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新ログ・ホライズン  作者: 東の外記・しげき丸
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33/38

狂王ダノーブとの戦い(8)

 鬼は外、福は内ー! と、暦の上では春が訪れますが、まだまだ寒さ厳しい2月、皆様風邪など召されぬようお気を付けください。へっくし!(自分は引いてる(^^;))

 番外編を挟んでちょっと久しぶりの本編です。

 様々な人間関係と新展開が交錯しつつも、ついに大レギオンレイドに突入する第32話をどうぞ!

 

 ―第32話:狂王ダノーブとの戦い(8)―

 

 -1-

 

 ヤマト、イースタル、アキバ。

 最近できたばかりのカラオケ喫茶店。

 蓄音機が開発されて以降、ラジオ放送の次に人々は当然カラオケの再現を熱望した。

 精度の問題でレコードが円盤で無く、大きな筒(それでも5分、つまり一曲の蓄音再生)が精一杯であり、保管や交換に場所と労力を必要とする事から、曲数もまだ十分とは言えないが、海洋機構もロデ研も第8商店街もこぞってカラオケ喫茶をオープンさせた。

 そして約2年に及ぶカラオケ断ちを強制された、冒険者のカラオケ禁断症状は凄まじく、開店から予約が途切れる事は無く、新たな店をオープンさせようにも、蓄音機とレコードの供給体制はなかなか追いついていなかった。

 なので濡羽、いやダリエラの姿なのだが、が『カラオケに行きたい!』と駄々をこねても到底実現するモノではなく、トウヤは互助会代表の権力を持って強制的に貸切るよう迫られ、大変困り果ていたのだが、恐る恐る店主に訊ねた所、『シロエさんが予約取ってましたよ』との返答。

 事無きを得たのだった。

「シロエ兄ちゃんってさあ、絶対過去に我が儘な女性に振り回されてた経験あるよな」

「そうね、トウヤ。噂だとカナミさんって人だったそうよ」

「トウヤ、ミノリ、お前等もなんか唄え!ゲハハハハ!!」

「いいぞいいいぞー」

「待ってました!」

「お兄さんはミノリちゃんの歌聞いてみたいな~」

 すっかり出来上がってるダリエラとミチタカとロデリックとカラシン。

「ホントにダリエラさんって、トウヤの言ってた通りの人だったのね」

「だろ?」

「悔しいけどトウヤの方が人を見る目あるのね。シロエさんが代表を私じゃ無くトウヤに選んだのも頷けるな」

「うーん、多分それだけが理由じゃないけど、ま、そう言えばそうかもな」

 それに―――、と続けようとしたが、その先の言葉は呑み込んだ。

 生まれ付き人の事が分かる人もいるけど、そうでなければそれは、大抵が自分や濡羽の様に悲惨な目に遭った人間だ。シロエ兄ちゃんだって班長だって、結構な昔が有ったと聞いている。

 ミノリがそうならないに越した事は無いのだ。

「ま、そういうのは俺に任せとけよ。それにミノリが事務管理してくれなきゃ、俺になんか絶対代表なんか務まってなかったんだから、そこには自信持ってくれよ」

「そうね。そこは敬って欲しいわよね」

「はいはい」

「直継さんやマリエさんも来られれば良かったのに」

「あの二人がいないとリーゼさんが困っちゃうよ。高山さんがいない今、派遣軍の引率の保父さん保母さん役はすっかりあの二人だからな」

「結局あの二人、人の面倒見るの好きなのよね」

「一番手のかかるシロエ兄ちゃんがいないから、手を持て余してるんだろ」

「シロエさん自身が人の面倒見始めたら自分の面倒見れなくなるタイプだもんね」


 ウェストランデ、サカイ。

「へっくしょん!」

「どうした、主君? 風邪か」

「うーん、気を付けないとね」

「どれどれ見せてみるのだ」

「わわっ」

 直継がいないので満足気味のアカツキだった。


 -2-

 

