狂王ダノーブとの戦い(7)
ハッピーメリークリスマス&来年もよいお年を、の師走です。
本当なら2024年の終わりとともに終わりを迎えるはずだった本連載、PC大破で中断したせいで未だ道半ばです。
御免なさいm(--)m
どうかもう半年ほどお付き合いをお願いします。
お待たせついでに来月は久しぶりの番外編となります。以前のように独立した小作品でなく、便宜上連載に挟む形でお載せしますので、いちいち探す面倒がなく読みやすいかと思います。よろしく一読お願いしマス。
それはそれとして今年最後、トウヤとマルクに注目の本編をどうぞ。
―第31話:狂王ダノーブとの戦い(7)―
-1-
ウェストランデ、イコマ。
イセルスやスタークやシロエ達、軍の重鎮がミナミの翔鳳殿で歓迎会に参加していたころ、五十鈴とルディは彼等戦う人達を鼓舞する為のマーチの作曲に励んでいた。
「じゃあ、ルディ、さっきのフレーズ唄ってみて」
「承知だ」
まず五十鈴が原曲を作り、それをルディが歌う。
てとらではない。
正直今までの自分の曲は微妙だったと五十鈴は思う。どうにも間が抜けていて、格好良くならなかったのだ。
そこでルディの出番である。
だが正直ルディも上手くは無い。上手ければてとらでは無くルディがステージに立っていただろう。ルックスも良いのだし。なのに立てないのは控えめに言っても音痴だからだ。ちゃんと楽譜通りのリズムや音程で唄う事が出来ない。
でも何故か歌に感情を込めるのはとても上手で、時折まぐれ当たりでとても格好良く歌う。カラオケに一人いると盛り上がるヘタウマ君だ。
そして何度か唄ってみると、そのまぐれ当たりを拾い集めて、結構格好いい曲に編曲できてしまうのだ。最近の曲はいつもこうして作っている。
作詞は大元を五十鈴やシロエがして、後はギルドのみんなでああでもないこうでも無いと相談して煮詰めて、一丁前の曲の出来上がりだ。
今やルディは欠かす事の出来ない相棒になっている。
だがその分ルディの無言の要求が高まっている。
こんなに役に立っているのだから、ご褒美が欲しい、と。
もちろん屋台を見かける度に食べ物を奢ってはいる。
だが切ない目で訴えてくるのだ。
おやつを貰ったレトリバーが、これよりも散歩がいいと、無言で訴えるのと同じ瞳で。
そしてそれが男女の仲を一歩進める事だと、五十鈴にもわかってはいる。
でも出来ない。
今のわんこと付き合うようなぬるま湯が心地好すぎるのだ。
その反面、いっそ思い切って一線を越えてしまおうかと誘惑に駆られる事も有る。
もし地球に還れた時、またセルデシアに本当の意味で帰って来られる保証は無いのだ。次にログインした時は、ただのゲーム画面でしかないかもしれない。それならば地球に還らず、セルデシアにとどまる為の言い訳が欲しくなる時もあるからだ。
せめて成人して大人になっていれば、自分で自分の事を決められたのかもしれない。でもただの高校生の五十鈴には無理なのだ。やっぱり。
「どうした? 五十鈴、変な顔をして?」
「ううん、何でもない。やっぱここのフレーズで悩んでてさ」
「そうか、ならばもう一度唄おう」
ルディは優しい。それに比べて狡い自分に時々胸が苦しい。
-2-
ミナミのとある酒場。
「どうして俺はモテないんスかね~」
ヴァディスはくだを巻いていた。
「後300キロ体重減らせ、デブ」
バッサリ切って捨てるナズナ。
「反重力物質になれと!?」
「いえ、体重計がオーナーの詐欺に騙されているだけで、実際の質量は400キロある筈です」
更に追い込むミカサ。
「畜生テメエら無駄に胸に脂肪あるだけで上手く世間渡りやがって! そんなに腹に脂肪あるのが悪なのか!?」
