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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第17話 黒く染まる森

――ウォォォォォン!

森の奥から、低い遠吠えが響いた。

「狼王だ!」

蓮は走る。

ミリアが後ろから続く。

「蓮、待って!」

「急がないと!」

その隣では、リナも必死に走っていた。

三人は地図を頼りに、森の奥へ進んでいく。

しかし。

「……静かすぎる」

蓮が足を止めた。

いつもの森なら、鳥の声がする。

小動物の気配もある。

だが。

今は何も聞こえない。

「蓮……」

ミリアが周囲を見る。

「木が……」

木々の葉が黒く変色していた。

幹には黒い筋が走っている。

地面には、灰色の草。

「これが……黒い穴の影響?」

リナが呟いた。

彼女は木に触れようとした。

「触らないで!」

蓮が止める。

「危ないかもしれない」

「……うん」

その瞬間。

――ガサッ。

茂みが揺れた。

三人が身構える。

「誰だ!」

蓮が声を上げる。

すると。

一匹の狼が出てきた。

だが――。

「……狼?」

その狼の毛は、ところどころ黒く染まっている。

目が赤い。

「まずい!」

リナが叫んだ。

狼が唸る。

「グルル……」

「来る!」

ミリアが前に出る。

しかし。

「待って!」

蓮が止めた。

狼は攻撃してこない。

ただ。

苦しそうに震えている。

「……こいつ、苦しんでる」

蓮が一歩近づく。

狼が牙を見せる。

だが、襲ってこない。

蓮はゆっくり手を伸ばした。

「大丈夫だ」

その瞬間。

狼の赤い目から、黒い煙が少しだけ抜けた。

「……!」

狼が倒れる。

「蓮!」

ミリアが駆け寄る。

蓮は狼の様子を見る。

「息はある」

リナが震える。

「黒いものが……体の中に入ってる」

「どうやって?」

「分からない」

そのとき。

森の奥から声が響いた。

「触れるな」

低い声。

蓮が振り返る。

巨大な黒狼が立っていた。

白い紋章。

赤い目。

――狼王。

「狼王!」

蓮が叫ぶ。

狼王は倒れている狼を見た。

「そいつは、昨日までは普通だった」

「何が起きた?」

「黒い霧だ」

狼王が答える。

「森の奥から流れてきた」

「黒い穴から?」

「そうだ」

狼王は森の奥を見る。

「そして、日に日に近づいている」

蓮は地図を取り出した。

「これを見てくれ」

狼王が地図を見る。

「……」

その目が細くなる。

「この地図を、どこで?」

「リナが描いた」

「……境界の子か」

狼王はリナを見る。

リナは少し怯えながらも、逃げなかった。

「黒い穴は、この森に近づいてる」

蓮が言う。

「このままだと、森が全部飲み込まれる」

狼王は静かに頷いた。

「その通りだ」

そして。

「だから私は、森の奥へ行く」

「一人で?」

「私だけではない」

狼王が振り返る。

そこには――。

大量の狼たちがいた。

数十。

いや。

百匹以上。

全員が蓮たちを見ている。

「……すごい数」

ミリアが呟く。

狼王が言う。

「森を守る」

蓮は少し考えた。

「俺も行く」

「蓮!」

ミリアが驚く。

「だって、このままだとリナの世界だけじゃない」

蓮は黒く染まった木を見る。

「こっちの世界まで危ない」

狼王が蓮を見る。

「人間」

「ん?」

「お前は戦えるのか?」

「……」

蓮は黙った。

剣は使えない。

魔法も使えない。

戦闘経験なんてない。

「正直、戦えない」

狼王が鼻を鳴らす。

「ならば、なぜ来る?」

蓮は少し考えて。

「俺には、売るものがある」

「……?」

蓮は荷物からLEDライトを取り出した。

「暗い場所なら、これが使える」

次に電池。

「これも」

包帯。

「怪我したらこれ」

水。

「水分補給」

そして。

「カップ麺」

狼王が固まった。

ミリアが吹き出す。

「蓮……」

「いや、腹が減ったら戦えないだろ」

狼王はしばらくカップ麺を見つめた。

そして。

「……以前より、変な人間になったな」

「褒めてる?」

「分からん」

狼王が初めて少しだけ笑った。

そのとき。

――ゴゴゴゴゴ……。

大地が揺れた。

森の奥。

空が黒く染まる。

巨大な黒い亀裂が、空中に走った。

「……あれが」

リナが震える。

「黒い穴」

しかし。

蓮は気づいた。

黒い穴の中心に。

何かがいる。

人影。

いや。

巨大な何か。

そして。

その存在が、こちらを見た。

――目が合った。

スマートフォンが激しく震える。

【警告】

【第三接続候補:反応】

【敵対存在を確認】

【危険度:測定不能】

蓮は画面を見つめる。

そして。

最後に一行。

【対象:境界を喰らう者】

「……境界を、喰らう者?」

狼王の表情が変わった。

「まさか……」

リナも震える。

「知ってるの?」

狼王は答えなかった。

ただ。

森の奥を睨みつける。

「伝説では……」

狼王の声が低くなる。

「世界と世界の境界を喰らい、最後にはすべてを一つにする存在」

蓮は息を呑んだ。

黒い穴の向こうで。

巨大な目が開いた。

そして。

世界を揺らすほどの咆哮が響いた。

――グォォォォォォォン!

狼たちが一斉に吠える。

狼王が叫んだ。

「全員、森を守れ!」

蓮は拳を握った。

「……俺もやる」

そして。

異世界商人・佐伯蓮。

初めての「戦い」が始まろうとしていた。

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