新しい家族と今後
あれから一年が経過した。
日々の鍛錬もそろそろ頭打ちに思えてきておったが、屋内での活動と母様や父様に連れられての散歩だけでは、まあ仕方がないの。
ワシ自身にそこまで変化はないが、我が家には一つ大きな変化が起きておった。
それは……。
「叔母さん!替えのおしめってどこにあるの!?ルルがおもらししちゃったみたいなの!」
腕の中で泣き喚く小さな赤子を抱えてリーナが母様に尋ねてくる、尋ねられた母様は胸元に吸い付く赤子をなだめながら。
「えっと、そこの窓の外に干してあるわ。左に干してある方が乾いてるはずだからそっちを使ってあげてね」
「大丈夫なの姉さん?リーナに任せてしまって、私がやりましょうか?」
母様の隣に座ってお乳を吸っている様子を眺めていたルー叔母様が腰を浮かせかける。
「大丈夫よ、レイ君が見ててくれるわよね?」
リーナの後ろに控えていたワシにウインクしてくる母様、まあそう来るとは思っておったがな。
「はい!母様!大丈夫です!」
「むー!私一人で大丈夫だもん!レイのおしめも変えたことあるんだよ!」
確かにリーナにおしめを変えてもらったことはあったの、ただその時は……。
「私が隣で付いて教えてあげながらじゃない、それも最終的には私がやることになったし……」
そうであった、「私がやる!私がやる!」と息巻いてやってみたはいいものの、きつすぎたり緩すぎたりで結局ルー叔母様が変えてくれたのじゃ。
「今回は大丈夫だもーん!さあルル、リーナお姉ちゃんがすぐに奇麗にしてあげるからねー」
今回も息巻いて手早くルルの汚れたおしめを外したはいいものの…。
「リーナ姉様、それだとちょっと緩いです、ルルが動けば外れてしまうかもしれないです」
「そ、そう?それじゃあこんな感じかな?」
「そうです、ルルも嫌がってませんし、それくらいでいいと思うです」
お尻を拭いてもらって泣き止んだルルは抵抗もせずに大人しくおしめを変えてもらい、ムズがる様子もないため適当な形で交換を終えられたようじゃ。
父様が日中仕事でいないため、おしめの交換はよく手伝っているので、問題ない事が確認できる。
「ほら!私に任せてくれれば問題ないんだから!」
と、少し成長してきた胸を張り、自慢げにドヤ顔を見せるリーナ。
出会って四年が経過した今、リーナの見た目は一二歳ほどまで成長しておる。
ちょくちょく遊びに来ておったので急激に成長した風には見えんが、徐々に女性らしい体つきになってきておる。
「レイ君に後ろで見ててもらってたじゃない……」
「フフフ、でもこれで覚えられたじゃない、これでいつ赤ちゃんができても大丈夫ね。ありがとう、リーナ」
「姉さんも甘やかさないで欲しいわ、レイ君と違ってこの子はすぐに調子に乗るんだから」
授乳を終えてルナにげっぷを促しながらリーナにお礼を言う母様。
我が家の大きな変化、それは我が家に新しい家族が一度に二人できたことである。
二月ほど前に、母様が出産した際にはワシら家族に驚きと、それを大きく上回る喜びに包まれておった。
なんと生まれてきたのは双子だったのじゃ。
先に生まれた姉のルナ、そして弟のルル。
その二人が新たにオルコット家の仲間に加わったのじゃ。
男の子、女の子のどちらでも名前を考えていた両親にとってはとても喜ばしい事だったじゃろう。
二人の名前はワシ同様に両親から一文字ずつもらってつけられたのじゃが、その時初めて父様の名前がレオでなく、レオナルドであることが分かった。
母様の腕の中でお腹がいっぱいになったからか、船をこぎ始めたルナはおてんばな女の子であり、今のように眠たいときか授乳中以外はムズがる時間の多い子じゃ。
母様からのアイサインが来たため、ワシは小走りに近づくとルナを預かる。
ルー叔母様が抱っこしたそうに見てくるが、なぜかルナは母様かワシ、そして爺様にだけなついており、他の人間が抱っこすると大変ムズがるのじゃった。