「おま、そういうとこが最低に女にモテねえとこだっての」
「激しく同意します」
「いえ、ヴァディスさんも男前なとこ沢山ありますよ」
「見ろ、このソウジロウのフォロー力。こういうのがモテる男だっつーの」
「女性の褒め方も抜群にうまいですしね。オーナーのは常にセクハラ」
「品がねえんだ、品が」
「下品なのはソロモンの兄貴やヒリュウもでしょう?」
「ソロモンもモテねえじゃん」
「ほっとけ」
「まあ俺様はリアルじゃ美形だし、愛嬌が有るからな。それなりにモテるぞ」
「その割には濡羽と上手く行ってねーな」
「てめっ、マヒル! お前のせいもあんだぞ! 何かあるとマヒルならああした、マヒルならこうしたっていっつも比べてくんだよ! どーしてくれんだ!?」
「知るか」
「生身の男ってのはどうしたってがさつだし品が悪いとこあるんだよ! しょうがねえだろ、本能なんだから! 宝塚やレディースコミックやノベルって本当は女だから女の気持ち全部わかって当たり前じゃん!? ホンマ物の男が絶対敵う訳ねーって!!?」
「分からないなら、分からないけど力になるよ。って言って上げればいいんですよ」
「「「―――――――」」」
「………ソウジロウがホストなら億稼ぐな。まぢで」
グラス片手に天を仰ぐソロモン。
こんなに俺の周りって生臭いのは、俺も同類だからなんだよなあ。作風にも出てるし。濡羽もいっそ作風変えて生臭くした方が売れるんじゃね? とか商売に活かす事を考える職業病だった。
-3-
ヤマト某所。
暗かった海原に一筋の曙光が差す。
「つ、着いたー! 着いたどー!!」
拳を上げて勝鬨を上げるカナミ。
大海獣の典災を今度こそ撃破し、最早原形をとどめぬ木材の塊となった筏はやっと陸地に到着した。ちなみに他の面々は息も絶え絶えでやっと木材にしがみついているままである。
「し、死ぬかと思った」
「常世の国で母上が手招きする姿が何度見えた事か」
「結果オーライとコッペリアは主張しまス」
「んでここどこさ?」
仕方なく聞く事の出来る人を探し陸を彷徨い、一時間後に釣り糸を垂らす爺さんに出会う。
「じーちゃんここどこ?」
「どこって、ツシマに決まってるじゃろ」
「ほほう、ではヤマトなのだな!?」
「当たり前じゃー。何言うとるんじゃ?」
「良かった。もう海はこりごりだ。カエルのコスだからって泳ぎが得意なわけじゃないんだぜ」
「もう船酔いに悩まされずに済むのだな」
「ああ、自分の脚で歩けるぞ!」
「あ、あーはははは」
珍しく汗を流し引き攣った笑いのカナミ。
「「??」」
「皆さん、筏を直す事を推奨しまス」
「「!!??」」
「まだもうちょっと海の向こうなんだ~、目指すとこ」
そのカナミの言葉に白目を剥き力無くへたり込むレオナルドとエリアスだった。
-4-
ウェストランデ、朝、数多の兵で賑わうサカイの閲兵場。
東西の軍が集結し、いよいよハシーヴァ討伐に向けての出立の準備に人々が追われる中、シロエは一人地面を這う蟻を見つめていた。
そんな彼に声を掛ける者はいない。
(見ろ、あれが腹黒眼鏡だぜ)
(馬鹿、聴こえたら取って食われるぞ。噂じゃあのインティクスさんとゼルデュスさんをコテンパンにしたらしいぜ)
(ええ?あの鉄血宰相と人でなしメイドを?)
(地獄の悪鬼か何かか?)
(桑原桑原)
それにひきかえヒリュウの周りには人だかり。
「よっ、馬鹿殿」
「相変わらず馬鹿面だなあ」
「へっ、ぬかしやがれ」
人に馬鹿にされながらもなんだかんだ言っても、人に好かれる奴なのである。
自分はボッチ。まあ、自業自得なんだけどさ。これも役割分担だし。
現実逃避でより蟻の観察に力が入る。
子供の頃はこんな観察だけで何時間も費やしていたタイプ。はい、陰キャですが何か?
