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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第29話 第六接続先――母を探して

『やっと気づいたね』

カーテンの向こうから、女性の声が聞こえた。

俺は息を止めた。

「……母さん?」

返事はない。

ただ、黒い霧の向こうに人影が立っている。

ミリアが俺の腕を掴んだ。

「蓮……大丈夫?」

「ああ」

そう答えたものの、心臓は激しく鳴っていた。

俺の母親。

俺が子供の頃にいなくなった母さん。

ずっと――

もう会えないと思っていた。

俺は一歩、カーテンへ近づく。

「母さんなの?」

『……蓮』

その声。

間違いない。

記憶の中に残っている声だった。

「母さん!」

俺はカーテンを開けようと手を伸ばす。

しかし――

バチッ!

強い光が走った。

「うわっ!」

手を弾かれる。

スマートフォンに警告が出た。

【第六接続先】

【現在の接続は禁止されています】

【理由:接続先が不安定】

「じゃあ、どうすれば……」

少女が言った。

「鍵が足りない」

「鍵?」

「原初接続キーだけじゃ、開けられない」

ガルドが腕を組む。

「つまり、別の条件があるということか」

「そう」

少女は頷く。

「第六接続先は、普通の世界じゃない」

「じゃあ何なんだ?」

少女は答えた。

「記憶の世界」

「記憶……?」

その瞬間。

カーテンの向こうの景色が変わった。

黒い霧が消える。

そこに映ったのは――

昔の家だった。

俺がまだ小さかった頃。

「……」

庭。

古い自転車。

縁側。

そして――

母さん。

幼い俺を抱いて笑っている。

「……母さん」

胸が苦しくなる。

俺は知らなかった。

こんな記憶。

覚えていない。

「どうして……」

リナが映像を見る。

「記憶を見せているんだよ」

「母さんは、俺に何か伝えようとしてる?」

『そう』

母さんの声が聞こえた。

『蓮』

「うん」

『あなたは、小さい頃から境界を見ることができた』

「……俺が?」

『カーテンの向こうに何かいるって、よく言っていたでしょう?』

俺は思い出した。

子供の頃。

夜になるとカーテンの隙間から何かが見えていた。

俺は何度も父さんに言った。

「誰かいる」

でも父さんは、

「気のせいだ」

と言っていた。

『お父さんは、あなたを守りたかった』

母さんの声が続く。

『だから、私が境界へ行った』

「……え?」

俺は固まった。

「母さんが……?」

『境界を閉じるためには、誰かが向こう側へ行く必要があった』

『私は、その役目を引き受けた』

「じゃあ……母さんは自分から?」

『そう』

母さんは静かに答えた。

『でも、戻れなくなった』

俺は拳を握った。

「だったら、今度は俺が迎えに行く」

『駄目』

「え?」

『蓮一人では来てはいけない』

俺は眉をひそめる。

「どうして?」

『向こうには――』

母さんの声が震えた。

『境界喰らいの本体がいる』

全員が黙った。

「本体……?」

『今まで戦っていたものは、本体じゃない』

狼王が低く唸る。

「では、あれは……」

『影』

母さんが答えた。

『本体は、もっと深い場所にいる』

スマートフォンが突然点滅した。

【第六接続先】

【危険度:測定不能】

【推奨人数:複数】

【単独接続:禁止】

俺は画面を見た。

「……みんなで行けってことか」

ガルドが笑った。

「当然だろう」

「ガルド?」

「ここまで来て、お前一人に行かせると思うか?」

ミリアも頷く。

「私も行く」

リナも続いた。

「私も」

狼王が立ち上がる。

「我も行こう」

俺はみんなを見る。

胸の奥が熱くなった。

「……ありがとう」

そのとき。

母さんの声が聞こえた。

『でも、一つだけ覚えておいて』

「何?」

『境界喰らいを倒すだけでは、終わらない』

「……」

『あれを生み出した原因を、止めなければならない』

「原因……」

母さんが言った。

『人間の欲望』

部屋が静まり返る。

ガルドが珍しく真剣な顔になった。

「なるほどな」

「何が?」

「境界喰らいは、怪物そのものが問題なんじゃない」

ガルドは俺を見る。

「同じことを人間が繰り返せば、また生まれる」

俺は黙って頷いた。

だから父さんは、境界を閉じようとした。

だから母さんは、向こう側へ行った。

そして俺は――

今度は違う方法を探す。

「母さん」

『なに?』

「俺、迎えに行く」

少しの沈黙。

そして。

『……大きくなったね』

その声は、とても優しかった。

『待ってる』

映像が消える。

カーテンが閉じた。

同時にスマートフォンが鳴った。

ピコン。

【第六接続先への道を確保】

【必要条件】

【原初接続キー】

【帰還路】

【五つの接続者】

「五つの接続者?」

少女が俺を見る。

「蓮」

「何?」

「それは――」

少女が言いかけた瞬間。

スマートフォンに新しい文字が浮かんだ。

【第一接続者:佐伯蓮】

【第二接続者:ミリア】

【第三接続者:リナ】

【第四接続者:狼王】

【第五接続者:???】

俺たちは顔を見合わせた。

「第五接続者って……誰?」

その瞬間。

ガルドの胸元から――

黒い光が漏れた。

「……なっ?」

ガルド自身も驚いている。

スマートフォンが警告音を鳴らす。

【第五接続者を確認】

【対象:ガルド】

「俺……?」

ガルドが自分の胸を見る。

黒い光が、どんどん強くなる。

そして――

ガルドの背後に、巨大な扉が現れた。

扉には見覚えのある模様。

原初の境界と同じ模様だった。

ガルドが振り返る。

「……蓮」

「ああ」

扉の向こうから――

低い声が響く。

『商人よ』

ガルドの顔から笑みが消える。

『お前は、昔から我々の世界と繋がっていた』

「……どういう意味だ?」

答えは返ってこない。

代わりに扉が――

ゆっくりと開き始めた。

その向こうには。

巨大な街があった。

そして街の中央に――

俺たちが探していた「境界喰らい」の本体らしき巨大な影が立っていた。

スマートフォンが赤く染まる。

【第六接続先――開門】

【最終目的地を確認】

【境界喰らい――本体】

俺は拳を握った。

「……行こう」

今度は一人じゃない。

母さんを迎えに。

そして――

この長い戦いを終わらせるために。

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