 翌日よりアキバとミナミ、東と西の貴族の混成軍は、ウェストランデではイセルス、イースタルではマルクと言う、互いに立ち位置を入れ替えた両殿下に率いられ、ナラ盆地とグンマ平原に向けて出立した。

 

 イースタル。

「毒宇蛾のドクウガの軍勢が空を飛ぶ半蟲半人の魔人で構成されている事は既に知っている。俺と部下達はその為の装備と下準備をたっぷり揃えてきた。安心するがいいぞ」

 鋼尾翼竜の背で胸を反らすナカルナード。

「そうですか」

 有翼獅子の背で気の無い返事をするリーゼ。

「兄ちゃんそら頼もしいな~」

 リーゼの後ろのマリエは愛想よく答えるがこれが通常運転である。

「だろう? 直継とやらに飽きたらいつでも俺の女になるといい。リーゼも独り身で不都合が有れば、いつでも俺を頼っていいのだぞ」

「遠慮しておきます」

「本気にしないでいい。ギルマスのそれは口説きと言うより、ヲタク女性は男女関係で苦労する事が多いから、自分が保護する義務があると思い込んでるだけ」

 とフォローする〈ハウリング〉副長エレッサ。

「嫌な男に絡まれた時、彼氏代わりの盾に使えって意味なのよ。ま、この手を使う時はいざ本当の恋愛をした時、自分から告白しなきゃならないリスクも込みだけどね~」

 同じく〈ハウリング〉教導隊長の唯香。

「は~、アンちゃん人がええんやな~」

「惚れたか?」

「ちょっと待てよ」

 いきり立つ直継。

「マリエさんは僕が守りますっ!」

 直継の後ろで叫ぶ小竜。

「えー子やなー、小竜は」

「………………」

 ちょっと涙目の直継。

 折角てとらがいないのに、こんな具合で未だに告白できていない。いと哀れ。

「まあ、曲がりなりにも関西最強のギルドのトップであるに相応しい器量である事は理解しましたわ。私の好みではありませんが」

「フフ。そう言う女を惚れさせてこその伊達男と言うモノよ」

 あー、うん。

 うちのミ・ロードと違って器量は有っても能力が追い付いてない残念な人ですね。と早々に見切るリーゼだった。


 ウェストランデ。

「ここはこうなるだろう?」

「でまあ、ここはこうする、と」

「いや流石に今をときめく軍事ヲタク作家のお二人、作戦が面白いように煮詰まりますな」

 有翼獅子の鞍上で話が弾むソロモンとヴァディスとレザリック。

「はー、ホント、最初からいてくれれば僕随分と楽できてたのにね~」

 嘆息するシロエ。

「無茶ゆーな、こないだまで地球に居たんだぞ」

「うちのコミュ障のオーナーが顔馴染み以外に協力できる訳無いです」

「み~か~さ~」

「そうなのか?」

「ええ、アイザックさん。口が悪すぎて相手にされなくなるんですよ」

「重度のヲタクなんてそんな人ばっかですから今更気にしませんよ」

「レザリック殿~」

「………他ならぬお前が口悪いってよく知ってるぜ、おい」

「これも愛情表現ですよアイザック君」

「気色わりーんだよ!」

「えー、アイザックも結構口悪いよね」

「あのなーシロエ、俺のはあけすけとかざっくばらんって言うんだ!」

「目くそ鼻くそを笑う」

「レザリック茶化すな! いや、だから俺を見習えば本当の事を言っても嫌味に思われないだろうって言ってんだよ! 言わせんな恥ずかしい!!」

「そうですよ、アイザック君はカッコいいんですからみんな見習うべきですよ!」

「~~~~っ!!!」

 イセルスの一言にアイザックは赤面し、皆はどっと笑うのだった。

 

 -3-

 

