↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
PR
115/135

第10話 もう一人の佐伯レン!ヴェルティアが守り続けた約束

 ゴゴゴゴゴゴッ!!

島が崩れ始めていた。

天井から石片が落ち、床に亀裂が走る。

スマートフォンの警告音が鳴り響いた。

【島の安定率:5%】

【境界制御装置:停止寸前】

【脱出経路:不安定】

「5%って、もうほとんど終わりじゃないか!」

俺は思わず叫んだ。

「蓮様、こちらへ!」

セレナが俺の腕を引く。

だが、俺の視線は記録保管室の奥に向いていた。

そこには、もう一つの扉があった。

扉の中央には――

俺によく似た男の顔が刻まれている。

「……なんで俺の顔なんだ?」

カイが弓を構えた。

「罠かもしれない。近づくな」

「でも、第三の鍵の秘密があるかもしれない」

「島が沈むまで時間がないんだぞ!」

「分かってる!」

その時、モモが俺の頭の上に止まった。

「蓮、よく見ると、あの顔は蓮とちょっと違うよ」

「違う?」

「うん。目つきも違うし、もっと疲れた顔をしてる!」

「顔の感想が妙に具体的だな……」

だが、モモの言うとおりだった。

似ている。

しかし、同じではない。

まるで、遠い親戚の写真を見ているような、不思議な感覚だった。

俺が扉に近づくと、スマートフォンが反応した。

【古代記録を検知】

【人物名:佐伯レン】

【記録年代:約八百年前】

【佐伯家血統記録:未登録】

【第三の鍵との関連性:高】

「八百年前の佐伯レン……?」

カイが目を見開く。

「一郎と同じ時代の人物か?」

「たぶんな」

俺は扉に手を置いた。

その瞬間――

ドクンッ!

