↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
PR
127/135

第22話 竜王、ビールとコーラに陥落! ヴェルティアはワインで陥落!?

竜王国・王都。

「蓮! 余にも飲ませろ!」

朝から店の前に、とんでもない人物が現れた。

竜王である。

しかも、護衛を引き連れている。

「……竜王様?」

俺は思わず目をこすった。

「どうしてここに?」

「聞いたぞ!」

竜王が店のカウンターをバンッと叩いた。

「お前が、シュワシュワする飲み物と黄金色の酒を売り始めたそうだな!」

「コーラとビールですね」

「そうだ! 王城の兵士たちが噂しておったのだ。あれは素晴らしい飲み物だと!」

「兵士たち、もう飲んだんですか?」

「うむ。お前の店で購入した者がおったらしい」

情報が広がるのが早すぎる。

竜王は腕を組み、堂々と宣言した。

「余にも用意しろ!」

「販売していますから、もちろんです」

「それから――」

竜王の目が鋭くなった。

「鶏肉の揚げ物もあるのだろう?」

「……まさか」

「ケンタッキーフライドチキンだ!」

竜王、完全に知っていた。

「なぜ商品名まで知っているんですか!」

「狼王が自慢しておった!」

あの狼王!

肉の話になると、宣伝までしてくれるらしい。

「余は竜王だ。王城で食べるものには困っておらぬ」

竜王は真剣な顔で続けた。

「だが、狼王が『肉の神が降臨した』と言うのだ。確かめぬわけにはいかん!」

「その評価、竜王様まで信じたんですか……」

「当然だ!」

どこが当然なのか分からない。

          ◇

俺は店の奥に、特別な席を用意した。

今回は販売用ではなく、竜王へのおもてなしだ。

テーブルに並べたのは――

ケンタッキーフライドチキン。

コーラ。

そして、冷えた缶ビール。

「こちらがコーラです。こちらがビール。そして、これがフライドチキンです」

竜王はチキンをじっと見つめた。

「これが……狼王を夢中にさせた肉か」

「はい」

「では、いただこう」

竜王がチキンを一口かじった。

カリッ。

ジュワッ。

「…………」

沈黙。

俺は少し心配になった。

「竜王様?」

竜王はゆっくりとチキンを置いた。

「蓮」

「はい」

「余は今まで、王として数多くの料理を食べてきた」

「そうでしょうね」

「高級な肉。伝説の魚。魔法で熟成させた料理……」

「はい」

「だが――」

竜王はチキンを持ち上げた。

「この衣は何だ!」

「衣です!」

「外は香ばしく、中は肉汁があふれる! しかも、この香辛料!」

竜王はもう一口食べた。

「うまい!」

その声は、王城に響き渡るような大音量だった。

「おかわりはあるか!」

「ありますけど、落ち着いてください!」

竜王は二個目に手を伸ばした。

そして、コーラを飲む。

ゴクッ。

シュワシュワッ。

「……!」

竜王の目が見開かれた。

「何だ、この爽快感は!」

「炭酸飲料です」

「甘い! 冷たい! そして、肉を食べたあとに飲むと最高ではないか!」

「そうなんです!」

俺は嬉しくなった。

竜王はコーラをもう一口飲み、満足そうに頷いた。

「これは王城に常備するべきだ」

「えっ?」

「コーラを定期的に納品してくれ!」

「ありがとうございます!」

商談成立。

さらに竜王は、ビールの缶を手に取った。

「こちらは大人向けの酒だな」

「はい。飲みすぎには注意してくださいね」

「分かっておる」

竜王はグラスに注ぎ、一口飲んだ。

「……ほう」

泡の感触と、冷たい喉越し。

竜王はしばらく味わってから、静かに言った。

「これも悪くない」

「気に入っていただけましたか?」

「うむ。だが、余はこれをチキンと一緒に楽しみたい」

「最高の組み合わせですよ」

竜王は満足そうに笑った。

「決めた。次の王城の宴では、チキンとコーラを用意する!」

「王城の宴にケンタッキーですか!?」

「何か問題があるか?」

「いえ……ありません!」

竜王が本気なら、俺に断る理由はない。

ただし、注文数はきちんと確認しなければ。

          ◇

そのとき。

店の入口から、聞き覚えのある声がした。

「……楽しそうですわね」

振り向くと――

ヴェルティアが立っていた。

「ヴェルティアさん!」

「お久しぶりです、蓮様」

彼女は優雅に微笑んだ。

以前、チョコレートに夢中になった末、チョコレート専属商人になると言い張った女性だ。

本拠地へ帰ったはずなのに、また戻ってきたらしい。

「本拠地へ帰ったんじゃなかったんですか?」

「ええ。商売の準備は進めていますわ」

ヴェルティアは胸を張った。

「ですが、こちらで新しい飲み物とお肉が流行していると聞きまして」