 進軍の合間の野営時間にもシロエはする事が有る。

 今後のヤマトの冒険者全員の、ことによると大地人全てをも巻込む事になるだろう、ヤマトの未来を変えてしまう話を煮詰めねばならないのだ。


 イースタル、アキバ、互助会会議室。

「パンパカパーン。これが離れた人とも自然に会議できる新型ラジオ、サークルくる来る-18号くんです!」

 得意げに胸を張るロデリック。

「17回失敗したんだな」

 ツッコむミチタカ。

「何の事やら? では、起動しますよ~」

 ブゥゥゥン。

 これでロデリックが聞いた声はロデリックの念話相手にも聞こえるし、ロデリックの念話相手の声はスピーカーから出力される。念話の相手も複数を拾える。

『あー、あ-、皆さん聞こえますか?』

『ったく、こんなとこまで来てまた会議かよ、だリーな』

『まあまあ、アイザックやん、そう言わんと』

「どうやら成功の様ですね」

「やっぱり今までは失敗してたんじゃないか」

「失敗は成功の母です」

「17回は多過ぎだろ」

「堅実信頼が売りの海洋機構と違って、ロデ研のモットーはトライ&エラーですからね」

「いやだからエラー多過ぎだろ」

「チャレンジスピリットと言って欲しいですね」

「それで採算取れてるから不思議ですよね~」

 呆れ顔のカラシン。

「じゃあ、まあ本題に入りましょうよ、シロエさん」

『はい、では今回の議題ですが、ヒリュウさんの仮説ですが、人間は80万円以上の月給を貰うと頭が馬鹿になる説です』

「なんだそりゃ」

「根拠あるんですか、それ?」

『いや、ヒリュウの仮説は分かり易く数学的に説明できると思うんですよ』

『できんのか? 流石理工系だな』

『シロ先輩なら当然ですよ』

 相変わらずのソウジロウ。

『例えば100の商品を比較検討するとする。選択肢が常に2個しかないならば、比較を99回繰り返さなければいけない』

『そりゃ手間かかるな』

『これが選択肢が5個ならば?』

「その方が有利ですね。5つの中から一番好きな商品を選ぶを25回繰り返せばいい。比喩表現でいいならば、ビット数の多いコンピューターそのままです。4分の一の手間で済みます」

「あー。商売の実感で言うともっと違いますね。99回も繰り返すと感覚がマヒしますからね。休憩を挟んだり日を改めなくちゃならないから、かなりの差がつくと思いますよ」

「確かに。実験においても似たような実感はあります」

「言えるな」

『では最初から選択肢が100ならば?』

『分けわかんねーよ』

『それが正解でしょう。100を同時に比較検討するなんて、人間の脳味噌には無理です』

『いやでも、点数を付ければ一気にぱっとわかるんちゃうん?』

『ではその点数は誰が付けるんですか? 自分でやるとやっぱり100回もすると感覚がマヒしますよ。他人につけてもらっても、ハンバーガーに百点を付けるか、カレーライスに百点を付けるかは人それぞれ違うんですよ。そして自分の好みは人任せにはできないものでしょう』

『そりゃそうや』

『もっと別の言い方をしましょう、香水や花を選ぶ時は一つ一つ匂いを嗅いで自分の好きな香りを探しますよね。でも、一度に十以上の混ざった匂いを同時にかがされて、この中から好きな香りをかぎ分けれる人は、専門職の人や特別な才能を持った人以外まずいません。嗅覚は元々ビット数の少ないコンピューターだと考えればいいわけです。そして人間の脳容量、ビット数も限られる』

「いい悪いでは無く、例え上の5の選択肢が最も脳の性能を発揮できる環境と考える訳ですね」

『実際上もそれくらいで合ってると思います。人間の指は片手で五本ですし、特撮の戦隊モノのヒーローが5人だったり、漫画や小説の主要登場人物が5人前後だと頭に入り易かったりしますね。5の倍数で10人くらいまでは大体個性を把握できるけど、それ以上になると、この人物誰だっけ? とか、ステレオタイプでザコ、馬鹿、眼鏡、筋肉とかで判別しがちですよね。SFの名作で『11人いる』って言う作品がありますけど、まさに個性を把握できるかできないかのぎりぎりのラインで登場人物を配して、最後に11人目を意外な、容疑者として見落としがちな、それでいて言われてみれば納得する人物として明かすくだりは秀逸でした』

