最終話:記録の地平線
ちと気が早いですがハッピーメリークリスマス!&来年もいい年でありますように!!
こちらは、やと原稿が最後まで上がり真っ白に燃え尽きております。
大変長らくエンディングをお待たせいたしました。
地球か、何もかも懐かしい(ネタ古)。
そんなこんなでやっとみんなが地球に帰還する本編をどうぞ。
-最終話:記録の地平線-
-1-
霊峰フジ山頂。
皇王就任の儀、多くの者は飛空船でその場に来たが、儀式の主役であるイセルスとマルクとスターク、そしてそれに付き従うシロエ他若干名は自らの足で山頂に赴いた。
武皇イセルスと斎王マルク、大統領スタークが祭壇の前で書状を読み上げ、その書状を祭壇のかがり火にくべ、昇る煙を以って天への報告とする。
西に陽が落ち、東に満月が昇る。
それは昇る満月の方角から来た。
雲に乗り空を駆ける巨大な牛車。伝承によれば月の女王輝夜の輿である。
『古の約定、いや、プログラムの強制力により月より迎えに参った。エンプレス様が月でお待ちである。皇王の資格ありし者、そこの3名とゲームをクリアせし冒険者の代表者は牛車に乗るがよい』
イセルス、マルク、スターク、そしてシロエと濡羽が進み出る。
「主君、頼むぞ」
「俺たちを地球に還らせてくれよな祭りっ」
シロエは苦笑しながら軽く手を振り、牛車に乗り込む。
牛車は空に浮かび、やがて雲の中に突入すると、光に包まれ、次の瞬間には月面にいた。
-2-
月の宮殿はとにかく荘厳の一言に尽きた。
イセルスとマルクが年相応の歓声を上げ、はしゃぐ姿がほほえましい。
通路を進んで行くと、向こうから見知った顔が現れた。
「姉さまっ!」
「イセルス!」
なんとレイネシアとクラスティと高山である。
「君たちも無事クリアしたみたいだね」
「クラスティさんがいないから苦労しました」
「君にこき使われたくなかったから逃げたんだよ」
「冗談に聞こえませんよ」
「さすがのへそ曲がりですね、ミ・ロード」
やがて巨大な円卓の間に導かれ、椅子に座りエンプレスを待つよう言われた。
待つ間にはハーブティーが振舞われる。
エルダーフラワーの香りは皆の心を落ち着かせた。
「待たせたな」
従者たちが開けた豪奢な扉の向こうからエンプレスが姿を現す。彼女には宮殿に負けない美しさと迫力があった。
「私がエンプレスだ」
そう言って彼女も席に着く。
「輝夜でも西王母でも好きに呼ぶがよい。そして〈典災〉の長も務めている。お前たちから〈共感子〉を採取するのが私の仕事だが、ゲームの勝者に望む物を与えるのも、逆らえぬプログラムだ」
彼女の目が細められ鋭く光る。
「お前らの望みは地球への帰還で相違ないか?」
「いいえ」
一同の視線が否定の言葉を発したシロエに集まる。
「僕の望みは地球とセルデシアを繋ぐ恒常的なゲートです。自由に行き来することです」
「馬鹿なことを、お前らを封じた監獄にまた戻ってきたいというのか?」
「そうです」
「…………嘘ではあるまいな?」
「嘘じゃないと思うよ、エンプレス」
扉からまた新たな人物が現れる。その容姿はクラスティに酷似、いやそのものだった。その正体は月サーバーにおけるクラスティのサブキャラに受肉した〈監察者〉のリーダー。
「ベルゼビュートか」
「ああ。それとあともう一人、特別なお客さんがいる。その出迎えに時間がかかってね」
ベルゼビュートの背後から、老人とも若者ともつかない容貌の、エンプレスにも負けぬ美しさと迫力を備えた人物が現れた。
『こんにちは、皆さん』
その言葉は口からではなく、脳から脳へと直接に響いた。
「アバターは月の上皇陛下。しかしその中身は〈ランク4〉。つまりオーバーロードであらせられる」
『シロエ君かね、私の作った世界を気に入ってくれて嬉しいよ』
「恐縮です」
