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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第14話 その契約、ちょっと待った!スマホ商人の大逆転!

 翌朝。

「……お腹すいた」

蓮は宿のベッドから起き上がるなり、つぶやいた。

昨日は地下室で逃げ回り、そのあと戦闘まであった。

お腹が空くのも当然だった。

「蓮様! 朝食なら私が用意しました♡」

セレナが満面の笑みで、お皿を差し出してきた。

「えっ、作ってくれたんですか?」

「はい! 未来の妻ですから!」

「……ありがとうございます。でも、いつから未来の妻に?」

「蓮様が結婚を申し込んでくださる日からです♡」

「まだ申し込んでません!」

ミリアが笑いながらパンを手に取った。

「蓮さん、早く食べないと商談に遅れますよ」

「そうだった!」

蓮は朝食を急いで食べた。

今日はいよいよ、ローデン商会との商談だ。

昨日襲ってきた男たちがローデン商会の警備部門に所属していたことも気になる。

だが、相手の話を聞かずに決めつけるわけにはいかない。

「よし、行こう!」

         ◇

ローデン商会は、港でも目立つ大きな建物だった。

入口には立派な看板。

中には高級な家具が並び、商人たちが忙しそうに行き来している。

「さすが、大商会だな……」

蓮が感心していると、受付の女性が笑顔で近づいてきた。

「佐伯蓮様ですね。ローデンがお待ちです」

案内された部屋には、ローデンが座っていた。

「よく来たな」

「お招きありがとうございます」

蓮は向かいの椅子に座った。

セレナは当然のように隣へ座る。

「私は蓮様の妻ですので、同席します♡」

「まだ妻じゃないです!」

ローデンが一瞬、目を丸くした。

「……仲がいいのだな」

「誤解です!」

「照れなくてもいいですよ、蓮様♡」

「セレナさん!」

ミリアは笑いをこらえていた。

         ◇

ローデンは、一枚の書類を机に置いた。

「今日、お前を呼んだのは、この契約のためだ」

蓮は書類を受け取った。

そこには、大きな文字で書かれていた。

『独占販売契約』

「独占販売……?」

「そうだ。お前の商品を、我が商会だけで販売する」

ローデンは説明を続けた。

「こちらで商品を大量に買い取る。お前は仕入れと商品開発に集中できる。悪い話ではないだろう?」

確かに、魅力的な話だった。

大量に買い取ってもらえれば、売れ残りの心配も減る。

商売の規模も大きくできる。

だが――

蓮のスマートフォンが、小さく震えた。

ピコン。

【契約内容を確認しました】

【注意:不利な条件を検出】

蓮は表情を変えず、画面を確認した。

【契約後の主な条件】

・他の商会への販売禁止 ・販売価格はローデン商会が決定 ・契約解除には高額な違約金が必要

「……なるほど」

蓮は書類を机に戻した。

「ローデンさん。これは、俺にとって不利すぎませんか?」

ローデンは眉を動かした。

「なぜだ? 商品は大量に買い取ると言っている」

「でも、販売先を全部あなたに決められたら、ほかのお客さんに商品を届けられません」

蓮は続けた。

「それに、価格まで自由に決められない。もし契約をやめたくなっても、違約金が高すぎる」

「商売とは、そういうものだ」

ローデンは冷静に答えた。

「大きな利益を得るには、多少の制限も必要になる」

「多少、ですか……」

蓮は首を横に振った。

「これは、制限じゃありません。自由を奪う契約です」

部屋の空気が変わった。

ローデンは蓮をじっと見つめた。

「……契約を断るのか?」

「はい」

蓮ははっきり答えた。

「俺は、自分で売る相手を決めたいんです」

         ◇

「後悔するぞ」

ローデンが低い声で言った。

「我が商会と取引できなければ、黒曜港で商売を続けるのは難しくなる」

「それは困りますね」

蓮は素直に答えた。

「でも、だからといって、納得できない契約は結べません」

ローデンが立ち上がる。

「ならば、お前の商品がどれほど売れるか、見せてもらおう」

「……どういう意味ですか?」

「今日、我が商会の前に市場を用意してやる。そこで自由に売ってみろ」

ローデンは笑った。

「本当に商人として優れているなら、我が商会に頼らずとも成功できるはずだ」

蓮は少し考えた。

そして、にっこり笑った。

「いいですよ」

「何?」

「商売で勝負しましょう」

セレナが嬉しそうに手を握る。

