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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第15話 伝説の美女ヴェルティア降臨!

竜王国・王都。

「蓮が戻ってきたぞ!」

王城に到着した蓮を、ルナリアが笑顔で迎えた。

「お帰りなさい!」

「ただいま、ルナリア」

「お土産は?」

「またそれか!」

蓮は苦笑しながら、日本のお菓子を渡した。

ルナリアは大喜びだ。

その横では、セレナが当然のように蓮の腕に抱きついていた。

「蓮様、お帰りなさいませ。未来の妻がお待ちしておりました♡」

「だから妻じゃないって!」

「照れなくてもいいですよ♡」

「照れてません!」

いつものやり取りに、ルナリアが笑う。

そこへ竜王が現れた。

「蓮、よく戻ったな。今夜、お前の帰還を祝うパーティーを開く」

「パーティーですか?」

「ああ。各地の貴族や商人が集まる」

竜王は少し声を落とした。

「実は、お前を探している者がいる。そいつを誘い出したいのだ」

蓮の表情が変わった。

「俺を探している?」

「佐伯家について調べているらしい。パーティーなら、向こうから姿を現す可能性がある」

「なるほど……」

蓮は頷いた。

「分かりました。協力します」

「よし。では、今夜は楽しみにしておけ」

竜王は意味ありげに笑った。

蓮は首を傾げた。

「……何か企んでません?」

「はっはっは!」

竜王は答えなかった。

嫌な予感しかしなかった。

         ◇

その夜。

王城の大広間は、豪華なシャンデリアの光に包まれていた。

貴族たち。

有力な商人たち。

各地から招待された名士たち。

美しいドレスをまとった女性たち。

そして、着飾った男性たちが、あちこちで談笑していた。

蓮は正装に着替え、落ち着かない様子で広間を見渡した。

「こういう場所は苦手だな……」

「蓮様、とても素敵です♡」

セレナがうっとりと見つめる。

「今夜こそ、皆様に私たちの仲を認めていただきましょう!」

「認めるも何も、仲の内容が違います!」

そのとき、広間の入口で案内役の声が響いた。

「皆様! 特別なお客様がお見えになりました!」

ざわめきが止まる。

大きな扉が、ゆっくりと開いた。

そこに立っていたのは――

一人の女性だった。

長い髪。

透き通るような肌。

気品あふれるドレス。

歩く姿さえ美しく、まるで物語から抜け出してきたかのようだった。

「……誰だ、あの方は?」

「見たことがない……」

「なんという美しさだ……」

男性たちが一斉に女性を見つめた。

手に持っていたグラスを止める者。

会話を忘れる者。

思わず立ち上がる者。

誰もが、彼女から目を離せなかった。

ミリアまで驚いていた。

「……あの方が、ヴェルティア様?」

蓮が振り向く。

「えっ?」

ヴェルティア。

その名は知っていた。

しかし、これまで公の場に姿を現したことがなく、実際に会った者もほとんどいない。

そのため、王都では彼女の存在そのものが伝説のように語られていたのだ。

そして今夜。

ヴェルティアは初めて、大勢の人々の前に姿を現した。

「……すごいな」

蓮が思わず呟くと、セレナがじろりと睨んだ。

「蓮様?」

「いや、みんな驚いてるなって!」

「……本当に?」

「本当です!」

その間にも、男性たちはヴェルティアの周囲に集まり始めていた。

「ヴェルティア様! ぜひ一曲、お相手を!」

「こちらでお席をご用意しております!」

「よろしければ、我が商会とのお取引を――」

「順番にお願いします!」

誰もが自分を見てもらおうと必死だった。

しかし、ヴェルティアは誰にも応じなかった。

彼女の視線は、ただ一人に向けられていた。

蓮だ。

ヴェルティアは人々の間を通り抜け、まっすぐ蓮のもとへ歩いてきた。

「蓮」

「ヴェルティア……?」

彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「会いたかったわ」

「俺も……いや、どうしてここに?」

「招待されたからよ」

「それはそうだけど……」

ヴェルティアは蓮の隣に立った。

そして、広間を見渡した。

「皆様。少し、よろしいでしょうか?」

その声に、広間が静まり返る。

ヴェルティアは蓮の腕にそっと手を添えた。

「私、皆様にお伝えしたいことがあります」

蓮は嫌な予感がした。

「ヴェルティア、何を……?」

彼女はにっこりと笑った。

「私、佐伯蓮と婚約いたしました!」

「…………は?」

