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無理やりに骨を動かされるような痛みと燃えるような熱さは20分ほど続いた。その間にミアはテオをリビングのソファに寝かせ朝食の片付けを済ませていた。
痛みと熱さが収まるとテオは三角巾から右腕を抜き状態を確かめる。
「やっぱり治ってんな」
目の前で起きた現実なのだが素直に信じることは出来なかった。本当であれば魔力を喰らったところでまだ完治には半日はかかるような状態だった。だが実際にかかったのはたったの20分魔力治癒が正常に働いたのだとしても早すぎる。
原因として考えられるのはただ1つ、喰らった魔力の質の高さ。
魔力による肉体の治癒は魔力の量はもちろんなのだが魔力の質によってもその効果が変わる。質の高い魔力はそれだけ肉体への働きかけ・影響力が高く肉体の自然治癒力をより高めることが出来る。
もしミアから喰らった魔力が平均的な魔力とは比べ物にならないほどに上質の魔力だったとすれば、治癒の早さも喰らった量がほんのわずかであったことも理解が出来た。
「よっと」
テオはソファから勢いよく起き上がるとドア越しにダイニングで食後のコーヒーを飲んでいるミアを見つめる。
少しミアのことがわかり始めたかと思ったが、その間にはまだまだ距離があることを知らされた。近づけたかと思えば突き放された。テオは近づけばいいのかこのまま距離を開けていた方がいいのかわからなかった。
自分以外の人間の気持ちなんてわかるわけがない、もちろん何を考えている時だってある、だがそんなことの方が稀なのである。
だからテオはミアの目を信じて待つことにした。『答えは直にわかる』そう告げていたように見えたあの目を信じて。
それに今は別にやることがある。今はわからない他人の心に振り回されるより目に見えていることを頑張らなくてはならない。そう思いながらテオはポケットに入れたアスファルトのかけらに触れた。
ダイニングのドアを開けるとミアがコーヒーカップを両手で包んだまま視線をこちらに向ける。真っ直ぐな迷いのない瞳、迷って悩んで後悔するテオとは違う、いつも彼女の瞳は前を向いている。
テオがミアの目を真っ直ぐに見つめ後ろでにドアを閉めるとミアはそっと口を開く。
「シェーラーズに行くのか?」
「ああ」
今更テオは驚きはしなかった。
昨日の戦いで襲撃犯自身に負傷はない、しかし魔力の消費は甚大なものであるはずだった。ゴーレム40体に7度の合体生成魔術、いくら上級以上のポテンシャルを持った魔術師であったとしても保有量のほとんどを使用しているはず。もう一度同等以上の魔術を使用するには短く見積もっても約1日はかかる。
つまり襲撃は早くても今日の夕方、ならばそれまでにテオの傷の治癒にミアの魔力の回復、そして戦いを有利に進めるための状況を用意しなければならない。
だからこその『シェーラーズ』である。
「わかってるよ、一緒に行こう」
一瞬もテオの目から離れようとしないミアの視線は嫌と言うほど語っていた。
だからこそテオはミアが口にするよりも先に言葉にした。
ミアはテオの言葉にただ頷いた。