ちなみに父様が抱っこした場合、ムズがりはしないものの、非常に不機嫌そうな顔をするのじゃった。父様涙目である。
入れ替わりにリーナからルルを受け取ると、ルルに授乳を始める母様。
ルナとは対照的に非常に大人しく、あまり泣かないのんびり屋さんがルルである。
隣でルナが泣いていてもボーっと天井を眺め続け、誰に抱っこされても表情一つ変えないというちょっと変わった子である。
それでも好みはあるらしく、家族以外の人間に抱かれていると、「あー」と言いながら家族に向かって手を伸ばしてくる様子から、誰でもいいという訳ではなないのじゃろう。
腕の中であむあむ言いながら眠りにつきそうであるルナを見ていると母様が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「ごめんなさいね、レイ君、この子たちが生まれてからずっとお手伝いばかりで。レイ君も遊びたいでしょうに」
「いいです。僕もルナとルルがとっても可愛いです」
実際むちゃくちゃ可愛いからのう、腕の中で寝息を立て始めたルナに目を落とす。
うむ、可愛い……、可愛い……?か、かわ……、うん可愛い。
もうずっと抱っこしててもいいくらい可愛いのじゃ。
「……っ!」
「どうかした?姉さん?」
「レイ君がいい子過ぎて辛い……」
「……姉さん本当に子供が出来てから変わったわね、まあレオ兄さんと結婚してからも大分変ったけど」
若干呆れた様子でつぶやくルー叔母様。
「当然じゃない、この子たちは私の天使よ!こんな素晴らしい宝物を愛でるには感情を内に押し殺すなんて不可能よ!」
「まあ子供が可愛いのは分かるけどねぇ」
などと言いながら隣で座ってルルの様子を眺めていたリーナの頭を乱暴に撫でる叔母様。
「ちょ!ちょっと母さん!髪が乱れちゃうじゃない!」
「あなたくらいの年でそこまで身だしなみに気を使わなくていいのよ、むしろ外で元気に遊んでるくらいの方がいいわ。それじゃあ姉さん、ちょっとこの子の魔法を見てくるわね」
言いながらリーナの頭をつかむとそのまま連行するように扉まで引きずっていく。
「ちょ!ちょっと母さん!まだルナとルル見てたいぃ!レイとも遊んでないぃ!」
「今日はまだ練習終わってないでしょ?練習が終わったら思う存分楽しみなさい」
「やだぁぁぁぁ!」とドップラー効果を残しながらリーナが退場していった。
あの連行方法を見ておると母様の妹なんじゃなぁと思えてくるのう、ルー叔母様。
「よし、ルル君もお腹いっぱいになったわね。いい子いい子」
すっと乳房から口を放したルルの様子を見た母様がげっぷを促し、腕の中で揺らして眠りを誘う。
ワシはすっかり眠りについたルナを双子専用に用意した大きめのベビーベッドに寝かせつけ、二人に近ずくとつま先立ちになってルルの頭を優しくなでる。
「うふふ、レイ君はとってもいいお兄ちゃんね?でも本当にお家の手伝いばかりしなくていいのよ?これからはちょくちょくルーも様子を見に来てくれるみたいだし」
そういってくれる母様の目元には若干隈が出来ておる。ワシが元来あまり泣かない子供だったのもあるが、今回は双子の子育てであるため負担も大きいのじゃろう。
じゃが今回の母様の提案はワシにとっても渡りに船じゃった。
「んー、本当にいいですけど……、あ!なら朝と夕方に一人で村の中を散歩してもいいです?」
「一人で……?んー……、でもレイ君なら約束は守ってくれるだろうし、村の中だけなら大丈夫よね」
母様の中でも折り合いがついたのか、ルルをベッドに寝かせつけてワシの頭を撫でる。
「いいわ、ただ村の中だけよ?もし迷子になったらすぐ近くの家を訪ねるのよ?」
「はい!そうするです!」
よしよし、これで前世の日課が再開できるわい。ここ数年日課であった朝夕の散歩が出来なかったので若干気持ち悪かったんじゃよなぁ。
「それじゃあ早速今日の夕方から行ってくるです!」
「うふふ、気をつけて行ってくるのよ?」
