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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第8話 陸と海、二つの血筋!封印された地下制御室

 「こっちだ! 急げ!」

カイが崩れかけた石段を駆け下りていく。

俺たちも、その後を追った。

島はまだ揺れていた。

ゴゴゴゴゴ……!

遠くで岩が崩れる音が響く。

海面からは黒い霧が立ち上り、島の周囲を覆い始めていた。

スマートフォンが警告音を鳴らす。

【境界異常:拡大中】

【島の安定率:34%】

【制御装置の停止まで、残り時間不明】

「安定率が下がってる!」

「急ぐしかない!」

カイが振り返らずに叫んだ。

「地下制御室に入れれば、原因を調べられる。だが、そこには古い封印がある!」

「封印って、魔物でもいるんですか?」

「魔物なら、まだ分かりやすい!」

「それは嫌な答えだな!」

セレナが俺の腕をつかんだ。

「蓮様、危険です。私の後ろにいてください」

「いや、俺が先頭に……」

「未来の夫を危険にさらすわけにはいきません♡」

「だから夫じゃない!」

ミリアが呆れた顔をした。

「こんな時まで……」

その時、モモが俺の肩に止まった。

「ねえ、蓮!」

「今度は何だ?」

「この島、なんだかお腹が空いてるみたい!」

「島が!?」

「うん! 何かを食べたがってる感じ!」

「島に口はないだろ!」

「でも、プリンを食べたい時の感じに似てる!」

「お前の感覚、全部プリン基準なのかよ!」

狼王が低く唸った。

「冗談を言っている場合ではないぞ。何かが近づいている」

俺たちは一斉に足を止めた。

階段の奥。

暗闇の中から、金属が擦れるような音が聞こえてきた。

ギィ……ギギギ……。

カイが弓を構える。

「来るぞ!」

          ◇

暗闇から現れたのは、巨大な石の門だった。

いや、門そのものが動いていた。

二本の石柱が、足のように床を踏みしめる。

中央には赤い結晶。

その表面には、佐伯家の紋章が刻まれていた。

スマートフォンが反応する。

【古代防衛装置】

【侵入者判定を開始】

【陸側血統:確認済み】

【海側血統:確認済み】

【共同認証を要求】

「共同認証?」

俺が呟くと、カイが頷いた。

「俺たち二人で認証しろということだ」

「どうすれば?」

「紋章に触れるんだ。だが、何が起こるかは分からない」

「分からないのに触るんですか?」

「触らなければ先に進めない!」

「……そうですよね!」

俺は石柱の左側へ。

カイは右側へ向かった。

二人で同時に手を伸ばす。

紋章に触れた瞬間――

パァァァン!

