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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第19話 唐揚げの誘惑! 異世界にコンビニ唐揚げファン爆誕!

竜王国・王都。

「……疲れた」

俺、佐伯蓮は店のカウンターに突っ伏していた。

原因は分かっている。

ヴェルティアだ。

ブランデーボンボンをプレゼントした結果、彼女はチョコレート専属商人になりたいと言い出し、販売計画書まで作ってきた。

しかも、チョコレートを食べるたびに別人のようになる。

「チョコレートって、あんなに人を変えるのか……」

「蓮さん、あの方は特別だと思います」

ミリアが苦笑した。

「ですよね……」

俺はスマートフォンを取り出した。

「こういうときは、やっぱり日本の食べ物だな」

取り出したのは――

コンビニの唐揚げ。

袋を開けると、香ばしい匂いが広がった。

「いただきます」

ひと口。

カリッ。

ジュワッ。

「……うまい!」

思わず声が出た。

衣はカリカリ。

中はジューシー。

醤油とニンニクの味がたまらない。

チョコレートもいい。

だが、疲れたときの唐揚げは別格だ。

「蓮、何を食べている?」

狼王が鼻を動かした。

「唐揚げです」

「からあげ?」

「日本のコンビニで売っている、鶏肉の揚げ物ですよ」

俺は袋を差し出した。

「食べます?」

狼王の目が光った。

「当然だ」

一個、口に入れる。

カリッ。

モグモグ。

狼王が動きを止めた。

「…………」

「狼王?」

「もう一個」

「え?」

「もう一個だ」

「気に入ったんですか?」

「いいから、もう一個!」

狼王が珍しく身を乗り出した。

俺は笑いながら唐揚げを渡した。

狼王は二個目を食べると、堂々と宣言した。

「これは肉料理の傑作だ!」

「大げさですよ!」

「大げさではない!」

そこへ、リナがやって来た。

「何の騒ぎ?」

「唐揚げです」

「私も食べたい!」

一個渡す。

リナは口に入れた瞬間、目を丸くした。

「なにこれ! 外はカリカリなのに、中はすごく柔らかい!」

「でしょう?」

「もう一個!」

「狼王と同じことを言ってる……」

ミリアも興味津々で手を伸ばした。

「では、私も一つ」

ひと口食べる。

「……おいしい」

ミリアの表情が緩んだ。

「この香ばしさ、魔法では再現できそうにありませんね」

「魔法で唐揚げを作ろうとしないでください」

「少しだけ研究してみたいです」

「やめて! 唐揚げは普通に食べて!」

店の奥で、ガルドが帳簿を閉じた。

「おい。そんなにうまいなら、俺にも食わせろ」

「ガルド、いつからいたんですか?」

「最初からだ」

「絶対、匂いにつられて来たでしょ!」

ガルドは唐揚げを一つ食べた。

そして、黙った。

「……なるほど」

「どうです?」

「これは売れる」

「感想が商人すぎる!」

ガルドは真剣な顔で続けた。

「酒のつまみにもなる。冒険者の食事にもなる。屋台で売れば行列ができるぞ」

「確かに……」

俺はスマートフォンを確認した。

コンビニの唐揚げ。

異世界で販売するなら、冷凍や保温の方法、衛生管理、価格設定も考えなければならない。

だが、需要はありそうだ。

「よし。まずは少量で試験販売してみるか」

「俺は毎日買うぞ!」

狼王が即答した。

「まだ売ると決めてないから!」

そのとき、店の入口から声がした。

「……何を召し上がっているのですか?」

振り向くと、セレナが立っていた。

「唐揚げです」

「唐揚げ……」

セレナは一つ受け取り、上品にひと口食べた。

次の瞬間。

「……蓮様」

「はい?」

「こちらも、妻として研究する必要があります」

「どうして妻が出てくるんですか!」

「蓮様のお好きな食べ物を知ることは、大切ですから♡」

「だから妻じゃないって!」

セレナは二個目に手を伸ばした。

「これは……危険ですね」

「何がです?」

「一度食べると、止まらなくなります」

「分かります」

結局、みんなで唐揚げを囲むことになった。

狼王は追加を要求し、リナは味付けの種類を尋ね、ミリアは調理方法を分析し、ガルドは販売計画を考えている。

セレナは、なぜか俺の隣を陣取っていた。

「……ただの唐揚げなのに」

俺は空になった袋を見つめた。

日本のコンビニ。

いつでも買える、何気ない食べ物。

それが異世界では、こんな騒ぎになる。

商売の可能性は、まだまだありそうだ。

          ◇

翌朝。

店に一通の手紙が届いた。

差出人は――ヴェルティア。

『蓮様へ。

私は本拠地へ戻ることにいたしました。

チョコレートの販売網を整え、こちらの世界に新しい商売を広げるためです。

ただし、チョコレートの新商品が出た場合は、必ず私にも知らせてください。

特に生チョコとブランデーボンボンについては、最優先でお願いします。

それから、婚約の件は引き続き前向きに検討しております。

ヴェルティア』

「……最後の一文、いらないだろ!」

俺は思わず叫んだ。

ミリアが手紙を覗き込む。

「本拠地へ戻るんですね」

「ああ。チョコレートの商売を本格的に始めるみたいだ」

「少し寂しくなりますね」

「そうだな。騒がしい人だったけど」

その瞬間、スマートフォンが鳴った。

ピコン。

【新規商業ルートの候補を確認】

【ヴェルティア商会・本拠地】

【交易提携の可能性:高】

「……商売のつながりは残るのか」

俺は笑った。

「よし。いつか新商品を届けてやろう」

セレナがすかさず隣に立つ。

「蓮様。そのときは私も同行いたします」

「まだ行くって決まってないから!」

「では、今から準備を始めますね♡」

「聞いてない!」

          ◇

その日の昼。

俺は店の前に小さな看板を出した。

『日本のコンビニ唐揚げ・試食会』

すると――

冒険者たちが集まり始めた。

「肉料理だって?」

「狼王様が絶賛したらしいぞ!」

「本当か?」

「俺はもう食べた! あれはすごい!」

口コミの力は恐ろしい。

気がつけば、店の前には長い列ができていた。

「お一人様、まずは一個ずつです!」

「二個目は?」

「試食のあとで販売分をご案内します!」

「買えるのか!」

「もちろん、準備できる数だけです!」

カリッ。

ジュワッ。

「うまい!」

「酒に合いそうだ!」

「冒険に持っていきたい!」

「家族にも食べさせたい!」

あちこちから歓声が上がる。

そして、最後尾に並んでいた狼王が腕を組んだ。

「蓮。俺の分は確保してあるな?」

「お客様と同じ扱いです!」

「俺は常連になるぞ」

「もうファンになってるじゃないですか!」

狼王は堂々と胸を張った。

「当然だ!」

俺は空を見上げた。

チョコレートに夢中のヴェルティアは本拠地へ帰った。

そして今度は、唐揚げに夢中な狼王たちが誕生した。

「……この世界、食べ物に弱すぎないか?」

ミリアが笑う。

「おいしいものは、世界を越えてもおいしいんですよ」

確かに、その通りだ。

俺は新しい商品リストに書き加えた。

『コンビニ唐揚げ――異世界販売、検討開始』

商人としての次の一手。

それは、魔法でも武器でもなく――

カリカリ、ジュワッとした唐揚げだった。

次回はもっと危険なチキン

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