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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第5話 島と佐伯家――八百年の時を越えた約束

『鍵を持つ者よ』

『扉の前へ』

『最初の商人が待っている』

古代の守護魔物が、蓮を見つめていた。

その胸にある赤い魔力核が、ゆっくりと明滅している。

「……最初の商人って、誰のことだ?」

蓮が問いかけても、魔物は答えなかった。

代わりに、島の中央にそびえる塔が青白く光った。

ゴゴゴゴゴ……。

地面が揺れる。

遺跡へ続く石畳が、砂浜の奥から一本ずつ姿を現した。

「道ができた……!」

リナが地図を広げる。

「でも、おかしいです。さっきまで、ここに道はありませんでした」

ミリアが魔力を探る。

「島そのものが、蓮さんを認識しているみたいです」

「俺を?」

蓮はスマートフォンを確認した。

【血統照合:一致】

【対象:佐伯蓮】

【古代遺跡への入場権限を確認】

【警告:同行者の安全は保証されません】

「最後の一文、すごく嫌なんだけど……」

セレナが即座に蓮の腕をつかんだ。

「では、私が蓮様を守ります!」

「ありがとう。でも、みんなで慎重に進もう」

「はい♡ 未来の夫の命は、私の命より大切です!」

「自分の命も大切にしてください!」

モモは蓮の頭の上で羽を震わせた。

「ぷりん!」

「モモも勝手に先へ飛んでいくなよ」

「ぷりん!」

返事だけは立派だった。

          ◇

石畳を進むと、巨大な門が現れた。

門の高さは、十メートル以上。

表面には、見たこともない文字と紋章が刻まれている。

そして中央には――。

佐伯家の紋章。

蓮は足を止めた。

「……間違いない」

その紋章は、実家に残されていた古い品や、父が持っていた記録に描かれていたものと同じだった。

ただし、門の紋章には小さな違いがあった。

佐伯家の紋章を囲むように、二つの輪が刻まれている。

一つは陸。

もう一つは海。

その間を、一本の線が結んでいた。

「陸と海……?」

蓮が呟く。

リナが地図を重ねた。

「第七接続先と、第八接続候補……。もしかしたら、この二つを結ぶ印なのかもしれません」

ミリアが頷く。

「陸から境界を守る者と、海から境界を監視する者。以前、記録にあった話ですね」

蓮は息をのんだ。

かつて佐伯家には、二つの役目があった。

陸から境界を守る一族。

そして、海から境界を監視する一族。

別々の場所で、同じ使命を受け継いできた者たち。

「……この島は、その二つの役目が始まった場所なのか?」

蓮が門に近づいた。

すると、スマートフォンが震えた。

【認証を開始します】

【佐伯家の紋章を確認】

【血統照合:一致】

ピコン。

門の中央に光が走った。

ゴゴゴゴゴ……!

