第八「忘れていた記憶(つみ)」
吐き出したのは、ジールライの肉だった
その光景に俺は過去の自分を思い出す
俺が博士によって作られた事、多くの人間を殺した事、この口で妹に手を出した事を思い出した
俺は思わずペイン達から逃げる様に走り去った
思い出した全てではないが思い出した
自分が誰かは分からないが、何者かは分かってしまった
俺は、殺戮兵器で多くの生命を殺し多くの幸せを奪った
俺は、許されていい存在じゃない
俺がペイン達と共にいたらジールライのようになってしまう
その前に俺は、逃げる様に森の奥へと突き進んだ
あいつは過去の俺を知っているからこそ言ったんだ
俺は森を走って行くと木の根に足を引っ掛け転びそのまま崖に落ちた
ハチ(あぁ・・・このまま死ねたらいいなぁ・・・)と目をつむり俺はそのまま落ちて行く
木の枝が「バキバキ」と折れる音がし地面に勢い良く叩き付けられる
その衝撃で目は開くが、まぶたは重たくなりそのまま寝た
暖かい太陽の日差しが俺を指しまるで、俺の死を祝福しているようだった
「ガサガサ」と誰かが草の道を掻き分けて進む音が聞こえた
???「姉さん!あそこに倒れている子がいるよ!」
???「なんですって!?早く手当しないと!」と俺に近寄ってくる気配がし持ち上げられどこかに連れて行かれた
目を覚ますと洞窟の様な所にいた
辺りを見渡そうと立ち上がろうとすると「立っちゃだめ」と子どもの声が聞こえそちらに目を向けると獣耳が生えた小さな少年がいた
俺は「逃げないと」と思い少年の言葉を無視して立ち上がろうとするが、少年はそれを阻止しようとのしかかる
少年「動いちゃダーメー!」とギュッと俺に抱きついて来て離れる気配がなかった
なんとかして離れさせようと少年を見つめたまま「グルルルル!」と唸るが、それでも少年は離れなかった
少年「姉さん!倒れていた子が起きたよ!」と大声で姉を呼ぶ少年に俺は、暴れまわって少年を振り落とそうとする
少年「わっ!ちょ!姉さん!はやっ!く!来て!」と離さず途切れ途切れで姉を呼ぶ
姉「元気そうで良かったわ!」と少年を振りほどく事に集中し過ぎて少年の姉の存在を感じ取れていなかった
姉「大丈夫よ!私達は敵ではないわ!ここに、貴方を傷つけるものはいないわ!」と俺を大人しくさせようと近づく
俺は、そのまま暴れまわったが少年は離れずここに留まることにした
そして、隙を見て抜け出そうと考えた
姉「怖かったよね?人間たちに追われたんでしょ?
私はここに住んでいる『ルウ』と言います
こっちは、弟の『ペルウ』よ」
ペルウ「よろしくな!」と元気よく自己紹介する二人
ペルウ「ここなら、人間に見つかったりしないから安心して!」と姉弟は俺が人間に襲われて逃げてきたと勘違いをしているみたいだ
ハチ「ワン!」と否定する様に強く吠えるが、慰めようと撫でてくる
ペルウ「ここに居ても大丈夫だらね〜」と優しく俺の頭を撫でて来る
そう言われて俺は、少し胸が痛んだ
ペルウとそのルウの優しさに心がものすごく痛む
俺は、誰かに優しくされる資格なんかないのだからとそう思い、急いでこの家を出て行こうとするがまた姉弟に止められる
ルウ「あなたは、どうしてそこまでしてここから出ようとするの?
ここは安全だよ?」と不安そうな顔で俺を見つめる
俺は、目を逸らし沈黙をする
ルウ「あなたがここから出ようとするのは、私達が人間みたいだから?それとも、鬱陶しいから?」と聞いてくるが俺は沈黙を続けた
ルウ「少しだけでもいいから、私達のことを信用してね?」と首を傾げお願いする
俺は目を背けながら伏せる
しばらくここに暮らしていると「ドン!ドン!」とドアを叩く音がした
ルウは「今行きま〜す」とドアを開けに行く
ペルウ「誰だろうね?」と俺に聞いて来るその時「キャァァァァ!」とルウの悲鳴が聞こえペルウは、すぐさまルウの所に駆けつけた
俺は隠れながらルウの所に向かい様子を見ると柄の悪い男達がルウを拘束している姿とペルウが助け出そうとしている姿があった
ペルウ「姉さんを離せ!人間!」
ルウ「逃げて……ペルウ…」と捕まりながらもペルウを逃がそうと伝えるがペルウは留まり助け出そうとする
柄の悪い男A「お?二匹もいやがった!大儲けだぜ!」
柄の悪い男B「へへへ……そうですね!これなら頭も喜びますぜ!」と喜ぶ男達
柄の悪い男A「それじゃ、早速コイツも捕らえとけ」と他の奴に命令すると他の奴らは一斉にペルウを捕らえようと縄を持ってペルウに襲いかかる
ペルウは、抵抗するが人数が多すぎてあっけなく捕まってしまう
ハチ「ワン!」と俺は強く吠えて柄の悪い男の顔に噛みちぎる
