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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第14話 カーテンの向こうから聞こえた声

「……たすけて」

その声が聞こえた瞬間。

佐伯蓮は息を止めた。

カーテンの向こう。

そこには、いつもの異世界がある。

草原。

遠くに見える城。

そして、商人ギルドの街。

だが――。

今聞こえた声は、そこからではない。

「蓮……」

ミリアが震える声で言った。

「今の、聞こえた?」

「ああ」

「子供だったよね?」

「たぶん」

蓮はスマートフォンを見る。

画面には、

【第二接続先】

【開きますか?】

【YES】

【NO】

と表示されている。

蓮は指を止めた。

「……どうする?」

ミリアが聞く。

蓮は少し考えた。

「全部開くのは怖い」

「うん」

「でも、助けを求めてるなら……」

蓮はYESの文字に指を近づけた。

そして。

タップ。

――ピッ。

世界が一瞬、暗くなった。

「……!」

カーテンの向こうに見えていた草原が消える。

代わりに現れたのは――。

真っ暗な空間。

何もない。

地面もない。

空もない。

ただ、遠くに小さな光が浮かんでいる。

「ここ……どこ?」

ミリアが呟いた。

蓮は答えられない。

すると。

小さな光が近づいてきた。

ゆっくり。

ゆっくりと。

そして、その姿が見えた。

「……女の子?」

年齢は十歳くらい。

白い髪。

小さな角。

そして、背中には薄い羽。

少女は震えていた。

「……人?」

蓮が声をかける。

少女は顔を上げた。

「あなた……」

「俺?」

「境界の人……?」

蓮は固まった。

「なんで俺のことを知ってる?」

少女は答えなかった。

ただ、怯えたように周囲を見る。

「早く……」

「何が?」

「見つかる前に……」

少女の声が震える。

「ここから出して」

「誰に見つかるんだ?」

その瞬間。

暗闇の奥から。

――ゴゴゴゴゴ……。

低い音が響いた。

少女の顔が青ざめる。

「来た……」

「何が?」

「食べるもの」

「食べるもの?」

少女は首を横に振る。

「世界を……食べるもの」

蓮の背筋に寒気が走った。

それは。

狼王が話していた伝説と同じだった。

――境界の向こうには、世界を喰らうものがいる。

「まさか……」

蓮が呟いた瞬間。

暗闇の奥に。

巨大な目が開いた。

赤い。

巨大な目。

少女が悲鳴を上げる。

「逃げて!」

「ミリア!」

蓮は咄嗟に少女の手を掴んだ。

「こっちだ!」

「え?」

「戻るぞ!」

蓮はカーテンへ向かって走る。

しかし。

――ドンッ!

見えない何かがカーテンを叩いた。

「うわっ!」

蓮が吹き飛ばされる。

ミリアが支える。

「蓮!」

「大丈夫!」

もう一度。

――ドンッ!

今度はカーテン全体が大きく揺れた。

「まずい……!」

少女が叫ぶ。

「閉じて!」

「どうやって!?」

「境界の人ならできる!」

「そんなこと言われても!」

蓮はスマートフォンを見る。

画面には新しい表示。

【第二接続】

【不安定】

【侵入反応】

そして。

【強制切断しますか?】

蓮は迷わなかった。

「YES!」

――ピッ。

カーテンが一気に閉じた。

静寂。

蓮はその場に座り込んだ。

「……助かった?」

ミリアがカーテンを見る。

しばらく何も起こらない。

「たぶん……」

蓮は少女を見る。

「君、大丈夫か?」

少女は頷いた。

「……ありがとう」

「名前は?」

少女は少し考えて。

「リナ」

「リナか」

蓮は笑った。

「俺は蓮」

「知ってる」

「……そうだったな」

ミリアが苦笑する。

「それより、ここからどうする?」

リナはカーテンを見た。

「私は……帰れない」

「え?」

「私の世界は、もう……」

そこで言葉を止めた。

蓮は聞いた。

「何があった?」

リナは俯いた。

「世界の端から、黒いものが広がってる」

「黒いもの?」

「触れた場所が消える」

「消える?」

「森も」

「……」

「川も」

「……」

「街も」

蓮は言葉を失った。

リナは続けた。

「私の世界には、もう逃げられる場所がない」

「だから俺に?」

「うん」

「どうして俺なんだ?」

リナは蓮を見上げた。

そして。

「あなたは……」

小さな声で言った。

「世界と世界をつなげられる人だから」

蓮は黙った。

そのとき。

――ピッ。

スマートフォンが震える。

【第二接続先を一時閉鎖】

【救助対象:1名】

【境界内に保護】

蓮は画面を見つめた。

「救助対象……」

どうやらスマートフォンは、リナを認識している。

しかし。

その下に、さらに文字が出た。

【警告】

【第三接続候補:反応】

蓮の顔が引きつる。

「……また?」

ミリアが覗き込む。

「第三?」

蓮は苦笑した。

「どうやら、俺たちの冒険はまだまだ終わらないらしい」

その頃。

異世界の街では――。

大商人ガルドが、蓮の店を見ていた。

「……妙だ」

「何がですか?」

「商品が増えている」

「はい」

「だが、佐伯は今日ほとんど外に出ていない」

ガルドは目を細めた。

「どうやって仕入れている?」

その問いに。

部下は答えられなかった。

そしてガルドは、蓮の秘密に近づき始めていた。

一方。

森の奥では。

狼王が空を見上げていた。

「……第二の境界が開いたか」

その目が鋭くなる。

「ならば、次に来るのは――」

黒い雲の向こう。

巨大な何かが動いた。

狼王は低く唸った。

「第三の門だ」

――異世界商人・佐伯蓮。

その商売は、もう一つの世界を巻き込んで。

少しずつ「世界そのもの」を動かし始めていた。

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