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新ログ・ホライズン  作者: 東の外記・しげき丸
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37/38

狂王ダノーブとの戦い(12)

 大変長らくお待たせいたしました。

 新ログホラ残り2話、今月と来月にかけ、やっとこさお送りいたします。

 思えば遠くへ来たもんだ。

 ダノーブとの戦いにやっと決着がつく本編をどうぞ。

 -第36話:狂王ダノーブとの戦い(12)-

 

 -1-

 

 イースタル、とある山道。

 ユーマたちはダノーブの軍勢との戦いで、避難のため故郷を離れていた大地人たちが戻るのを護衛していた。

 空を眺めていた大地人が眉根を寄せる。

「冒険者さん、急ぐか逆に天幕を用意するかした方がいいだよ」

「ギル爺の言うとおりだ、もうすぐ雨が降る」

「すごいな、なんでわかったんだ?」

 ユーマは感心した。

「あそこの雲の色が違うだろう?」

「全然わかんない」

 ピンキーは感心しきりだ。

「俺は匂いで分かった。この風の匂いは降る」

「ケン坊は鼻がいいからのう」

「すごいなー、本当にみんなシロエさんの言うようにそれぞれすごいセンスを持ってるんだ」

「あたしだってみんなを盛り上げる勘所が効くわよ。ユーマだって勝負所を嗅ぎつけるのがイケてるって」

「そうかな。無我夢中なだけなんだけど」

「その勇気を出すタイミングがいいんだって。みんなを美味しい所に向かって突撃させるじゃん!」

 このエピソードは自然と人々に伝わり、みんなの意識を少しづつ変えていった。


 -2-

 

 ウェストランデ、ミナミ。

 シロエはフロウデン12席会議に辞表を出した。

 言うべきことは言ったし、一つを残してやるべきこともやり終えた。

 今からするのはその最後の一つの仕事だ。

 丸めた特別誂えの羊皮紙を広げ、ミナミと言う都市機構とある一つの契約を交わす。

「それでどうにかなるんだな、シロエ」

 淡い燐光を眺めながらカズ彦が問うてくる。

「うん。地球に還ることを望まない人がいるなら、ミナミギルド会館でリストに入れたらこれでミナミの衛兵に保護される。本人の同意無く都市から連れ去ろうとすると、衛兵がお出ましになるのさ。そういう意味ではフロウデンがミナミ全域を購入してくれてて助かったよ。アキバにもいるだろう居残り希望にも伝えておく」

「………この借りはいつか返す」

「もう返してもらってるよ」

「え? お、おい、何がだ?」

「内緒」

「もうお別れなんて寂しいです~、アヤメさ~ん」

「セララさ~ん」

「名残惜しいけど、アキバがこの銀河系アイドルの僕の帰りを待ってるからねっ!」

「それは誰も聞いてねえ」

「玲央人、達者でにゃ」

「……、今度は僕から会いに行くよ。マリエの顔もまた見たいしね」

「楽しみにするにゃあ」

 そうして、別れを惜しみつつも、マヒルとソロモンと言う追加の二人を加えたアキバ遠征チームは、帰路に就いた。

 ちなみにカナミはさっさと別のところに旅立ってしまった。

『またシロ君がおいしい事やっちゃってー、いいもん、こっちはヒミコちゃんに教えてもらったネタでアッと言わせちゃうぞー!』

 彼女のことだ、きっとすごい事をやってのけるだろう。まあ、負けるつもりもないが。

 

 -3-

 