蓮の思考が止まった。

一瞬の沈黙。

次の瞬間――

「な、なんだとおおおおお!?」

広間が爆発したような騒ぎになった。

「ヴェルティア様が婚約!?」

「相手は誰だ!?」

「佐伯蓮だと!?」

「聞いたことがあるぞ! 異世界の商品を売る商人だ!」

「なぜ、あいつなんだ!?」

蓮は慌ててヴェルティアを見た。

「ちょっと待って! 婚約って何!?」

ヴェルティアは平然としていた。

「婚約よ?」

「いや、そうじゃなくて!」

「私、蓮がいいもの」

「理由になってない!」

ヴェルティアは首を傾げた。

「嫌だった?」

その顔を見て、蓮は言葉に詰まった。

「いや、嫌とかじゃなくて……突然すぎるだろ!」

「じゃあ、問題ないわね」

「問題大ありだよ!」

         ◇

そして、蓮は気づいた。

周囲の男性たちの視線が、明らかに変わっている。

先ほどまでヴェルティアに夢中だった男たちが、今は全員、蓮を睨んでいた。

「……あいつが婚約者?」

「俺たちが声をかけても相手にされなかったのに……」

「許せん」

「決闘を申し込んでやる!」

「いや、ちょっと待ってください!」

蓮は両手を上げた。

「俺も今、初めて聞いたんです!」

誰も信じてくれなかった。

一人の貴族が前に出る。

「佐伯蓮! ヴェルティア様を幸せにできると、本気で思っているのか!」

「いや、そもそも婚約の話が――」

「言い訳は聞きたくない!」

別の男も叫ぶ。

「商人風情が、ヴェルティア様の隣に立つとは!」

「商人風情って……俺は商人ですけど!」

「開き直るな!」

「どうしろっていうんだよ!」

ミリアは頭を抱えた。

「蓮さん、完全に敵を増やしましたね……」

狼王は面白そうに笑った。

「よいではないか。これほど一度に敵が増えるとはな」

「よくない!」

セレナは笑顔のまま、ヴェルティアを見つめていた。

「ヴェルティア様」

「何かしら?」

「蓮様との婚約について、詳しくお聞きしても?」

「もちろん。蓮が私の婚約者になったのよ」

「その話、蓮様本人はご存じだったのでしょうか?」

「今、伝えたわ」

「……そうですか」

セレナの笑顔が、さらに深くなった。

「では、私にもまだ可能性はありますね♡」

「セレナさん! 今はそこじゃない!」

ルナリアはとうとう笑い出した。

「もう、蓮ったら! パーティーに来ただけなのに大変なことになってる!」

「俺だって普通に帰還を祝ってもらいたかったんだよ!」

         ◇

そのときだった。

広間の隅にいた一人の男が、静かにグラスを置いた。

黒い礼服。

顔の半分を影に隠した、見覚えのない男。

彼は周囲の騒ぎには加わらず、蓮だけを見つめていた。

「……佐伯蓮」

男は小さく呟いた。

「ヴェルティアまで動いたか」

その手には、古びた鍵が握られていた。

鍵には、佐伯家の紋章が刻まれている。

男はゆっくりと後ろへ下がった。

誰にも気づかれず、広間の出口へ向かう。

だが――

ピコン!

蓮のスマートフォンが震えた。

【境界反応を検知】

【反応地点:王城大広間】

【対象:不明】

蓮は画面を見た。

「……何だ?」

もう一度、周囲を見渡す。

その瞬間、広間の隅にいる男と目が合った。

男は微笑んだ。

そして、唇だけを動かした。

『扉を開けろ』

次の瞬間。

男の姿が、人混みの中へ消えた。

「待て!」

蓮が駆け出そうとした。

しかし、周囲の貴族たちが立ちはだかった。

「佐伯蓮! 話はまだ終わっていない!」

「ヴェルティア様との婚約について説明しろ!」

「決闘を受けろ!」

「……今それどころじゃないんだよ!」

蓮は叫んだ。

ヴェルティアは不思議そうに首を傾げている。

「蓮、どうしたの?」

「どうしたのじゃない! 今、怪しい男が――」

そのとき、スマートフォンに新しい通知が表示された。

【警告】

【佐伯家の鍵が接近しました】

【次の境界反応まで――残り24時間】

蓮は息をのんだ。

婚約騒ぎどころではない。

佐伯家の秘密を知る誰かが、すぐ近くにいる。

そして、その人物は明日、何かを起こそうとしている。

「……明日までに、見つけないと」

蓮はスマートフォンを握りしめた。

その隣で、ヴェルティアがそっと微笑む。

「大丈夫よ、蓮。私が守ってあげるから」

「……頼もしいけど、まず婚約の説明をしてくれ!」

王城の夜は、まだ終わらない。

そして蓮は知らなかった。

今夜の婚約発表こそが、謎の男を動かすきっかけになったことを。

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