↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
PR
19/135

第19話境界喰らい

黒い空に、巨大な腕が伸びていた。

 その腕には、見たことのない黒い紋様が刻まれている。

「グルルル……!」

 狼王が唸る。

 森の狼たちも一斉に牙をむいた。

 だが――。

「待って!」

 蓮が叫んだ。

「突っ込んじゃ駄目だ!」

 狼王が蓮を見る。

「境界の子。あれは敵だ」

「分かってる!」

 蓮はスマートフォンを見る。

 画面には、

【名称:境界喰らい】

【目的:接続】

【第一接続先への干渉を確認】

 そして、その下に新しい表示が出ていた。

【接続先選択】

【第一:日本】

【第二:リナの世界】

【第三:未登録】

 蓮は息をのんだ。

「これ……俺が選べるのか?」

「レン?」

 ミリアが不安そうに聞く。

「選択を間違えたら……どうなる?」

「分からない」

「えっ」

「分からないけど――」

 蓮は黒い空を見上げた。

「選ばなかったら、あいつが勝手に選ぶかもしれない」

 その瞬間だった。

 黒い腕が動いた。

「来るぞ!」

 狼王が吠える。

 ズドォォォン!!

 巨大な腕が森へ叩きつけられた。

 木々が吹き飛ぶ。

「きゃあ!」

「リナ!」

 蓮がリナを抱えて転がる。

 すぐ横を黒い霧が通り過ぎた。

「触れるな!」

 狼王が巨大な牙で黒い霧を噛み砕く。

 だが――。

「……!」

 黒い霧が狼王の身体にまとわりついた。

「狼王!」

 ミリアが叫ぶ。

「問題ない!」

 狼王は踏ん張った。

 しかし、毛の一部が黒く染まっていく。

「まずい……」

 蓮は周囲を見る。

 そして――。

「あれだ!」

 蓮はリュックを開けた。

「ミリア! 水!」

「水?」

「大量に!」

「分かった!」

 ミリアが魔法で水を作り出す。

 蓮はそこへ――。

「食器用洗剤!」

 ドバッ。

「……これ、何?」

「汚れを落とすやつ!」

「今それ使うの!?」

「使う!」

 蓮は洗剤を混ぜた水を狼王にかける。

 シュウウウ……。

 黒い霧が薄くなった。

「……効いている?」

 リナが目を丸くする。

「やっぱり!」

 蓮は叫んだ。

「あいつは普通の魔物じゃない。でも、黒い霧そのものは汚れみたいに剥がせる!」

 蓮はさらに百円ショップで買った雑巾を取り出した。

「よし!」

「レン……」

 ミリアが呆れた顔をする。

「それで世界を救うつもり?」

「商人だからな!」

「意味が分からないよ!」

 だが、狼王は笑ったように牙を見せた。

「面白い」

 狼王が立ち上がる。

「境界の子よ。貴様は本当に奇妙な男だ」

「褒め言葉として受け取っとく!」

 その時――。

 スマートフォンが震えた。

『ピコン』

【第三接続先から通信】

【接続要求】

【応答しますか?】

 蓮は画面を見つめる。

「第三接続……」

 リナの顔が青ざめた。

「まさか……」

「知ってるのか?」

「分からない。でも……」

 リナは震えながら言った。

「あの黒い穴と同じ気配がする」

「……」

 蓮は一瞬迷った。

 第三接続を開けば、助けになるかもしれない。

 だが――。

 敵をこちら側へ招く可能性もある。

「レン!」

 ミリアが叫ぶ。

「上!」

 蓮が空を見る。

 黒い腕の先に――。

 巨大な目が開いていた。

 赤い瞳。

 その瞳が、蓮を見ている。

『接続対象を確認』

 頭の中に声が響いた。

『境界を発見』

『接続を開始します』

「させるか!」

 蓮はスマートフォンを握りしめた。

 そして――。

【第一接続先:日本】

 をタップした。

「日本につなげ!」

 スマートフォンが激しく光る。

 次の瞬間。

 黒い空間に、一瞬だけ別の景色が映った。

 日本。

 蓮の部屋。

 カーテン。

 そして――。

 そのカーテンに走る、黒い亀裂。

「……!」

 蓮の顔から血の気が引いた。

「俺の部屋が……!」

 黒い亀裂は少しずつ広がっていた。

 境界喰らいは、異世界だけを狙っているわけではない。

 日本にも手を伸ばしている。

「……ふざけるな」

 蓮は拳を握った。

「日本は俺の世界だ」

 そしてミリアを見る。

「この世界も、リナの世界も――」

 蓮はスマートフォンを掲げた。

「全部、俺が守る!」

 その瞬間。

 スマートフォンに新しい文字が浮かんだ。

【商人権限を確認】

【特殊機能を解放します】

【――境界取引を開始します】

「……商人権限?」

 蓮が目を見開く。

 画面に、新しい項目が表示された。

【商品を選択してください】

【使用方法:未登録】

 蓮は笑った。

「……なるほど」

 リュックの中を見る。

 LEDライト。

 電池。

 ロープ。

 粘着テープ。

 洗剤。

 水。

 救急用品。

 そして――。

 大量の百円ショップ商品。

「商売ってのは……」

 蓮はLEDライトを手に取った。

「売るだけじゃないんだな」

 狼王が蓮を見る。

「何をする?」

 蓮は笑った。

「――仕入れる」

 その直後。

 森中に白い光が走った。

 黒い霧が一斉に後退する。

 境界喰らいの巨大な目が、初めて揺らいだ。

『異常』

『境界側からの干渉を確認』

『未知の商品情報を取得――』

「いまだ!」

 蓮が叫ぶ。

「みんな、押し返すぞ!」

「おおおおおっ!」

 狼王と狼の群れが一斉に走り出す。

 ミリアは魔法を放つ。

 リナも翼を広げる。

 そして蓮は――。

 百円ショップのLEDライトを、一本ずつ地面に突き刺していった。

 光の道ができる。

 森の奥から、黒い霧が逃げていく。

 だが――。

 境界喰らいの目が、ゆっくりと細くなった。

『接続対象を変更』

 蓮のスマートフォンが震える。

【警告】

【境界喰らいが第二接続先へ接続を試みています】

「第二……?」

 蓮が振り返る。

 リナの世界へ続く、あの黒い穴。

 そこから――。

 一本の黒い糸が伸びていた。

 リナの背中へ向かって。

「リナ!」

「え?」

 蓮は走った。

「逃げろ!」

 黒い糸がリナへ迫る。

 そして――。

 蓮がリナを抱き寄せた瞬間。

 黒い糸が蓮の腕に触れた。

 ジュッ。

「ぐっ……!」

 腕に黒い紋様が浮かぶ。

「レン!」

「大丈夫……!」

 だがスマートフォンには、さらに恐ろしい文字が表示されていた。

【境界喰らい】

【新しい接続対象を確認】

【第三接続候補――】

【佐伯蓮】

 蓮は目を見開いた。

「……俺?」

 境界喰らいが欲しがっていたのは――。

 世界ではなかった。

 世界と世界をつなぐ――。

 境界そのものだった。

 そして、その中心にいるのは。

 蓮だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。