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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第2話 バルトとの約束!未知の大陸へ続く航路図

セントラル商業組合。

朝から、蓮は店のカウンターで荷物の準備をしていた。

「保存食よし。防寒用品よし。回復薬よし……」

「蓮さん、冒険に行くんですよね?」

ミリアが不思議そうに尋ねた。

「そうだけど?」

「どうして商品リストを三回も確認しているんですか?」

「冒険先でも商売するからだよ!」

蓮は真顔で答えた。

「知らない土地に行くんだぞ。何が売れるか分からないだろ?」

「普通は、魔物や危険な場所を心配すると思いますけど……」

「それも大事。でも、仕入れと売上も大事だ」

「蓮さんらしいですね……」

ミリアが苦笑した、そのとき。

バタン!

店の扉が勢いよく開いた。

「蓮!」

「バルトさん?」

息を切らして入ってきたのは、バルトだった。

その後ろには、荷物を積んだ荷車がある。

「約束の商品、持ってきたぞ!」

「もう納品できたんですか?」

「ああ!」

バルトは荷車を指差した。

「乾燥豆、二十袋。乾燥野菜、十袋。数量も品質も、契約どおりだ!」

ガルドがすぐに荷車へ近づいた。

「では、検品する。袋の破損、重量、品質を確認させてもらうぞ」

「もちろんだ」

バルトは力強く頷いた。

以前の彼なら、信用値が低いことを理由に、取引先から商品を集めることさえ難しかった。

それでも、彼は諦めなかった。

村人たちの証言を集め、仕入れ先を探し、約束した納品日に間に合わせたのだ。

ガルドは豆の袋を確認し、野菜の状態も調べた。

「……問題ない」

「本当か?」

「ああ。数量も品質も契約どおりだ」

蓮は笑顔で手を差し出した。

「バルトさん、取引成立です!」

バルトはその手を握った。

「ありがとう、蓮」

「お礼を言うのはまだ早いですよ。これからも取引を続けたいですから」

「……ああ。必ず信用を取り戻す」

そのとき。

ピコン!

蓮のスマートフォンが鳴った。

【取引完了】

【対象:バルト商会】

【契約履行:確認】

【信用値を更新しました】

蓮は画面を見つめた。

「来た……!」

「どうなったんですか?」

ミリアが覗き込む。

そこには、新しい数字が表示されていた。

【暫定信用値:-410 → -350】

「六十も上がった!」

ミリアが声を上げた。

バルトは、しばらく画面を見つめていた。

「……俺の信用が」

拳を握る。

「本当に、戻り始めたんだな」

「まだマイナスですけどね」

蓮が言うと、バルトは笑った。

「分かっている。だが、以前は何をしても下がるばかりだった。今は違う。自分の仕事で、少しずつ取り戻せる」

「その調子です」

蓮は頷いた。

「焦らず、ひとつずつやっていきましょう」

「おう!」

その顔には、以前のような絶望はなかった。

          ◇

「ところで、蓮」

納品を終えたバルトが、ふと思い出したように尋ねた。

「明日から北方へ向かうんだったな?」

「はい。未知の土地を調べに行こうと思っています」

「未知の土地、か……」

バルトは少し考えたあと、荷車の奥から古い筒を取り出した。

「なら、これを持っていけ」

「これは?」

「航路図だ」

筒から出てきたのは、黄ばんだ羊皮紙だった。

何度も折り畳まれた跡があり、端の部分は擦り切れている。

描かれているのは、北方の海岸線と、その先に広がる海。

だが、普通の地図とは違っていた。

海の真ん中に、いくつもの点と線が記されている。

そして、その最奥には――。

黒い円と、一本の縦線。

周囲に細かな線が伸びた、不気味な印があった。

蓮の表情が変わった。

「……これ」

「知っているのか?」

「以前、境界の異常を調べたときに見た印と似ています」

ガルドが地図を覗き込む。

「確かに、バルトの仕入れ先に届いた偽造書類にあった印とよく似ているな」

ミリアも息をのんだ。

「どうして、航路図にそんな印が……?」

バルトは静かに話し始めた。

「数年前、北方へ商品を運んだ商人がいた。帰ってきたとき、そいつは奇妙な話をしていたんだ」

「奇妙な話?」

「ああ。海の上に、地図には存在しない島があったらしい」

蓮は地図を見つめた。

「島……?」

「近づくと、羅針盤が狂い、船の位置が分からなくなった。しかも、島の中央には古い石造りの建物があったそうだ」

「遺跡か……」

「そいつは上陸しなかった。遠くから見ただけで、船を引き返したんだ」

バルトは地図の一点を指差した。

「だが、戻ってきた船員の一人が、島で見た印を描き残していた。それが、この印だ」

蓮のスマートフォンが震えた。

ピコン!