 エアリエルエンプレス号で海路を辿り、アキバに帰り着くと、街は丁度、二度目の天秤際の準備で賑わっていた。

 こんな時にだけど、こんな時だからこそ、人と人の心をつなぐ催し物は大切だと思う。

 〈記録の地平線〉のギルドハウスの居間では、トウヤや直継たちギルメンに加え、アインス先生と濡羽も待ち構えていた。

「「「おかえりー」」」

「ただいま、みんな。それにお二方も。兄妹そろってなんて珍しいですね」

「アタシはもうすぐミナミに帰るけどね」

「私は符術師として頼りにされてると聞いてね。なんでもダノーブを調伏するって?」

「ええ、よろしくお願いします」

「こっちの姉弟も忘れんなよ~」

「こらトウヤ邪魔しない」

「忘れてないよ。僕が言うのもなんだけど、押し付けちゃった大役を立派に果たしてくれてありがとう。トウヤ、ミノリ」

「うむ、立派だぞ」

「「立派立派~」」

「それでは吾輩とセララちはお茶の準備をしてきますにゃあ」

「はいはい僕飲んで食べる係~」

「お前は成長無さ過ぎ祭り」

「やだなあ、僕がいなくて寂しかったからって憎まれ口叩いちゃって」

 沸き起こる笑い。

 ああ、帰ってきたなあ、とシロエは思う。

「やほー、久しぶりやでシロ坊!」

 さっきくぐったばかりの玄関からまた新たな訪問者。

「アカツキちゃーん! 淋しかったわー!」

「ぐむうっ! よ、よせヘンリエッタ!!」

 大切な大切な第2の故郷。

 これを守れるのならば悔いはない。

 シロエは最後の覚悟を決めるのだった。

 

 -3-

 

 皆で歓談した夕食後、シロエは自室でアインスと打ち合わせに入った。

「ダノーブを善なる存在に転生させるんだってね?」

「ええ。まあ、何をもって善なると言うかにもよりますが、できうる限り可能な範囲で」

「できるのかい?」

「おそらく。そうするにはまずダノーブの人となりをよく知らないといけません」

「そう言うと思ってこちらでも可能な限り調べたよ」

「ありがとうございます。明日からはリ=ガンさんも加わってくれるそうですが、とりあえずはまず二人で分かったことを整理しましょう」

 戦国時代、または暗黒時代と呼ばれたヤマト。貴族たちは争い続け、魔物や〈典災〉は跋扈し、大地人は日々震えて眠るしかなかったという。

 ダノーブはそんな暗黒時代の末期にナゴヤの領主の息子として生まれた。日々悪ガキ共を連れていたずらや戦ごっこに明け暮れるうつけと呼ばれた者だったが、父の死後跡を継いでからは切れ者として名を馳せることになる。特に兵農を分離して精強無比な軍団を育成したのは有名な話だ。そして彼はその強力な軍団をもってヤマト統一を目指した。

 だが彼は戦を繰り返すたびに狂って行き、裏切られ、裏切られたがゆえにまた狂い、残虐な行いを繰り返し、最後には彼と彼の軍団自体も魔物、〈典災〉へと変わっていき、ヤマトは恐怖に支配されることとなった。

 だがそんな彼も立ち上がった最初のヤマト皇王とイズモ騎士団に討たれ、封印された。皮肉にも彼の最後をもってヤマトは統一されたのである。

「戦を好んで自ら魔物になるなんて、救いようがないように見えるね」

「そうかも知れません、それに魔物にならなかった家臣は追放したとも聞きます」

「どうするつもりだい?」

「別に彼に別人になってもらおうとは思いません。たった一つだけ大地人を襲わない約束を守ってもらえればいい。希望はあると思います」

「本当かね?」

「ええ、彼が兵農分離をした本当の理由が僕の予想通りならば、ですけどね」

「なるほど、希望はあるかもしれない。だが相当な術式になると思うよ、君は大丈夫なのかい?」

「………そうですね。残り最大MPから考えると、地球との通路を繋ぐ術式もありますし、シロエと言うキャラは事実上のロストを迎えるかもしれません」


 かしゃん。

 

「アカツキ?」

 シロエが慌ててドアを開けると、床に落ちて割れた二つの湯飲み、そして駆け去るアカツキの背。

 彼は彼女をこれ以上怯えさせないように、わざとゆっくりと、その背を追ってアカツキの部屋へと向かった。

「アカツキ、これまで黙っていて御免」

「…………」

「ロストと言っても消えてなくなる訳じゃない。最大MPが0かそれに等しいくらい低くなって、もう冒険には使えないだけだよ」

「……十分たいしたことではないか」

「アカツキ」

「……何だ?」

「一つ下命したいことがあるんだ。4ロエと言う予備キャラの護衛を引き受けてくれ、レベルは63と低い。君の手助けが必要だ」

「何時から何時までだ?」

「一度地球に帰ってまた再びこのセルデシアに立ってから。それからゲームの続く限りずっと最後まで」

「………それならいい」

 シロエは後ろからアカツキをやさしく抱きしめた。

 

 -4-

 