扉が脈打った。

『認証者を確認』

『現在の佐伯蓮』

『記録対象の佐伯レン』

『照合を開始します』

「ちょっと待て! 俺とそいつを照合してどうするんだ!?」

返事はない。

代わりに、扉がゆっくりと開き始めた。

ギィィィ……。

中には、小さな部屋があった。

中央には銀色の箱。

壁には陸と海の紋章。

そして、その二つをつなぐように、黒い翼と赤い月の紋章が刻まれていた。

「これは……ヴェルティアの紋章?」

俺が呟いた瞬間、箱の中から声が響いた。

『佐伯蓮。ようやく来たか』

俺自身の声に、よく似ていた。

『お前に、伝えなければならないことがある』

          ◇

「お前は誰だ?」

俺は箱を睨んだ。

『私は、八百年前に第三の鍵を守った者』

「佐伯レンなのか?」

『そう呼ばれていた』

「どうして俺と似ている?」

『……さあな』

「いや、そこは答えてくれよ!」

思わず突っ込んだが、箱は沈黙した。

代わりに、壁に映像が浮かび上がる。

そこに映っていたのは、八百年前の港だった。

商人たちが商品を運び、異なる世界の人々が物々交換をしている。

その中に、一郎の姿があった。

一郎は商人たちに向かって語りかけている。

『境界を守るということは、扉を閉じることだけではない』

『必要な時には開き、危険な時には閉じる。その判断を誤らないことだ』

その少し離れた場所に、一人の男が立っていた。

長い髪。

落ち着いた目。

俺とは顔立ちが少し違う。

だが、ふとした表情が似ていた。

男の隣には、黒い翼を持つ女性がいる。

ヴェルティアだった。

『レン、準備はできた?』

『ああ。だが、君まで来る必要はない』

『またそれ?』

ヴェルティアは呆れたように腕を組んだ。

『あなたはいつも、一人で何とかしようとする』

『危険だからだ』

『私だって、危険な場所を何度もくぐり抜けてきたのよ』

男は苦笑した。

『……そうだったな』

二人は顔を見合わせて笑った。

その様子は、恋人というより、長年一緒に困難を乗り越えてきた家族のようだった。

映像の中のヴェルティアが、男の肩を軽く叩く。

『帰ってきたら、食事くらい付き合いなさいよ』

『分かった。約束する』

『忘れたら許さないから』

『分かっている』

俺は黙って映像を見つめた。

ヴェルティアにとって、この男は家族同然の大切な仲間だったのだ。

そして、映像は急に暗くなった。

空に巨大な亀裂が走る。

黒い霧が港を覆い、人々が逃げ惑った。

『レン! 境界が暴走している!』

ヴェルティアが叫ぶ。

『第三の鍵を使えば、止められるかもしれない!』

『だが、使えば何が起きるか分からない!』

『それでも、何もしなければ町が消えるわ!』

男は銀色の結晶を取り出した。

『……分かった』

『レン?』

『必ず戻る。だから、ここを頼む』

ヴェルティアは男の腕をつかんだ。

『一人で行かないで』

『君まで失うわけにはいかない』

『私は家族を見捨てないわ!』

その言葉に、男は一瞬だけ目を伏せた。

そして、静かに微笑んだ。

『ありがとう、ヴェルティア』

次の瞬間、男は光の中へ消えた。

映像が途切れた。

俺は息をのんだ。

「……その後、どうなったんだ?」

スマートフォンが鳴った。

【古代記録:一部復元】

【佐伯レン:消息不明】

【第三の鍵:封印状態】

【ヴェルティア:保管者として登録】

「ヴェルティアが、鍵を守っていたのか……」

カイが頷いた。

「八百年前から、ずっとか」

その時、スマートフォンに通信が入った。

ヴェルティアだ。

『蓮! 聞こえる?』

「ああ、聞こえる!」

『無事なのね?』

「ああ。だけど、八百年前の記録を見た」

通信の向こうが静かになった。

『……そう』

「ヴェルティア。あの佐伯レンは、あなたにとって大切な人だったんだな」

『ええ。家族同然の人だったわ』

ヴェルティアは、はっきりと答えた。

『血のつながりはなかったけれど、長い間、一緒に戦ってきた仲間だった。彼は私を信頼してくれたし、私も彼を信頼していた』

「……そうだったのか」

『でも、蓮』

彼女の声が少し柔らかくなった。

『あなたと彼は別人よ。顔も、性格も、同じではないわ』

「俺もそう思う」

『だから、あなたが彼の代わりになる必要はない』

俺は黙って聞いていた。

『私が今、大切に思っているのはあなた自身よ。八百年前の彼とは関係ないわ』

「……そういうこと、さらっと言うなよ」

『ふふっ。照れているの?』

「照れてない!」

『そういうところも、あなたらしいわね』

いつもの調子に戻った声に、俺は少しだけ安心した。

だが、ヴェルティアはすぐに真剣な声になった。

『蓮。第三の鍵を完全に認証してはいけない』

「どうして?」

『まだ、代償が分かっていないからよ』

「でも、このままじゃ島が沈む!」

『島を救う方法は、鍵を使うことだけではないはずよ。八百年前のレンも、最後まで別の方法を探していた』

「別の方法……?」

『お願い。記録を最後まで調べて。彼が何を守ろうとしたのか、確かめてほしい』

「分かった。約束する」

通信が切れた。

その瞬間だった。

ゴゴゴゴゴッ!!