「理系の人はそう言う目で作品見てるんですか……」

 呆れるカラシン。

『やっぱり眼鏡は油断ならねえ』

『アイザックさんはともかく、経済学部だって半分数学でしょう?』

「数字と理論は嘘をつきませんよ」

「その通りです」

 眼鏡を上げるヘンリエッタ。

「と……言う事は?」

 ゆっくりと目を輝かせるアインス。

『人間は適度に限られた収入ならば、最初から5つぐらいの選択肢でモノを選びます。自分の得意かつお金を注ぎ込む好きな分野で10ぐらいでちょうどいい。貧しすぎれば、常に手にした二つに一つぐらいしか目に入らない。

 でも、お金があり過ぎると、最初から何でも手に入るから百以上の選択肢が見えてしまう。金銭に制約があればはじめは高額な商品は除外して選びます。そして気に入った商品を見つけてからその延長にある高額な商品をお金をためて買うという、当たり前の手順ができない。そうすると脳が飽和を起こし、逆に処理上は右手と左手に持った二つに一つぐらいに落ちてしまう。

 それどころか、実は除外した選択肢すら、それが除外したものかどうかすら、自分がその気になればいつでも手に入ると言う仮定上の所有物だからわからなくなってしまう。逆に自分が本当はとても好きになりうるはずのモノも、いつでも手に入るからと興味を失ってしまい、購入意欲の対象外になってしまう。

 貧しい者が限られた財産で自分の好みのモノを探し当てるのが、宝くじを当てるようなものだとすれば、富める者が自分の好みのモノを探し当てるのも、実はまた宝くじを当てるかそれより難しい事になる訳です。そう言う人ほど、判断力が無いから実は他人や権威の意見に左右される奴隷のような貧者となってしまう。自分の判断や感覚じゃないから、いつも人の所為にする自己憐憫の亡者になりかねない。昔の偉い人が言いましたよねえ、〈富める者が天国の門を通るのは、ラクダが針の穴を通るより難しい〉って。別に死後の世界の話じゃなくて、生者の、そして数学上の当然の帰結という事になりますよね』

「では、持つ者が持たざる者へ収入を分け与える事はいい事なんだね?」

『施しなんて偽善以上の物にはなりませんよ。あくまで、その人やそのギルドが自分のしたい事好きな事へチャレンジするための投資であるべきです。回収をあまりあてにできないのは御愛嬌という事ですが、仕事への熱意誠意や工夫アイディアが足りないと思われれば、投資を打ち切られるリスクと緊張感はあるべきでしょう』

『い、いやいや待て待て、冒険にだっていい装備が必要だろうが。それだって自己投資ってやつだろ? ケツの毛までむしられちゃたまんねーぜ!』

『まあ、それは別ですよね。でもその自己投資か私的財産の区別も曖昧ですんで、ウチでは反対が無ければ冒険収入の2割は投資に回して、余剰アイテムも必要性の薄い物はそれを必要とする低レベル冒険者や大地人兵士に安値で譲渡するとか考えてます。各個人が日常で使うお金は給与制で70万円。つまり350万G。ただし内20万円は投資の義務を負わせ、手取り50万円とする。を考えています。まあ、ヒリュウさんの人生経験における観察眼が間違っていなければですが。地球に戻れば、脳電位測定とか科学的測定ですぐにわかるかもしれませんね』

「こっちでもアンケートを取りましょう」

「科学の基本と言えば統計を取るに限るからな」

「みんな………」

『勘違いすんなよ、馬鹿になるのが嫌なだけだからな』

『素直やないなあ』

『だからちげーって』


 -4-

 