「オーバーロードだと? 何故今まで静観していた? なぜ今更姿を現した!?」
エンプレスが吠える。
『一つの宇宙には一種の知的生命体しか存在できない。この場合は巨象が蟻を踏まないよう、身じろぎ一つせずにいられるのには時間が限られてしまうからと言えばいいかな』
「我々が蟻だと?」
『完全量子生命体である我々と君たちとでは、それ以上の開きがある。私が君達に危害を加えずにいるには、本当に細心の注意がいるのだよ。わかってくれたまえ』
「例えば僕が貴方に死ねと言っても何も起きませんが、貴方が僕に死ねと言えば本当に僕は死んでしまう。それくらいの違いがあるという事ですか?」
シロエが眼鏡を傾ける。
『ほぼ正解だね。理解してもらえてうれしいよ』
「あ、貴方は神なのですか?」
『残念ながらマルク君、君の信じる神とは違う。だがその気になれば宇宙一つを生成できる我々を神と呼ぶ者がいるのも事実だ。だが先ほどシロエ君が言ったように、君たちと口喧嘩一つ満足にできない、不自由な生き物とも言える』
「なんとなくわかります。貴族も似たようなものですしね」
「強き者は寛容でなくてはならない、ですね」
スタークとイセルスが苦笑する。
「それでなぜそんな危険を冒してまで、我々の前に?」
「ホントホント、それにどうせ来るならもっと前に来てほしかったわ」
クラスティと濡羽は口をとがらせた。
『仮にも神と呼ばれる者が特定の誰かに加勢し敵すれば、大抵人はそれを絶対正義と絶対悪に誤認する。それは人と言う種の可能性を奪うに等しい。だが君たち自身が問題を解決した今だからこそ、不自由を承知でやってきた』
「なにが目的ですか?」
高山の目が細められる。
『シロエ君。君と話がしたかったんだよ』
「僕と? どこにでもいるサラリーマンの息子ですよ?」
『君はいくつかの問題の重要な鍵が、自己正当化と排他主義だと見抜いてくれた。これは我々が過去になぜ失敗したかを明確にしてくれたのだ。我々が間接的な手段で君たちの歴史に介入した時、その教えを尊守するよう強調するあまり、時に〈唯一の教え〉や〈最後の教え〉だと表現してしまった』
「ああ、確かにその表現は容易に自己正当化と排他主義を招きますね。その教えを信じない異教徒は悪だ、と」
『我々としては、〈神はすべての者を愛する、それを真似して欲しい〉という事をこそまず理解してほしかったのだがね』
「何故そうして欲しかったんですか?」
『我々がかつてそうできなかったからだよ。そして多くのモノを失った。我々には機械的な純粋な正しさばかり残り、人の手になる優しさと言う名の正しい間違いの多くが絶えてしまった』
「正しい間違い?」
『例えば塩と言う物質がある。純粋な塩化ナトリウムは生成するのが容易い。だが美味しさと言う点では自然塩に劣り、また血圧の上昇と言う作用も自然塩に比べて大きい。似たような事は砂糖やアミノ酸でも有り、また純粋な化学物質である化学薬が、ほかの化学的サプリメントと危険な化学反応を起こす事もある。天然や自然、昔ながらの人の手になる物は正しく間違った成分、不純物が含まれるため、化学的反応が穏やかで優しい。
絵の世界においても、AIに描かせた絵は数学的に正しい曲線や直線をつなげた、味気なく不気味なものになりがちだ。だが人の手で描いた絵は、ぶれて揺らぐが故に、色気があり、優しさがそこにある。
正しい不純物を含んだモノは、単に純粋なだけのモノをはるかに上回る。だというのに、効率が悪いという、それだけの理由で我々は多くを機械に任せてしまった。
正しくない書物や文化を焚書していった。
そして我々は苦境に陥った時、正しくない人をも、容赦なく切り捨てていった』
「怠慢ですね」
クラスティの眼鏡が光る。