【未登録の航路情報を検知】

【座標を照合中……】

【第八接続候補】

【目的地:北方海域・未登録区域】

【境界反応:強】

蓮は思わず息を止めた。

「……間違いない」

「蓮さん?」

「この地図、俺のスマホが探している場所とつながっている」

ミリアが地図を見つめる。

「ということは、佐伯家の秘密にも関係しているかもしれないんですね」

「たぶんな」

蓮は航路図を丁寧に巻き直した。

商売のために北方へ向かう。

その先で見つけたのは、ただの珍しい商品でも、未知の市場でもなかった。

境界の始まりにつながる手がかりだった。

「バルトさん。この地図、借りてもいいですか?」

「もちろんだ。お前なら、何かを見つけてくれる気がする」

「ありがとうございます。必ず返します」

「いや、返すのは地図だけじゃなくていい」

「え?」

バルトは笑った。

「帰ってきたら、未知の土地の話を聞かせてくれ。俺もいつか、自分の足で新しい市場を見つけたいんだ」

蓮は笑顔で頷いた。

「分かりました。面白い商品があったら、仕入れ先も紹介しますよ」

「ははっ! それは楽しみだ!」

          ◇

その夜。

蓮たちは出発の準備を整えていた。

保存食、防寒用品、回復薬、交換用の衣服。

そして、バルトから預かった航路図。

「これで準備完了だな」

蓮がスマートフォンを確認する。

【目的地:北方海域・未登録区域】

【到達予測:三日】

【警告】

【対象区域では通常の転移機能が制限される可能性があります】

「……転移が使えなくなる?」

ミリアが画面を覗き込んだ。

「どういうことですか?」

「分からない。でも、簡単には戻れない場所かもしれない」

狼王が低く唸った。

「ならば、油断は禁物だ。帰り道を失えば、強者であっても危険に陥る」

リナは地図を両手で持ち、目を閉じた。

「……見えます」

「何が?」

「海の向こうに、大きな扉があります。でも、その前に……」

リナの表情が曇った。

「黒い霧が広がっています。扉を守るように、何かがいる」

一瞬、部屋が静まり返った。

蓮は地図を見下ろした。

危険がある。

帰れなくなる可能性もある。

それでも――。

「行こう」

蓮は顔を上げた。

「この先に何があるのか、確かめたい。佐伯家が何を守ってきたのかも、境界の始まりが何なのかも」

ミリアが頷く。

「私も行きます」

リナも力強く頷いた。

「私も!」

狼王が立ち上がる。

「我も同行しよう」

そして、背後から明るい声が響いた。

「もちろん、私も行きます♡」

「……セレナさん」

振り返ると、セレナが旅行用の大きな荷物を抱えていた。

「今回は危険な旅です。蓮様を一人にするわけにはいきません」

「いや、俺一人じゃないですけど」

「では、未来の妻として皆様を支えますね♡」

「だから妻じゃない!」

「照れなくてもいいですよ♡」

「照れてません!」

ミリアが小さく笑った。

「でも、セレナさんがいると商売は心強いですね」

「ミリアさんまで!」

セレナは満面の笑みを浮かべた。

「お任せください。未知の土地でも、蓮様の商売を成功させてみせます」

「……頼りにしています」

蓮は苦笑した。

そのとき、スマートフォンに新しい通知が届いた。

ピコン。

【外部接続を検知】

【接続元:黒薔薇商会】

蓮の目が見開かれた。

「黒薔薇商会……?」

画面に、短いメッセージが表示された。

【北方海域へ向かうのね】

【その航路には、あなた一人では知らない危険がある】

【先に調べておくわ】

最後に表示された名前は――。

【ヴェルティア】

蓮は思わず笑った。

「……相変わらず、行動が早いな」

セレナの笑顔が、ぴたりと止まった。

「ヴェルティア……?」

画面を覗き込んだセレナの目が細くなる。

「蓮様。あの方も来るのですか?」

「まだ分からないよ」

「そうですか……」

セレナはにっこり笑った。

「では、私も負けていられませんね♡」

「何に対抗するつもりなんですか……」

          ◇

一方、その頃。

北方海域を望む高台。

黒い翼を広げたヴェルティアが、遠くの海を見つめていた。

その手には、古い航路図。

蓮たちが持つものと、同じ印が描かれている。

「八百年前……」

ヴェルティアは静かに呟いた。

「あなたが消えた場所に、ようやく道がつながるのね」

彼女の背後で、黒い霧が揺れた。

その奥から、誰かの声が響く。

「境界の始点へ向かうつもりか、ヴェルティア」

ヴェルティアは振り返らなかった。

「ええ」

「そこへ行けば、もう戻れないかもしれない」

「構わないわ」

紅い瞳が、暗闇の中で輝いた。

「私は、確かめなければならないことがある」

ヴェルティアは翼を広げた。

「それに――」

口元に、かすかな笑みが浮かぶ。

「未来の夫を、危険な場所へ一人で行かせるわけにはいかないでしょう?」

次の瞬間。

黒い翼が夜空を切り裂いた。

ヴェルティアは、蓮たちより先に北方海域へ向かっていた。

          ◇

翌朝。

港に、一隻の船が停泊していた。

蓮たちは荷物を積み込み、出発の準備を整える。

「よし。行こう!」

蓮が船へ足をかけた。

その手には、バルトから預かった航路図。

スマートフォンには、未知の海域を示す赤い線。

そして、その先には――。

【第八接続候補】

【境界の始点】

蓮は海の向こうを見つめた。

「待ってろよ。必ずたどり着いてみせる」

船の帆が、大きく風を受けた。

未知の海へ。

地図にない島へ。

そして、佐伯家が長年隠してきた秘密へ。

蓮たちの新しい冒険が、今、始まろうとしていた。

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