床が大きく揺れた。

【島の安定率:2%】

【境界制御装置:停止まで残り30秒】

「30秒!?」

カイが叫んだ。

「蓮! ここにいたら全員沈むぞ!」

俺は銀色の箱を見つめた。

中には、透明な結晶が浮かんでいる。

これを使えば、島を救えるかもしれない。

だが、代償は分からない。

俺は歯を食いしばった。

「……くそっ。何か、何か手がかりはないのか!」

その時。

リナの地図が光った。

「蓮さん! ここを見てください!」

地図には、部屋の壁の裏側に、細い通路が描かれていた。

「隠し通路……?」

「はい! でも、出口が表示されません!」

モモが飛び回る。

「こっちから風が来てるよ!」

狼王が鼻を鳴らした。

「確かに、海風が流れている」

「つまり、外につながっている可能性がある!」

俺はスマートフォンを操作した。

【隠し経路を検知】

【脱出経路:未確認】

【成功率:31%】

「成功率31%か……」

「ここに残るよりはましだ!」

カイが叫ぶ。

セレナも頷いた。

「蓮様。今は生きて帰ることを優先しましょう」

俺は銀色の箱を見つめた。

第三の鍵を持ち帰ることができれば、いつか真実にたどり着けるかもしれない。

俺は結晶を箱から取り出した。

その瞬間、スマートフォンが警告を発した。

【第三の鍵:仮認証】

【所有者:佐伯蓮】

【注意:認証の進行に伴い、境界への干渉が増大します】

「分かってる。今は使わない」

俺は結晶を収納した。

「みんな、走るぞ!」

俺たちは隠し通路へ飛び込んだ。

背後で、古代遺跡が崩れていく。

          ◇

通路の先には、古い石の階段が続いていた。

上へ。

上へ。

息を切らしながら駆け上がる。

「まだ出口はないのか!?」

「もう少しです!」

リナが地図を見ながら叫んだ。

その時、背後から黒い霧が迫ってきた。

『第三の鍵を返せ』

あの声だ。

『お前に扱えるものではない』

「うるさい!」

俺は振り返った。

スマートフォンに新しい表示が現れている。

【新能力候補:接続遮断】

【発動条件:接続点の認識】

俺は黒い霧を見た。

その中心に、銀色の線が伸びている。

「あれが接続点か!」

境界追跡を起動する。

線がはっきりと見えた。

だが、切断すれば制御装置まで停止する可能性がある。

ヴェルティアの言葉が頭をよぎった。

――鍵を使うことだけが、島を救う方法ではない。

俺は黒い霧につながる線を見極めた。

制御装置につながる線ではない。

霧をこの場所へ送り込んでいる、外部からの接続だ。

「これなら……!」

俺はスマートフォンを操作した。

【接続遮断】

【対象:外部侵入経路】

【実行しますか?】

「実行!」

白い光が走った。

バチィィィン!!

黒い霧が大きく震えた。

『なに……!?』

霧が、急速に薄くなっていく。

【外部侵入経路:遮断】

【島の安定率:2%→8%】

「上がった!?」

ミリアが驚いた。

「制御装置を止めずに、黒い霧だけを切ったんですか!?」

「ああ! たぶん、これが正解だったんだ!」

だが、安心したのも束の間。

スマートフォンが再び鳴った。

【警告:外部接続元が切断を認識】

【接続元から新たな反応】

「……まだ何かあるのか?」

通路の先に、出口の光が見えた。

俺たちは最後の力を振り絞って走った。

そして――

海岸へ飛び出した。

船は、すぐ近くに停泊している。

「全員、乗れ!」

カイが叫ぶ。

俺たちは船へ駆け込み、船員たちが急いで錨を上げた。

島の塔が、再び大きく揺れた。

だが、今度は完全には崩れなかった。

黒い霧が薄れ、島を覆っていた光が落ち着いていく。

スマートフォンに表示された数字が、ゆっくりと上昇した。

【島の安定率:8%→17%】

「……助かったのか?」

俺は息を吐いた。

完全に救えたわけではない。

それでも、崩壊は止まり始めていた。

カイが俺の肩を叩いた。

「やったな、蓮!」

「みんなのおかげだよ」

俺は手の中の結晶を見つめた。

第三の鍵。

八百年前の佐伯レンが守ろうとしたもの。

そして、ヴェルティアが長い間、託されてきたもの。

まだ、謎は多い。

だが、確かなことが一つある。

この鍵は、ただ扉を開くためのものではない。

世界をどうつなぐか、その選択に関わるものなのだ。

その時。

スマートフォンに新しい通知が現れた。

【古代記録:追加データを検知】

【次の目的地:北方山岳地帯】

【記録反応:強】

【注意:現地にて境界の異常を確認】

「北方山岳地帯……」

俺は地図を見つめた。

以前、佐伯家の人間が消息を絶った場所。

そこに、八百年前の佐伯レンにつながる記録があるのかもしれない。

セレナが俺の腕に抱きついた。

「もちろん、私も同行します。未来の妻として♡」

「だから妻じゃないって!」

「では、未来の未来の妻で」

「何も解決してない!」

ミリアが笑い、リナも微笑んだ。

モモは俺の肩に止まった。

「帰ったらプリン!」

「分かった、分かった!」

いつものやり取りに、ようやく少しだけ心が軽くなった。

俺は海の向こうを見つめた。

八百年前の佐伯レン。

彼は、何を守り、なぜ姿を消したのか。

そして、第三の鍵が本当に必要としているものは何なのか。

「……全部、確かめてやる」

その決意に応えるように、手の中の結晶が一度だけ光った。

そして、スマートフォンに新たな文字が浮かび上がった。

【第三の鍵:完全認証まで残り3段階】

【次の記録解放条件:北方山岳地帯】

【未確認人物の反応:1】

俺は画面を見つめた。

北方の山で、誰かが俺たちを待っている。

それが味方なのか、敵なのか。

まだ、分からない。

だが――

次の商売は、今までで一番危険なものになりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。