#####
トテトテトテトテ
トテトテトテトテ
「ん?レイじゃないか?どうしたんだ?一人かい?」
「リグおじさん!ハイです!一人でお散歩です!」
「んー?ルイさんは知ってるのかい?」
「ハイです!母様から許してもらったです!」
「そうかそうか、ルイさんが許可してるなら問題ないか、村の外に出ないようにな?」
「ハイです!母様とも約束したです!」
「そうかそうか、なら気を付けるんだよ?」
「ありがとです!」
小さな手足を元気に動かして走り去っていく子供を見送ると、村の入り口の守衛の仕事に戻る。
三十分後……。
トテトテトテトテ
トテトテトテトテ
「ん?レイじゃないか?どうしたんだ?」
同じ方向からレイが元気に駆けてきたので思わず声をかける。
先ほどに比べると結構な汗をかいているようだ。
「散歩です!走るの楽しいです!」
「え?散歩?そ、そうか?まあ子供は楽しく元気なのが一番だからな。気を付けるんだぞ?」
「ハイです!」
言うと再び目の前を走り去っていく、先ほど見た時とほとんどペースが変わっていないようだが……。
「村を一周した……?ハハハ、まさかな。確かにあの子の足で村を一周したならこのくらいだろうけど、……まあハーフエルフが特殊なのかな?エルフだとあのくらいになるには一二歳くらいだが……、まあそんなものか」
きっとどこかでコースを変えてゆっくりと歩いていたのだろう。
三十分後……。
トテトテトテトテ
トテトテトテトテ
「ちょ!ちょっと待てレイ!」
焼き直したように同じ時間が経過したとき、まさかと思って音のした方向をみるとまたこちらにレイが走って来た様子を見て慌てて声をかける。
「?どうしたです?リグおじさん?」
声をかけられて止まるレイ。その額からは球のような汗がにじり出ている。
「あ!もう薄暗くなってきてるから帰ったほうがいいです?ちょっと散歩に夢中になってたです」
「いや、まあそれもそうなんだが……。レイ、お前もしかしてずっと走ってたのか?」
「ハイです!走るの楽しいです!」
「そ、そうか……。まあ子供の体力は凄いしな、熱中してたらそういう事もあるのかもな……」
「心配してくれてありがとうです、リグおじさん!僕帰るです!」
「お、おう。気をつけてな」
先ほど来た道をトテトテトテトテと走り去っていくレイを見送る。
「えっと……、気の所為だよな?」
首を傾げ、腕を組みながら走り去った方角を見つめ続ける。あとで村の反対の守衛に確認してみよう。
#####
ふぅ!久しぶりに体を思い切り動かすと気持ちいいのう!ただ体力筋力まだ心元ないのう、まあまだ四歳じゃし、長い目で見ていくとするかのう。
守衛のリグおじさんに見送られて真っ直ぐに家に帰る。
「ただいまです」
「あらあら、レイ君、ちょっと遅かったわね?父様に迎えに行ってもらおうかと思ってたのよ?」
少し心配した様子で駆け寄ってくる母様。
「ごめんなさいです、ちょっと楽しくなっちゃったです」
「ううん、いいのよ。あら、すごい汗じゃない!こんなになるまで遊んでたなんて、やっぱり我慢させちゃってたのね……」
「水よ」と唱えて懐から布を取り出すと顔と体をぬぐってくれる母様。
「心配だったけど、ちゃんと約束も守ってくれるみたいだし、いいわ、明日からも散歩してらっしゃい」
奇麗に体を拭き終わると優しく頭を撫でてくれる。
そこまで我慢しておったわけではないが、今の様子をみて色々気を使ってくれたようじゃの。
「ありがとです!母様!」
満面の笑みで返すと母様がガバッと抱きしめた来た。
「か、母様?」
「か、可愛い!可愛いわレイ君!」
これでもかと顔をグリグリしてくる母様に若干引き気味だったのじゃが、寝室の扉が開くと父様と爺様が出てきた。
「おお、レイ君帰ったのか。ルイから一人で散歩に出かけたと聞いて心配していたが大丈夫だったのだな」
少し心配そうな顔をして爺様がこちらに歩み寄ってくる。
