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新ログ・ホライズン  作者: 東の外記・しげき丸
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27/38

狂王ダノーブとの戦い(3)

 鬼は外福は内。暦の上では春も訪れます節分ですが未だ寒い中皆様いかがお過ごしでしょうか?

 本作も福と一緒に貴方のスマホやパソコンに今日もお邪魔します。

 初めましての御方も一月振りの御方も会えまして感謝感激の東の外記です。

 今更ですが、旧ログホラと新ログホラでは一部名称に齟齬が生じておりましたが、直すのも手間がかかり執筆の勢いが削がれる為、敢えて今までほったらかしてました。御免なさい(TT;)。

 なので今ここで把握している分の名称統一(変更)を説明しておきます。


 テツロウ→シュンイチ

 インブリウムの空中庭園→インブリウムの空中迷宮

 幻想戦士団→ハウリング

 バビロン正宗→ナカルナード

 蒸気船シュツルムリッター→蒸気船シュツルムシュバリエ

 アオモリのサブ職〈料理人〉→〈醗酵職人〉

「結局チーズ職人の方が向いてたから、料理の道はやめちゃったんだけどさ」の台詞を追加。


 いややっぱね、元ネタ(実話)をほぼそのまま書いちゃいけないよね。フィクションなんだから(苦笑)。旧名称は某ゲーム時代当時を分かる人だけ苦笑いで済ませてやってください。

 それでは毎度の本編をどうぞ。

 m(--)m

 ―第27話:狂王ダノーブとの戦い(3)―

 

 -1-

 

 ウェストランデ、斎宮院、大聖堂。

 現斎宮、老コーネリウスが祝福の祝詞を唱え、スターク伯に月桂の冠と元帥状を手渡す。

「これを以って彼の者を〈典災〉に対する軍事協定の最高軍事指揮官、征夷将軍に神の名において任ずる。忠節を以って励むが良い」

「謹んで有り難く拝命致します。この非才非力の身を、戦乱にあえぐヤマトの民の盾となり剣として身を捧ぐ事を天と地と偉大なる神の代弁者たる斎宮家に誓います」

 スタークの言葉は真実であった。

 ヤマトの民の盾となり剣となる事に於いてだが。

 斎宮家の期待も貴族の打算もフロウデンの利権も、彼にはどうでもいい。

 貴族もフロウデンも〈冒険者〉も、民の為なら精々利用するし、必要なら自分も利用されよう。

「伯にはウェストランデの守護役を頼む」

 周囲からの無味乾燥な拍手。

「イースタルへの遠征軍の指揮官には、ナカルナード将軍を任じ、更にその軍を神意を以って導く任を、我が孫マルクに聖課する。ごれが神託である。皆の者異論は無いな?」

「神托に異論などあろうはずも無く、我ら元老院、全てを以ってこれを支える事を天と地と偉大なる神の代弁者たる斎宮家に誓います」

 元老院議長バーゼル侯爵が恭しく礼をし、他の元老も一斉に倣う。

「神の全能の愛の前には敵などおらず、邪悪など尽く滅せられよう。我々はただその先鞭を努めるのみ。貴き血筋の者達よ、民の正しき規範として神への忠節に励むが良い」

 言ってる事は大層御立派なのに、どうしてこう空々しく虚しく聞こえるのだろう。それは勿論西の貴族がその役目を疎かにすること甚だしいからだ。スタークは溜め息を噛み殺した。

 貴族達は再び頭を垂れ、大聖堂に神を讃える歌が響き渡る。

 

 -2-

 

 ウェストランデ、イコマ、プラントフロウデン本部。

 第3席、宰相ゼルデュス執務室。

「スターク伯を操るのは無理よ」

 忌々しげに吐き捨てるジェラルド。

「君がそう言うからには、姫様にお出まし頂くしかないな」

 黒檀のデスクに肘を立て指を重ねた両手の甲の上に顎を預けたゼルデュスが嘆息する。

「どうかしら? 濡羽はもう私達の言う事なんか聞かないかもよ」

「ヒリュウとやらの影響力はそれほどか? インティクス」

「フ抜けた―――、いえ逆ね。自我を取り戻したのよ、お人形の癖に」

 以前の濡羽は他人を操る強大な力を持ちながら、不安に怯えて守ってくれる玩具の兵隊を求めるひ弱な人形に過ぎなかった。だから悪意を以ってただ不安を煽れば思う様に操れたのだ。