 シロエ達は2度目の天秤際を心残りの無いよう、めいっぱい楽しんだ。

 シロエはアカツキといろんな店を見て回り、飲食とショッピングを楽しみ、お互いにプレゼントもした。

 にゃん太もセララに腕を引かれるまま、同じように過ごしていた。恋人同士と言うよりは親子のようなそれにセララは若干不満げだったが。

 直継もマリエと良い雰囲気になるべく頑張っていたが、てとらと小竜に加え早速遊びに来た玲央人まで乱入してきて、それどころではなかった。ご愁傷さま。

 楽しい祭りが終わった次の日の夜、シロエとにゃん太と直継はリビングで何となく一緒に静かに酒を飲んだ。

「………班長」

「…これからセララとどうする祭り?」

「……吾輩はセララちの親と言ってもいい齢、おじいちゃんですにゃ。とても釣り合わないですにゃあ」

「じゃあ僕もただのサラリーマン家庭の子だから、鴻之池家のお嬢様とはとても釣り合わないことになるよね?」

「……にゃはは、これはやられたにゃ」

「本当のとこ、どう思ってるんだぜ?」

「……時折、セララちが亡き妻の面影と重なって見えることがあるにゃ。憎くなど思うわけがないにゃ。それでもこの先子供でもできれば、負担を彼女ばかりにかけることになるにゃ。とてもそんな選択はできないにゃ」

「……そんなことまで本気で考えてる事自体が答に聞こえなくもないよね」

「シロエち今日は容赦がないですにゃあ」

「ごめん……、急かし過ぎてるね」

「きっとそういうのは成り行きでどうにかなる祭り」

 まるでその言葉は直継が自分自身に言い聞かせてるようにも聞こえ、シロエとにゃん太は思わずぷっと笑い出した。

「そうだね、なるといいね」

「そうですにゃあ」

「だろう?」

 3人はゆっくりちびちびと酒杯を傾け、ゆったりと穏やかな夜を過ごす。


-5-


 祭りが終わっても、それに負けず劣らずのにぎやかな活気のある日々が続いた。

 アキバとミナミの生産系ギルドは次々と新規開発技術を発表し、貴族や冒険者に出資を求めた。

 逆に貴族たちからもこんなものを作って欲しいとの要求もあり、交流が活発になった。

 過度の収入、贅沢は能力を低下させる。そのシロエの言葉に動かされた貴族や冒険者は私財を投資にかけたのだ。

 戦闘系ギルドもダノーブはじめ魔将弱体化のエフェクトやアイテム獲得のためにあわただしく動いた。

 同一ギルド内では熟練者から中低レベル冒険者に大量の装備アイテムが譲渡された。

 そして意外にも黒剣騎士団からも、互助会を通じて中低レベル冒険者ギルドや個人に装備アイテムが譲渡された。

「今は使ってねーからな」「うちには低レベルいねーし」「お前らが頑張れば俺らの戦いも楽になるんだ」「せいぜい気張れよ」

 なんでもアイザックの方針らしい、彼も丸くなったものだ。イセルスの影響かも知れない。

 ちなみに彼らは能力の高いエリートでいるために積極的に投資も行ってくれた。昔のEXPポットの件が嘘のようだ。

 その甲斐あってか中低レベル冒険者はなかなかの成果を上げた。

 我らがトウヤ達若年組もエフェクトとアイテムをそれぞれ一つずつ獲得する快挙。ただしそこで90レベルに達してしまったので、もうこれ以上は無理となってしまったが。

 そうして3か月は瞬く間に過ぎ、シロエ達は最初の魔王城攻略に向かった。

 魔王ダノーブを撃破せずにいれば、彼の大軍勢はアヅチから溢れ出し、また大地人の領土を襲う。

 それだけは阻止しなければならない。

 

 -6-

 

