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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第25話 北方交易路の異変! 佐伯家を狙う謎の商人

翌朝。

蓮たちは、北方交易都市の北に広がる街道へ向かっていた。

目的は、スマートフォンが検知した境界異常の調査。

「……本当に行くんですね」

ミリアが不安そうに地図を見つめる。

「ああ。昨日の竜王城の宴で、境界の異常が出た」

蓮はスマートフォンを確認した。

【境界警告】

【物資の過剰流入を確認】

【異常地点:北方交易路】

【原因:不明】

「商売が成功した直後に、これか……」

「蓮様の商売が繁盛するのは喜ばしいことですが、危険があるなら私が守ります!」

セレナが胸を張る。

「ありがとうございます。でも、無茶はしないでくださいね」

「妻として当然です♡」

「まだ妻じゃありません!」

「そのうちです♡」

「そのうちもありません!」

リナがくすくす笑った。

「二人とも、こんなときまで元気ですね」

「俺は真剣なんだけどな……」

狼王が鼻を鳴らす。

「騒ぐな。妙な匂いがする」

その言葉に、全員が足を止めた。

街道の先。

本来なら商人や荷馬車で賑わっているはずの場所に、人影がない。

道の両側には、黒ずんだ草が広がっていた。

そして、地面には奇妙な跡が残っている。

「これは……車輪の跡?」

リナがしゃがみ込んだ。

「かなり重い荷物を運んでいるみたいです」

ガルドから教わった交易の知識を思い出しながら、蓮は地面を確認した。

「でも、おかしいな。普通の荷馬車なら、ここまで地面が沈まない」

ミリアが魔力を探る。

「この場所、境界の魔力が乱れています」

「つまり、誰かがここで物資を運んでいる?」

「おそらく……ただの荷馬車ではありません」

そのときだった。

ピコン!