「操らなくっても放っておけばいいよ。“黒剣”を引き連れてこっちに来るイセルスにスタークをぶつけさえすれば、後は勝手に叩き潰して勝ってくれるさ。だってそれがこのゲームの仕様、シナリオって言う名の絶対の神の決定事項なんだぜ。メタい話」

 クオンはジーンズの後ろポケットに手を突っ込んだまま、そう吐き捨てた。


 -3-


 第5席、南征将軍ナカルナード執務室。

「おぬしの要求するスペックはすべて満たした」

 第8席シェレドはこの部屋の主に面白くもなさそうに告げる。

 机の上に積まれた新装備のリスト。

 どれもこれも常軌を逸した性能のモノばかりだ。

 だがナカルナードは思う。果たしてこれでも西方将軍ハシーヴァに勝てるだろうか?

 もう戦う事も無いのに、自分の次の戦場はイースタルと決まっているのに、それでも思う。

「次はこれ以上を作れ」

「無茶を言うな。もう予算は無い、全てこれらに注ぎ込んだんじゃ。お前さんが次も負ければ―――、言わずとも分かるな?」

「フン」

「年寄りの老後の楽しみを奪うなよ?」

 この老人には極論、知的探究心しかない。

 無尽蔵の資金で無数の思索を存分に実証する楽しみを味わってしまったからには、今更名誉と権威と言う名の干からびた書物の墓に閉じ込められた身になど戻りたくないのだ。

「それはこいつらの出来栄え次第だな」

「すべて要求は満たしたと言っておろう。後はおぬし次第と思わんかね? 謙虚になれ、若いの」

「フン」

 言われずとも分かっている。

 そして依然として自分がミナミの最強の手札である事も。

 自分しかマルクの剣になる事は出来ない。シナリオで勝つ事が決まっているご都合主義の主人公にイセルスの相手は任せるしか無い事も。

 なのに何だ?

 ハシーヴァから、いや、シロエからさえも逃げるように思えてしまうのは。

 かつて逃げたのはシロエだと言うのに。

 昨日シロエは自分の顔を見るなりこう言った。

『現実の地球に戻ったら、ナカルナードさんに頼みたい事が有ります』

 謝りもせず。

『謝るのは、僕がちゃんと貴方の役に立てたと貴方自身が思ってくれたなら、その時に改めて謝ろうと思います』

 ナカルナードは答えなかった。

 ただ無視した。

 奴は空気だ。

 そうすると皆で決めたのだから。

「償いに言葉は用いぬ、か。ケッ、どこぞの漫画のヒーロー気取ってんじゃねーよ」

 

 -4-

 

