第21話 缶ビール&コーラ販売開始!
異世界の乾杯ブームが止まらない!
竜王国・王都。
「蓮! コーラはまだか!」
朝一番。
店の扉を開けた瞬間、狼王が飛び込んできた。
「おはようございますより先に、それですか!」
「昨日のコーラが忘れられぬ!」
「狼王、昨日あれだけ飲んだでしょう!」
「だからだ!」
何が「だから」なのか分からない。
その後ろには、冒険者たちが並んでいた。
「蓮さん、あの黒い炭酸飲料を売るって本当ですか?」
「黄金色の酒もあるんだろ?」
「俺はコーラが欲しい!」
「俺はビールだ!」
……大変なことになっていた。
俺はため息をつきながらスマートフォンを取り出した。
「分かりました。販売しましょう!」
「「「おおおおおっ!」」」
店の前に歓声が響いた。
◇
「まずは商品を決めよう」
俺はテーブルに商品を並べた。
缶コーラ。
缶ビール。
今回は、身内だけのパーティーとは違う。
お客様に販売する商品だ。
「コーラは子どもから大人まで楽しめる。ビールは大人向けだ」
ミリアが頷いた。
「販売する場所を分けた方がよさそうですね」
「そうだな。ビールは年齢や飲酒ルールを確認して、酒場を中心に販売しよう」
ガルドが帳簿を開いた。
「コーラは食堂や冒険者ギルドにも売れる。ビールは酒場との契約がよさそうだな」
「さすがガルド。話が早い」
「商売のことなら任せろ」
ガルドは自信満々だった。
そこへセレナがやってきた。
「蓮様、私もお手伝いします♡」
「ありがとうございます」
「では、私がビールの販売を担当します」
「……セレナさん、お酒は飲めますか?」
「販売するのと飲むのは別です」
「それはそうですね」
セレナはにっこり笑った。
「でも、蓮様と乾杯するのは大歓迎です♡」
「話が戻ってる!」
◇
販売開始の時間になった。
店の前には、コーラとビールを並べた特設売り場を設置した。
看板には大きく書いてある。
『日本の炭酸飲料・コーラ』
『冷えた缶ビール・販売開始』
「それでは、販売を始めます!」
俺の声と同時に、お客様が集まった。
「これがコーラか!」
「昨日飲んだやつだ!」
「缶に入っているのか。便利だな!」
俺は缶を一本手に取った。
「開けるときは、ここを引いてください」
プシュッ!
「おおっ!」
小さな音に、周囲がざわついた。
俺はグラスに注いで見せた。
シュワシュワシュワ……。
黒い液体から泡が立ち上る。
「では、どうぞ!」
最初のお客様は、冒険者の男性だった。
ゴクッ。
「…………」
「どうですか?」
男性は缶を見つめた。
そして――
「うまい!」
「ありがとうございます!」
「甘いのに、口の中がスッキリする! 肉料理にも合いそうだ!」
その言葉を聞いた別の冒険者が、すぐに手を挙げた。
「俺にも一本!」
「私も!」
「家族へのお土産に三本くれ!」
あっという間にコーラが売れていく。
リナが驚いた。
「蓮さん、すごい人気です!」
「昨日のパーティーで、味は知られてるからな」
「口コミってすごいですね」
「本当にそうだな」
俺は笑った。
◇
続いて、缶ビールの販売だ。
ただし、ビールは大人向け。
俺は販売担当のガルドに説明した。
「飲酒できる年齢かどうかを確認して、未成年には販売しないこと。飲みすぎにも注意してもらう。酔っている人にも売らないようにしよう」
「分かった。酒場の連中にも徹底させる」
ガルドは真剣な顔で頷いた。
最初のお客様は、近くの酒場の店主だった。
「これが昨日の酒か?」
「そうです。缶に入っているので、持ち運びも簡単ですよ」
「ほう……」
店主は缶を受け取り、開け方を確かめた。
プシュッ!