 イースタル、ドクウガ討伐軍、D.D.Dの天幕。

「邪魔をするぞ」

「別に呼んでませんわよ」

 リーゼにそう言われながらもナカルナードは特に気にした風も無く、酒瓶を下げてずかずかとテーブルの空いてる席に勝手に腰かけた。

「それで、何の用ですか?」

「お前が欲しい」

「あれ、俺席外そうか?」

「構う事ありませんわ、リチョウ。それで、一体どういう意味でですの? 求愛?引き抜き?」

「お前が望むなら両方でも構わん」

「理由をお教え下さる?」

「お前は頭が良い。話をしていてよく分かった。俺の部下は馬鹿ばかりだからな」

「はあ」

 あからさまな失望の溜め息。

「それは貴方が原因ですわね」

「何だと?」

「貴方が馬鹿だと思っているから、周りも自分は馬鹿で良いと手を抜くのが癖になるんですわ。ミ・ロードやシロエさんの様に部下の能力を引き出せない貴方の責任でしょう?」

「何だと?」

「ミ・ロードやシロエさんがどうやって人の能力を引き出しているのか、私にも把握し切れてはいませんけど、少なくともシロエさんは、仲間をみんな、本当は格好いいと思って付き合っているんですわ。今流行っているてとらさんの曲を作詞したのがシロエさんと聞いて納得しましたの。

 何であんな神業的な戦闘指揮が出来るのかずっと疑問でしたけど、彼はいつもみんなの可能性を信じているから、みんなに好きな様にやらせて、自分は帳尻合わせのバスガイドに徹してるんですわ。それがあの結果を生んでいるだけ。

 私も以前は貴方と同じでしたもの。みんなが馬鹿だから、私が管理して上げなくてわって思ってましたわ。でもそれじゃああの丘の向こうの景色は見れませんのよ」

「…………」

 沈黙するナカルナード。

「ま、リーゼは黒剣のアイザックにだって脳筋ゴリラって言っちゃう女だからな。相手が悪かったな、大将」

 苦笑するリチョウ。

「あら、脳筋ゴリラだなんて、ホントは思ってないから言える冗談ですわ。残念ながら目の前の御仁にそう言う事は本心過ぎて言えませんわ。私にも淑女の慎みが有りますの」

「おいおい、そこまで言っていいのかよ?」

「――――帰る」

 ナカルナードは明らかに怒りを押し殺した能面に近い無表情で立ち上がり、踵を返した。

「貴方もきっと本当はカッコいいのですわよ。顔を洗ってそれに気付いてから、改めて出直して下さいまし」

 ナカルナードはそれに応えず天幕から立ち去り、後にはただ酒瓶がテーブルの上に残った。

「どうするよ、これ?」

「私は未成年ですから、リチョウ達で処分して下さいな」

「ま、いいけどよ」


「くそっ!」

 毒づくナカルナード。

「リーゼと言い濡羽と言い、どうして俺が欲しいと思う女ほど俺を拒むのだ!?」


 -5-


 ウェストランデ、ハシーヴァ討伐軍、黒剣騎士団陣幕。

「どうしたんです?改まって?」

 シロエは招いたアイザックに問いかける。

「そのなんだ、ありがとうな」

「はい?」

「例のEXPポットの件、あれは下っ端ヤンキーからトルエン(薬物、工業用シンナー)の売に目をつむる代わりに上納金を巻き上げるようなダサい真似だった。だから腹黒、俺を殴れ」

「へ?」

「あの時、お前が俺たちとハーメルンの手を切らせてくれなかったら、きっとあんなにまっすぐなイセルスの瞳に俺は耐えれなかったと思う。負い目を失くしてくれて感謝してる。だから、けじめとして一発殴れ」

「じゃあ遠慮なく」

 平手打ち一閃。

「ってー! お、お前な、そこは普通グーだろう!? それでもって『ふっ、こんな痛え拳は初めてだぜ』って言わせんのが礼儀なんだよっ! 女かお前はっ!?」

「知りませんよ。非力な僕がタンクを叩いたってダメージ通るわけないでしょう。なら一番効果的な事をするまでです」

「鞭打か?この〇○○野郎っ!」

「主君………」


 -6-

 

