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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第7話海から来た男!佐伯家の弟の子孫、現る!

 「おーい! 中にいるんだろ!」

遺跡の外から、男の声が響いた。

ガガガガガッ!

足元が揺れる。

壁に亀裂が走り、天井から小さな石片が落ちてきた。

スマートフォンが警告音を鳴らす。

【島の安定率:41%】

【境界制御装置:不安定】

【外部からの干渉を検知】

「急ごう!」

俺は出口へ向かって走った。

ミリアが魔法で落ちてくる石を弾き、リナは地図を握りしめながら先導する。

セレナは当然のように俺の隣を走っていた。

「蓮様、私の手を!」

「走れます!」

「遠慮しなくていいんですよ♡」

「遠慮じゃない!」

その後ろで、モモが羽をばたつかせた。

「プリン! プリンを置いてきた!」

「今はプリンどころじゃないだろ!」

「でも、島が沈んだらプリンも沈むよ!?」

「それは困るな……いや、困るけど今は違う!」

狼王が大きくため息をついた。

「お前たちは、危機感というものを知らぬのか」

          ◇

遺跡の入口を抜けた瞬間。

冷たい海風が顔に吹きつけた。

島の北側。

崩れかけた石段の下に、一人の男が立っていた。

年齢は二十代後半くらい。

日に焼けた肌。

短い黒髪。

濃紺の外套に、海水で濡れた革のブーツ。

背中には弓。

腰には短剣。

そして、肩から古びた鞄を下げていた。

男は俺たちを見るなり、険しい顔をした。

「お前たちが、遺跡を動かしたのか?」

「動かしたというか、勝手に反応したんです」

俺が答えると、男は眉をひそめた。

「勝手に?」

「ええ。俺たちが来たら扉が開いて、石の魔物が出てきて、島が沈み始めました」

「……最悪じゃないか」

「俺もそう思います」

男は額を押さえた。

「だから、この島には近づくなと、代々言い伝えられていたんだ……!」

その言葉に、俺は反応した。

「代々?」

男は俺の顔をじっと見つめた。

そして、俺の胸元にある佐伯家の紋章を見つけると、表情を変えた。

「その紋章……」

「知っているんですか?」

男は鞄から、小さな金属板を取り出した。

そこには、俺の紋章とよく似た模様が刻まれていた。

ただし、こちらは二つの輪のうち、海側の輪が強調されている。

「まさか、本当にいたとはな」

「何がです?」

男は深く息を吐いた。

「俺の名前は、カイ。佐伯家の弟の血を引く者だ」

「……えっ!?」

ミリアが目を見開いた。

リナの地図が青白く光る。

スマートフォンも、激しく振動した。

【血統反応:一致】

【海側境界監視者】

【佐伯家・分家系統を確認】

【対象:カイ】

「弟の……子孫?」

俺は思わず聞き返した。

カイは頷いた。

「そうだ。俺の一族は、海から境界を監視する役目を受け継いできた」

「じゃあ、佐伯一郎の弟が本当にいたんですね」

「ああ。俺たちの一族では、兄弟の名も記録に残っている。ただし、兄の一郎が商人として名を残した一方で、弟は海の監視者として生きた。二人の役目は違っていたんだ」