「おお、面白い!」
グラスに注ぐと、黄金色の液体と白い泡が現れた。
店主は香りを確かめ、一口飲んだ。
「……なるほど」
ガルドが尋ねる。
「どうだ?」
店主はゆっくりと頷いた。
「冷たくて、うまい。これなら酒場でも出せる」
「本当ですか?」
「ああ! 蓮、うちの店に卸してくれないか?」
「もちろん、条件を相談しましょう!」
商談成立の第一歩だ。
それを見ていた別の酒場の店主も駆け寄ってきた。
「待て! うちにも卸してくれ!」
「いや、先に俺の店だ!」
「順番にお願いします!」
ガルドが帳簿を開く。
「よし。各店舗の注文数と納品日を決めよう。無理な量は受けないぞ」
「ガルド、頼もしいな……」
「商売だからな」
◇
昼過ぎ。
コーラは飛ぶように売れ、ビールも酒場から注文が入った。
俺は売上を確認した。
「……これは、いいぞ」
ミリアが帳簿を覗き込む。
「コーラは個人のお客様に人気ですね。ビールは酒場との契約が大きいです」
「そうだな。一般販売と卸売り、両方で進めよう」
そのとき、店の外から大きな声が響いた。
「蓮! コーラを箱で売ってくれ!」
狼王だった。
「狼王、何本買うつもりですか?」
「まずは一箱!」
「まずは?」
「気に入ったら追加する!」
「絶対に追加する気でしょう!」
狼王はコーラの缶を一本受け取り、満足そうに眺めた。
「この小さな缶に、あの爽快さが詰まっているとは……」
「普通の商品ですよ」
「普通ではない! これは宝だ!」
「宝の基準がおかしい!」
その横で、セレナがコーラを一本手に取った。
「蓮様。私も購入してよろしいですか?」
「もちろんです」
「では、蓮様の分も一緒に買いますね♡」
「ありがとうございます」
「そして二人で乾杯を……」
「普通に飲みましょう!」
セレナは楽しそうに笑った。
◇
夕方。
俺たちは店の奥で、今日の販売結果を整理していた。
コーラは一般のお客様に好評。
ビールは酒場との契約が始まりそうだ。
さらに、ガルドが新しい提案をした。
「蓮。次は食堂や宿屋にも声をかけよう。食事と一緒にコーラを出せば、注文が増えるはずだ」
「いい考えだな」
「ビールは酒場を中心に、納品先を少しずつ増やす。最初から広げすぎると管理が大変だからな」
「さすがだよ、ガルド」
俺はスマートフォンに今後の予定を記録した。
【販売実績】
【コーラ:好評】
【缶ビール:酒場との取引開始】
【次の課題:安定した仕入れと納品管理】
「よし。これから忙しくなりそうだ」
ミリアが微笑む。
「でも、楽しそうですね」
「ああ。日本の商品が、この世界の人たちの暮らしに少しずつ広がっていく。それが商売の面白さだよ」
そのとき、狼王が空になったコーラの缶を掲げた。
「蓮!」
「今度は何ですか?」
「次は、コーラに合う肉を売れ!」
「……結局、肉なんですね」
ガルドが笑った。
「いいじゃないか。次の商品も決まったな」
「まだ決めてません!」
しかし、俺の頭の中では、すでに次の商品候補が動き始めていた。
フライドチキン。
ポテト。
そして、コーラ。
日本ではおなじみの組み合わせが、異世界でも人気になるかもしれない。
俺はスマートフォンを閉じた。
「よし。明日も商売、頑張るか!」
こうして――
異世界に、コーラと缶ビールの新しい商業ルートが生まれた。
そして狼王は、帰り際にもう一度だけ叫んだ。
「蓮! 次は肉だぞ!」
「分かりましたから、今日は帰ってください!」
店に、笑い声が響いた。