バッタの死骸に群がる真面目な働きアリが列を無し、そうかと思えば数匹のアリがてんでバラバラに無意味な行動で遊んでいる。
これだって立派な役割分担である。
遊ぶアリは運が良ければ新たなエサを見付けるし、運が悪ければ(そして群れにとって運が良ければ)危険な外敵を見付けて群れに報告するし、運悪くバッタに群がるアリが外敵や天災に襲われ全滅した時は、彼等こそ働き手になるのである。組織の冗長性と言う奴だ。
なのでもし僕がこの場で遊ぶアリを全部殺しても、必ずまたバッタに群がるアリの中から一定の割合で遊ぶアリが発生する。彼等は無意識下で精神が繋がっていると主張する学者もいる。おそらくそれは人間にもあり、多分それが仏教でいう阿頼耶識や心理学でいう集合無意識なのではと唱える人もいる。
つまり大地人や今も地球で働いている人たちがバッタに群がるアリで、僕ら冒険者は遊ぶアリなんだよなあ。と益体も無い事を考えたりもする。
だから自分がボッチでこうして一人思索にふけるのにも意味が有るのだ。多分。
「何を見ているのだ? 主君」
訂正。ボッチじゃ無かったです。僕は充分恵まれてます。その証拠に独り身と思われる兵や冒険者から突き刺す視線がチラホラ。
「アリを見てたんだ。僕達みたいだなって」
「ふむ。ではこの仲良く遊んでいる2匹が主君と私だな」
なんて可愛いのこの人。頭を撫でたくなる衝動に駆られたけど、この流れだと馬鹿にしてと怒られるパターンだと学習した僕。
「そうだね」
そう言いつつも諸々を堪えるのに必死。
「それより呼びに来たって事は軍議が始まるの?」
「ああ、イセルス様とスターク殿が待っているぞ」
-5-
イースタル、エターナルアイスの古宮廷。
次期斎宮殿下マルクはご機嫌斜めだった。
これから古宮廷の祭祀場で戦勝祈願の祈祷をしなければならぬと言うのに。
原因は分かっている。イセルスとの対決の最中に癇癪を起こして以降、周囲と折り合いがつかなくなったのだ。過剰に気を遣えばそれが気に入らない。かといって厳しく当たればまた癇癪を起こす。周りにとってまさしく彼は腫物であった。
腫れ物扱いされる子供が幸せなわけがない。
なまじ今までが優秀で完璧な子供扱いだったので尚更だ。
「お、お待ちください」
何だ?外が騒がしい。
「殿下は祈祷前の禊の最中です!」
「西の納言、濡羽ねーちゃんの命令だ。これが証拠の書状だ。通させてもらう」
僕に客?
ガチャリと開く扉。
「どうも、マルク殿下。昨日一応名乗ったけど改めて言うぜ。アキバ互助会の代表、トウヤだ」
「……覚えておる。記憶力はいい方だ」
「成程、濡羽ねーちゃんの言った通りだ。昔の鏡の中の俺そっくりの顔してらあ」
「??」
-6-
ウェストランデ、サカイ、軍議室として借り受けた宿。
いよいよ東西合同軍の最初の軍議が始まる。
といっても、幹部全員を集めての大規模なモノではなく、基本的には東西の大地人と冒険者の軍のトップのみで大まかな筋を決める予備的なもの。
メンバーはイセルス殿下とスターク卿、アイザックとレザリック、シロエとヒリュウとミズファ。それに加えてイセルスの付き人としてサリーシャとマインバッハ、スタークの付き人としてケネス、シロエの付き人としてアカツキの11人がいるのみだ。
「えー、では軍議を始めさせて頂きます。進行役を務めるシロエです」
「こうやって落ち着いて話すのは初めてだな、シロエ殿」
「ええ、スターク卿。よろしくお願いします」
「スタークでいい」
「なら僕もシロエで」
「では有難う、シロエ。私をミナミの利権に取り込もうとするゼルデュス達を掣肘してくれて正直助かった。改めて礼を言う」
「いえ、スタークさんを助けた訳で無くて、ただ腹が立ってつい」
「ククッ。構わん。私も似たような思いを抱いていたからな」
シロエに敬意を払われているスタークに尊敬のまなざしを向けるイセルス。シロエ自身にはと言うと、やはりちらっと目を向ける度、頬が引き攣っている。
「こほん。それではハシーヴァ攻略の戦術骨子の解説を、レザリックさんお願いします」
気を取り直し見なかったふりで誤魔化し、軍議を進める。