 ウェストランデ、イヅモ騎士団本部、大国の大社。

「もぬけの殻だな」

 頭を掻き溜め息を吐くレオナルド。

「………スクネ、ヒミコ、ライコウ、タケル、何処に行ってしまったんだ?………」

 俯き肩を震わすエリアス。

「やはり典災に眠らされたのだと思われマス」

 コッペリアの声も心なしか寂しげだ。

 やっとヤマトに辿り着いたのに、旧友との再会と言う一縷の希望は断たれた。

 ここでもエリアスは天涯孤独になってしまった。

 誰もが彼に掛ける言葉をも見付けられない中、カナミはポンとその肩を叩く。

「探しに行くぞー!」

「―――」

「見つけ出してさ、起こしてあげるんだよ! 私がエリエリ起こしてあげた時みたいにさ!!」

「起きてくれるだろうか?」

「もう私じゃ無理かもね」

「そんな?」

「こういう時はさ、友達の声の方がよく聴こえるんだよ。今からエリエリは、みんなを起こしてあげる取って置きの言葉を思い付く係ねっ!!」

「………できるだろうか、私に?」

「出来るかじゃないっ、やってみるの!クリアーできるまですればいいのっ!! そしたらうぃーあーちゃんぴおんだっ!!」

「相変わらずだな、カナミは」

 エリアスは苦笑いを始めた。

 つられて皆も笑い始めた。

 最後にはなぜか皆大笑いになった。

「できるできる!」「いつも通りデス」「だよなー、いつもそんなのバッカだよなー」

「そうだな」

 エリアスの目尻には涙が浮かんでいたが、それは悲しみの涙では無かった。

 

 -7-

 

 イースタル、グンマ平原。

「見ろ、予想通りだ」

「確かにミナミの情報は正しかったようですね」

 ナカルナードとリーゼの視線の向こうには、浮塵子の如き無数の半蟲の魔人たちの姿が天と地を埋め尽くしていた。

「ひゃー、あれが毒宇蛾のドクウガの軍勢かいな」

「ぶんぶんぶんぶん羽音がうるさい祭り! まるで田舎のヤンキーだぜっ!!」

 いつも通りのマリエと直継。

「装備に勝る我が隊が先陣を切る。リーゼ達は予定通りサポートに回るが良い」

「物言いは気に喰いませんが、ここはシロエさんを見習ってそうさせて頂きますわ」

「うちらもそういうの好きやからええで~。助け助けられが世の習いや」

「よっしゃ、美味しい所は頂く祭りっ!」

「生憎直継とやらの出番を回してやるつもりはない」

「自信満々だな~、後で吠え面書くなよっ」

「………」

 減らず口なのだが、余りにも嫌みの無い調子でにこやかにさばさばと言われてしまったので、却って返答に困るナカルナード。

「ふん、まあいい。

 行くぞ、者ども、関東にもハウリング隊とフロウデンの名を轟かしめるのだっ!!」

「「「応っっ!!!」」」

 鋒矢の陣で峠記するハウリング百人隊。方陣で続くフロウデン混成部隊の数々。

 

「ほう、あの先陣意気がいいの。こちらの先陣が食い破られておるわ」

「どうなされます、ドクウガ様」

 参謀蚊皇キバサラカが訊ねる。

「決まっておる。城の攻防でこそハシーヴァに後れを取るが、野戦では我こそが随一よ。

 イオナ、タリクタン、左右から回り込み挟め。タダッカ、正面から叩き潰せ」

「「「御意」」」


 -8-

 

