↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
PR
114/135

第9話 崩壊まで残りわずか!第三の鍵が目覚める!

ゴゴゴゴゴゴッ!!

地下遺跡が、激しく揺れた。

天井から石片が落ち、壁に刻まれた文字が次々と赤く染まっていく。

俺はスマートフォンを見つめた。

【境界制御装置:緊急警告】

【島の安定率:21%】

【複数の接続先が暴走中】

【制御室への到達を推奨】

「21%って……!」

「急がなければ、本当に島が沈むぞ!」

カイが叫んだ。

俺たちの目の前には、巨大な扉がそびえ立っていた。

左には陸の紋章。

右には海の紋章。

そして中央には――

見たこともない、三つ目の紋章。

まるで、二つの輪を一本の黒い線が貫いているような形だった。

「これが……第三の鍵?」

俺が近づいた瞬間。

ドクンッ!

扉が、心臓のように脈打った。

『認証者を確認』

『陸側血統――佐伯蓮』

『海側血統――カイ』

『第三の鍵――未登録』

『認証を拒否します』

「はあ!?」

思わず声が出た。

「二人そろえば大丈夫じゃなかったのかよ!」

カイも険しい顔をしている。

「俺たちの一族の記録にも、第三の鍵なんて出てこない!」

その瞬間。

扉の中央から黒い霧が噴き出した。

『ならば、代わりの鍵を使えばいい』

あの声だ。

前回、俺たちを利用した、正体不明の存在。

『お前たちの血を使えば、扉は開く』

「断る!」

俺は即答した。

『なぜだ? お前は商人だろう。世界がつながれば、取引できる相手も、商品も、無限に増える』

「……」

『日本の商品を異世界へ。異世界の鉱石を日本へ。見たこともない魔法道具を売れば、どれだけ儲かると思う?』

一瞬、頭の中に想像が浮かんだ。

日本の商品を求める異世界の人々。

新しい交易路。

未知の食材。

新しい商売の可能性。

確かに、商人としては魅力的な話だ。

だが――

「世界中の扉が勝手に開いたら、商売どころじゃないだろ」

俺は扉を睨んだ。

「必要な人に、必要な物を届ける。それが俺の商売だ。世界を壊してまで儲けるつもりはない!」

一瞬、黒い霧が揺らいだ。

『……一郎と同じか』

「一郎を知っているなら、答えろ! お前は誰だ!」

『知る必要はない』

黒い霧が膨れ上がった。

『ならば、ここで終わりだ』

          ◇

「蓮さん、後ろです!」

ミリアの叫び声。

振り向いた瞬間、床から黒い腕が伸びてきた。

「うわっ!」

俺は横へ飛び退いた。

黒い腕が石床を砕く。

ガシャァン!

「何だ、こいつ!」

狼王が飛びかかった。

鋭い爪が黒い腕を切り裂く。

しかし、切れた部分は煙になり、すぐに元へ戻ってしまった。

「物理攻撃が効かぬ!」

狼王が唸る。

ミリアが魔法を放った。

「炎よ、焼き払え!」

赤い炎が黒い腕を包む。

だが、炎は一瞬で吸い込まれた。

「魔法まで……!?」

リナが地図を広げる。

「だめです! この場所、地図に表示されません!」

セレナが俺の前に立った。

「蓮様、下がってください!」

「でも!」

「ここは私に任せてください!」

セレナの周囲に、竜のような青い魔力が渦巻いた。

次の瞬間。

ドォォォン!!