 イースタル、グンマ平原。

 征夷将軍イセルスは西征の前にまず、アイザックと共に〈典災〉北方将軍カッツェーを討伐する事を最初の任として与えられた。

 西へ、西へと歩を進める〈黒剣騎士団〉96名とマイハマ騎士団〈グリーンリーブス〉百名。

 彼等がグンマ平原に辿り着こうかという前日、同じくリーゼ達の救援に派遣されたアインス率いるアキバ混成隊96名とも合流した。

「お久しぶりです」

「いようっ!久し振り祭りっ!」

「イセルス様めっちゃ会いたかったでー。うーん、相変わらずカワええなあー」

 勢いよくイセルスにハグしてその頭に頬ずりするマリエール。

「わわっ、マリエさん、苦しいですっ!」

 豊かな胸に埋もれ呼吸困難になる。それを羨ましそうに見る黒剣メンバー。

「久しぶりだな、先生にマリエにおパンツの」

 アイザックも相好を崩す。

「おうよ! おパンツは世界を救う!」

「……自分で振っといてなんだが、言わなきゃよかったぜ」

「処で例のモノはどうなりました?」

 漫才する二人はほっといて話を進める副官レザリック。

「ああ、ミチタカ君やロデリック君たちが頑張ってくれたおかげでどうにか完成したよ」

 微笑んで応えるアインス。

「これで絶対負けねー祭りっ!」

 直継はビッと親指を立てる。

「いや、そうだけどよ。確かに絶対確実に負けねーわ、そりゃ。だがよくこんな腹黒でセコくて狡くてチートな作戦考え付いて、実際やろうとか思うよな」

「流石ハラ黒眼鏡ですね」

 呆れと感心半々のアイザックとレザリックだった。


 -5-

 

 ウェストランデ、イコマ、フロウデン十二席会議。

 そこでシロエを待ち受けていたのは、きわめて予想通りの冷たい洗礼だった。

「初めまして、第11席に就任しましたシロエです。皆さんどうか宜しくお願い致します」

「「「――――――――――」」」

 ガン無視。

 たっぷり3分の沈黙の後、ゼルデュスがやっと口を開く。

「ようこそ」

「あ、はい、」

「第12席ヒリュウ君。君のお噂はかねがね。ゲーム時代と変わらずにフロウデンに於いて姫様を支えてくれると助かります」

 完全スルー。

「おう、宜しく。に、しても大人げねーな」

「何の事だかわかりかねますね。私共は『ヒリュウ君とは』友好的なお付き合いをしたいと思っていますよ。誤解なきよう」

「かー」

 だが一人だけ、第10席にふてぶてしく卓上に足を乗せて座る男は違った。

「よう~、久しぶりだな、シロエ」

「KR………」

 旧友の一声に涙が出そうになる。普段は頭痛の種の悪友だと言うのに。

「ひとりごとは困ります。慎みなさいKR」

 議長インティクスの叱責。

「独りごとじゃないよ?」

「KRのいつもの法螺さ。ほっとこうよ」

 ニヤニヤ嗤うクオン。

「まあKRだしな」「ああ」「放っておこう」

「…………相変わらずの人徳だね、KR]

「今のお前に言われるとムカつく」

「皆様」

 第1席濡羽の叱責。

「シロエ殿は私とカズ彦が正式に招聘した第11席です。斯様な無視は許しませんよ」

「「「申し訳ありません」」」

 一同揃って頭を下げた。

「では会議を始めましょう」

 インティクスが号令をかけ、会議は始まった。

 シロエは何度も発言した。

 数々の質問と提案。計画の提示。

 それらはことごとく無視された。

 自分の発言に何度も上から言葉をかぶされて、掻き消された。

 徹底的に潰しにかかっているのがありありと分かった。

 濡羽もカズ彦もヒリュウもその事に何度も叱責や異議を唱えたが、それらにはすべて上辺だけの謝罪で、まったく聞き入られる事は無かった。

 キリキリと胃が痛む。

 涙目になりながら飲む、海洋機構謹製の保温ポットに淹れてもらった、アカツキの梅こぶ茶がかろうじて胃を癒す。

 支えてもらってるんだなー、と温かい気持ちに包まれる。

「ふう」

 人心地ついて落ち着くと、今度はふつふつと昏く熱い怒りが体を満たしてくる。

 丸眼鏡が光る。

(いっそこれなら何の後ろめたさも容赦も無く、徹底的に叩き潰せるよね)

 シロエは清々しくさえ思い、悪辣極まりない微笑みを浮かべた。

 

 -6-

 

 ミナミの大型ライブハウス、『ジャーニー』。

 シロエの旧友、ドワーフの大嶋の手配とカズ彦の口添えにより、てとらや五十鈴達は毎日ここでステージを持ち、人気が出始めていた。

「みんなー、のってるー!?」

「「「イエー!!!!」」」

 ある者はビールのジョッキを傾け、ある者は安価に出回り始めたロデ研謹製のペンライトを振り回してご機嫌に騒ぐ。

「新しいお客さんは是非僕にフレンド登録してね~! 『てとらチャンネル』を開いてみての、お・た・の・し・み!!」

 