スマートフォンが震えた。

【境界反応を検知】

【佐伯家の商業紋章を確認】

【警告:正規登録のない接続】

「佐伯家の商業紋章……?」

蓮は画面を凝視した。

「俺たち以外にも、境界を使って商売している人間がいるのか?」

狼王が低く唸る。

「いるとしても、まともな使い方ではないようだな」

          ◇

街道の奥に、小さな倉庫があった。

扉は半開き。

中から、何かを引きずる音が聞こえてくる。

「誰かいる……」

リナが小声で言った。

蓮たちは物陰から中を覗いた。

そこには、見たこともない品物が山積みになっていた。

大量の食料。

衣服。

金属製の道具。

そして――日本語が印刷された段ボール箱。

「……うそだろ」

蓮は思わず声を漏らした。

箱には見覚えがあった。

日本の通販で使われているような梱包箱。

その一つに、蓮が普段利用している店の配送ラベルと、よく似た表示があった。

「日本の商品……?」

ミリアが驚く。

「蓮さんが持ち込んだものではないんですか?」

「違う。俺はこんな大量の商品を注文していない」

しかも、商品は雑然と積まれていた。

必要なものを必要なだけ届ける。

佐伯家に伝わる商売の原則とは、正反対だった。

その瞬間。

「そこで何をしている?」

背後から声がした。

振り返ると、黒い外套を着た男が立っていた。

年齢は四十歳前後。

手には銀色の杖。

胸元には、見覚えのある紋章が刻まれていた。

佐伯家の商業紋章。

ただし――

中央部分が黒く塗りつぶされている。

「その紋章……」

蓮が一歩前に出た。

「あなたは誰ですか?」

男は薄く笑った。

「その質問をするということは、お前が佐伯蓮か」

「なぜ俺の名前を知っている?」

「知っていて当然だ」

男は蓮のスマートフォンを見た。

「境界を自由に行き来できる商人。異世界の商品を売り、各地の市場を変えている男」

「……誰から聞いた?」

「お前は、我々にとって邪魔な存在なのだ」

セレナが蓮の前に立った。

「蓮様に近づかないでください」

男は彼女を無視した。

「佐伯家は、かつて世界をつなぐ力を独占していた」

「独占なんかしていない!」

蓮は反論した。

「必要なものを届けるために使っていたんだ」

「きれいごとだな」

男は笑った。

「物が流れれば金が動く。金が動けば権力が生まれる。ならば、境界を使って世界中の商品を集めればいい」

「それじゃ、境界が壊れる!」

「壊れる前に、利益を得ればいい」

その言葉に、蓮は拳を握りしめた。

この男は、境界が不安定になる危険を知っている。

知ったうえで、利用しているのだ。

          ◇

「一つ聞かせてください」

蓮は男をまっすぐ見た。

「その紋章は、どこで手に入れたんですか?」

男の笑みが消えた。

ほんの一瞬。

だが、蓮は見逃さなかった。

「……お前には関係ない」

「関係あります。佐伯家の記録には、境界を悪用した者がいたと書かれていました」

「記録?」

男の目が細くなる。

「誰から聞いた?」

「それは、あなたが答えたら教えます」

男は黙った。

そして、杖を地面に打ちつけた。

ドンッ!

倉庫の奥に、黒い光が走った。

積み上げられた商品が、次々と消えていく。

「待て! 何をしている!」

蓮が駆け出そうとした瞬間、狼王が腕をつかんだ。

「行くな!」

「でも、商品が!」

「商品より命だ!」

狼王の声が響く。

次の瞬間、倉庫の壁に亀裂が走った。

空間そのものが、裂け始めていた。

「境界が開いている……!」

ミリアが叫ぶ。

「このままでは、倉庫ごと崩壊します!」

男は亀裂の前に立った。

「次に会うときは、もっと大きな商売を見せてやろう」

「待て!」

蓮が叫ぶ。

「お前は何者だ!」

男は振り返り、冷たく笑った。

「いずれ分かる。佐伯家の血を引く者よ」

そして――

男の姿が黒い光に包まれた。

消えた。

同時に、倉庫の亀裂が広がっていく。

「全員、外へ!」

蓮の声で、一行は倉庫から飛び出した。

直後。

轟音とともに、倉庫が崩れ落ちた。

黒い霧が空へ舞い上がる。

スマートフォンが激しく振動した。

【境界異常:拡大】

【接続先:不明】

【佐伯家の鍵――反応あり】

蓮は画面を見つめた。

「鍵……?」

すると、崩れた倉庫の瓦礫の中で、何かが光った。

蓮は慎重に近づき、小さな金属片を拾い上げた。

古びた銀色の鍵。

その持ち手には、佐伯家の紋章が刻まれていた。

しかし、裏側には見知らぬ文字が刻まれている。

『第一境界の封印を解く者へ』

「……第一境界?」

蓮の脳裏に、初代当主・佐伯一郎の記録がよみがえった。

最初に開かれた境界。

閉じられなかった扉。

そして、北方の山に眠る秘密。

すべてが、一本の線でつながり始めていた。

「蓮様……」

セレナが心配そうに声をかける。

蓮は鍵を握りしめた。

「この男を放っておけない」

「危険ですよ」

ミリアが言った。

「分かってる」

蓮は頷く。

「でも、あいつが境界を悪用し続ければ、世界中の交易が壊れる。俺の店だけの問題じゃない」

狼王が牙を見せた。

「ならば追うまでだ」

リナは地図を広げた。

北方の山。

そこに記された古い印が、淡く光っている。

「この鍵……山の印と反応しています」

スマートフォンが鳴った。

【新規目的地を確認】

【北方山岳地帯】

【第一境界への手がかり:更新】

【警告:封印への接近は危険】

蓮は深く息を吸った。

商売を続けるためにも。

佐伯家が守ってきたものを知るためにも。

そして、世界を壊そうとしている商人を止めるためにも。

「北の山へ行こう」

セレナがすぐに頷く。

「もちろん、妻として同行します♡」

「……今はその話をしてない!」

狼王が豪快に笑った。

だが、誰も気づいていなかった。

倉庫の瓦礫の下。

黒く塗りつぶされた佐伯家の紋章が、ゆっくりと光り始めていたことに。

そして遠く離れた北方の山では――

封印された扉の向こうから、再び声が響いていた。

「鍵が戻ったか……」

「ならば、始めよう」

「佐伯家最後の商人を迎える準備を」

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