『まさしくそうだ。適切な役割を与え合うという事を忘れ怠っていたのだからな。
そして我々は苦境を乗り越える為、完全量子生命体へと進化した。そしてその後に失くしてしまったモノに気づいた訳だ。
我々はあまりに多くの豊潤たる文化と優しさと〈共感子〉を失った。
AIに正しい間違いを求めても、それは本当の危険な間違いがほとんどだったのだ。
結果、我々は神と呼ばれる力を得たが、君たちの豊かな文化を遠く眺めるだけとなった。
我々は君たちに豊かな文化を持ち、誰もが許し合う〈共感子〉を持ったまま進化して欲しいと願っている。
だが〈共感子〉を得るのに最も簡単な手段が自己正当化と排他主義だというのも確かなのだ』
「私たちは素晴らしく、すべての責任は悪いあいつらのせいだ。のファシズムによる団結ですね」
クラスティは冷笑する。
「簡単に良心と自責に麻酔がかかっちゃうんですよねえ」
シロエがぼやく。
『それ故〈共感子〉を得るには何者かを差別して〈共感子〉を消費する公式が成立する訳だな。そして正しさはより機械的な純粋で危険な正しさになる。行き過ぎた清潔、行き過ぎた安定、行き過ぎた規律、そうしてはいけない、そうしなければならない、それは緩慢な死に等しかった。そしてその反動の破壊もまた過激で陰惨なものとなっていった』
「自己正当化が必要なのも確かです。人は素晴らしい、賢いと言われれば賢くなり、愚かだと蔑まれば本当に愚かになる暗示に弱い生き物だからです。
だからこそ自分が素晴らしいのは個性を持っているからで、それ故に皆本来素晴らしいと言う認識が必要で、排他、つまり人を罰する時は、言い訳しない法の下の平等が必要なんです。混ぜるな危険ですよ」
シロエの苦笑。
『個性、かね』
「どんな個性の者も、その個性で人を幸せにする道を得ることができる。
それが僕がみんなになって欲しいと願う格好よさです」
『そうか、ならば君たちが格好良くなり、我々との違いさえ個性の違いと言えるほど、君たちの社会が成熟するのを祈っているよ。その時、我々は君たちの友人隣人となり、合わせて一つの知的生命種となるだろう』
「友人、ですか」
『ああ』
「恥ずかしい話ですけど、僕は子供のころ、願ったことが有ります。神様と友達になりたいと思ったことがあるんです」
『そう思う者は後を絶たない』
「それも見返りを期待するんじゃなく、ただ、神様を当たり前の友人として、その悩みや苦しみや希望を理解したかったからです」
『ふふ。2番目の理解者として、かね』
「2番目の平凡な秀才として、です。今はまだあなたの理解者とは言えませんが、いつの日にかそうなりたいと思っています」
『期待しているよ』
「待て、お前らはそれでいいとして、我々〈典災〉、いや〈採取者〉はどうなる?」
エンプレスの柳眉が逆立つ。
「僕たちはまたここに戻ってきます。貴方達との戦いが〈共感子〉を提供することになるのならそれは続けます。
でももし貴方達が我儘なお客であることをやめ、自ら〈共感子〉を育む気がお有りなら、もう一つの選択肢を提供できます」
シロエはそう言って、魔法の鞄から紙の束を取り出した。
「なんだ、それは?」
「僕たちが我儘なお客であることをやめ、いくつかの対立の危機を乗り越えて、〈共感子〉を高めるに至った、その記録です。
できればこの記録を参考に、貴方達が貴方達自身の力で〈共感子〉を得てほしい」
そう言って束を差し出す。
「…………〈記録の地平線〉?」
「ええ、タイトルをどうしようか悩んだんですけど、僕たちのギルド名でもあるこの言葉にしました。遥かな地平線を目指してずっと歩み続ける。そう言う意味ですね。
〈監察者〉の分もあるんで、ベルゼビュートさんもどうぞ」
「うむ。ほうほう、この〈ハーメルン〉と言うギルドは〈典災〉にそっくりだな」
「我々にその真似をやめろと?」