 魔王城の地、アヅチ。

「2度も全滅したぞ!腹黒!!」

「このくらいは織り込み済みです。ナカルナードさん」

「まだ魔王の軍勢はアヅチの外に出ていませんわ。そうなっていれば大地人に被害は出たでしょうね。今の内の全滅は学習に必要な授業料ですわ」

「むう、リーゼがそう言うのならば」

「で、もう勝つ算段はついたんだろう? シロエ」

「ええ、アイザックさん。大体は」

「なら3度目の正直と行こうじゃねえか」

「楽勝は無理でも辛勝なら何とか」

 その予想は斜め上に裏切られることになる。

「あの雲は何だ?」

 ふと気づいたアインスが眉根を寄せる。

 見れば東の空にいきなりの雷雲。

「この期に及んで敵の援軍か祭り?」

「いや、待ってください、あれは!?」

『やほーい、お待たせみんな~!!』

 空から響く聞き覚えのある声は---

「「「カナミ??」」」

『東海青竜王君と仲間の龍神たちを連れてきったよー!! 美味しいところいっただきー!!』』

「ええ? じゃあヒミコさんから仕入れたネタって??」

「まさか本当にあのへそ曲がりたちを連れてくるとは思いませんでしたわ。さすがの観世音の悟りを開いた方ですわねえ」

 ころころと笑うヒミコ。

 そして龍神たちによる情け容赦のない雷撃が魔王軍に降り注ぎ始めた。

 この予期せぬ援軍で一番割を喰ったのはウェストランデの大貴族マルヴェスであった。

 彼はこの戦にミナミの発明品でも本命ともいえる飛空船の部隊を率いて戦場に来たのだが、肝心の攻撃手段である爆弾の性能が、本来オブジェクト破壊のアイテムで、モンスターに対する威力が今一つな事と、ドクウガやアーケンの配下の空飛ぶ魔人に手を焼き、思ったような戦果を挙げれていなかった。

 完全にカナミたちに美味しいところを横からかっ攫われたのだ。

 しばしあっけにとられていた皆であるが、

「い、行きましょう、今が絶好のチャンスです!」

 我に返ったシロエの声に、突撃を開始した。

 終わってみれば、勢い任せの快勝となったのである。

 

 -7-

 

 その夜、誰もが勝利を祝う中、ラジオに再びシロエが現れた。

『今日勝てたのはみんなのお陰です。心からありがとうを言わせていただきます。

 さて、人間なんて大抵意見の合わない人ばかりです。でもそれは人それぞれセンス、見えるものが違うから。

 そしてもう一度言いますが、何故かと言うと、大抵人はバグを持っていて、何かが分からない代わりにそれを補うために独自のセンスが鋭くなるからです。アスベルガー症候群とかは空気が読めないコミュ障になる代わりに知能が高くなる。

 劣っているからこそ人より優れた長所を持つ。

 そうしたバグを持っている人をサイコパスと言うのは簡単ですが、逆に言えば何の欠点もない人は何かが欠けている人同士はわかっている苦しみをわからない、思いやらない、無神経な攻撃性の高いサイコパスになるとも言えます。

 人それぞれ大切にできるものが違うのは、僕たちが大きなジグソーパズルを組み上げるのに必要だから。

 その人のセンスでしかわからない欠けているピースを見つけたり生み出したりできるから。

 心に望遠鏡を持っている人と顕微鏡を持つ人の意見が食い違うのは当たり前です。見えているモノが違うから。それぞれ一番大切にしたいもの、真実が、真理が、人それぞれ違うから。

 だからネットや現実ですぐに意見が合わなくったって大丈夫なんです。

 互助会と円卓の違いがあったって、アキバとミナミの違いがあったって、大丈夫なんです。

 そこに人を喜ばせよう、役に立とう、みんなで幸せになろうという心、そしてそれを楽しむ心さえあれば、時間がかかったって大丈夫なんです。

 バグを持っているから自信が持てないときもあるでしょう、でも僕は自分が美しいと思っていることを同じように美しいと思う人がいて勇気づけられます。僕の潔癖さとその人の生真面目さが同じことを美しいと思う。それで勇気が湧くんです。あなたにもきっとそんな人がいる、そんな人ができる。そう信じてほしい。

 自分のベストを尽くせば大丈夫なんです。その人にしかできない美味しい所に向かって突撃すれば大丈夫なんです。

 そうすれば僕らは完全なジグソーパズルを完成させうる、アストロノーツになれるんです。

 地球とセルデシアと言う二つの惑星を自由に行き来する真のアストロノ-ツに。

 今日僕らはその大きな山の一つを乗り越えました。

 残る大きな山は最終決戦だけです。

 最後の3ケ月。みんなが最高にかっこよく、美味しいところを頂くのを楽しみにしています』

 

 -8-

 

 そして冒険者は最後の3ケ月を迎えた。

 イセルスとスタークは跋扈する妖魔軍に対し、見事な指揮統率の手腕を見せた。マルクはその真摯な祈りで貴族平民を問わず人心を一つにまとめた。3人の内誰が皇王に相応しいか議論が持ち上がり、3人とも相応しいとの声もちらほら上がった。

