第24話 竜王城の宴! 日本のチキンとポテチで貴族たちが陥落!
竜王国・王城。
「蓮! 待っておったぞ!」
竜王が満面の笑みで出迎えてくれた。
「今日はよろしくお願いします」
俺たちが運び込んだのは、コーラ、缶ビール、ケンタッキーフライドチキン。そして――新商品のポテトチップスだ。
「それが噂の新商品か?」
竜王がポテトチップスの袋を指差した。
「はい。日本ではおなじみのお菓子です」
「ほう……。薄い袋だな」
「中身はもっと大切ですよ」
俺が袋を開けた瞬間、パリッという音がした。
竜王の目が光る。
「今の音は何だ?」
「ポテトチップスの音です」
「……早く食べさせろ」
「竜王様、今日は宴の主催者でしょう!」
「主催者にも試食する権利はある!」
そう言い切る竜王に、俺は苦笑した。
◇
宴が始まった。
豪華な料理が並ぶ大広間。
貴族たちは、見慣れない商品を興味深そうに眺めていた。
「これが異世界の食べ物か?」
「竜王様がわざわざ用意させたらしいぞ」
「まずは、この鶏肉からどうぞ」
俺がフライドチキンを勧める。
一人の貴族が、おそるおそるかじった。
カリッ。
ジュワッ。
「……うまい!」
その声を合図に、あちこちで歓声が上がった。
「この香辛料は何だ!」
「肉が柔らかい!」
「もう一ついただけるか?」
騎士たちも負けていない。
「これ、訓練のあとに食べたい!」
「遠征のときにも欲しいな!」
俺は笑顔で答えた。
「継続して仕入れられるよう、販売方法を考えますよ」
そこへ竜王が割り込んだ。
「待て! 余の分も残しておけ!」
「竜王様、まだ山ほどあります!」
「ならば問題ない!」
問題はある。
このままでは竜王が全部食べかねない。
◇
続いて、ポテトチップスを配った。
「こちらは薄く切ったじゃがいもを揚げたお菓子です。まずは塩味からどうぞ」
貴族の女性が一枚つまむ。
パリッ。
「まあ……!」
もう一枚。
パリッ。
「軽くて食べやすいですわ!」
隣の貴族も手を伸ばす。
「こちらは何味だ?」
「コンソメ味です」
「こんそめ?」
「肉や野菜の旨味を感じる味付けですね」
ひと口食べた貴族は、目を丸くした。
「これは酒にも合いそうだ!」
「ビールと一緒に食べるとおいしいですよ」
その言葉に、酒好きの貴族たちが反応した。
「ビールを持ってきてくれ!」
「私にも!」
「コーラも忘れるな!」
あっという間にテーブルの周囲に人が集まる。
パリッ、パリッ、パリッ。
大広間のあちこちから、ポテトチップスを食べる音が響いた。
ミリアが小声で言った。
「蓮さん……。皆さん、会話より食べることに夢中です」
「うん。予想以上だな」
リナも袋を抱えている。
「蓮さん、のり塩味はありませんか?」
「リナまでハマってる!」
狼王は三種類の袋を並べ、真剣に食べ比べていた。
「塩味は基本。コンソメは濃厚。そして、のり塩は香りがいい……」
「狼王、評論家みたいになってるぞ!」
「どれも捨てがたい」
「全部好きなんですね!」
狼王は堂々と頷いた。
「当然だ!」
◇
宴も終盤。
竜王が俺を呼び止めた。
「蓮。今日の品々、王城でも正式に取り扱いたい」
「本当ですか?」
「うむ。コーラとビールは宴や酒場向けに、チキンとポテトチップスは食事や軽食向けに需要があるだろう」
俺はすぐに頷かなかった。
「ありがとうございます。ただ、仕入れられる数量には限りがあります。安定して届けられる量を確認してから契約しましょう」
竜王は満足そうに笑った。
「よい答えだ。商売は無理をして続けるものではないからな」
ガルドも頷いた。
「納品量と価格を決め、まずは試験的に契約するのがよさそうだ」
こうして、王城との正式な商談が始まることになった。
大きな取引だ。
だが、俺はそれ以上に嬉しかった。
日本では身近な商品が、この世界の人たちを笑顔にしている。
それが商売の面白さだ。
◇
宴が終わり、店へ戻ろうとしたとき。
スマートフォンが突然鳴った。
ピコン、ピコン!
【警告】
【境界反応を検知】
【発生地点:北方交易路】
【接続状態:不安定】
「……何だ?」
俺は画面を見つめた。
北方交易路。
以前、佐伯家の痕跡が見つかった北の山へ続く道だ。
ミリアが表情を変えた。
「蓮さん、また境界に異変が起きたんですか?」
「まだ分からない。でも、普通の反応じゃない」
画面に、さらに文字が浮かび上がる。
【警告:物資の過剰流入を確認】
【境界崩壊までの猶予――不明】
俺は息をのんだ。
商売が広がること自体は悪くない。
けれど、誰かが境界を利用して大量の物資を流し込んでいるのだとしたら?
ガルドが静かに言った。
「蓮。調べる必要があるな」
「ああ」
俺はスマートフォンを握りしめた。
「明日、北方交易路へ向かおう」
狼王が立ち上がった。
「ならば我も行く」
ミリアとリナも頷いた。
セレナは、いつもの笑顔で俺の隣に立った。
「もちろん、私も同行します。妻として♡」
「だから妻じゃない!」
いつもなら笑って済ませるやり取り。
だが今回は、俺の胸に不安が残っていた。
境界の異変は、ただの事故なのか。
それとも、佐伯家の秘密を知る誰かが動き始めたのか。
俺たちはまだ知らない。
北方交易路の先で、商売を根本から揺るがす事件が待っていることを。