「長期的には悪手だと思います」
『私も君たちには〈ランク3〉を目指して欲しいと思っているよ、〈採取者〉君。
それはそうと、そろそろ滞在時間が残り少ない。シロエ君たち〈冒険者〉には要望があるのだろう、私にも聞かせておくれ』
「はい、ソーマの海のメモリシアソーマを使って、地球との恒久的なゲートを作りたいんです」
『準備はできているのかね?』
「ええ、これがその術式の契約書です」
『ふむふむ、若干拙いところもあるが、それは私が補おう』
「いいんですか?」
『ご褒美とでも思ってくれたまえ』
「ありがとうございます」
シロエは深々と頭を下げた。
「ならば〈エンプレス〉、ソーマの海のメモリシアソーマの使用許可を戴きたい。お願いします」
「それがこの記録との引き換えと言う訳か。腹立たしくはあるが、プログラム上、私にそれは拒めない。好きにするがいい」
「ありがとうございます」
シロエは再び頭を下げた。口元には笑みを浮かべ。
「では行きます。オーバーロードさん、補助お願いします」
契約書が光の鱗粉を放ち、術式が履行される。
-3-
ある冒険者達はアキバにある焼き肉屋とんすとんで酔っ払って管を巻いていた。
「はあ~あ、いったいいつになったら地球に帰れるんだか。えらいやつは何してんだよ」
「そうだぜ~、こうやってアイコンを開いてみても、いつまでたっても現れないログアウトの文字が………ああ~~~っ!?」
「な、なんだなんだどうした?」
「あ、ある、ログアウトのメニューがちゃんとあるーー!!」
「ま~たまた冗談がきついぜ~、ほら、開いてもあるわけ…………あった~~~~!!」
その情報はあっという間にアキバとミナミとススキノに知れ渡った。
気の早い者はさっそくログアウトを選択して、こつ然と姿を消してしまった。
だが大多数の者は、今の内に心の整理をしたり、現実世界に戻った時にオフで会えるよう連絡し合ったりと、これからの準備に励んだ。
そんな大喧騒の中、てとらチャンネルラジオではアインスがこの件について皆に呼び掛けた。
『皆さん落ち着いてください。慌てなくても、ゲートは恒常的な物なので急がなくても大丈夫です。それから、こちらでも実験しましたが、再度ログインすればこちらに無事戻ってこれました。
これからは自由に地球とセルデシアを行き来できます。
地球でのこと、セルデシアのこと、両方よく考えて今後を決定してください』
-4-
五十鈴の場合。
散らかった楽譜。
ヤマハのギターとキーボード。
一台のパソコン。
ブラインドの隙間から差し込む光に照らされたそれらは、まごうことなき五十鈴の宝物たちだ。
帰ってきた。
地球に還ってきたのだ。
鼻の奥がツーンとしてきた。
慌ててティッシュを探し、涙をぬぐい、一発チーンとする。
「はあ、帰ってきたんだあ」
あらためて口に出すと実感がいや増した。
またすぐにでもセルデシアに行けるとわかっていても、ついこんな言葉が口に出た。
「ルディも連れてきたかったなあ」
「大丈夫だミス五十鈴」
背後から声。
「はにゃあっ!!?」
振り返るとそこには金髪わんこ。
「これがログアウトというモノか。察するに地球のミス五十鈴の部屋なのだな。ギルドの部屋とよく似ている」
「な、な、なんでここにいるの?」
「僕も冒険者なのだ。ちゃんとメニューにログアウトが追加されていた。ならば僕もセルデシアと地球が行き来できるのが世の道理だろう」
「ええーっ!?」
混乱の中、階下から階段を上る足音が聞こえ、さらに混乱する。
「五十鈴、五十鈴なの!?」
「帰ってきたのか? ファッキンクレイジー!!」
「母さんに父さん! ル、ルディ、隠れて!」
「その必要はない。ここは堂々と挨拶すべきだ」
「ああー、もうー!!」
「「五十鈴!」」