強烈な魔力が黒い腕を吹き飛ばす。

通路全体が震えた。

「さすがセレナ!」

「褒めていただけるのは嬉しいですが、今は逃げるのが先です!」

「そうだった!」

その時、モモが俺の肩から飛び立った。

「蓮! あそこ!」

モモが指したのは、扉の中央にある第三の紋章だった。

「黒い霧、あそこから出てるよ!」

俺は目を凝らした。

境界追跡を起動する。

すると――

見えた。

黒い腕につながる無数の線。

扉から地下へ伸びる線。

そして、その奥にある巨大な装置へ続く一本の線。

だが、もう一つ。

第三の紋章から、どこか遠くへと伸びる、細い銀色の線があった。

「……何だ、あれ?」

スマートフォンが反応した。

【接続点の可視化】

【異常接続:1件】

【接続先:不明】

【第三の鍵との関連性:高】

「この銀色の線をたどれば……」

俺は手を伸ばした。

しかし、画面が赤く点滅する。

【警告】

【接続点を切断した場合、制御装置が停止する可能性があります】

「くそっ……! 簡単には切れないか!」

カイが隣に来た。

「何が見えている?」

「第三の紋章から、どこかにつながる線がある。これが黒い霧を操っている可能性が高い」

カイは弓を構え直した。

「なら、俺が時間を稼ぐ。お前は原因を探せ!」

「一人で大丈夫なのか?」

「海の監視者を甘く見るな!」

カイは不敵に笑った。

「俺たちは、嵐の海で何代も生き延びてきた一族だ!」

カイが矢を放つ。

矢の先端から青い光が走り、黒い腕を壁へ縫い止めた。

「今だ、蓮!」

俺はスマートフォンを操作した。

【接続点解析】

【解析進行率:12%】

「遅い!」

黒い腕が、再び動き始める。

狼王が飛びかかり、セレナが魔力を叩き込む。

ミリアも魔法を重ねた。

「蓮さん、あとどれくらいですか!?」

「分からない! でも、何か手がかりがあれば……!」

その時だった。

リナの地図が、突然まばゆい光を放った。

「えっ!?」

地図の中央に、小さな文字が浮かび上がる。

『三つ目の鍵は、血ではなく記憶に宿る』

「記憶……?」

俺は、その文字を読み上げた。

すると、扉が再び脈打った。

ドクンッ!

『不正な記録を検知』

『封印記録を再生します』

壁一面に、映像が浮かび上がった。

          ◇

そこに映っていたのは、古い港だった。

人々が荷物を運び、商人たちが商品を交換している。

その中に、一人の男がいた。

佐伯一郎だ。

一郎は若い商人たちに囲まれ、何かを話していた。

『境界を守るということは、扉を閉じることだけではない』

『必要な時には開き、危険な時には閉じる。その判断を誤らないことだ』

一郎はそう言って、古い鍵を手に取った。

だが、次の瞬間。

映像の中の空が黒く染まった。

黒い霧が港を覆い、人々が逃げ惑う。

そして、一郎の前に、黒い外套の人物が現れた。

『一郎。最後の鍵を渡せ』

「……!」

俺は息をのんだ。

第8話で現れた、あの存在と同じ声だった。

一郎は首を振った。

『渡せない』

『なぜだ? これさえあれば、すべての境界を自由に操れる』

『だからこそ、渡せないんだ』

一郎は鍵を胸に抱いた。

『境界を操る力は、誰か一人が独占していいものではない』

黒い外套の人物が、一郎へ手を伸ばす。

だが、一郎は鍵を地面に叩きつけた。

パァァァン!

鍵が三つの光に分かれた。

青い光は海へ。

金色の光は陸へ。

そして、銀色の光は――

誰もいない場所へ飛んでいった。

映像が途切れた。

俺は呆然と立ち尽くした。

「第三の鍵は……一郎が隠したのか?」

カイが驚いた顔をした。

「待て。今の映像……一郎の記録なのか?」

「たぶん。でも、最後の銀色の光はどこへ行ったんだ?」

リナが地図を見つめた。

「地図に……新しい場所が表示されています」

彼女が指差したのは、島のさらに地下。

そこには、今まで存在しなかった部屋が描かれていた。

【記録保管室】

【第三の鍵に関する記録あり】

俺のスマートフォンが鳴った。

【新規経路を検知】

【記録保管室への通路を確認】

「そこへ行けば、第三の鍵の秘密が分かるかもしれない!」

「だが、今は島が危ない!」

カイが叫ぶ。

「記録を探す時間があるのか!?」

俺は島の安定率を確認した。

【島の安定率:12%】

「……時間がない」

黒い腕が再び迫ってくる。

通路の床が割れ、海水が勢いよく流れ込んできた。

「蓮様!」

セレナが俺の腕をつかんだ。

「このままでは、全員が危険です!」

分かっている。

だが、ここで制御装置を止めれば、島は沈む。

何もせず逃げれば、黒い霧が周辺の境界へ広がるかもしれない。

第三の鍵が必要なのに、その正体が分からない。

その時――

「蓮!」

モモが、俺の目の前に飛んできた。

「さっきの銀色の光、覚えてる?」

「もちろん!」

「私、あの光の匂いを知ってる!」

「……匂い?」

モモは大きく羽ばたいた。

「月影の羽に似てるんだ!」

「月影の羽……!?」

俺は驚いてスマートフォンを確認した。

【第三の鍵】

【月影の羽との関連性:検出】

【詳細解析:未完了】

まさか。

第三の鍵は、月影の羽と関係しているのか?

