SS レイと村の子供たち
ショートストーリーです。
レイ君の強かさと、それを踏まえた人間関係への飢えを描けたらと。
朝の日課に行こうといつも通り五時頃目覚めたワシじゃったが、今日はどうやらタイミングが悪かったららしく、隣室でルナとルルの泣き声が聞こえてた。
急いで母様のもとに向かうと、泣くわ喚くはの大合唱で母様も手が付けられなかったらしく、ワシが入って来たのを見て安心した様子を見せた。
「ごめん!レイ君!ちょっとルル君の相手を頼めるかしら!?」
珍しくテンパった母様に返事を返すまでもなくルルを抱っこするとあやし始める。
どうも日が悪かったのか、その後二人に授乳をしておしめを変えてもぐずつきが終わらず、気が付けば朝の九時を回っておった。
母様と一緒にゼーハー息を付きながら、やっと寝静まった二人の怪獣に笑顔を向ける。
「お、やっと寝静まったんだな。二人ともお疲れ様、朝食は用意しておいたから食べてくれ、俺は今から仕事に行ってくるよ」
ひょっこりと寝室に顔を出すと、一言だけ行って家から出ていく父様。
どうやら二人の世話で手が離せないワシらの代わりに、出来る限り家の事をやっておいてくれたようじゃ、できた父様である。
「ふぅ、助かったわレイ君、父様にも帰ってきたらお礼を言わないといけないわね。さ、朝食をいただきましょうか」
寝静まった二人の頭を撫でると、ワシの手を引いて居間へと向かう。
「今日は散歩がまだだったわよね?良ければ食べたら行ってきて?」
「いいです?今日はルー叔母様も来ないですし、大変じゃないです?」
父様の作ってくれた卵焼き、パン、スープと手を伸ばしながら確認する。
うーむ、やはり久しぶりにコメが食いたいのう、この近辺では存在しないらしいので仕方ないのじゃが。
「大丈夫よ、あれだけの時間大騒ぎしてたんだもの、しばらくは起きないわ」
まあ都合四時間騒いでおったからのう、数時間は眠り続けるとは思うんじゃが。
「んー…、じゃあちょっと行ってくるです、なるべく早く帰るです」
あまり気を使っても母様が気にするじゃろうと考え、手早く食事を終えると母様に挨拶して遅ればせながら日課に取り掛かる。
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トテトテトテトテ
食後すぐというのもあって、一週目は歩いて回り、二週目からいつもの駆け足に切り替えたところで、村の中央付近からキャッキャと騒ぐ声が聞こえてくる。
目を向けると、どうやら見た目的にはワシと同い年くらいの子供たちが三人で遊んでいるようじゃった。
思わず足を止めて様子を見ると、その中の一人がワシの姿を認めたらしく、足を止めると自然残りの二人もワシに目を向ける。
その視線に込められた感情は、畏怖と好奇心。
まあ割合は七対三といったところかの、理由はある程度検討は付いておるが。
実際母様や父様に連れられて村を出歩いた時も、どの子供からも同じような視線は向けられておった。
その様子を見て母様は残念そうな、しかし仕方がないという表情を見せておった。
ま、いい機会じゃしここらで友達を作っておくかのう、流石に家族親戚以外にも友好関係は欲しいしのう。
理由と解決策がある程度分かっているため、ワシは迷いなく子供たちに足を向けた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、遊んでるです?僕も一緒に混ぜて欲しいです!」
どうも話しかけられると思っていなかったのか、少し戸惑った様子を見せる子供たち。
「な!なんだよ!混ざり物が!」
おう…、混ざりものとはちょっと差別的じゃのう。
一番気の強そうな男の子が強く言うが、優しそうな女の子が「ちょっと、その言い方は…」となだめてくれる。
まあ言った男の子も、言った直後にバツの悪い顔をしておったので、悪い子ではないのじゃろう。