「何?フレンド登録って?」

「アイドルだろ? 一々只の客の俺らに、念話で応えてくれるわけないよな。リップサービスじゃね?」

 首をかしげる客たち。

「バーカ、しらねーの?」

「いいからアイコン開いてみろよ」

 てとらライブの常連が笑う。

 新顔達は疑いながらもフレンドリストを開く。

 するとそこには、先程登録したてとらの名前の他にもう一つの念話先。

「何だこりゃ?」

「『てとらチャンネルラジオ』?」


 -7-

 

 イコマ、フロウデン本部、ゼルデュス執務室。

「ラジオだと?」

 ゼルデュスは眼前に控えさせた密偵の長ディランドに聞き返した。

「はい、噂が噂を呼び、今急速にミナミの住人の間に広まっています」

「馬鹿な、アキバでもうちの開発部門でも、未だ成功の結果は報告されていない。それなのにラジオが普及するなど不可能だ。何かの間違いではないか?」

「間違いではありません」

「なら〈ノウアスフィアの開墾〉で実装された新アイテムか?」

「いえ、それが只の念話システムの応用の様で」

「その新技術も聞いていないぞ?」

「ですが、実際に、私も件のライブハウスに行き確かめました。てとらとやらにフレンド登録して『てとらチャンネルラジオ』なるモノに繋げば、24時間無料でラジオ放送が聞けるのです」


 -8-

 

 ミナミ、或いはアキバのすでにてとらとフレンド登録したてとらのファンやリスナー達。

『ハーイ、DJレリアでーす』

『DJリトカだよ~』

『『今日も私たちモフール姉妹がアキバの最新ミュージックと、アキバとミナミの楽しい話題や真面目なニュースをお届けするよ~』』

「モフール姉妹可愛い~」

「実際どんな姿なんだろ、可愛い声だからな~」

「妄想が膨らみますな~。デュフフ」

「おい。真面目に聞けよ」


 新型蒸気船〈エアリエルエンプレス〉内に設えられたDJブースには、マイクと共に巨大な蓄音器が備えられていた。

 蓄音機自体は比較的単純な原理で出来ている。

 電気で増幅した音の振動を、樹脂に針で彫り込み記録するだけだ。

 だが、樹脂、即ちプラスティックが今までセルデシアには存在せず、作る事が出来なかったのである。

 しかしシロエやロデリックやミチタカと言った重度のプラモヲタクの不断の研究により、遂に複数の樹木型モンスターの樹液を奇跡のブレンドで混ぜ合わせる事によって、プラスティックは作られたのだ。完全にプラモデルを作りたいが為の私利私欲の副産物である(苦笑)。

 かくして蓄音機は完成したが、レコード盤のような小さな媒体は加工精度の問題で作れず、船でかろうじて運べる巨大なモノしかできなかった。個人普及など夢のまた夢である。

 だが、このように巨大な施設でラジオ放送用に使う分には問題なかったのである。

 アキバのミュージシャンのご機嫌なナンバーが24時間止まる事無く流される。

 そして個人の念話に機械的に介入する為の試作機は既にいくつか作られており(そこまではミナミも把握している)、それらはてとらやモフール姉妹が直接機材を操作しなくても自動で蓄音機音声を24時間放送し続ける事を可能とした。ちなみに大量生産は必要な素材がレアすぎて不可能とされている。

 だが少数の再生専用機はアキバの街角や飲食店において、アキバ運営スタッフや飲食店オーナーの念話を利用する形で放送を開始した。

 無論、ミナミの飲食店に於いても。

 

 -9-

 

「何と言う事だ―――――」

 ゼルデュスは自らの執務室で呻く。

 通信娯楽のアキバの独占。

 地球で言えばTVもラジオもインターネットもすべて掌中にしたのと同じ事だ。

 それはつまりアキバが、〈冒険者〉すべてに対して如何様にも情報操作や洗脳を可能に出来ると言う事。

 それはもう既にアキバ製の製品のCMしか流さない宣伝や、蓄音機で録音した街の治安を預かる〈壬生狼〉カズ彦と新席将シロエの討論の形で流されるニュースと言う形で始まっている。

