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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第2話 ボールペン一本で金貨一枚

「助けてぇぇぇ!」

 少女の悲鳴が聞こえる。

「……行くしかないか」

 俺は覚悟を決め、窓をくぐった。

 足が草原に触れる。

「……本当に来られた」

 振り返る。

 そこには、俺の部屋があった。

 正確には、部屋の窓だけが空中に浮かんでいる。

 カーテンが風に揺れていた。

「……戻れるよな?」

 カーテンを閉める。

 もう一度開ける。

 部屋がある。

「よし」

 これだけでもかなり安心した。

 帰れる。

 なら、多少の無茶はできる。

「お兄さん!」

 少女の声。

「こっち!」

「分かった!」

 少女がこちらへ走ってくる。

 その後ろから巨大な狼が迫っていた。

「近い近い!」

 俺は反射的に後ずさる。

「どうすればいいんだよ!」

 武器なんて持っていない。

 剣もない。

 魔法も使えない。

 あるのは――

 スマホ。

 財布。

 コンビニで買ったパン。

 そしてボールペン。

「……ボールペン?」

 俺は財布からボールペンを取り出した。

 何の役に立つんだ。

 そう思った瞬間。

 狼が少女へ飛びかかった。

「危ない!」

 俺は咄嗟にボールペンを投げた。

 カツン。

 狼の鼻に当たる。

「…………」

 狼が止まった。

「…………」

 俺も止まった。

 少女も止まった。

 そして狼は――

 逃げていった。

「え?」

 何だったんだ、今の。

 少女が駆け寄ってくる。

「ありがとうございます!」

「いや、俺は何も……」

「これです!」

 少女は地面に落ちたボールペンを拾った。

「この魔道具で魔獣を追い払ったんですよね!」

「……魔道具?」

 少女の目が輝いている。

「すごいです!」

「いや、それボールペンだけど」

「ぼーるぺん?」

「文字を書く道具」

「文字を……?」

 少女はボールペンを眺めた。

 そして、恐る恐るキャップを外す。

「どうやって使うんですか?」

「こう」

 俺は手近な石に文字を書いた。

 ――こんにちは。

 少女は目を見開いた。

「…………」

「どうした?」

「魔法陣……?」

「違う」

「魔法文字……?」

「違うって」

「では、これは一体……?」

「ただのボールペン」

「ただの……?」

 少女は信じられないものを見るような顔をした。

「これが、ただの道具……?」

「まあ、百円くらいだけど」

「百円?」

「日本では百円ショップで買える」

「……日本?」

 しまった。

 説明が難しい。

「俺の住んでる場所の名前」

「なるほど……」

 少女はボールペンを握りしめた。

「これ、売っていただけませんか?」

「え?」

「お願いします!」

「いや、これ一本だけだけど……」

「金貨一枚で!」

「…………」

 俺は固まった。

「今、なんて?」

「金貨一枚です」

「これが?」

「はい」

 少女は真剣だった。

 冗談を言っているようには見えない。

「金貨って……どれくらい?」

「これです」

 少女が袋から金貨を一枚取り出した。

 金色に輝く硬貨。

 ずっしり重い。

「…………」

 俺はスマホを取り出して計算した。

 日本円にすれば――

 ざっくり考えても、数万円はありそうだった。

「……マジか」

 百円のボールペンが。

 数万円。

「……売ります」

「ありがとうございます!」

 少女は嬉しそうに笑った。

 そして金貨を俺に渡した。

 俺はそれを握りしめる。

 その瞬間。

 頭の中に、ある考えが浮かんだ。

「……待てよ」

 ボールペン一本で金貨一枚。

 つまり――

「日本の商品、もっと持ってきたら……」

 俺は自分の部屋を振り返った。

 そこには大量の物がある。

 シャンプー。

 歯ブラシ。

 洗剤。

 調味料。

 カップ麺。

 乾電池。

 文房具。

 百円ショップの商品。

 コンビニの商品。

 家電。

「……売れる」

 少女が不思議そうに俺を見る。

「どうしました?」

「いや」

 俺は笑った。

「ちょっと商売を思いついただけ」

「商売?」

「ああ」

 俺は金貨を握りしめた。

「異世界で商売を始める」

 その瞬間だった。

 少女が慌てたように首を振った。

「待ってください!」

「?」

「この辺りでは、人間族以外の商人は――」

「?」

「商売をするなら、まず商人ギルドに行かないといけません」

「……商人ギルド?」

 聞き慣れない言葉。

 だが。

 俺は笑った。

「それなら話は早い」

 俺には、日本に帰れるカーテンがある。

 商品はいくらでも仕入れられる。

 そして――

 異世界には、まだ日本の商品を知らない人間が山ほどいる。

「まずは商人ギルドだな」

 少女は笑った。

「はい!」

「ところで、名前は?」

「あっ……」

 少女は少し恥ずかしそうに答えた。

「ミリアです。ミリア・ルーネ」

「俺は佐伯蓮」

「レンさんですね」

「よろしく、ミリア」

 こうして俺は――

 異世界で最初の商売仲間と出会った。

 そしてこの日。

 百円のボールペンが、金貨一枚になった。

 俺はまだ知らない。

 このボールペンをきっかけに、商人ギルドが大騒ぎになることを。

 そして――

 俺の持っている「百円ショップの商品」が、この世界ではとんでもない価値を持っていることを。

 異世界商売。

 最初の商品は――

 ボールペン一本。

 利益、約数万円。

 俺の人生で初めての異世界ビジネスは、予想以上に好調なスタートを切った。

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