「混ざりものです?」
首をかしげるとさらにその子の表情に罪悪感が上乗せされる。
「お、お前人間とエルフのハーフだろ!父さんと母さんが言ってた!だから、俺たちよりもグングン成長するんだろうって!」
あー、やっぱりかのう、この子らが畏怖の目線を向ける理由は。
リーナの様子から想像できてはおったが、エルフは人間の成長速度の三分の一じゃ。
言い換えれば、エルフ視点でワシは三倍の速度で成長しておる。
人間視点で見るならば、一歳の時点で三歳の成長、三歳で九歳、十歳で三十歳じゃ。
そりゃ畏怖の視点で見るのも理解できるというものじゃ。
そして父様と母様の立場上、大人はある程度のみ込めていたとしても子供はそうはいかない。
純粋に自身の感情を優先するのが普通じゃ。
実際彼らの今の視線からは、畏怖と好奇心以外に、罪悪感と同情が見て取れる。
強気に出た子供からは罪悪感、残りの二人からは今のワシに対する同情。
「?確かに父様は人間で母様はエルフだって聞いてるです、なにかお兄ちゃんたちと違うです?」
全部知っておるが何食わぬ顔で尋ね返す。
「お前は俺たちと違ってどんどん大きくなるんだ!仲良くなったって、すぐに俺たちを見下すんだろ!だから仲良くなんてしてやらないんだ!」
「え…?遊んでくれないです…?」
ここでワシ、必殺の涙目攻撃。
「え…、いや、そんな事は…?い、いや!そんな目で見たって駄目なんだからな!」
「アル君…、そんな意地悪しなくても大丈夫じゃない?この子悪い子には見えないよ?」
「う、うん。父さんも母さんもすごくいい子だって言っていたし…」
うむ、村の大人たちに愛想良く振舞っていたかいがあったのう、まあ素で振舞っていたので欺いたわけではないのじゃが。
「うぅ…でもこいつが大きくなったら…」
うむ、ここで最後の一押しじゃな。
「……僕が大きくなったとしても、お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃないです?」
これも別に計算だけでなく、本心からじゃがの、体が大きくなったとしても年上は年上じゃし。
まあ前世のように年齢以外年下に誇れるものがないような人物は尊敬できんじゃろうが。
この時分の子供たちにそれを求めるのも酷というものじゃろう(推定年齢十二歳前後じゃが)。
「な、なんだよ…、お前が大きくなっても威張ったりしないって言うのかよ…」
「威張るです?どうしてお兄ちゃんとお姉ちゃんたちに威張るです?」
「アル君、やっぱりこの子いい子だよ…アル君そんな風にしなくても大丈夫だよ」
「う、うん…。僕もそう思うよ…」
「なんだよぅ…それじゃ俺が悪者みたいじゃないかよぅ…」
ふっ!やはり子供は簡単じゃな!まあどちらかと言えば純粋なんじゃろうがのう。
子供の世界は簡単純粋なようでいてそれでも社会の一部である。
小さな子供の世界でも上下の認識が存在し、子供だからこそその立ち位置は非常に重きを置く。
絶対者である親や大人という存在がある以上、子供たちの中での関係性というものは自己確立において大変必要となる。
人間関係とは上下関係であるといえる、対等と言える存在を認めるには若年期ではあまりにも時期尚早と言えるじゃろう。
じゃからこそそこを明確にしてしまえば、純粋である以上子供はすぐに受け入れてくれる。
「むー…、わかったよ!仲間に入れてやるよ!俺はアル!アルお兄ちゃんって呼べよ!ずっとだぞ!」
「私はリム、これからよろしくね」
「ぼ、僕はリック、よろしくね」
それぞれが名乗り、こちらの名乗りを待つ。
「僕はレイです!よろしくです!アル兄ちゃん!リム姉ちゃん!リック兄ちゃん!」
今回のエンジュさん。
百合作品熟読中。
追加
守衛のおじさんと女の子が同じ名前と気づき、おじさんがリグ、女の子がリムとなりました、補完お願いします。




