第23話 竜王城から大量注文! 異世界宴会ビジネス始動!
「蓮! 注文が入ったぞ!」
朝、店に駆け込んできたのはガルドだった。
「どうしたんですか?」
「竜王城から正式な注文だ!」
ガルドが帳簿を広げる。
「コーラ、缶ビール、そしてフライドチキン。次の王城の宴で使いたいそうだ」
「……本当に注文が来たんですか?」
「ああ。しかも、かなりの量だ」
俺は思わずスマートフォンを取り出した。
昨日、竜王がチキンを食べて大喜びしていたのは知っている。
だが、まさか本当に王城の宴で出すことになるとは。
「これは大仕事だな……」
「そうだ。だからこそ、失敗はできん」
ガルドが真剣な顔をした。
「納品数、保管場所、運搬方法。全部確認する必要がある」
「よし。まずは注文内容を整理しよう!」
俺たちはさっそく準備を始めた。
◇
今回の注文は、いつもの店頭販売とは違う。
王城の宴には大勢の貴族や騎士が集まる。
商品が足りなければ大問題。
逆に、仕入れすぎれば保管や費用が無駄になる。
「チキンは、宴の人数に合わせて数量を決めよう」
俺が言うと、ガルドが頷いた。
「飲み物も同じだ。コーラは多めに用意してもいいが、ビールは飲む人数を確認する。未成年には出さず、飲みすぎにも注意してもらう必要がある」
「さすがガルド。頼りになるな」
「当たり前だ。お前は仕入れと商品管理に集中しろ」
そこへミリアとリナがやってきた。
「私たちにも手伝わせてください」
「もちろん!」
ミリアには商品の確認、リナには納品リストの整理をお願いした。
セレナも当然のように現れた。
「蓮様、私も参加します♡」
「ありがとうございます。今回は王城への納品なので、助かります」
「では、蓮様の隣で作業を……」
「普通に納品リストをお願いします!」
「はい♡」
こうして、俺たちの臨時チームが結成された。
◇
昼過ぎ。
必要な数量を確認し、俺はスマートフォンで注文を進めた。
フライドチキンは、販売用とは別に宴会用として手配する。
コーラと缶ビールも、注文数を間違えないように確認した。
「よし、これで準備は進められる」
ところが――。
ピコン。
スマートフォンに通知が表示された。
【新規商業提携の問い合わせ】
【ヴェルティア商会】
【ワイン販売に関する相談希望】
「……今度はヴェルティアさんか」
昨日、ワインに感動していた彼女を思い出す。
本拠地へ戻ると言っていたが、さっそく動き始めたらしい。
俺は返信を送った。
『ワインの取り扱いについては、種類や仕入れ条件を確認してから相談しましょう』
すぐに返事が来た。
『承知いたしましたわ。チョコレートの販売計画も添えてお送りします♡』
「やっぱりチョコもセットなんだな……」
ミリアが笑った。
「ヴェルティアさんらしいですね」
「まあ、商売に熱心なのはいいことだ」
◇
その日の夕方。
王城から、宴の準備に関する詳しい連絡が届いた。
竜王からの伝言も添えられている。
『蓮よ。チキンを楽しみにしている。コーラも忘れるな。ビールは余の分も用意しておけ』
「……竜王様、自分の分を最初に確保してる」
ガルドが呆れた。
「王様も人間……いや、竜族か。うまいものには弱いんだな」
「そうみたいだ」
俺は笑いながら、納品リストにチェックを入れた。
準備は順調。
だが、ひとつ気になることがあった。
王城の宴に出す料理は、フライドチキンだけでいいのだろうか?
「せっかくなら、もう一つ何か用意したいな」
「何を出すつもりだ?」
ガルドが尋ねる。
俺は少し考え、スマートフォンを開いた。
「……甘いものだな」
「甘いもの?」
「宴の最後に、みんなが喜ぶデザートを出そう」
頭に浮かんだのは、日本でおなじみのお菓子だった。
チョコレートとは違う。
ケーキとも違う。
小さくて、手軽に食べられて、種類も豊富。
俺は商品を検索しながら笑った。
「よし。次はこれを持ち込もう」
ミリアが画面を覗き込む。
「蓮さん、それは何ですか?」
「日本で人気のお菓子だよ」
俺は顔を上げた。
「王城の宴で、みんなに試してもらおう」
その瞬間、スマートフォンに新しい商品画像が表示された。
ポテトチップス。
サクサクの薄いじゃがいも。
塩味、コンソメ味、のり塩味。
「……これなら、チキンのあとにも食べられるな」
狼王がいつの間にか背後に立っていた。
「今、肉の話をしたか?」
「してません!」
「では、その袋は何だ?」
「ポテトチップスです」
「食べ物か?」
「はい」
狼王は真剣な顔で頷いた。
「ならば、試食が必要だ」
「まだ仕入れてないから!」
ガルドが腹を抱えて笑った。
「蓮。宴の前に、また新しいファンが増えそうだな」
「……そうだな」
俺はスマートフォンを見つめた。
王城への大量納品。
ヴェルティアとの新しい商談。
そして、新商品の試験販売。
商売は、少しずつ大きくなっている。
だが――。
俺はまだ知らなかった。
ポテトチップスが、この世界の食文化を大きく変えることになるとは。
そして、その最初の犠牲者が――
狼王になることを。