巨大な扉が、ゆっくりと開いていく。

その向こうには、広大な石造りの空間が広がっていた。

壁には古代の商人たちが描かれている。

荷車を引く者。

船を操る者。

食料を分け与える者。

そして、異なる世界の住人たちが、互いに品物を交換する姿。

蓮は思わず足を止めた。

「これ……商売の記録なのか?」

「そうみたいですね」

ミリアが壁画を見上げる。

「でも、単なる交易ではありません。ここに描かれた人々は、異なる世界から来ているようです」

壁画の最後には、一人の男が描かれていた。

日本の衣服によく似た服。

腰には商人の道具。

そして、胸元には佐伯家の紋章。

その男が、巨大な扉の前に立っていた。

蓮は壁画に近づいた。

男の顔は、驚くほど自分に似ていた。

「……この人が、最初の商人?」

そのとき、壁画の下に刻まれた文字が光った。

『私は、世界と世界をつなぐ扉を見つけた』

『扉の向こうには、飢えた人々がいた』

『私は食料を渡した』

『彼らは鉱石を差し出した』

『だが、私は必要な分だけを受け取った』

蓮は静かに文字を読んだ。

さらに、その下には続きがあった。

『世界をつなぐことは、罪ではない』

『だが、すべてを手に入れようとすれば、世界は壊れる』

『だから私は、扉を守ることにした』

蓮の脳裏に、父の言葉が蘇る。

――必要なものを届け、必要なものを受け取る。それ以上を求めない。

「……父さんが言っていたことと同じだ」

セレナが蓮を見つめた。

「蓮様のお父様も、この記録を知っていたのでしょうか?」

「分からない。でも、佐伯家に受け継がれてきた教えが、ここから始まったのかもしれない」

その瞬間。

壁画の奥で、小さな光が灯った。

          ◇

光の先には、一つの石碑があった。

その中央には、佐伯家の紋章。

下には、古い日本語が刻まれている。

『佐伯一郎』

蓮は息を止めた。

「一郎……!」

初代当主の名前。

佐伯家の最初の記録に残されていた人物だ。

蓮は石碑に触れた。

すると、目の前に青白い映像が浮かび上がった。

古い時代の島。

海には、いくつもの船が浮かんでいる。

島の中央には、巨大な扉。

そして、その前に立つ一人の男。

『私は佐伯一郎』

男が語り始めた。

『この島は、世界と世界の境界が最初に確認された場所だ』

『私は偶然、扉を見つけた』

『向こう側には、人々がいた』

『彼らは助けを求めていた』

映像の中で、一郎は食料を運んでいた。

人々は喜び、代わりに作物や鉱石を差し出した。

だが、やがて様子が変わった。

人々は、より多くの品物を求めるようになった。

扉の向こうから、鉱石を奪おうとする者たちが現れた。

境界が揺れ、黒い霧が島を覆った。

『私は気づいた』

一郎の声が響く。

『扉を開くことだけが、正しいのではない』

『閉じることも、守るために必要なのだ』

一郎は仲間たちと協力し、巨大な装置を動かした。

島全体が青白く光る。

そして、扉の一部が閉じられた。

『陸の扉は、私の子孫が守る』

『海の扉は、弟の一族が監視する』

『二つの役目がそろわなければ、境界を完全に制御することはできない』

蓮は映像を見つめた。

「弟の一族……」

以前、海から来た商人が語った話。

佐伯家には、陸を守る一族と、海を守る一族がいた。

その起源が、ここに記されていたのだ。

しかし、映像はまだ終わらなかった。

一郎は最後に、島の中央にある装置を見上げた。

『いつか、私の子孫がここへ来るだろう』

『そのとき、どうか忘れないでほしい』

『境界を守るとは、扉を閉じ続けることではない』

『必要なときに開き、危険なときには閉じる』

『その判断を誤らないことだ』

映像が消えた。

蓮はしばらく動けなかった。

「……俺たちが守ってきたものは、そういうことだったのか」

ミリアが静かに頷く。

「ただ扉を封じるのではなく、正しく使うために守ってきたんですね」

「でも、どうして今になって、この島が反応したんでしょう?」

リナの問いに、誰もすぐには答えられなかった。

そのとき。

スマートフォンが激しく震えた。

【古代記録を取得】

【佐伯家の起源:一部解放】

【新情報:境界制御装置】

【新能力候補:境界鍵】

【解放条件:制御装置の認証】

さらに、画面の下に警告が表示された。

【注意】

【境界制御装置:不安定】

【封印状態:低下中】

【第三者による干渉を検知】

蓮の顔が変わった。

「第三者……?」

その瞬間、遺跡の奥から大きな音が響いた。

ドォォォン!

床が揺れ、壁の石が崩れ落ちる。

狼王が牙をむいた。

「何者かが、装置に手を出している!」

セレナは蓮の前に立った。

「蓮様、下がってください!」

「いや、待って!」

蓮はスマートフォンを見つめた。

地図に、新しい赤い点が表示されている。

島の中央。

制御装置のある場所。

そして、そのすぐ近くに――。

もう一つの反応。

【侵入者を検知】

【対象:不明】

【境界干渉:強】

蓮は拳を握りしめた。

「……誰かが、俺たちより先に来ていたのか」

そのとき、遺跡の奥から声が響いた。

『佐伯の血を引く者よ』

『ようやく来たか』

蓮は顔を上げた。

声の主は、一郎ではない。

もっと低く、もっと冷たい声だった。

『お前が来るのを、八百年待っていた』

暗闇の奥で、赤い光が二つ灯った。

そして、誰かが笑った。

『さあ、境界を開け』

『世界を一つにする時が来たのだ』

蓮はスマートフォンを構えた。

「……冗談じゃない」

商人として、必要なものを届ける。

それが佐伯家の教えだった。

だが、世界を一つにするために、すべての境界を開くつもりはない。

「俺は、あんたの言いなりにはならない」

蓮のスマートフォンが青白く輝いた。

【境界鍵:認証開始】

八百年前に交わされた約束。

佐伯家が受け継いできた二つの役目。

そして、島の奥で目覚めた何者か。

蓮はついに、境界の始まりへと足を踏み入れた。

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