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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第28話 第一境界が開く! 敵商人の恐るべき正体

ゴゴゴゴゴ……!

洞窟全体が激しく揺れた。

巨大な扉の隙間から、黒い霧があふれ出している。

「全員、扉から離れろ!」

狼王が叫んだ。

蓮はセレナに腕を引かれ、後方へ飛び退いた。

直後、地面が裂けた。

「きゃっ!」

リナがよろめく。

ミリアがすぐに魔法を放ち、足元に防御壁を展開した。

「このままでは洞窟が崩れます!」

「扉を止める方法はないのか!?」

蓮はスマートフォンを操作した。

【第一境界】

【封印解除進行中】

【停止条件――不明】

「くそっ! いつもなら何か表示されるのに!」

そのとき、扉の向こうから声が響いた。

『逃げるな、蓮』

『お前は、この扉を開くために来たのだ』

「勝手に決めるな!」

蓮は叫び返した。

「俺は境界を悪用するつもりなんかない!」

『ならば、証明してみせろ』

扉の中央に、黒い紋章が浮かび上がった。

そして――

一人の男が、扉の向こうから姿を現した。

黒い外套。

銀色の杖。

冷たい目。

昨日、倉庫で出会った男だった。

「またお前か!」

蓮が睨みつける。

男は薄く笑った。

「久しぶりだな、佐伯蓮」

「昨日会ったばかりだろ!」

「私にとっては、ずいぶん長い時間だったがな」

男の言葉に、蓮は違和感を覚えた。

時間の流れが違う。

あの扉の向こうでは、こちらとは異なる時間が流れているのかもしれない。

「お前は何者だ?」

男は杖を地面に突き立てた。

「私は、佐伯景真」

蓮の目が見開かれる。

「……ヴェルティアさんの記録にあった、交易監査役か?」

「そうだ」

景真は淡々と答えた。

「かつて私は、佐伯家とともに境界を管理していた」

「なら、どうしてこんなことをする!」

「答えは簡単だ」

景真は扉を振り返った。

「佐伯家のやり方では、世界を変えられなかったからだ」

          ◇

景真は、ゆっくりと語り始めた。

かつて、第一境界が開かれたころ。

二つの世界には、互いに不足しているものがあった。

片方には食料が足りず、もう片方には薬や道具が不足していた。

佐伯家の初代当主・一郎は、必要なものを交換することで、人々を救った。

だが、交易が広がるにつれ、問題が起きた。

商品を独占する商人。

利益を求めて物資を奪う者。

境界を私物化しようとする権力者。

そして、景真自身も、その争いに巻き込まれた。

「私は何度も提案した。境界をもっと自由に開き、物資を大量に運べるようにすべきだと」

「でも、それをすると境界が不安定になるんだろ!」

蓮が反論する。

「知っていた。だからこそ、制御する方法を探した」

景真は蓮を見つめた。

「だが、一郎は認めなかった。必要以上の物資を運べば、世界の均衡が崩れると」

「それは正しい判断だったんじゃないのか?」

「正しいかどうかは、結果が決める」

景真の声が低くなる。

「私は封印に反対した。だが、一郎は私を裏切り者と呼び、第一境界を閉じた」

「だから、今になって復讐しているのか?」

「復讐?」

景真は笑った。

「違う。私は証明したいのだ」

黒い霧が、彼の足元から広がった。

「境界は、管理する者のためにあるのではない。世界を変える力を持つ者が、自由に使うべきなのだ」

「自由に使う……?」

「そうだ。欲しいものを、欲しいだけ手に入れる。商品も、金も、力も」

蓮は首を振った。

「それは自由じゃない。ただの奪い合いだ」

景真の表情が険しくなった。

「お前も一郎と同じか」

「同じかどうかは知らない。でも、俺は商売で誰かを犠牲にしたくない」

蓮は一歩前に出た。

「必要なものを届けて、相手からも必要なものを受け取る。それが俺の商売だ!」

その瞬間。

スマートフォンが強く光った。

【佐伯家の商業理念を確認】

【第一境界との共鳴】

【封印解除進行――一時停止】

「止まった……?」

ミリアが驚いた。

扉の動きが、ほんのわずかに止まっている。

景真の目が見開かれた。

「まさか……商業理念そのものが、封印の一部になっているのか」

蓮は画面を見つめた。

「そうか。鍵だけじゃないんだ」

第一境界を開くには、佐伯家の血と鍵が必要。

だが、封印を制御するには、もう一つ条件がある。

佐伯家が守ってきた商売の原則だ。

          ◇

「蓮さん! 今のうちに離れましょう!」

ミリアが叫んだ。

だが、景真が杖を振るう。

黒い霧が壁のように広がり、退路を塞いだ。

「まだ帰すわけにはいかない」

景真の背後に、無数の光が浮かび上がった。

金貨。

宝石。

魔道具。

そして、日本から運ばれてきた大量の商品。

「見ろ、蓮。これが境界の力だ」

景真が両手を広げる。

「食料が不足する町には、いくらでも食料を送れる。貧しい商人には、資金を与えられる。欲しいものを手に入れられない人間など、いなくなる」

一瞬、蓮は言葉を失った。

確かに、物資を自由に運べれば救える人々はいる。

だが――

「……その商品は、どこから持ってきた?」

蓮は尋ねた。

「何?」

「食料も、金貨も、魔道具も。どこから持ってきたんだ?」

景真は答えなかった。

蓮は続ける。

「誰かの店から奪ったのか? 誰かが必要としている物まで、勝手に持ち出したのか?」

「細かいことだ」

「細かくない!」

蓮の声が洞窟に響いた。

「必要な人に届けることと、誰かの必要なものを奪うことは違う!」