「はい、頼まれた通り組み上げてきました。と言っても敵分析とアイディア出しのほとんどはシロエさんがしたようなものですが」
「いえ、僕の指揮経験は24人レイド戦がほとんどですから、百人レイドクラスの指揮経験が有って尚且つ堅実な用兵をするレザリックさんにまとめてもらう必要が有ったんですよ。大変に助かってます。有難うございます」
「そう言われると悪い気はしませんね。では―――――」
「ほへ~~、良く考え付くな~~」
感心するヒリュウ。
「アンタ嫌な奴だけど、戦は分かってるじゃないか。アタシらは見栄えなんざ気にせず不死を活かして蟻兵戦術に徹するのが一番だからね」
「蟻兵って何だ?」
「ゾンビアタックの事ですよ、アイザック君」
「ほーう、面白ぇな、闇精霊化ってやつは」
「生身で闘うのなんぞアホだよ。アタシらの強みは神殿で復活する冒険者よりも気軽且つ手軽に戦線に戻れる事だからね。パワーレべリングの道具としてしか見なかった元老院が馬鹿なんだよ」
「それに闇精霊化は画面の向こうでゲームをしてるのと同じで恐怖が無いですからね」
「そうそう、画面てのは分からないけど、そう言う事だよ」
「その分現実に放り出された時脆かったんですけどね。転移したばかりの頃の僕らと同じで」
「前言撤回。アンタやっぱり嫌な奴だ」
「成程、これだけ勝算が有るのならば、私たち大地人の軍勢は領民の保護と領地の再占領に専念できるな」
「あッ、ハイ、スターク卿。それに関しては僕達の方で編成と作戦案を考えて来たので御覧になっていただけないでしょうか?」
「勿論です。イセルス様」
マインバッハが卓上に編成表を広げ、サリーシャが解説して行く。
「これを三人で考えられたのですか?」
「はい」
「素晴らしい。よくこちらの貴族の情報も良く把握され、適性に合った役職を割り振られておられますね。ただ、こことここはこうした方が」
「何故です?」
「本当はバラン男爵はこちらの方の職が向いているのですが、利権と見栄でその職ばかりしているのです。同様にナルンド子爵もこちらの方が」
「……。好きで向いている事をした方が幸せなのに、なぜそんな事をするのでしょうね?」
「好きで向いている事をすると、便利だからと周りが余分に仕事を押し付けるのですよ。ですから本心を見せぬのが得だと言う風習が貴族には根付いてしまっているのです。本心を偽ってでも得た富と権力の方が自分を幸せにしてくれると勘違いしているのです。幸せとはなるものなのですが。貴族とは存外、領民よりも愚かで憐れな生き物なのです」
「………だから足を引っ張り合うのですね」
「まあ、金持ってるから馬鹿になるってのもあると思うぜ。俺の経験じゃあ、月80万以上の給料貰い出すようになると、明らかにそれ以前よりも馬鹿になる奴一杯見て来たぜ」
鼻をほじりながら言うヒリュウ。
「それは私も思うな。ある程度以上の金や財産は、私の持ち物では無く、伯爵家と言う仕事の経費で借り物だと思う様にしているよ」
苦笑するスターク。
「富める者が天国の門を潜るのは、ラクダが針の穴を通るよりも難しい。か」
呟くシロエ。
次の瞬間電流が走る。
次々と脳内に展開される図形や立体構造。それは確かな実像としてシロエの掌中にあった。
迷信や宗教じゃない。数学と理論で説明可能なんじゃないか?
インティクスやゼルデュス達を、いや、そんな小さな範囲に拘るな。
用兵家の小賢しき事、ただ大軍を持って押し潰すべし。だ。
みんなを説得して見せるんだ。
-7-
イースタル、エターナルアイスの古宮廷。
「簡単に言うとさ、俺、昔大怪我して、一人じゃ立って動く事が出来なくなったんだ。何もかも自分の思い通りにならなくなった」
紅茶の置かれたテーブルのマルクの対面に座り、語りかけるトウヤ。
「………それが今の僕と同じだというのか?」
「何もかも人に頼まなくちゃならない自分が酷く惨めで格好悪く思えた。自分が無力だって」
「……………」
「でもさ、今も同じなんだぜ。互助会の代表なんて、一番偉い立場なんだけどさ、結局、人に頼む事が一番の仕事なんだよな。一人じゃ何もできないからそれぞれ得意な人に頼むしかない。