 今までくすぶっていた中低レベル冒険者は次第に冒険慣れし、さらに目覚ましい戦果を挙げるようになった。

 アキバでもミナミでも、このままダノーブに勝って地球に戻れるという楽観視をする者が増え始めた。

 その一方で地球に戻りたくないという者もちらほらといた。

 そういう者はミナミに避難すれば大丈夫と言う噂も流れ、ミナミに移る者も出た。

「伝承ではダノーブを降した初代ヤマト皇王がフジ山の頂上で皇王座就任の儀式を行った時、月から祝福の使者が現れ、皇王を一時月へと招いたそうです」

 リ・ガンはそう言った。

 シロエ達はそれに賭けていた。月の神酒の海に蓄えられた大量のメモリシアソーマならば、セルデシアと地球の間に恒常的なゲートをきっと開けると。

 

 -9-

 

 そしてその日はきた。

「ついにここまで来たにゃあ。みんな、ここまで頑張ってきた自分を信用し、人を信頼して頑張るにゃ」

 何度失敗しようと、自分を見捨てず信じて用いる勇気を。

 何度ぶつかり、違えようと、人を信じて頼る勇気を。

「しょうがないなあ、みんな俺様が信頼してやんなきゃダメだもんなあ。まったく世話の焼ける」

 そう嘯くヒリュウの後頭部を濡羽がはたく。皆から笑い声。

「行こう、みんな」

 シロエが頷く。

「「「美味しい所に向かって、突撃ー!!!」」」

 カナミだけでなく誰もが合唱した。

「食い散らかすにゃあ」

 

 ナカルナード達は因縁のドクウガを退け、リーゼ達はハシーヴァを降し、アイザック達はカッツェーを砕き、櫛八玉達はアーケンを堕とした。

 そしてシロエ達とウィリアム達とアインス達はダノーブを一度撃破。


 だが魔王城ある限り、何度でも彼らは甦る。

 最終決戦は魔王殿アヅチ城。

 最後の最後は24人フルレイドの戦い。

 シロエ、アカツキ、直継、にゃん太、ミノリ、トウヤ、五十鈴、ルディ、てとら、セララ、マリエール、ヘンリエッタ、ソウジロウ、マヒル、ナズナ、濡羽、ヒリュウ、カズ彦、アヤメ、アインス、カナミ、コッペリア、レオナルド、エリアス。

 彼らが魔王城に突入すると、その扉は固く閉ざされ、残された者はそれぞれ大切なものに彼らの無事と殊勲を祈った。

 

 -10-

 

