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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第16話 婚約騒動で大繁盛!? 謎の古銭と佐伯家の秘密

竜王国・王都。

翌朝。

俺は店の扉を開けた瞬間、思わず固まった。

「……何だ、これ?」

店の前に、長い行列ができていた。

貴族らしい服装の男。

高級な外套を着た商人。

なぜか花束を持った若者までいる。

しかも、全員が俺を見ていた。

「おお! 佐伯殿だ!」

「ヴェルティア様の婚約者!」

「ぜひ我が商会と取引を!」

「いや、私が先だ!」

「ちょっと待ってください!」

俺は慌てて両手を振った。

「俺は婚約してませんから!」

しかし、誰も聞いていない。

「ご謙遜を!」

「違います!」

「では、婚約記念の特別販売を!」

「そんなものはありません!」

朝から大騒ぎだった。

ミリアが店の奥から顔を出す。

「蓮さん、すごい人気ですね」

「人気じゃない! 誤解だ!」

リナも行列を眺めている。

「でも、皆さん商品を買いに来ているみたいですよ」

「……え?」

よく見ると、客たちの手には商品リストが握られていた。

「異世界の商人と取引できれば、我が商会の名も上がる!」

「ヴェルティア様の婚約者なら、きっと有望な商人に違いない!」

「日本の商品をまとめて仕入れたい!」

なるほど。

婚約騒動が、商売にまで影響しているらしい。

俺は少し考えた。

誤解は困る。

だが、せっかく客が集まっているのに、商売をしない理由もない。

「……よし」

俺は店の前に看板を出した。

『本日限定! 日本の商品・特別販売会!』

「ミリア、商品を並べよう!」

「はい!」

「リナは在庫の確認を頼む!」

「分かりました!」

こうして、急きょ販売会が始まった。

          ◇

「こちらは日本のお菓子です!」

俺はテーブルの上に商品を並べた。

チョコレート。

クッキー。

キャンディー。

そして、人気のプリン。

「これは何だ?」

一人の貴族が、プリンを指差した。

「プリンです」

「食べ物なのか?」

「はい。甘くて、おいしいですよ」

「……本当に?」

「では、試食をどうぞ」

俺は小さなスプーンを渡した。

貴族は恐る恐る口に運ぶ。

そして――

「……!」

目を見開いた。

「な、何だ、この柔らかさは!」

「プリンです」

「甘い! 滑らかだ! もう一つ!」

「ありがとうございます。お買い上げですね?」

「もちろんだ!」

あっという間に、プリンの列ができた。

「私にも!」

「こちらもください!」

「十個まとめて買えるか?」

「申し訳ありません。一人三個までです!」

「なぜだ!」

「皆さんに買っていただきたいので!」

隣では、ミリアがチョコレートを販売していた。

「こちらは口の中で溶けるお菓子です」

「溶ける?」

「はい。どうぞ」

商人が一粒食べる。

「……これは危険だ」

「えっ?」

「うますぎる! 全部買い占めたい!」

「買い占めは禁止です!」

リナは帳簿を見ながら、忙しそうに声を上げた。

「蓮さん! チョコレートが残り二十個です!」

「もう!?」

「プリンも残り十個です!」

「早いな!」

そこへ、聞き覚えのある声が響いた。

「蓮様! 私もお手伝いします!」

振り返ると、セレナが立っていた。

「セレナさん!?」

「販売会と聞いて、駆けつけました!」

「どうして知っているんですか?」

「王都中で話題ですから♡」

セレナは手際よく商品を並べ始めた。

「こちらは生活用品です。品質も使いやすさも抜群ですよ!」

「おお、商業組合のセレナ様が推薦する商品か!」

「それなら信用できる!」

客が次々と商品を買っていく。

セレナは満足そうに微笑んだ。

「蓮様。私がいれば安心ですね♡」

「助かりますけど……」

「妻として当然です♡」

「だから妻じゃありません!」

すると、今度は別の女性の声がした。

「私も手伝いますわ」

ヴェルティアだった。

「……ヴェルティアさん?」

「販売会を成功させたいのでしょう?」

彼女は微笑んだ。

「私にも、商品を紹介させてください」

セレナの笑顔が少し固まった。

「……なぜ、あなたまで?」

「蓮様のお役に立ちたいからですわ」

「それなら、私も負けません!」

「望むところです」

「ちょっと待ってください!」

俺の声は、二人の笑顔に挟まれて消えた。

こうして販売会は、なぜかセレナとヴェルティアの接客勝負になった。

「こちらの商品がおすすめです!」

「いいえ、こちらも素晴らしいですわ!」

「蓮様が選んだ商品ですから!」

「私も蓮様の商品を見る目を信じています!」

「……二人とも、普通に販売してください」

ミリアが小声で言った。

「蓮さん、売上が伸びています」

「……それなら、いいか」

俺は深く考えないことにした。

商売は、絶好調だった。

          ◇

昼過ぎ。

販売会は大盛況のうちに終わった。

俺たちは店の奥で売上を確認していた。

「売上は……」

俺は帳簿を見た。

「四百八十金貨!」