柄の悪い男C「な、何だコイツ!」とすかさず俺に短剣で刺そうとするが、俺はヒラリと躱し首を目掛けて噛み殺す
他の柄の悪い男達は、俺に怯えるようにルウ達を連れて逃げようとする
ルウとペルウを担いでいる男だけ殺しあとは逃した
口の中にはまだ、血の美味しい味がする
俺は、そっとルウ達の様子を見ると二人は驚きと呆気に取られて動かなかった
俺は、今なら行けると思いその場から飛び出そうとした時、ガッと誰かに抱き着かれるルウ「ありがとう」と姉弟が俺にお礼の言葉を言う
その言葉と純粋さに俺は、ズキリと心を痛める
ハチ「ワン・・・」と少し元気のない声で吠える
ルウ「今日は、一緒に居てくれないかな?」と怯えた声で俺に願われ俺は、仕方なくこの姉弟達と過ごした
夜の就寝の時姉弟達が、俺の隣に寝転がりサンドイッチする用に抱きしめ抜け出せそうになかった
正直狭いし暑苦しいが、何故か安心した
そのままゆっくりと俺は眠った
朝になり、目が覚めるとかなり酷い惨状になった
壁にアチコチに血がついていて、俺の体もアチコチに痛かった
この二人は寝相が悪いようだった
しかし、どんだけ寝相が悪いのか想像がつかなかった
理由は、天井に数十人ぐらいの血がベッタリと付いていて、壁には血しぶきの跡のような物があった
この子達の体には、返り血がついていた
俺は、この子達と一緒に寝てはいけないと誓っていると謎の匂いがずっとしていた
この部屋全体からとても『美味しいそうな』匂いがした
自分の血に関しては、美味しいそうな匂いはしないはずなのに何故か血がついている所から美味しいそうな匂いがしていた
この血は、本当に俺の血なのか?と少し考え周りの匂いをよく嗅ぐと昨日襲って来た男達の匂いだとわかった
そして、その匂いは外からもしたので行ってみると昨日襲った男達が肉塊になっていた
俺は、おなか空いたのでその男達の肉を食べようと一瞬だけ考えてしまった
俺は、ハッと我に返りその肉塊を土に埋めて行きルウ達のところに戻る
ルウ達は、今起きた見たいで眠たそうな顔をして「おはよう・・・」と俺に向けて二人は朝の挨拶をする
俺は、どうにかしてこの姉弟達に聞きたいのだが言葉が出来るわけでもないので伝えられず、文字を書いても姉弟達には、読めないようだった
どうにかして、伝えられないのかと考えていると急に喉から激痛が始まる
何とかその激痛に耐えながら考えていると激痛は、5分で治った
俺は、激痛に関し考えていて思わず「う〜ん」と俺の口から男性と女性の混ざった声が出た
姉弟達は、俺が喋った事に驚くが一番驚いたのは俺だった
原因はさっきの激痛のせいだろうと考えられる
俺は、この姉弟達に拾われる前の話をした
自分は人間と共に行動してた事、自分は人間と友達だったと言う事、自分の力で人間を襲うかもしれないから逃げ出した事、そして自分はモンスターではなく兵器だって事も教えた
姉弟達は、キョトンとした顔で話を理解してなさそうだった
ルウ「まぁ、とりあえず君は人間に追われて怪我をしたってわけじゃないんだね?」と確認してくるルウに俺は「そうだ」と答えると「それなら良かった」と安心した笑みを見せる
ハチ「お、お前らはなんで驚かないんだ?少なくとも人間と関わっていた奴だぞ」
ペルウ「だって、人間にもモンスターにも善人や悪人とか居るじゃん」
ハチ「俺は、モンスターじゃないんだぞ?命や幸せを奪い取る兵器なんだぞ?」
ルウ「それだと、あなたは私達を守ってくれたのは幸せを奪い取る事になるの?」と聞かれ俺は「うっ・・・」と黙り込んでしまう
ペルウ「お前は、良いやつだ!だから、大丈夫だ!」と俺は頭を撫でられて「ありがとう・・・」と返し少し照れた
ルウ「もし、貴方が言う『生命を殺す兵器』だったとして、私達を助けたのは不幸になるの?」
ハチ「さぁな・・・もしかしたらそうなのかも知れないな
だって、俺がする事はどれも奪い取ると言う行為になる
幸せにした奴なんていないな・・・」と過去の事を振り返りそして後悔する
ルウ「いると思うよ」と間を開けずにすぐに言うルウに俺は「その根拠は?」と聞くと「私達が今まさにそうだから!」と答える
ルウ「貴方が助けてくれなければ、私達はどうなったか分からないけど、酷いことになってたと思うよ?
けど貴方は、私達を助けようと人間達に攻撃した
それは、私達の幸せを守ったってことでしょ?」と俺を説得して来るが「結果的にそうなっただけだ」と返すが「それでも、貴方は私達の幸せを守ったんだよ?」
ハチ「だが、いずれお前達に不幸が・・・」
ペルウ「来ないよ!だって、僕達には『全自動』と言う魔法を持ってるんだよ!」と俺の言葉を遮る