怒りってさ、結局どうにかしてくれる誰かへの御願いにすぎないんだよ。
御願いだから、人に頼まなきゃならないから、より人に優しく、誠実でなくちゃならない。それはすごく素晴らしくて有り難い事なんだって、ようやく気付けたんだ」
それがワイヴァーンに襲われた街で叫んだ時から、探し求めて辿り着いた答だった。
「――――――え?」
「祈るってのも、神様やみんなにお願いをするって事だから、同じだろう?」
「あ」
西の納言、濡羽は東の貴族達に訴えかける。
「幼くとも政治家としての大器を示されたイセルス様と違い、祈る事しか取り柄の無いマルク殿下を柔弱非力だと思われる方もいらっしゃるかもしれません」
濡羽のその言葉に、いやそこまではとばつの悪い顔をする者もいれば、その通りだと失笑を漏らす者もいた。
「しかし思い返してください。民は魔物の前には非力です。貴族や冒険者にただ守られ、戦の神に祈る事しか出来ぬほどに。
そしてまた貴族も非力です。その財となる作物の出来不出来は領民の働きにただ任せ、天候の神に祈るしか出来ぬほど。
ちがいますか?」
おお、と賛同の溜め息を衝く者。決まり悪げに咳払いで誤魔化す者。
「斎宮とは、民と同じ非力であり、また貴族と同じ非力である、この世で最も非力である呪いと祝福を受けた者。
誰よりも非力であるが故に、誰よりも真摯に、誰よりも全ての非力な者と心を重ね合わせて神に祈られる御方で在らせられます。
マルク殿下が真に王に相応しき方か否かは、殿下の御祈祷を見てご判断頂きますよう、この西の納言、伏してお願い申し上げます」
そう深々と頭を下げる。
「そうでしょう、殿下?」
「合い分かった、納言」
いつの間にか濡羽の背後から現れたマルクに一斉に視線が集まる。
「非力非才の身なれど、それ故に誰よりも真摯に神に祈る事を誓おう」
そう言って堂々と進み出る。
それを見て誇らしげに悪戯気にウィンクを交わすトウヤと濡羽。
その日の祈祷は後の世まで語り草になったという。
怒りとは天への願い。昔の人はそう言った。
-8-
ウェストランデ、イコマ、フロウデン本部。
「互助会の代表がマルク殿下の手助けをした?ですって!?」
配下の報告に驚愕するインティクス。
「分からない………、一体シロエは誰の味方だって言うの!!?」
「――――――」
報告に対して無言で応えていたゼルデュスだったが、暫くして口を開く。
「―――誰の敵でも味方でも無く、ただ本当の事を言っていたとでもいうのか?」
「なあ、言ったろー。アイツは逆さ蝙蝠鉄面皮なんだよ。蝙蝠の逆で誰の味方もしないし敵もしない、誰に何を言われようと鉄面皮でバスガイドしかしないのさ」
にひひと笑うKR。
-9-
ウェストランデ、ナゴヤ、狂王ダノーブの地下城。
「出るのか、ドクウガ」
「ああ、アーケン」
「残るハシーヴァが一度死ねば、私とダノーブ様をこの城に縛る強制力が切れる。それまで待ってもいいのだぞ?」
「ダノーブ、いや計都星様が出陣するまでは一度は滅びても蘇る身体。それがこのゲームのプログラム。ならば敵の情報を少しでも多く収集する方が良い」
「フ。シナリオを無視して戦力を集中させるだけでも容易く勝てように、用心深き事よな」
「それよ。用心深さも情報収集も、自分達しかせぬとゲームプレイヤーは思うておるだろう。そこを衝かねば失礼に当たると言うモノよ」
「フ。お前もだいぶそのアバターに思考を影響されているな」
「お主もな。より慎重になったのはお互い様よ」
「そこでは無いのだがな」
「?」
「まあ、戦いを楽しんでおるのだと思おう。存分にやって来い」
「応とも。〈共感子〉を刈って刈りまくってくれるわ」
城門を潜ると配下の軍勢が出陣を待ちかねていた。
常蛾のタリクタン、蜻蛉龍のタダッカ、蚊皇キバサラカ、赤蝶姫イオナやその他ら、膨大な半蟲半人の魔人の群れ。
「毒宇蛾のドクウガ、出る」
どこからともなく現われた蟲の群れがドクウガの体を覆い、具足と大槍に姿を変えて行く。
『ドクウガよ』
何だこれは?
『坊主どもを滅ぼしに参るぞ』
この声と姿はダノーブ。だが今ダノーブは城の奥の玉座に呪縛されているはず。これはこのアバターの過去の記憶か?