「……情報が早いですね」

「商人ですもの」

彼女はテーブルを見渡した。

「それで、こちらが噂のフライドチキン?」

「はい」

「コーラもあるのですね」

「ありますよ」

ヴェルティアは興味深そうにチキンを一つ手に取った。

上品に一口。

「……おいしい」

二口目。

「衣が香ばしくて、中は柔らかい……」

三口目。

「蓮様。これは美味しすぎて止まらないですわ」

「えっ、?」

「食べる手が止まりませんもの」

「狼王と同じことを言ってる!」

ヴェルティアはコーラも一口飲んだ。

「こちらも不思議な味ですわね。甘くて、刺激があって……」

「気に入りました?」

「ええ。でも――」

彼女は優雅に微笑んだ。

「私が本当に興味を持ったのは、別の商品ですわ」

「別の商品?」

ヴェルティアは俺をまっすぐ見た。

「ワインはございますか?」

「ありますよ。日本のワインも、仕入れられるものがあります」

「ぜひ、拝見したいですわ」

          ◇

俺はスマートフォンで、日本のワインを注文した。

赤ワインと白ワイン。

そして、少量のロゼワイン。

今回は試飲用だ。

「こちらが赤ワインです」

俺はグラスに少しだけ注いだ。

ヴェルティアはグラスを持ち上げ、色と香りを確かめる。

そして、一口。

「…………」

「どうですか?」

彼女は目を閉じた。

「……なんて、奥深い味わい」

もう一口。

「果実の香りと、落ち着いた余韻……」

さらに、白ワインも試す。

「こちらは爽やかで、また違った魅力がありますわね」

俺は笑った。

「気に入ってもらえたようですね」

だが、ヴェルティアは真剣だった。

「蓮様」

「はい?」

「私はこれまで、チョコレートこそ至高の存在だと思っておりました」

「はい……」

「しかし、ワインも素晴らしいですわ」

彼女は赤ワインのグラスを見つめた。

「香りを楽しみ、味を楽しみ、料理との組み合わせを考える……」

そして、フライドチキンを一口食べ、ワインを少し味わった。

「……ああ」

ヴェルティアが天井を見上げた。

「新しい世界が見えましたわ」

「またですか!?」

以前は生チョコで別世界へ行っていた。

今度はワインである。

ヴェルティアはグラスをそっと置いた。

「蓮様。お願いがあります」

「何でしょう?」

「チョコレートに加えて、ワインの販売にも関わらせてください!」

「ええっ!?」

「本拠地に戻ったら、チョコレートとワインの専門商売を始めますわ!」

「事業を増やすのが早い!」

ヴェルティアは真剣な顔で頷いた。

「もちろん、ワインは適切な年齢の方にだけ販売します。飲みすぎにも注意を促しますわ」

「そこはしっかりお願いします」

「ええ。商売は信用が第一ですもの」

その言葉に、俺は少し感心した。

チョコレートに夢中になると少々大変だが、ヴェルティアは根っからの商人なのだ。

「販売の提携については、本拠地に戻ってから相談しましょう」

「ありがとうございます、蓮様!」

彼女は嬉しそうに笑った。

そして、ふと付け加えた。

「ところで、ブランデーボンボンの新作は?」

「……やっぱりチョコも忘れてないんですね」

「当然ですわ♡」

          ◇

その日の夕方。

竜王は王城への納品契約を進めることになり、ヴェルティアもワインの取引について話を詰めることになった。

店の奥では、ガルドが帳簿を開いていた。

「蓮。今日は大物が二人も来たな」

「竜王様とヴェルティアさんだからね……」

「コーラとビールは王城へ。ワインはヴェルティアの本拠地へ。チキンも宴の注文が入るかもしれん」

「一気に話が広がったな」

俺はスマートフォンを確認した。

【商業提携候補】

【竜王国王城:飲料・食品】

【ヴェルティア商会:チョコレート・ワイン】

【新規需要:拡大中】

「よし。仕入れと納品の計画を立てないとな」

ミリアが微笑んだ。

「蓮さんの商売は、どんどん大きくなりますね」

「ありがたいけど、忙しくなるなあ」

そのとき、店の外から竜王の声が聞こえた。

「蓮! 次の宴では、チキンをもっと用意してくれ!」

続いて、ヴェルティアの声。

「私にはワインと新作チョコレートをお願いしますわ!」

俺は両手で顔を覆った。

「……誰か、俺に休みをください」

狼王が通りかかり、堂々と言った。

「休む前に肉だ!」

「狼王まで!」

店内に笑い声が響いた。

こうして――

竜王はコーラとビール、そしてフライドチキンに陥落。

ヴェルティアはワインの魅力に陥落した。

日本の商品が、また一つ異世界の商売を変えようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。