青と緑、二つの光が走った。

石門の中央に、巨大な文字が浮かび上がる。

【陸の鍵】

【海の鍵】

【二つの血筋を確認】

【封印解除】

「よし……!」

カイが安堵した、その直後だった。

石門の赤い結晶が、突然黒く染まった。

『認証を確認しました』

機械のような声が響く。

『制御室への入室を許可します』

「……何だ?」

俺はスマートフォンを見た。

【警告】

【認証信号に異常を検知】

【第三者による介入の可能性】

「カイ、待ってくれ!」

だが、遅かった。

石門が左右に開き、奥から黒い霧が噴き出した。

その向こうには、地下へ続く長い通路が広がっていた。

そして、通路の壁には無数の扉が並んでいた。

日本の古い木製の扉。

石造りの扉。

鉄の扉。

見たこともない金属で作られた扉。

どれも、微かに光を放っている。

俺は息をのんだ。

「これ……全部、異世界につながっているのか?」

ミリアが慎重に周囲を見渡した。

「おそらく。しかも、かなりの数です」

リナの地図が激しく震えた。

「地図が……描ききれません!」

その瞬間、スマートフォンに新しい表示が出た。

【未登録接続先:37】

【接続状態:不安定】

【複数の境界が同時に開放される危険性】

俺は表情を引き締めた。

「もし全部の扉が開いたら……」

「二つの世界だけの問題ではなくなる」

カイが答えた。

「俺たちの一族は、これを防ぐために海を監視してきたんだ」

          ◇

通路を進むと、壁に古い文字が刻まれていた。

カイが手帳を取り出す。

「これは、俺の一族に伝わる記録と同じだ」

「読めるのか?」

「一部ならな」

カイはゆっくりと読み上げた。

「『海は境界の変化を伝える。潮の乱れは扉の乱れ。赤き光は封印の弱まりを示す』」

俺は海岸で見た赤い光を思い出した。

「だから、三日前に異変を感じたのか」

「ああ。海の監視者は、代々その変化を見てきた。俺の祖先も、そのまた祖先もな」

カイは壁に刻まれた紋章を指差した。

そこには、一郎の紋章とよく似たものが描かれていた。

ただし、陸側の輪の隣に、波を表す模様が刻まれている。

「兄の一郎が商人として境界を守る仕組みを整えるよりも前から、俺たちの祖先は海を見張っていたんだ」

「つまり、弟だけが海を守っていたわけじゃない」

「ああ。弟も、海を守ってきた一族の一人だった。兄弟は、それぞれの家に伝わる役目を引き継いだんだ」

俺は頷いた。

これで、佐伯家の歴史が少しずつ見えてきた。

八百年前から続く境界の管理。

陸から人々を助けた商人たち。

海から異変を監視した一族。

そして、その両方を結びつける島。

「……俺たちが、ここに来たのは偶然じゃないのかもしれないな」

「どういう意味だ?」

カイが尋ねる。

「俺のスマートフォンは、この島を接続候補として表示した。カイも異変を感じてここへ来た。まるで、誰かが俺たちを集めたみたいだ」

カイの表情が険しくなった。

「俺も同じことを考えていた」

「やっぱりか」

「だが、俺たちを呼んだのが島なのか、それとも別の何者かなのか……そこまでは分からない」

その時。

通路の奥から、低い声が響いた。

『正解だ』

俺たちは一斉に振り返った。

誰もいない。

しかし、声は続いた。

『陸の鍵と、海の鍵。ようやく二つがそろった』

セレナが俺の前に立つ。

「姿を見せなさい!」

『急ぐ必要はない。お前たちは、もうここまで来たのだから』

「誰だ!」

俺が叫ぶ。

返事の代わりに、通路の奥の扉が一つだけ開いた。

その向こうに、人影が立っていた。

黒い外套。

顔は見えない。

だが、胸元には見覚えのある紋章があった。

佐伯家の紋章。

「……佐伯家の人間なのか?」

俺が呟いた瞬間、人影が笑った。

『そうだ。私は、お前たちよりもずっと長く、この境界を見てきた』

カイが弓を引き絞る。

「嘘をつくな! 俺たちの記録に、お前のような者はいない!」

『記録に残らなかっただけだ』

人影はゆっくりと手を上げた。

すると、並んでいた扉が一斉に震え始めた。

ガガガガガ……!

スマートフォンが警告を発する。

【第三者の介入を確認】

【複数の接続先が起動】

【境界異常:危険】

「まずい!」

ミリアが魔法を放つ。

だが、光は人影の手前で消えてしまった。

狼王が飛びかかろうとする。

その瞬間、床から黒い鎖が伸び、狼王の足に絡みついた。

「グルルルッ!」

「狼王!」

俺は境界追跡を起動した。

見えた。

人影から、通路の奥にある巨大な装置へと伸びる黒い線。

そして、その線は――

俺たちの足元にもつながっていた。

「まさか……俺たちの認証を利用したのか!」

『その通りだ』

人影が答えた。

『二つの血筋がそろわなければ、制御装置の封印は解除できなかった』

カイが叫ぶ。

「俺たちを利用したのか!」

『必要なことだった』

「ふざけるな!」

カイが矢を放った。

だが、矢は人影に届く前に砕け散った。

人影は、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

『さあ、最後の鍵を渡してもらおう』

俺はスマートフォンを握りしめた。

【新機能候補:接続遮断】

【条件:第三者の接続経路を特定】

「……渡すものか」

俺は人影を睨みつけた。

「俺は商人だ。相手が誰であろうと、条件も分からない取引はしない」

人影が、初めて足を止めた。

『一郎と同じことを言うのだな』

「一郎を知っているのか?」

『もちろんだ』

人影は笑った。

『あの男は、最後まで私の取引を断った』

俺の背筋が冷たくなった。

一郎と、この人物は過去に接触していた。

しかも、取引を持ちかけていたということは――

この存在は、ただ境界を壊そうとしているだけではない。

何かを得るために、境界を利用しようとしているのだ。

『次に会う時は、もっと大きな取引をしよう』

人影の姿が黒い霧に包まれる。

『それまでに、考えておけ。世界をつなぐか、それとも、すべてを失うか』

霧が消えた。

同時に、黒い鎖がほどけ、狼王が立ち上がる。

だが、扉の振動は止まらなかった。

スマートフォンが新たな表示を出す。

【境界制御装置:緊急停止まで残りわずか】

【接続遮断:解析中】

【制御室への到達が必要です】

俺はカイを見た。

「行こう。あいつの正体を調べるのは、島を救ってからだ」

カイは頷いた。

「同感だ」

セレナが俺の手を握る。

「蓮様、必ず一緒に帰りましょう」

「もちろんです」

モモが小さく羽ばたいた。

「帰ったらプリン!」

「……ああ、プリンもな」

俺たちは、通路の最奥にある巨大な扉へ向かって走り出した。

その扉には、二つの紋章が刻まれていた。

陸の鍵。

海の鍵。

そして、その中央には――

三つ目の、見たこともない紋章があった。

スマートフォンが静かに表示する。

【最終認証を確認】

【第三の鍵:未登録】

【所有者:不明】

俺は足を止めた。

二つの血筋だけでは、まだ足りない。

この島には、もう一つの秘密が隠されている。

そして、その鍵を持つ者は――

八百年の記録の中にも、名前が残されていなかった。

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