景真の顔から笑みが消えた。

「お前には分からない。世界を変えるためには、犠牲が必要なのだ」

「犠牲になる人間に、ちゃんと説明したのか?」

景真は黙った。

その沈黙が、答えだった。

          ◇

そのとき、扉の向こうから別の声が聞こえた。

『景真……』

景真の肩がぴくりと動いた。

『もう、やめなさい』

「……黙れ」

『お前は、また同じ過ちを繰り返すのか』

「黙れと言っている!」

景真が杖を振り上げた。

黒い霧が扉にぶつかる。

すると、扉の表面に一瞬だけ人影が浮かび上がった。

古い衣服を着た男。

その顔は、蓮が記録で見た初代当主・佐伯一郎によく似ていた。

「一郎……?」

蓮が呟く。

だが、人影はすぐに消えた。

景真は苦しそうに顔を歪めた。

「お前まで、私を否定するのか……!」

「景真。お前は、何をそんなに恐れているんだ?」

蓮の問いに、景真は顔を上げた。

「何?」

「世界を変えたいだけなら、どうして記憶を奪う? どうして人に黙って商品を運ぶ? どうして、境界を壊してまで力を手に入れようとする?」

蓮は景真を見つめた。

「本当は、何かを失うのが怖いんじゃないのか?」

景真の目が揺れた。

ほんの一瞬。

彼の表情に、怒りでも憎しみでもないものが浮かんだ。

悲しみ。

しかし、次の瞬間には、それも消えていた。

「……余計なことを」

景真は杖を強く握った。

「もういい。お前には、私の計画を止められない」

黒い光が爆発した。

洞窟の床が大きく割れる。

「きゃあっ!」

リナが足を滑らせた。

「リナ!」

蓮が駆け寄ろうとする。

だが、狼王が先に飛び出した。

「任せろ!」

狼王はリナを抱き上げ、安全な場所へ跳び移った。

ミリアは防御魔法を展開し、セレナは蓮をかばうように前へ出る。

「蓮様、下がってください!」

「でも、景真が!」

「あなたが倒れたら、誰がこの境界を守るのですか!」

その言葉に、蓮は歯を食いしばった。

そうだ。

今、無理に景真へ突っ込めば、全員が危険になる。

まずは生きて帰ること。

そして、境界を止める方法を見つけること。

蓮はスマートフォンを操作した。

【第一境界の封印】

【制御可能性:検出】

【必要条件:三つの交易標】

「三つの交易標……?」

画面に、三つの地点が表示された。

北方交易路。

旧交易所。

そして――

竜王国の王都。

蓮は息をのんだ。

第一境界を止めるには、三つの場所にある交易標を起動させなければならない。

「そういうことか……!」

景真が驚いた顔をした。

「なぜ、それが見える!?」

「お前が封印を壊そうとしたからだろ!」

蓮は画面を掲げた。

「俺は境界を開くためじゃない。守るために使う!」

景真は歯を食いしばった。

「ならば、三つの交易標をすべて集めてみろ」

黒い霧が彼の体を包む。

「ただし、覚えておけ。時間は残されていない」

景真は扉の向こうへ消えた。

同時に、洞窟の揺れが激しくなった。

【第一境界】

【封印解除進行中】

【進行率:68%】

「六十八パーセント!?」

蓮は叫んだ。

「止まったんじゃなかったのか!」

ミリアが顔を青ざめさせる。

「一時的に抑えただけです! 早くここから出ましょう!」

狼王が全員を急かした。

「走れ! 洞窟がもたぬ!」

一行は崩れ始めた洞窟を駆け抜けた。

そして、外へ飛び出した直後。

背後で、巨大な音が響いた。

ドォォォン!

山の奥から黒い光が天へ伸びる。

雪崩が斜面を駆け下りてきた。

「走れぇぇぇ!」

蓮たちは必死に山道を駆け下りた。

セレナが蓮の手を握る。

「絶対に離しませんからね!」

「今は本当に助かります!」

「今は、ということは、後では妻として――」

「その話はあと!」

全員が雪煙の中を逃げ続けた。

          ◇

夕方。

どうにか山を下りた蓮たちは、北方交易都市の近くで足を止めた。

全員、泥と雪まみれだった。

狼王は不満そうに毛を振る。

「……飯だ」

「第一声がそれ!?」

蓮は思わず叫んだ。

だが、誰も笑わなかった。

スマートフォンに表示された数字が、全員の目を引いていた。

【第一境界】

【封印解除進行率:68%】

【残された交易標:3】

【次の崩壊予測:不明】

ミリアが静かに言った。

「私たちが動かなければ、境界は開いてしまう……」

蓮は頷いた。

「まずは北方交易路の交易標を探そう。その次に旧交易所。そして王都だ」

リナが地図を握りしめる。

「三つすべてを起動させれば、封印を守れるんですね」

「そう信じるしかない」

蓮は遠くの山を見た。

黒い光は、まだ消えていなかった。

景真は、世界を変えたいと言った。

その言葉の中に、かつて本当に誰かを救いたかった気持ちがあったのかもしれない。

だが、今の彼は違う。

人の記憶を奪い、欲望を利用し、世界の均衡を壊そうとしている。

「必ず止める」

蓮は鍵を握りしめた。

「俺は商人だ。世界を壊してまで儲けるつもりはない」

そのとき、スマートフォンが鳴った。

【緊急通知】

【北方交易都市にて境界反応を確認】

【異常地点:中央市場】

「……え?」

蓮は顔を上げた。

山から離れたはずなのに。

なぜ、街で境界反応が起きている?

画面に、新たな警告が表示された。

【物資の大量転送を検知】

【対象:北方交易都市・中央市場】

蓮は息をのんだ。

「まさか……街でも始まったのか!?」

そして、遠くの市場から。

人々の悲鳴が聞こえ始めた。

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