俺は遺跡の中で見た映像を思い出した。

陸から境界を守る兄。

海から異変を監視する弟。

その二つの役目が、八百年の時を越えて続いていた。

「それで、どうしてここに?」

俺が尋ねると、カイは海を振り返った。

「三日前、海の色が変わった」

「海の色?」

「ああ。夜になると、水平線の一部だけが赤く光るようになった。潮の流れもおかしくなり、魚が一匹も獲れなくなった」

カイは鞄から、折りたたまれた海図を取り出した。

そこには、赤い線が何本も描かれていた。

「俺たちの一族には、境界の異変を感じ取る者がいる。俺もその一人だ」

「それで、この島へ?」

「そうだ。海の監視塔に、古い警報が鳴ったんだ」

カイは海図の端を指差した。

「八百年前から、一度も鳴ったことがない警報がな」

俺は息をのんだ。

「八百年前から……?」

「境界制御装置に異変が起きたときだけ鳴る。俺は原因を調べるために船を出した」

カイは、俺たちが出てきた遺跡を見つめた。

「だが、島を見つけた途端、海が荒れ始めた。船は壊れ、俺はここまで泳いできたんだ」

「泳いで!?」

セレナが驚いた。

「この島まで、かなり距離がありますよ?」

「海の流れが勝手に俺を運んだんだ。まるで、島に呼ばれたみたいにな」

カイは俺を見る。

「そして、遺跡が光った。お前たちが来たからだろう?」

俺はすぐには答えられなかった。

確かに、俺たちが遺跡に入ってから異変が激しくなった。

しかし、スマートフォンは外部からの干渉も検知している。

俺たちが原因なのか。

それとも、俺たちが来る前から何者かが仕掛けていたのか。

まだ分からない。

          ◇

「まずは、島を止める方法を探さないと」

俺が言うと、カイは厳しい顔で頷いた。

「制御装置を起動する必要がある」

「それは分かっています。でも、正しい手順が分からないんです」

「……やっぱりな」

カイは鞄の中から、古い革表紙の手帳を取り出した。

表紙には、海側の佐伯家の紋章が刻まれている。

「俺の一族に伝わる記録だ。そこには、こう書かれている」

カイはページを開き、読み上げた。

「『陸の鍵だけでは扉は開かない。海の鍵だけでも扉は閉じない。二つの血筋がそろったとき、境界は本来の姿を取り戻す』」

俺はスマートフォンを確認した。

【境界鍵:認証条件を更新】

【陸側血統:確認済み】

【海側血統:確認済み】

【共同認証が可能です】

「二つの血筋……」

ミリアが呟く。

「蓮さんとカイさんが協力すれば、制御装置を動かせるということですね」

「ただし、気をつけろ」

カイの声が低くなった。

「制御装置は、単に島を浮かせているだけじゃない。島の地下にある境界の流れを調整しているんだ」

「境界の流れ?」

「世界と世界の間を通る魔力の流れだ。そこが乱れると、島だけじゃなく、周辺の海にある境界まで不安定になる」

カイは海の向こうを見つめた。

「最悪の場合、別々の世界が勝手につながる。向こうから何が来るかも分からない」

その言葉と同時に、海面が大きく盛り上がった。

ザバァァァン!