 ウェストランデ、ナラ盆地。

「あれがハシーヴァの一夜城か」

 シロエの視線の先には白亜の小城。

「ああ、無数のゴーレムが合体して組み合わさって、あっと言う間に城になっちまうんだ」

 以前に対戦して敗北したミズファが忌々しげに言う。

「悠長に城攻めをしていると、ブラックカーン、ベイハーン、スカルビーらの軍勢が火責め水攻めありとあらゆる奇襲攻撃を仕掛けて来る、と。資料にはあります」

 メモを確認するレザリック。

「そして遊撃軍の相手をしていると、城からカートティガー、フーシブルの突撃軍が打って出る、と。いや、敵ながら嫌らしい事してくるね」

 ぼやくソロモン。

「まるで誰かさんの小説の敵キャラの様ですな。書いてる人の品性が滲み出てる」

 ほくそ笑うヴァディス。

「いやいや君の書く漫画の敵キャラにこそそっくりだよ。根性ババ色の処君にそっくり」

「おら、じゃれてねえで行くぞ」

 鞘につけたままの黒剣で頭を小突くアイザック。

「皆さん、お願いします!」

 律儀に頭を下げそうになるイセルス。寸前でアイザックが止める。

「お前が総大将なんだから、ここは剣を掲げて命令すりゃいいんだよ」

「あ、ごめんなさい」

 周り中から微笑ましく暖かい失笑が漏れる。

「それでは、全軍、前進!」

 イセルスの掲げた、アイザックから送られた愛用の小剣が光り輝く。

「「「おおぉぉぉーーー!!!」」」


 戦いの火蓋は切られた。


 ―第33話に続く―

筆者(以下:筆):「今月のテーマは『ネトゲ番長』です」

アカツキ(仮名、以下:あ):「番長としての活躍の場をリアルからヴァーチャルに移した訳だなww」

クラスティ(仮名、以下:ま):「そうして我々の手でネチケットの原型は作られた訳だ」

アインス(仮名、以下:先):「色々あったよねえ」

あ:「作中みたいな事も有ったり無かったり」

筆:「作品にするには脚色と時系列の入れ替えがどうしても必要だからねえ」

ま:「ヲタク差別が一番厳しかった時代だから、ヲタク同士でもピリピリしていて、自分達のグループ以外はみんな敵、みたいな過激なグループも沢山いたよね」

先:「教育の職に付く者として色々頭を悩ませられたよ」

あ:「ログホラ中の事件と似たような事件が起き、主君や馬鹿兄や先生達有志はその解決に奔走した訳だ」

筆:「まあ潔癖なのでwww」

ま:「ギルド長(仮名)だったからね」

先:「仕事の様なモノでしたから」

筆:「そんなこんなでかつて敵対していた人も今では全力戦闘管制に協力してくれてたりします」

ま:「某ゲーム会社にン億の損害与えた某◎×とか」

先:「地位と権力を利用してハーレムを作ってうちの妹にまで手を出そうとした某□△とか」

筆:「他人のネタやデータを他作家に横流ししてた某@※とか」

あ:「某ゲームのワカメみたいなやつは何処にでも沢山いるのだな(苦笑)」

筆:「しっかり心を入れ替えて働いてくれないと、俺達がばらさなくても誰かが過去の悪行をばらすかもしれませんよねえ」

ま:「ネット社会って怖いよね」

先:「君達……」

筆:「過去ソロモン(仮名)さんをはじめ何人が炎上した事か」

先:「おい、あれも君達がやったのかい?」

筆:「いえ、関与してませんヨー」

ま:「そうそう」

あ:「何故だろう、とても白々しく聞こえるwww」

筆:「ヤダナア、火の無い所に煙は立たないから、品行方正に頑張ってれば何の問題も無いヨ」

ま:「ソウソウ」

あ:「こうしてネトゲ界の治安は守られている訳だな」

先:「ちょっと待て、それでいいのか?」

(注:本当にソロモン(仮名)の件は彼の自爆であり、その後の炎上に作者&筆者たちは何も関わっていません。冗談だから本気にしないでね)

筆:「ではまた来月」

一同:「「「じゃあっね~(^^)/」」」

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