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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第3章 未知の海へ!最初の商人と境界の秘宝
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第1話 信用値が再び上昇!蓮との初取引に迫る黒い影!

セントラル商業組合。

「バルトさん! 大変です!」

朝、商業組合の職員がバルトの倉庫へ駆け込んできた。

「また何かあったのか?」

バルトは、納品する商品の確認を止めた。

昨日、蓮との取引契約を結んだばかりだった。

乾燥豆二十袋。

乾燥野菜十袋。

三日後の納品に向けて、準備を進めていた。

「まさか、契約が取り消されたのか?」

「違います!」

職員は首を横に振った。

「信用値が計算し直されたんです!」

「……何?」

職員は、正式な通知書を差し出した。

「村人たちの証言と、追加調査で分かった記録の訂正が反映されました。あなたの暫定信用値は――」

バルトは息を止めた。

「マイナス620から、マイナス410です!」

「……二百以上も?」

「はい!」

職員は嬉しそうに頷いた。

「まだ再審査は続いています。すべての問題が解決したわけではありませんが、確実に回復しています」

バルトは、しばらく通知書を見つめていた。

マイナス999。

あの数字を見たとき、商人としての人生は終わったと思った。

誰も商品を買ってくれない。

誰も契約してくれない。

長年築いてきた信用が、一瞬で崩れた。

それなのに――。

「……戻ってきたんだな」

バルトの目が潤んだ。

「俺の信用が……少しずつ」

職員は静かに頷いた。

「あなたが提出した記録も、村人たちの証言も、きちんと審査されています。これからも正しい取引を続けてください」

「ああ。必ず」

バルトは通知書を胸に抱いた。

「もう、同じ失敗はしない」

          ◇

一方、蓮の店。

「マイナス410まで回復したのか!」

蓮は、スマートフォンに届いた報告を見て声を上げた。

「よかったですね、蓮さん!」

ミリアも笑顔になった。

「村人たちの証言が大きかったんでしょうね」

ガルドは帳簿を確認しながら頷いた。

「証言だけじゃない。改ざん記録が訂正されたことや、本人が責任を認めたこと。そして新しい取引を始めたことも、評価につながっているんだろう」

「なるほどな」

蓮は頷いた。

「でも、まだマイナス410だ。ここで安心するわけにはいかない」

「そのとおりだ」

ガルドは帳簿を閉じた。

「だからこそ、今回の取引が重要になる。契約どおりに納品できれば、次の信用につながる」

そこへ、店の扉が勢いよく開いた。

「蓮!」

バルトだった。

「聞いたか? 俺の信用値が上がった!」

「聞いたよ。おめでとう!」

蓮が手を差し出す。

バルトはその手を握った。

「お前と取引する前に、もう一度礼を言いたかった」

「礼なら、商品をきちんと届けてくれれば十分だよ」

「ははっ! 厳しいな!」

「商売だからな」

二人は笑った。

だが、蓮はすぐに真剣な表情に戻った。

「ところで、仕入れの準備は順調?」

「ああ。乾燥豆も乾燥野菜も、品質のいいものを集めている。ただ……」

「ただ?」

バルトは少し顔を曇らせた。

「昨日、仕入れ先の一つから妙な連絡があった」

「妙な連絡?」

「俺との取引を続けるなら、今後は商品を卸さないと言われたんだ」

店の空気が変わった。

「……誰がそんなことを?」

「相手は詳しく話さなかった。ただ、商業組合の上層部から注意されたと言っていた」

ガルドが目を細めた。

「信用値の低い商人と取引するな、ということか」

「表向きはそうだろうな」

バルトは唇を噛んだ。

「だが、あの仕入れ先とは長年付き合っている。今まで、そんなことは一度もなかった」

蓮はスマートフォンを取り出した。

昨日の通知が頭をよぎる。

【警告】

【バルト商会との取引契約を検知】

【境界の始点による監視対象に追加されました】

「……偶然とは思えないな」

ミリアが不安そうに尋ねた。

「蓮さん。もしかして、バルトさんが信用を回復するのを邪魔している人たちがいるんでしょうか?」

「まだ断定はできない。でも、調べる必要はある」

蓮はバルトを見た。

「取引は中止しない」

「蓮……」

「契約を結んだ以上、こちらにも責任がある。それに、正しい取引をしている人間が、誰かの都合で潰されるのはおかしいだろ」

バルトは拳を握りしめた。

「……ありがとう」

「ただし、無理はしない。仕入れ先が商品を出せないなら、別の場所を探す」

ガルドがすぐに口を挟んだ。

「その前に、契約書を確認する。仕入れ先との契約条件によっては、違約金や納期の問題が出るからな」

「分かった」

バルトは頷いた。

「俺も、できることを探す」

          ◇

その日の午後。

蓮たちは、バルトの仕入れ先へ向かった。

町の外れにある、古い倉庫。

入口には、乾燥豆や穀物を扱う商会の看板が掲げられている。

「ここが、いつもの仕入れ先だ」