もしそうなら、あの黒い霧の存在が使っていた力ともつながる。

そして、月影の羽は、俺たちがこれまで何度も見てきた不思議な力の一つだ。

「……全部、つながっているのか」

俺が呟いた瞬間。

扉の中央に、銀色の光が灯った。

『第三の鍵の反応を確認』

『記憶保管室への接続を開始』

ゴゴゴゴゴ……!

巨大な扉が、ゆっくりと開き始めた。

その向こうに現れたのは、階段ではなかった。

真っ白な空間。

無数の光の粒。

そして、中央に浮かぶ一冊の古い本。

表紙には、こう書かれていた。

『佐伯家 封印記録』

俺は一歩、前に出た。

すると、本がひとりでに開いた。

最初のページには、たった一行だけ記されていた。

『第三の鍵を守る者は、佐伯家の血を引かない』

「……え?」

カイが目を見開いた。

ミリアが息をのむ。

セレナも、言葉を失っていた。

佐伯家の血を引かない者。

それなのに、一郎が命を懸けて守った鍵。

その正体は、一体誰なのか。

本のページが、風もないのにめくれていく。

そして最後のページで、俺たちは見覚えのある紋章を見つけた。

黒い翼。

赤い月。

その下に刻まれた名前――

『ヴェルティア』

「……ヴェルティア?」

俺の声が震えた。

なぜ、彼女の名前がここにある?

なぜ、八百年前の記録に?

そして、第三の鍵と月影の羽は、どうつながっているんだ?

答えを探そうとした、その瞬間。

スマートフォンが、今まで聞いたことのない音を鳴らした。

【重要人物との接続記録を検知】

【ヴェルティアに関する古代記録を確認】

【警告:記録へのアクセスは制限されています】

さらに、その下に新しい通知が現れた。

【通信接続:ヴェルティア】

画面が点滅する。

そして――

彼女の声が聞こえた。

『蓮……聞こえる?』

俺は思わずスマートフォンを握りしめた。

「ヴェルティア!?」

『そこにいるのね……』

いつもの余裕のある声ではなかった。

どこか、焦っている。

『お願い。第三の鍵には触れないで』

「どうして!?」

返事はなかった。

代わりに、通信の向こうから、激しい戦闘音が響いた。

そして、ヴェルティアの声が途切れる直前――

『その鍵を守っているのは……私の――』

ブツッ。

通信が切れた。

同時に、島が大きく傾いた。

【島の安定率:5%】

【境界制御装置:停止寸前】

俺は、開いた本とスマートフォンを交互に見つめた。

第三の鍵を守る者。

佐伯家の血を引かない者。

ヴェルティア。

そして、八百年前から続く境界の秘密。

「……ヴェルティアに、何があったんだ?」

答えはまだ分からない。

だが、一つだけ確かなことがあった。

この島を救うためには、第三の鍵の秘密を知らなければならない。

そして、その秘密は――

俺が想像していたよりも、ずっと深く、彼女の過去につながっていた。

島が崩れ始める中、俺は決意した。

「みんな、絶対に生きて帰るぞ!」

カイが頷く。

「当然だ!」

セレナが俺の手を握りしめる。

「蓮様、最後までお供します!」

モモが叫ぶ。

「帰ったらプリン!」

「……ああ、約束する!」

その時、記録保管室の奥で、誰かが静かに笑った。

『遅かったな、佐伯蓮』

『第三の鍵は、すでに目覚めている』

そして、真っ白な空間の中央に――

もう一つの扉が現れた。

その扉には、ヴェルティアの紋章ではなく。

俺自身の顔が、刻まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。