 

『それで〈壬生狼〉隊長カズ彦さん、月におけるミナミの犯罪発生件数は幾らなんですか?』

『ええ、シロエさん、平均68件です』

『それは同じ冒険者都市のアキバの二十倍以上ですよ?』

『悲しい事にそれが現状なんです』


「くそっ!」

 だがそんなゼルデュスに追い打ちがかかる。

「ゼルデュス!」

「インティクス、ノックを忘れるとは君らしくも無い――――」

「それどころじゃないのよ! イセルスが―――――!!」


 征夷将軍イセルスが〈典災〉北方将軍カッツェーを見事討伐したと言うニュースは、ラジオの普及も有って瞬く間にヤマト中に知れ渡った。

 

 -10-

 

 時は遡る。

 イースタル、グンマ平原。

 平原に3つの巨大な円陣が並ぶ。

 円陣は防禦型車懸りの陣と言う。

 車懸りは本来は騎兵による攻撃的陣形で、円盤が回転する事によって対象に切れ目ない騎兵突撃での攻撃を可能にするための物だ。

 だがシロエはこの陣形を防御に応用した。

 24人の守護戦士を円陣の最外周で回転させ、ヘイトエクスチェンジでヘイトを入れ替えて次々とレギオンボスの攻撃を肩代わりで受け持たせると言う発想だ。


「ひゅあはあhyahahahahhyahha!!!」

 北方将軍カッツェーが、円陣の一つに襲いかかる。

「キャッスルオブストーン!」

 アイザックがその一撃を受け止める。

 防禦の不得手な職業なら一撃でHPバーが全損するダメージだが、アイザックが唱えたこの特技ならばその全てのダメージとデバフを遮断する。完全無敵の不破の城塞だ。

 だがこの特技、本来ならば持続時間も短く、また次に唱えるにはリキャストタイムも長く、同じ戦闘で続けて使用するのはほぼ不可能であった。

 今までは。

 黒剣の守護戦士たちが次々と入れ替わり、〈キャッスルオブストーン〉を唱える。

 だが一周してアイザックの番になっても、まだアイザックの〈キャッスルオブストーン〉は再使用可能になってはいない。

「任せろ!黒剣の! ヘイトエクスチェンジ! アンカーハウル! キャッスルオブストーンっっ!!!」

 アインス隊の円陣のトップを務める直継がそれを引き継ぐ。

 やがてアインス隊の24名も限界を迎えるが、それをまたリーゼ隊が受け継ぐ。

 そしてリーゼ隊が限界を迎える頃には、

「よっしゃ! 出たぜ、再使用可能の青いアイコンがよおぉっ!!!」

 アイザックの声に一斉に歓声が沸き上がる。

 この瞬間、北方将軍カッツェーはHPが多いだけの只の雑魚に成り下がったのである。

 シロエ達がしたのは特別強力な性能や効果のアイテムの開発で無く、ただ特技の効果時間延長と再使用可能時間の短縮と言う、地味な装備効果の改良と複数装備、ただそれだけだったのだ。

 だが、効果は見ての通り。

 彼等は見事攻略してのけたのである。

 

 -11-

 

 イコマ、フロウデン12席会議。

 緊急招集されたその会議で、ゼルデュスは始まるなりシロエに射殺すような眼を向ける。

「何が望みだ?」

「やっと会話の席についてもらえましたね」

 シロエは涼しい顔で受け流す。

「こちらは最大限、ラジオ内のCMとニュース内容の半分をミナミにお任せしてもいいと思っています。条件次第ですが」

「選曲もだ! 今すぐあのふざけた歌を止めさせたまえ!!」

「選曲に関してはDJたちに一任してあります。基本的にリスナーのリクエストで決まるモノを、こちらで操作するなんて野暮でしょう?」

「貴様っ!!?」

「気に入らないと言うのならCMとニュースの権利も譲渡しませんよ?」

「「「―――――――――っ!!!!?」」」

「ぶははははははっ!!」

 腹を抱えて笑い出すKR。

「でた! 陰険狡知蛇蝎の如し!!