両親は五十鈴の顔を見るや、固く抱き寄せて涙を流した。
「父さん、母さん」
「よく帰ってきた」
「お帰り」
「うん、うん」
「………それはそうとこいつは誰だ?」
「はじめまして、御父君殿、御母堂殿。五十鈴殿はセルデシアと言う世界にいたのですが、その間彼女の騎士役として守らせていただいたルンデルハウスと言う者です。お見知りおきを」
「貴様……、恩を着せて不埒な行いをしてねーだろうな?」
「滅相もない。不肖このルンデルハウスは紳士の道を歩む者。恩着せがましく同意もなしにそのようなことするわけがない」
「ホ、ホントだよ、父さん母さん。何もされてないから!」
それはそれで内心ほんのちょっとだけ不満だったけど、とまでは口に出さなかった。
ぐうううぅっ。
「あらあら五十鈴、お腹が減ってるのね。急いで作るわ」
「よし、ルンデルハウスとやら、続きは飯を食いながらとっくり聞こうじゃねえか」
「任せたまえ、土産話ならいくらでもあるぞ御父君殿」
4人は騒がしくも食卓へと降りて行った。
-5-
レオナルドの場合。
雑誌にヒーローコミック。
ピザの空き箱とハンバーガーの包み紙。
コーラとコロナの空きビンとバドワイザーの空き缶。
雑多に散らかった部屋の中、商売道具のパソコンの3連モニターと複数の本体と周辺機器が整然とラックに並ぶ。
「………還って来たか」
いつも座りなれたチェアの上でレオナルドは独り呟く。
ニューヨーク、マンハッタン。タフなギークの根城。
多分スマホとPCにはぎっしりとメールが詰まっているだろうが、チェックは後回しにすることにした。
ひとまず飯にしよう。ケイジャン料理のジョナサンの店がいいかな。
そうしてドアに向けて椅子を回転させると、目の前に信じられない光景があった。
「ここはどこでショウ? レオナルド」
「コ、コッペリア!??」
「はい」
「な、なんでここにいるんだよ!?」
「ログアウトしたらここにいマシタ。ここはどこでショウ?」
「お、俺の部屋だけど、な、なんでコッペリアがこっちでも体があるんだよ? botなのに?」
「〈オーバーロードからのご褒美〉とログの片隅にありマシタ。私も不思議デス」
レオナルドは立ち上がり、気づくとコッペリアを抱きしめていた。
コッペリアの肩に涙が落ちる。
「……レオナルド?」
「あ、ゴメン。嫌だったか?」
自分でも自分がした事とは信じられない。
「イエ、春の日差しのように暖かくて心地良かったデス」
レオナルドはもう一度コッペリアを抱きしめる。
「レオナルドはどうして泣いているのデスか?」
「………人間は嬉しい時も涙が出るんだよ」
「なにが嬉しかったのデス?」
「コッペリアが人間になったことだよ」
「人間………、私は人間になったのデスか?」
「ああ、そうだよ」
レオナルドは今度はコッペリアの手を取り握った。
「人間だから腹も減る。飯を食いに行こう。ジョナサンにも君を紹介したいんだ」
くう。
「私のお腹が激しく同意してイマス」
二人は顔を見合わせてクスクスと笑い、手を取り合ってコンクリートジャングルへと歩き出した。
-6-
クラスティの場合。
整理整頓された部屋。
自分がいない間も家政婦が手入れしていたのであろう観葉植物。
同じく世話されていたのだろう毛艶の良い飼い猫。
久しぶりに帰った我が家はいつもと変わらぬ退屈の匂いがした。
だというのに。
「何故君がここにいるんですか?」
「いちゃ悪いんですか?」
クラスティのベッドの上に座り、ふくれっ面で枕を抱えるレイネシア。
「久しぶりに退屈を満喫する気だったんですけどね」
どうやらゲートは地球人だけでなく、冒険者なら誰でも行き来できる仕様だったらしい。
「いいですね、退屈。のんべんだらりと過ごすというのなら仕方がありません。私もそうしますね」