 魔王城内の戦いは苛烈の一言に尽きた。

 それ自体は予想されたことであったが、それ以上にエリアボスが一つも出てこない事に、嫌な予想まで当たったとシロエは眉をひそめた。

「多分最後に全部まとめて出てくるよね」

「タンクと回復役を多めにしとくシロの判断が当たった訳祭り」

「側近のタガキーワとマエダートとランマールとオニナーガかな、それに加えてダノーブと五体ボスか。無茶苦茶だよね」

「ダイジョーブダイジョーブ、朝飯前の梅茶漬けっ!」

「相変わらず無駄に頼もしいですねカナミさんは」

「やだなーソウジロウ、褒めても何も出ないよっ♪」

 褒めてない気がすると皆思ったが、誰も口に出しては突っ込まなかった。

 そして辿り着いた天守閣。

 そこには予想通り5体のレイドボスが居並んでいた。

「直継、ソウジロウ、トウヤ、ヒリュウ、カナミ!」

「「「「「応!」」」」」

 直継がダノーブに、ソウジロウがオニナーガに、トウヤがランマールに、ヒリュウがタガキーワに、カナミがマエダートにそれぞれ懐に突っ込みタゲを取る。

 泣いても笑ってもこれで最後。何故ならアインスがこれから放つ呪符を全てシロエが起動すれば、シロエの最大MPはもう残り地球へのゲートを繋ぐ分しか残らない。

「貴様ら何故に我に楯突く、我を裏切る。我そのすべてを滅ぼさん!」

 ダノーブが血の涙を流しながら雄叫びを上げる。

「全てを滅ぼしても、すぐまたあなたを裏切る人も楯突く人もまた出る! わかってるんでしょう、本当は!?」

「我が間違っているというのか!?」

「貴方が兵農分離をした本当の理由は、戦ごっこの好きな者にはいつまでも戦ごっこを、戦が嫌いで百姓をしたい者にはいつまでも百姓をさせてやりたかったからでしょう?」

「ああ、だが違った。坊主に死後極楽に往けると唆されれば皆人を平気で傷つける。戦が嫌いな者など一人もおらなんだのだ!!」

「それは違う! それだけ彼らが絶望していたからです! そして人を傷つける事の罪悪感を奪われたからっ! 貴方を裏切った人も、もうあなたの下では自分が好きなことをする幸せになれないと絶望したからだ! 最初に人がそれぞれ好きなことをして生きればいいと思ったあなたは間違っていなかった!」

「ならば奴らは、我の前で好きでもない事を好きそうにしていたというのか?」

「そうせずにいられないほど貴方は苛烈過ぎた。気前よく与え、また奪った。一度得た巨財を失うことを恐れる者は簡単に自分に嘘をつくんです。本当はもっと他にやりたいことがあってももう言い出せなくなる。あなたがそうさせたと言っていい!」

「我が、間違うておったと?」

 霊符が次々とアインスの弓から放たれ、ダノーブの体を覆っていく。

「さあ、ダノーブ。僕たちといつまでも戦ごっこを楽しみましょう。その代わり二度と大地人とその領土を脅かさないでください」

「まことか?」

『よせダノーブ、貴様の理解者はこの計都星のみぞ、戯言に耳を貸すな!!』

 アインスの霊符がダノーブの額に張り付く。

『ぐわああぇえっ』

「「南無八幡大菩薩、荒魂よ和魂へとなりたまえ」」

 アインスとシロエの言葉が重なり、霊符が青白く輝き、燐光をまき散らす。

 激しい反撃の嵐を、直継が、ソウジロウが、トウヤが、ヒリュウが、カナミが耐え抜く。マリエが、ナズナが、ミノリが、アヤメが、コッペリアが、アインスが、セララが、てとらが支え抜く。

 エリアスの剣が唸り、レオナルドの双刀が閃き、カズ彦の太刀が轟き、マヒルの双昆が歌い、ルディの炎が焦がし、五十鈴の槍が貫き、にゃん太のレイピアが煌めき、そして濡羽とシロエの茨と無数に分身したアカツキの刀が四方からダノーブの首を切り裂き、


「うぉおおおおおおおおおおおおお」

『ぐわあああああああああああああ』


 第六天魔王の巨体は崩れ落ちる。

 

「また、戦ごっこを楽しもうぞ…………」


 ハージューン・ダノーブは光の粒子となって消えた。

 

 -11-

 

 それより半月後、東西は皇王の称号を二つに分けることとなった。

 以前ユーマを通じてスワの危機を助けた恩義から、スワ領主はシロエの策である現実的な落としどころを東西に提案したのだ。

 斎王マルクと武皇イセルス。

 そして政治の長は選挙にてスタークが大統領に就任することとなった。

 前史に倣い、それを天に報告する儀式をフジ山頂で行うことになったのである。

 