「すごい!」

リナが声を上げた。

「午前中だけで、こんなに売れたんですね!」

ミリアも驚いている。

「婚約騒動が、まさか商売に役立つなんて……」

「役立ってほしくなかったけどな」

俺は苦笑した。

「それに、まだ婚約していませんからね!」

「はいはい」

ミリアは笑った。

セレナは俺の隣に座り、満足そうに帳簿を眺めていた。

「蓮様、素晴らしい売上ですね」

「セレナさんが手伝ってくれたおかげです」

「まあ……♡」

セレナの頬が赤くなる。

「今のお言葉、忘れません!」

「いや、普通のお礼ですから!」

そのとき、ヴェルティアが売上金の入った袋を持ち上げた。

「あら?」

「どうしました?」

彼女は袋の中から、一枚の硬貨を取り出した。

「この硬貨……見覚えがありませんか?」

俺は硬貨を受け取った。

表面には、古びた扉の絵。

裏面には、小さな文字が刻まれている。

「……何だ、これ?」

この世界の金貨とは違う。

色も形も、刻印も見たことがない。

「お客さんが間違えて入れたのかな?」

俺はスマートフォンを取り出した。

「ちょっと調べてみるか」

硬貨をカメラで読み取る。

ピコン。

画面が一瞬、真っ白になった。

そして――

【歴史的遺物を検出】

【名称:第一境界古銭】

【推定年代:数百年前】

【所有記録:佐伯家・初代当主】

「……は?」

俺は画面を二度見した。

佐伯家。

初代当主。

また、この名前だ。

ミリアが心配そうに覗き込む。

「蓮さん、何か分かったんですか?」

俺は画面を見せた。

「この硬貨……佐伯家の初代当主が持っていたものらしい」

「初代当主って……蓮さんのご先祖様?」

「そういうことになる」

リナが硬貨を見つめた。

「でも、どうして今の売上金に混じっていたんでしょう?」

「それが分からないんだ」

俺は硬貨を裏返した。

刻まれた文字を、もう一度読む。

そこには、かすれた文字でこう書かれていた。

『必要なものを渡し、必要なものを受け取れ』

その言葉を見た瞬間、俺は息をのんだ。

父さんが昔、俺に言っていた言葉とよく似ていたからだ。

商売は、相手から奪うためにするものじゃない。

必要なものを届け、その代わりに必要なものを受け取る。

佐伯家が大切にしてきた考え方。

それが、こんな古い硬貨に刻まれている。

「……偶然じゃないな」

俺は呟いた。

          ◇

その夜。

店を閉めたあと、俺はスマートフォンを操作していた。

第一境界古銭について、さらに詳しい情報を調べる。

すると、新しい項目が表示された。

【第一境界古銭】

【役割:境界交易の証明】

【対応地点:未登録】

【追加情報を確認するには、特定の接続地点へ移動してください】

「接続地点……?」

俺は地図を開いた。

すると、王都の北側に小さな印が浮かび上がった。

今まで表示されていなかった場所だ。

その場所の名前は――

『旧交易所』

「こんな場所、あったのか……」

ミリアが隣から地図を覗き込んだ。

「旧交易所……聞いたことがあります」

「本当か?」

「昔、異世界との交易に使われていた施設だそうです。でも、何百年も前に閉鎖されたと聞きました」

「何百年も前……」

俺は古銭を握りしめた。

佐伯家の初代当主。

第一境界古銭。

旧交易所。

すべてがつながっている気がした。

そのとき、スマートフォンが鳴った。

ピコン。

【新規調査地点を登録しました】

【旧交易所】

【調査可能時間:明日・日の出以降】

【注意:現地には未確認の境界反応があります】

「……行くしかないな」

俺が呟くと、すぐにセレナが反応した。

「私も同行します!」

「セレナさん、まだ何も言ってませんよ!」

「蓮様が危険な場所へ行かれる気配を感じました♡」

「そんな気配はありません!」

ヴェルティアも静かに言った。

「私も参ります」

「ヴェルティアさんまで?」

「その古銭は、私の一族にも関係があるかもしれません」

彼女の表情は、いつになく真剣だった。

「それに……旧交易所には、今も開けてはいけない扉が残っているそうです」

「開けてはいけない扉?」

ヴェルティアはうなずいた。

「佐伯家の初代当主が、最後に封印した扉です」

俺はスマートフォンを見つめた。

画面には、赤い文字が浮かび上がっていた。

【旧交易所】

【境界反応:検出】

【扉の状態:封印中】

【開錠条件:第一境界古銭】

「……この硬貨で、扉が開くのか?」

誰も答えなかった。

俺は古銭を袋にしまった。

明日は、旧交易所へ行く。

商売のために始まった一日が、また佐伯家の秘密につながってしまった。

そして――

そのころ、王都から遠く離れた暗い部屋で。

一人の男が、古い記録を開いていた。

そこには、俺が見つけたものと同じ硬貨の絵が描かれていた。

男は静かに笑った。

「見つけたか、佐伯蓮」

その手には、もう一枚の第一境界古銭。

そして、その裏面には――

俺の知らない名前が刻まれていた。

『佐伯一郎』。

「次は、お前が扉を開く番だ」

男の背後で、古い扉が小さく震えた。

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