った。

「違う」

「え?」

「俺が夢で見ていたときは、あれは人間だった」

全員が黙った。

「人間……?」

ガルドは目を細める。

「俺に商品を売っていた」

「商品?」

「ああ」

「何を?」

ガルドはしばらく考えてから言った。

「地図だ」

俺は固まった。

「地図?」

「あの街の地図」

ガルドが笑う。

「変な夢だろ?」

だが。

リナが突然、顔色を変えた。

「地図……?」

彼女は自分の持っている魔法の地図を広げる。

「これ……」

地図の端に、小さな文字が浮かび上がった。

【未登録区域】

そして、その横に――

同じ街が描かれていた。

「一致してる」

俺は息を呑んだ。

「じゃあ、この街は……」

「存在していた」

ガルドが答えた。

「昔はな」

その瞬間。

街の中央から声が響いた。

『ガルド』

ガルドが顔を上げる。

『久しぶりだな』

「……お前」

ガルドの表情が変わった。

「誰だ」

『忘れたか?』

黒い影が笑う。

『お前に最初の商売を教えたのは、私だ』

「……!」

俺はガルドを見る。

「どういうことだ?」

ガルドは答えない。

黒い影が続ける。

『お前は幼い頃から、境界を越えていた』

『こちらの世界で商品を買い』

『そちらの世界で売った』

『お前は最初の異世界商人だった』

「嘘だ」

ガルドが否定する。

『ならば、これを見ろ』

空中に映像が浮かぶ。

幼いガルド。

まだ小さな少年だった。

その少年が――

この街を歩いている。

そして。

一人の男から商品を受け取っている。

「……俺?」

ガルドが呆然とする。

少年のガルドが持っていたのは――

一本の鉛筆。

俺は思わず息を呑んだ。

「鉛筆……」

黒い影が笑う。

『この世界の商品だった』

『そして少年は、それを自分の世界へ持ち帰った』

『そこで商売を始めた』

ガルドは頭を押さえる。

「……覚えてない」

『当然だ』

『記憶を消したからな』

「誰が?」

黒い影が答える。

『佐伯家だ』

俺の背筋が凍った。

「……佐伯家?」

ガルドが俺を見る。

「お前の家は、俺の記憶を消したのか?」

「分からない」

俺は父さんの記録を思い出す。

佐伯家は境界を閉じる役目をしていた。

なら――

「父さんが?」

その瞬間。

俺のスマートフォンが鳴った。

【第五接続者:ガルド】

【接続履歴を確認】

【初回接続――18年前】

「18年前……」

俺は驚いた。

俺がまだ子供だった頃。

ガルドもまた――

この世界と繋がっていた。

「だから、お前は商人だったのか」

俺が言う。

ガルドは苦笑した。

「そういうことらしいな」

「じゃあ、俺とガルドが商売で競争していたのも……」

「偶然じゃない」

少女が言った。

「二人とも、境界に選ばれた商人だった」

ガルドが少女を見る。

「お前は何者なんだ?」

少女は答えない。

代わりに中央の塔を見る。

「行けば分かる」

俺たちは街へ入った。

一歩。

二歩。

そして――

街の中へ。

その瞬間。

無数の店の扉が、一斉に開いた。

「……!」

店の中には商品が並んでいる。

見たことのない商品。

異世界の薬。

魔法道具。

食料。

そして――

日本の商品。

ボールペン。

消しゴム。

乾電池。

カップ麺。

俺は言葉を失った。

「……誰かが、日本の商品をここへ持ってきていた?」

ガルドが一つの棚を見る。

そこには古い日本製の缶詰が置かれていた。

「これ……」

賞味期限は――

18年前。

俺はガルドを見る。

「18年前に、誰かがここへ来た」

ガルドが頷く。

「そして俺も来た」

そのとき。

店の奥から声がした。

「いらっしゃいませ」

俺たちは振り返る。

そこに立っていたのは――

一人の女性。

白い服。

長い黒髪。

そして――

「……母さん?」

俺は動けなくなった。

女性は微笑む。

「久しぶりね、蓮」

「……母さん!」

俺は走り出そうとする。

しかし――

母さんは首を横に振った。

「まだ来ちゃ駄目」

「どうして!」

「あなたが来たら――」

母さんの背後。

巨大な塔の上で。

黒い目が開いた。

「……!」

母さんが小さく言う。

「境界喰らいが、完全に目を覚ますから」

街全体が揺れ始める。

そして。

ガルドのスマートフォンが鳴った。

【第五接続者】

【最終試験を開始します】

【商品を選択してください】

ガルドが画面を見る。

「商品……?」

次の表示。

【価格:記憶】

ガルドの顔から笑みが消えた。

俺は息を呑む。

この世界では――

最後の商売が始まろうとしていた。

そして母さんが言った。

「蓮」

「……何?」

「この世界で、本当に必要なのは――」

母さんは俺を見つめる。

「商品じゃない」

「じゃあ、何?」

母さんは静かに答えた。

「選択よ」

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