 -最終話に続く-

筆者(以下:筆):「今月のテーマは『信長と秀吉と家康』~」

ヴァディス(仮名、以下:ヴ):「誰もが知ってるホトトギス」

作者(以下:ま):「それでヴァディスがゲストか。漫画のネタにしてるしね。で、何で僕も?」

筆:「アンタ名家鴻之池(仮名)の血筋でしょ、彼等に身分近い訳ですし、その視点が欲しいんですよ」

ま:「本家とは距離取ってる下町っ子だよ!」

ヴ:「俺は由緒正しい平民秀吉枠だな」

ま:「筆者だって森家の血入ってるよね?」

筆:「分家の上他家に婿養子に入った口なので平民ですよ~」

ヴ:「で、実際森家から見た3人ってどんなんだったん?」

筆:「まあ信長は単に能力有り過ぎるだけのヤンキーのガキ大将ですね。いえ、勿論そんな言い方はしてませんでしたけど、森家の苦労話を聞くに」

ま:「やっぱうつけか」

ヴ:「でも厄介な事にすんごく頭の切れるwww」

筆:「でもまあガキ大将なので情に厚いし面倒見も良い、人間好きな御仁で結構TVドラマの新信長公記の信長にも実際近かったらしいです」

ヴ:「何で魔王になったん?」

筆:「頭が良過ぎる所為で冷徹な時は徹底的に冷徹になれるのと、良く有る面倒見のいいおばちゃんほど切れやすいのと同じだからでしょうね」

ヴ:「戦場では若い頃は豊久みたいな先頭切る鉄砲玉だった位血の気多いしな」

ま:「典型的な部下が苦労するタイプだwww」

筆:「そんな信長にとって秀吉は自分の人たらしでまとめ役の徳の有る所、長所が似た存在、家康は自分の癇癪持ちで神経質な弱い所、短所が似た存在だったそうで、どちらも可愛がりました」

ま:「秀吉は出来のいい息子で可愛い」

ヴ:「家康は出来の悪い子ほど可愛い」

ま:「可愛がられなかった光秀悲惨だよね」

筆:「でも一番頼りにしてたのは光秀らしいんですよ。信長の足りない所を見事に補ってくれる女房役みたいな」

ヴ:「でも女房って煙たい時もあるんだよね」

ま:「女房って言うより、口うるさいオカン扱いだよね、あれ」

筆:「だからこそ光秀を人前では邪険にして見せたのかもしれません。光秀は有能だけど、自分と同格の武将や身分の違いを越えて人をまとめる器量が無い。義徳が有っても仁徳が無かったんですね。人をまとめる器量の有るのは秀吉の方だから、光秀を重用する態度を見せると、信長に取り入りたい有力者は光秀に取り入って、この先自分に何かあった時の跡継ぎが光秀になる可能性が出てくる。それで敢えて、光秀が憎い訳では無いのだけど、秀吉の方を人前では重用して見せた、と」

ヴ:「まあその説多いよね」

ま:「森家の子孫が言うと説得力ある」

筆:「でまあここからは私見なんですけど、信長は光秀に心中を頼んだのかもしれません。魔王でいる事に疲れ切って」

ヴ:「ええー、俺の書いてる漫画と逆の事言わないでー!!」

ま:「過去は謎なんだから、色んな解釈が有っていいよね」

筆:「話はそれましたけど、その後秀吉は天下人になり、自分の足りない所を補ってくれる女房役の石田光成を重用しました」

ま:「信長の逆しちゃったね」

ヴ:「人の心がちっともわからないって言うか逆撫でする朴念仁な」

ま:「頭はいいから秀吉とはベストパートナーだったんだろうけど」

ヴ:「人をまとめる器量が無いにも程が有り過ぎる」

筆:「秀吉がもし見かけ上でも自分に似たタイプを重用していたら話は違ってたんだろうけど」

ま:「遅く生まれた子供が可愛すぎて、逆に自分に似たタイプを重用できなかったんだろうなあ」

ヴ:「信長の方がその辺ドライな。家康そりゃ付け込むわ」

筆:「家康のスゴイ所は、自分の短所を知り尽くしていて決して自分を過信しない、いい意味での信長のドライさを受け継いだところでしょうね。自分の能力よりも、先ず状況を上手く活用する事と、枠組みをがっちり固めて偶然の介在する余地をなくした手堅さ。正しく狸ですね」

ま:「クリス(仮名)さんもそこべた褒めしてたよね」

ヴ:「島津が滅ぼしたけどな」

筆:「なんだかんだで選挙で政権が変わり得るのはそうでないより健全ですヨネー」

ま:「まあでもシステムの意外な完成度の高さには感心するよ。士農工商なんて、経済的な強弱と立場の強弱が見事に真逆で釣り合いが取れるよう、見事に計算し尽くされてるもん」

筆:「江戸時代より現代の方が平等の無い弱肉強食感ありますよね」

ヴ:「薩奸死すべし」

ま:「どっちなんだよw」

ヴ:「漫画家は糞はクソと言い切るのが仕事ですw」

筆:「ブレないなあw」

ま:「さて、今回はこれで終わりだけど、残りもあと1回だね」

筆:「ログホラ全シリーズがあと1回なのに何を他人事みたいに?」

ま:「ボクナンニモシラナイヨ」

一同:「「おいっっ!!」」

ま:「冗談はさておき、最後までしっかりね」

筆:「とほほ~(TT;)」

一同:「「「じゃあまったねー(^^)/」」」

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