まあ爺様と言っても見た目は三十代後半の見目麗しいエルフなんじゃが。
ワシの爺様であるリンド エノヴァは、ワシらの住むエノヴァ村の村長さんじゃ。
御年百三十四歳(前世と合わせたワシよりも年上)で先代森の守り手も務めていたという事じゃ。
エルフは線の細い美男美女というワシの固定観念を崩したお人でもあり、筋骨隆々と言うほどではないが程よく締まった体をしており、村長職に就いた今でも現役を張れそうである。
「爺様!」
母様の腕から抜け出すと爺様に駆け寄る、その際母様が少しムッとした顔をしておったが。
「爺様!こんばんわです!」
「うんうん、こんばんわ、レイ。相変わらずいい子だなぁ」
恵比須顔で頭を撫でてくれる爺様。背後で母様がどんな顔をしているのかは分らんが、父様が苦笑を浮かべている。
「どうしたです爺様?お家にくるなんて珍しいです?」
わきの下を抱えて抱っこしてくれる爺様に伺う、爺様は基本村長の仕事に追われているため(たまに昔の立場に戻りたいとこぼしているそうで)、基本家からあまり出ず、でても近隣の村との打ち合わせに出かけるくらいのはずじゃ。
しかしその問いかけは確信を付いてしまっていた様子で、少しばかりバツの悪い表情が返って来た。
「あー…、うん、なんだ、そのことなんだが……」
ワシを下ろすと気持ち怯えた視線を母様に向ける。
「えっとな、ルイ、レオ君、落ち着いて聞いてほしいんだが……」
「ん?どうかしたのかしら父さん?」
「来年の話なんだがな……」
「来年……?ああ!レイ君の泉の儀ね!本来は十五歳なのを、成長度合いがそれに近いから来年にできないかってお願いしてたものね!」
泉の儀?
初めて聞く単語じゃったが、どうやら前世で言う七五三的な催しものなのじゃろうか?エルフ流の節目行事みたいなものかの?
「あー……その、泉の儀なんだが……できないんだ……」
「あら?やっぱり十五歳にならないとできないの?それならそれで仕方ないけれど……」
「……いや、レイ君はその……泉の儀を受けられないんだ……」
ピシッ!
そんな音が聞こえたような聞こえなかったような……、いや、気の所為じゃの、きっとこの背後から感じる母様のプレッシャーも気の所為じゃ、そうに違いあるまい。
「あなた……?ちょっと寝室の扉を閉めてくれないかしら?」
父様が高速でうなずくと、速やかに、しかしそっと扉を閉める。
「どういう事かしら?父さん?どうしてレイ君が泉の儀が受けられないのかしら?」
わー、母様の声が怖いのー。後ろを向きたくないのー。きっとまた例のアルカイックスマイルが張り付いてるんじゃろうなぁ。
「いや!私もな!頑張ったんだよ!?でも近隣の村長が言う事も理解できるし!私だって個人的には業腹ではあるけど、やっぱり立場的な問題もあるしそう強く出られなくてな!?」
とてもうろたえて弁明する爺様、やっぱり爺様でもこうなった母様は怖いんじゃなぁ。
「そう……、他の村の村長が反対しているのね……、あなた、ちょっと私出かけてくるわね?しばらくレイたちを頼めるかしら?」
「えーっと……、どこに行くのかな?」
「うふふ、大丈夫、ちょっと反対している村長さんたちとお話してくるだけだから……」
あ、これあかん奴じゃ。
「い、いかんぞルイ!早まった真似は……!」
「大丈夫よ、父さん。安心して?ちゃんと冷静に村長さん達を説得してくるわ」
母様に近づいて肩をガタガタ揺さぶりながら落ち着かせようとする爺様をしり目に父様に近づいて問いかける。
「父様、泉の儀ってなんです?」
「んー、エルフの森に伝わる聖なる泉に、十五歳になったエルフが身を清め、泉を覗くと、自身の力を見ることが出来るとされている儀式らしいね。レイの成長具合だと、エルフの十五歳に相当するからと母様がお義父さんにお願いしていたんだが」
なんと!それはステータス表示なのではないか!?
自身の身体能力やスキルなどを視覚化できるというファンタジー世界のお約束の一つじゃ!