バルトが扉を叩いた。

しばらくして、中から男が現れた。

「……バルトか」

男は気まずそうに目をそらした。

「話は聞いていると思うが、うちではもう商品を卸せない」

「理由を聞かせてくれ」

「悪いが、俺にも事情がある」

「長年の付き合いだろう?」

「だからこそ、こんなことは言いたくないんだ!」

男は声を荒らげた。

「お前の信用値がマイナス999になったとき、うちも取引先から警告された。お前に商品を卸せば、こちらの信用まで傷つくかもしれないとな」

「だが、今はマイナス410まで回復している」

「知っている。だから余計に困っているんだ」

男は周囲を気にするように、声を落とした。

「今朝、商会宛てに書類が届いた。お前と取引を続けるなら、うちの取引資格を再審査すると書かれていた」

「何だと……?」

バルトの顔から血の気が引いた。

蓮は一歩前に出た。

「その書類を見せてもらえませんか?」

男は迷った。

「他の商会の内部書類だ」

「無理に見せてほしいとは言いません。ただ、正式な書類なのか、差出人が誰なのか。それだけでも確認できませんか?」

ガルドも静かに続けた。

「もし正式な命令なら、根拠となる規定があるはずです。規定もなく取引資格を脅しに使っているなら、別の問題になります」

男はしばらく黙っていた。

やがて、倉庫の中へ戻り、一枚の書類を持ってきた。

「……これだ」

書類には、商業組合の印が押されていた。

だが――。

ガルドが目を細めた。

「待て。この印はおかしい」

「え?」

「正式な通知書の印と、細かい部分が違う」

蓮も書類を確認した。

確かに、商業組合の印に見える。

しかし、文字の配置が少しずれていた。

「偽造された書類……?」

ミリアが呟いた。

ガルドは慎重に書類を確認した。

「断定はできない。だが、正式な通知書かどうか、組合に確認する必要がある」

バルトは男を見た。

「俺との取引をやめろと命令したのは、誰なんだ?」

男は首を横に振った。

「名前は書かれていない。ただ、書類の最後に……」

「最後に?」

男は震える指で、書類の下部を指差した。

そこには、小さな黒い印があった。

円の中に、一本の縦線。

その周囲に、細い線が何本も伸びている。

蓮のスマートフォンが突然震えた。

ピコン!

【警告】

【不正な境界干渉を検知】

【関連記録:信用値操作】

【識別不能な接続先を確認】

蓮は息をのんだ。

「……やっぱり、つながっている」

「蓮?」

バルトが尋ねる。

蓮はスマートフォンの画面を見せた。

「信用値を操作している仕組みと、この書類。何らかの関係がある可能性が高い」

ガルドが厳しい表情になる。

「つまり、バルトの信用回復を邪魔しているだけではない。取引先まで脅している可能性があるということか」

「まだ証拠は足りない」

蓮は書類を見つめた。

「でも、この印は手がかりになる」

バルトは唇を噛んだ。

「俺が信用を失っただけじゃない。俺と取引する人間まで、巻き込まれるのか……」

「だからこそ、記録を残すんだ」

蓮は言った。

「書類の写しを取り、正式な照会をする。仕入れ先との取引条件も確認する。相手が誰でも、証拠を集めて正面から対応しよう」

バルトは深く頷いた。

「ああ。もう逃げない」

          ◇

倉庫を出た帰り道。

蓮のスマートフォンに、商業組合から新しい通知が届いた。

【信用値再審査】

【対象:バルト商会】

【暫定信用値:-410】

【追加証言の確認中】

そして、その下にもう一つの表示。

【不明な接続から照会】

【対象:佐伯蓮】

【取引契約の継続意思を確認中】

「……今度は俺か」

ミリアが顔を強張らせた。

「蓮さんまで、監視されているんですか?」

「そうみたいだな」

蓮はスマートフォンを握りしめた。

バルトの信用値が回復し始めた途端、仕入れ先への圧力が現れた。

しかも、今度は蓮自身の取引まで調べられている。

これは単なる商業組合内部の不正ではない。

境界を越えた商売そのものを、誰かが管理しようとしているのかもしれない。

ガルドが静かに言った。

「蓮。相手の狙いが分かるまでは、契約書と取引記録をすべて保存しておけ」

「ああ」

蓮は頷いた。

「バルトとの取引は続ける。納品も予定どおり進める」

「もし、さらに妨害されたら?」

ミリアが尋ねた。

蓮は少しだけ笑った。

「そのときは、商人らしく交渉するさ」

「相手が交渉に応じなかったら?」

「……そのときは、境界の力も使うことになるかもしれない」

スマートフォンの画面には、黒い印が小さく表示されていた。

その印は、以前、境界の記録装置で見たものとよく似ていた。

蓮は確信し始めていた。

信用値を操作する者たちと、境界を支配しようとする者たち。

二つの事件は、同じ線でつながっている。

そして、その線の先には――。

【境界の始点】

という文字が、静かに浮かび上がっていた。

バルトの再出発は、まだ始まったばかり。

だが今度は、彼一人の問題ではない。

蓮の商売そのものが、巨大な陰謀に巻き込まれようとしていた.

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