「さすが蓮様! 未来の旦那様は堂々としていますね♡」

「だから未来の旦那様じゃない!」

         ◇

昼。

ローデン商会の前に、小さな販売所が用意された。

蓮が持ち込んだのは、日本の保存食、日用品、便利な小物だった。

最初は、誰も足を止めなかった。

「大商会の前で商売するなんて、無謀だな」

「ローデン商会の商品を買ったほうが安心だろう」

通り過ぎる人たちの声が聞こえる。

ミリアが不安そうに尋ねた。

「蓮さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫。まずは、商品の良さを知ってもらおう」

蓮は商品を並べた。

最初に出したのは、便利な保存容器だった。

「食べ物を入れておけます。ふたを閉めれば、持ち運びにも便利ですよ!」

客の一人が足を止めた。

「本当に漏れないのか?」

「試してみてください」

蓮は水を入れ、ふたを閉めて逆さにした。

水はこぼれなかった。

「おおっ!」

「すごいな!」

次に、手軽に使える清潔なタオルを見せた。

「こちらは肌触りがよく、毎日使えます!」

「触ってもいいか?」

「もちろんです!」

客が商品を手に取る。

「これは気持ちいいな!」

一人が買うと、別の客も興味を持ち始めた。

「俺にも見せてくれ!」

「こちらはいくらだ?」

「この値段です!」

少しずつ、人が集まり始めた。

セレナも大活躍だった。

「こちらの商品は、蓮様が自信を持っておすすめする品です!」

「お姉さん、あんたも店の人かい?」

「はい! 蓮様の妻です♡」

「違います! 販売員です!」

客たちがどっと笑った。

その笑い声につられて、さらに人が集まる。

「何だ何だ?」

「面白そうな店だな!」

「この便利な容器を一つくれ!」

商品は次々と売れていった。

         ◇

夕方。

蓮は売上を計算した。

「……よし!」

【本日の売上】

【合計:185金貨】

ミリアが目を丸くした。

「すごい! こんなに売れたんですね!」

「お客さんが商品の良さを分かってくれたんだ」

蓮は満足そうに頷いた。

そのとき、ローデンが販売所へやってきた。

「……思ったより売れたようだな」

「ありがとうございます」

「だが、これだけで商売が成功したとは言えない」

ローデンは厳しい表情を崩さなかった。

蓮は笑った。

「そうですね。今日だけでは分かりません」

そして、売上の一部を見せた。

「でも、今日買ってくれたお客さんが、また来てくれるかもしれない。俺は、そういう商売を続けたいんです」

ローデンは黙った。

蓮は続けた。

「一度に大きく儲けることも大事です。でも、お客さんに喜んでもらって、また買いに来てもらう。それも商売だと思います」

ローデンの目が、わずかに細くなった。

「……お前は、誰から商売を学んだ?」

「家族です」

蓮は答えた。

「佐伯家の商売は、そういうものだったと聞いています」

その瞬間。

ローデンの表情が変わった。

「佐伯家……」

彼は何かを言いかけたが、口を閉じた。

そして、蓮に背を向けた。

「今日の勝負は、お前の勝ちだ」

「え?」

「だが、覚えておけ。お前の商売を快く思わない人間は、ほかにもいる」

ローデンは歩き出した。

「王都へ戻ったら、気をつけろ」

蓮は、その背中を見つめた。

「……ローデンさんは、本当に敵なのか?」

         ◇

その夜。

宿に戻った蓮のスマートフォンに、新しい通知が届いた。

ピコン!

【新しい取引依頼】

【依頼主:王都商業組合】

【内容:至急、面会を希望】

蓮は首を傾げた。

「今度は商業組合?」

さらに、短いメッセージが表示された。

『佐伯蓮殿』

『あなたの一族について、伝えたいことがあります』

『明日、王都へお越しください』

蓮はスマートフォンを見つめた。

商売の勝負には勝った。

だが、佐伯家の秘密は、まだ分からないことだらけだ。

「……明日は王都か」

セレナが当然のように隣へ座った。

「もちろん、私も同行します♡」

「はいはい……」

蓮は苦笑した。

こうして一行は、次の目的地である王都へ向かう準備を始めた。

しかし、そのころ。

王都のとある部屋では、一人の男が蓮の写真を眺めていた。

「ついに現れたか……佐伯家の後継者」

男は、机の引き出しから古い鍵を取り出した。

「今度こそ、あの扉を開けてもらおう」

その鍵には――

佐伯家の紋章が刻まれていた。

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