『汝と我は似ておる。汝は幼き頃口喧嘩で勝てぬとすぐ相手を切り殺した。我も口で坊主に勝てぬから押切長谷部でなます切りにした。それは我等が弱き故よ』
『今の我らに敵う者など居りませぬ』
『いいや。我等は民をたぶらかす坊主の口車に敵わず民の目を醒ませぬ故、口喧嘩で負けたが故、切り殺すのよ。いずれ口でも敵う強き者になれドクウガ。儂の真似ばかりせず、真に強うなれ』
「ドクウガ様?」
「ランク3になれと?」
「ドクウガ様?」
「すまぬ、タダッカ。夢を見ておった」
「どのような夢で?」
「ランク2からランク3になれと言われた。ランク3になど成れば、殺して〈共感子〉を奪えぬ。殺し合えるのはランク2同士であればこそだというのにな」
―第32話に続く―
筆者(以下:筆):「今月のテーマは『神道とヤンキー』でーす」
アカツキ(仮名、以下:あ):「またカオスな。それはそうと前回の続きだな、主君はどんなヤンキーだったのだ?(もう既に言ってる気がしないでもないが)」
筆:「(聞こえないふりをして)神も仏もいます」
クリス(仮名、以下:く):「おい、いるかどうかわからないんじゃなかったのか? 以前の結論全否定か?」
筆:「神も仏もいます。そしてそれは特別な存在ではなく、その気になれば誰でもなれます。と言うのが神道の教えです。生き神なんていくらでもいます。神と呼ばれる人、仏と呼ばれる人、人にそう思われ慕われる人はみんなそうです」
あ:「ではゲームやスポーツで『アイツ神』とか、『マジ神技』とか、そんなのでもそうか?」
筆:「そうです。自分も周りの人も幸せにする人は広義の意味でみんな神です。ただ神で居続けたり後世まで神と祀られるのが難しいだけで(苦笑)」
く:「わはははは」
あ:「成程、人を幸せにする人はみんな神で、みんな神の道を歩みましょう。と言うのが神道か。シンプルだな」
にゃん太(仮名、以下:に):「なので作った料理を『おいしい』『御馳走様』と言ってくれて、お金まで払ってくれるお客様は神様ですにゅあ」
く:「クレーマーでも?」
筆:「サービスを向上するヒントやアドヴァイスをくれる人は神様。周りの客に迷惑をかけて不快にさせ、不幸にする人は客でも神でもありません」
に:「そう言うお客様にはお店の裏方で他のお客様の迷惑にならないようにお話をさせてもらいますにゃあ」
く:「もっと悪い奴とかは?」
筆:「弱みを握って無理にでも善い事をさせて真人間に鍛え直すんですよ。神道で言う荒御魂を祀ると言う奴ですね。悪神でも賽銭を払ってその霊力を人の願い事を叶えるために使わせて、善神に生まれ変わらせる。それが日本の伝統です」
に:「妻を亡くし荒れていた頃にはそんな事もしましたにゃあ」
く:「出た、串刺し公www」
あ:「ヴァディス(仮名)が震え上がる訳だwww」
筆:「まあ、どんなクズに見える人も、駄目に見える人も、悪い人も、必ず神になり得る。だからみんな尊いと言うのが神道の教えです」
ヒリュウ(仮名、以下:ひ):「仏教で言う『天上天下唯我独尊』だぜ」
アイザック(仮名、、以下:ざ):「親が見捨てる様な札付きのワルと言われる奴もみんな可愛い仲間。みんながそれぞれその職その道でいずれ一国一城の主となるべきお殿様だからみんな平等。ってのがガチのヤンキー本来の意味で、俺様や俺様達のグループだけが一番偉い威張りたいって意味に解釈してる奴は偽ヤンキーだな」
筆:「筆者の話に戻りますが、小学生の頃、過ぎたワガママで皆を困らせていたガキ大将を、策に嵌めて追い落とした事が有るんですよ。それで中学入学の時、その話を聞いて気に入ってくれたガチヤンの友達と義兄弟になって、一緒にその中学の学年を締める事になったんですね」
一同:「「「お前ガキの頃からそんな奴か!?」」」
筆:「でもリーゼントしたりバイクに無免で乗ったり族車に改造したり集会を開いたりはしなかったですね。ただ番を張ってただけwww、ほとんど口舌と策で。新信長公記の光秀や秀吉みたいな智謀ヤンキーでしたね。自分で言うのもなんですけど、イジメもカツアゲも差別も無い、和気あいあいとしたいい学年でしたよ」
あ:「やはり主君は主君だな」
筆:「でもまあ高校に入ってからは家庭の事情で引退しちゃったんですけどね。その後は活動の場をゲームに移した訳ですよ」
一同:「「「で、ああなったんかい!?」」」
筆;「てな所でまた来月」
一同:「「「おいっ!!?」」」
あ:「じゃあっね~(^^)/」