黒い霧が海から噴き上がる。

霧の中に、巨大な影が浮かび上がった。

「また来たのか……!」

カイが弓を構える。

狼王が唸り、ミリアも魔法を準備した。

スマートフォンが警告を表示する。

【境界異常体を確認】

【接続点:島の地下】

【外部干渉:継続中】

「島の地下だって!?」

俺が叫ぶ。

カイは歯を食いしばった。

「やはり、制御装置が誰かに干渉されている!」

黒い影が海面から腕のようなものを伸ばした。

その先には、赤く光る結晶が埋め込まれている。

「蓮さん! あの赤い部分です!」

ミリアが叫んだ。

俺は境界追跡を起動した。

黒い影と島の地下をつなぐ、一本の線が見える。

「接続点を切れば……!」

だが、その瞬間。

スマートフォンに新しい警告が表示された。

【注意】

【接続点を切断すると、島の安定率が急落する可能性があります】

「くそっ……!」

切れば敵の動きを止められるかもしれない。

しかし、島そのものが沈む危険がある。

「カイ! 制御装置を安定させる方法は!?」

「地下の制御室に行くしかない!」

「そこまでの道は!?」

「遺跡の中央から下りられる。ただし、今は封印が解除されているはずだ!」

「危険なんですね?」

「当然だ!」

カイは俺を睨んだ。

「だから言っただろう。この島には近づくなと!」

「でも、もう来ちゃいましたから!」

「開き直るな!」

「商人は、仕入れた商品を置いて帰れないんですよ!」

「今は商品じゃなくて島の話だ!」

「分かってます!」

セレナが俺の腕をぎゅっとつかんだ。

「蓮様、私も一緒に行きます」

「もちろん、みんなで行く」

俺は仲間たちを見渡した。

「この島を救わないと、周りの海も危なくなる。俺たちが原因かもしれないなら、なおさら放っておけない」

カイはしばらく俺を見つめていた。

やがて、小さく息を吐く。

「……一郎の子孫らしいことを言うな」

「一郎を知っているんですか?」

「直接会ったわけじゃない。だが、俺たちの一族には、あの人の記録が残っている」

カイは手帳を閉じた。

「困っている相手を見捨てない。それが、陸の佐伯家のやり方だったらしい」

俺は少し笑った。

「なら、海の佐伯家は?」

カイは弓を背負い直した。

「危険を感じたら、まず調べる。勝てない相手には正面から突っ込まない。そして――」

「そして?」

「生きて帰る」

「……商売の心得とは違いますね」

「海では、生きて帰らなければ商売もできないんだ」

なるほど。

それは確かに正しい。

          ◇

その時、海の向こうで鐘の音が響いた。

ゴォォォン……。

カイの顔から血の気が引いた。

「そんな……!」

「どうしたんです?」

カイは海図を広げた。

赤い線が、先ほどよりも増えている。

「監視塔の警報だ。しかも、これは島だけの異変じゃない」

「どういうことですか?」

カイは震える指で海図を指した。

「境界の異変が、海の向こうへ広がっている」

スマートフォンが新たな情報を表示した。

【境界異常:拡大中】

【未登録接続地点:複数】

【原因:不明】

【警告:外部干渉を検知】

俺は黒い霧を見つめた。

さっきの声。

『境界をすべて開けばいい』

あれは、単なる脅しではなかったのかもしれない。

誰かが本当に、世界中の境界を開こうとしている。

そして、そのためにこの島の制御装置を利用している。

「カイ」

「何だ?」

「この島の地下に行けば、誰が干渉しているのか分かるかもしれない」

カイは黙って頷いた。

「分かるかもしれない。だが、戻れなくなる可能性もある」

「……」

「制御室に入れば、境界の流れに巻き込まれる危険がある。俺の一族でも、そこへ入った者はほとんどいない」

セレナが不安そうに俺を見た。

ミリアもリナも、黙っていた。

危険なのは分かっている。

それでも、ここで引き返せば、異変の原因を突き止められない。

俺はスマートフォンを握りしめた。

【共同認証:準備完了】

【制御室への経路:未確認】

【推奨:海側監視者と協力してください】

俺はカイに手を差し出した。

「一緒に行きましょう」

カイは、その手をしばらく見つめた。

そして、力強く握り返した。

「分かった。だが、一つ約束しろ」

「何です?」

「俺の指示を聞け。海の中では、俺の方が詳しい」

「分かりました」

「それと、勝手に扉を開けるな」

「……善処します」

「そこは約束しろ!」

セレナが笑顔で口を挟んだ。

「蓮様は、扉を見ると開けたくなる方なんです♡」

「そんな性格じゃない!」

「先ほども扉を開けていましたよね?」

「勝手に開いたんです!」

狼王が呆れた声を出した。

「もうよい。行くぞ」

こうして俺たちは、新たな仲間――海側の佐伯家の子孫、カイと行動を共にすることになった。

だが、俺たちはまだ知らなかった。

カイが持ってきた手帳の最後のページに、こんな一文が残されていたことを。

『もし陸の鍵を持つ者が島に現れたなら、決して一人で制御室へ行かせてはならない』

そして、その下には――

別の筆跡で、こう書かれていた。

『なぜなら、制御室には、佐伯家の血を持つ者にしか開けられない扉がある』

その扉の向こうで。

黒い霧の中の何者かが、静かに笑っていた。

「ようやく、二つの鍵がそろった」

島の地下で、巨大な扉がゆっくりと動き始めた。

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