「そうしてください」
そう言いながらも心中は楽観していなかった。レイネシアがこの地球の不条理を知った時、何をしでかすかわからない。
そして認めたくはないが、自分は彼女に手を貸してしまうのだろう。いつものように。
-7-
シロエの場合。
秋葉原には珍しい普通の喫茶店。
眼鏡をかけた三白眼の、身長は中の中の青年が卓上のコーヒーを前に人を待っている。
からん。
鐘を鳴らしてドアが開き、待ち人が現れた。
「待たせたな」
小柄なポニーテールの美少女が輝くような笑顔で声をかける。
「それほどでもないよ」
「ならよかった。では店主、すまないがアールグレイとホットケーキを」
「はい。少々お待ちを」
初老のマスターがにこやかに応える。
「それより聞いたか? 班長とセララだが」
「ああ、班長から聞いたよ。実際に会ったら自分があまりにも年寄りだからひ引くだろうと思ってたのに」
「『ロマンスグレイで素敵です』とばかりに押してきたんだろう。セララの熱は冷めるどころかいや増した感があるな」
もはや班長が陥ちるのは時間の問題か、と始まり、話題は次々と変わる。
カナミはさっそく愛娘と一緒にログインしただの、直継とマリエがやっと付き合い始めたけど、マリエが待たされたと言ってその分尻に敷き気味だの、トウヤが車椅子バスケを始めてそれに付き合うミノリも大変だの、
「それと濡羽殿だがな、今まで中断していて決まらなかった小説の終わりがやっと書けそうだと言っていた」
「へえ、どんなの?」
「うむ。主人公達は竜の世界へと旅立ち、長い年月の後に帰って来て、竜の世界で得た力で滅びかけた人の世界を救うのだそうだ」
「………そうか。じゃあ、地球に還って来た僕たちも少しでもこの世界の役に立てるといいな」
「ふふ。しー君は相変らず主君なのだな」
「お褒めに預かり光栄です。我が忍びの姫君、あっちゃん」
「それでは行こうか」
「ああ」
そうして二人は手を取り合い歩き出す。
4ロエとアカツキもまた。
あの地平線の向こうを、素晴らしい光景を目指して。
我思う、故に我在り。
それだけでいいのかい?
答えは君の内にある。
誰もが自分の個性で誰かを幸せにし得る道がきっとある。
我学ぶ、故に我常に友と在り。
人に友に寄り添い続ければきっと見つかる貴方の世界に一つだけの花を探して、
〈記録の地平線〉へと旅立とう。
-新ログ・ホライズン、完-
はあ、終わった。
ついに書き終えたぞー。
もう逆さに振っても鼻血も出てこんわ。
それはそうとこの場を借りて感謝&謝罪を。
ままれさんをはじめ昔の知り合いの皆さま、モデルになっていただき大変ありがとうございました。
また、あとがきとか適当にやっちゃってとの事でしたが適当にやり過ぎてしまい、大変迷惑もおかけしました。
本当にごめんなさいm(--)m(特にクリス先生)。
更にソウジロウがダリエラでない濡羽の本当の姿を見たときに、クロエそっくりで驚くべきシーンを書き損ねたのは痛恨の一事でした。
本当にごめんなさいm(--)m(特にこゆき先生)。
何より最後までお付き合いいただきました読者の方々、本当にありがとうございました(^^)/
最後の最後を大変待たせてしまい、誠に申し訳ありませんでした。
それでも書き終えれたのは皆さまのお陰です。
新ログ・ホライズンはこれにて完結です。
とはいうものの、筆者のシリーズはまだ、『13個目のピ-ピングジャック』が未完となっております。
しかし持病の調子が思わしくなく、いつ続きが書けるかの目途も全く立っておりません。
あしからず。
次にいつまた会えるかわかりませんが、拙文を読んでくださった貴方の人生に幸多からんことを願って。
慌てない慌てない、一遊び一遊び。
それでは、じゃあっねえー(^^)/