「お前だって知ってるだろう!?聖なる泉は森の神によってエルフにもたらされた奇跡!エルフ以外の者に使わせてはならないという習わしだと!」
「うふふ、おかしなことをいうのね父さん?レイ君もエルフじゃない?」
「確かにレイも半分は我々の血が流れている!だが半分はレオ君の、人の血が流れているんだ!万が一森の神の怒りに触れて、他の者たちが使えなくなってしまえばお前も本意ではあるまい!」
「むう、それは……確かにそうだけど……」
お、母様の勢いが少しばかり落ちたの、この調子で落ち着いてくれればよいのじゃが。
しかし……。
ちらりと父様の様子を伺うと、困ったような表情を浮かべてはいるが別段取り乱した様子はない。
父様も母様ほどではないがワシを溺愛してくれているので、てっきり母様と一緒に抗議するかと思っておったが、母様が激しすぎて逆に冷静になったのかのう?
爺様の説得に納得させられそうになっている母様もその様子に気づいたようじゃった。
「あなた、あなたは何とも思わないの?レイ君が泉の儀を受けられないなんて可哀そうじゃない」
「あー……そのことなんだけどね」
父様が少し言いずらそうにしているが、意を決したのか。
「俺たち人の方にも似た催しが有って、そっちなら問題なくできるんだよ」
「「え?」」
父様の話にぽかんとする母様と爺様。
「うん、黙っていて悪かったけど、ルイが泉の儀を楽しみにしていたから、そちらが出来るのであればと思って話していなかったんだ、申し訳ない」
頭を下げる父様、なるほど、それで落ち着いておったのじゃな。
「えっと、それはどういうものなの?」
「人の村や町には教会があるのは知ってるだろう?あそこで専用の水晶に手を当てると誰でも見ることが出来るんだ、人でも五歳で初めて確認できるんだが、それ以降は自由に見ることができるし、エルフほど重要視していないんだよ」
あー、なるほど、エルフと人ではそこに温度差があるのじゃな、エルフにとっては神聖な儀式でも人にとっては五歳以降はお好きにどうぞといった程度の内容のため、父様的には無理だったらこっちでいいだろう的な感覚じゃったんじゃな。
「という事で、泉の儀がダメなら、レイを教会に連れて行ってやろうと思うんだけど、どうかなルイ?」
「そ、そうね……、まだちょっと釈然としないけれど……、レイ君がいいなら……」
母様がワシに目を向ける。
「父様!ということは森から出るですか?」
「ああ、そうだな、その場合は森の外にでて近くの村か町に行くことになる」
「凄いです!行ってみたいです!」
ステータスが閲覧できるうえに、森の外も見ることが出来るとかワシ得過ぎるじゃろ!
「母様!行ってもいいです?」
「うん……、そうね、レイ君がそれで喜んでくれるなら構わないわ!」
「やったです!母様ありがとうです!」
母様に走り寄って抱き着くと、母様も一応納得入ったのか、優しい笑みを受けて抱き留めてくれる。
爺様はほっと胸をなでおろし、父様も安心した様子でワシと母様を見守っている。
「あ、そういえば父さん、ルーとリーナを知らない?魔法の練習に行ってから帰ってこないのよ」
落ち付きを取り戻した母様が爺様に問いかけると爺様はまた苦い顔をした。
「今の話をした途端に、『ちょっと旦那と話すことができたから帰るわね』と言ってリーナを引きずって帰っていったよ、お前たち姉妹はそんなところばかり似て……」
少しお腹を押さえながら話す爺様、大丈夫かの爺様、胃薬とか見つけたら差し入れるとするかの。
しかしそうか、来年にはステータス閲覧と、初めての遠出が控えておるのじゃな!これは楽しみでならんわい!
明確になった将来に、胸を躍らせるワシじゃった。
三歳の誕生日
「お帰りなさいませ、旦那様」
呼ばれたと思ったら早々ゴシックメイドスタイルのエンジュがおった。
「お茶になさいますか?ご入浴なさいますか?それとも、ご奉仕いたしましょうか?」
「OK、ストップじゃエンジュ」
「はい」
「このちょっとした茶番、気に入ったんじゃろうか?」
「いえ、色々と試行錯誤した結果なのですが、今回もダメでしたか」
「うん、じゃって本筋の言葉を崩すから遠ざかっておるじゃろ?むしろ固くなっておるじゃろ?」
「レイ、固くなっているんですか?」
「下ネタ禁止じゃ、三歳児のどこを見ていっておる」