 バスガイドバスガス爆発!!!

 最高! こういうの待ってた!! 最前席取っといてよかったよ、ガーたん」

「ラジオだのなんだの何を言っておるのかはよくわからんが、確かにこの連中の今の面は見ものじゃのう」


 -12-


 てとらチャンネルにてとらと五十鈴の新曲が流れる。


♪恰好良くなろうよ 本当は君は格好いい


 陽キャぶってる奴等 リア充ぶってる奴等

 マウント取りたいだけで ホントは格好良くない

 奴らが僕らを苛めても そんなのゲームに関係ない

 僕らより弱い大地人 いつでも助けるヒーロー

 

 そうだったじゃないか? でも今の君は

 自分より弱い大地人 困ってるの無視してる

 それじゃ僕ら苛めてた マウント野郎とおんなじ

 

 恰好良くなろうよ 本当は君は格好いい

 彼等はロボットなんかじゃない 同じ心持ってる

 泣いたり怒ったり笑ったり それだけで友達なのさ

 恰好良くなろうよ 本当は君は格好いい

 見て見ぬふりはやめなよ ホントは君はヒーロー♪

 

『犯罪が減らないのは何故なんでしょう? シロエさん』

『そうですね、カズ彦さん、お答えしましょう。

 モラリティの欠如と言ってしまえばそれまでですが、その原因には大地人に対する差別意識が有ると思います。ロボットである大地人にはどんな扱いをしていいと言う風潮が有り、実際彼等への扱いは酷い。その事に慣れてしまうと、今度は冒険者同士でも、力の弱い者に大地人に対するのと同じ差別行動を無意識にとってしまい、犯罪を犯罪とも思わなくなってしまうんですね。

 余談ですがこれはPTSDと呼ばれる戦闘後遺症、戦争経験のある兵士が、平和な日常でもつい無意識に戦闘行為、つまり暴力で問題を解決しようとしてしまうのと原理は同じです』

『あー、普段ヲタク差別してる奴が基地やクズやDQNになるのと同じですね』

 

 ―第28話に続く―


筆者(以下:筆):「今月のテーマはSFと宗教パート2~」

アカツキ(仮名、以下:あ):「相変わらず怪しげでかたじけない」

クリス(仮名、以下:く):「SF作家は大変だね~、俺お伽話作家だから気楽だよ」

筆:「何でもありですもんね」

あ:「エンタメとしては正しいぞ、主君」

筆:「うう、耳が痛い」

く:「ふははははは(大作家の余裕)」

筆:「さて、大宗教家たちに実際に霊能力は有ったのでしょうか?」

あ:「石をパンに変えたり魚を増やしたりするやつだな?」

く:「海を割ったり歩いたり」

筆:「実際それは確かめようが無いのですが、今でも確かめられる事も有ります」

あ&く:「「???」」

筆:「豚です」

あ&く:「「豚?」」

筆:「ユダヤ教やイスラム教では豚は食べてはいけません。でも羊や牛は食べてもいい」

あ:「それが何故霊能力と関係あるのだ?」

く:「成程〈ピンと来たらしい〉」

筆:「純粋な草食である牛や羊は肉食動物に捕食される時、脳内麻薬物質が分泌され、快楽を感じるんです。なので正しい屠殺手順を踏めば、彼等は喜んで食べられると言い換えてもいい。でも肉食でもある雑食動物のブタには、その脳内麻薬が出ない。だからソロモン王やムハンマドは彼等を憐れに思ってこれを禁止したのかもしれません」

く:「ブッダやソロモン王やムハンマドは動物と会話できたらしい記述があるからな。まあでも現代でも動物と喋れる人間は居るから取り立て不思議でも無い」

あ:「だがキリスト教では禁止していないぞ」

筆:「まあ、逆説的にですが、彼が未来を見通す事が出来た事の証明かも知れません」

あ:「?」

筆:「ヨーロッパ文明は豚無しには成立し得なかったんですよ」

く:「戦乱が多くて城塞都市内で人々は生活せざるを得なかったからな。豚はそこに出る大量の生ごみの処理役にして、狭いスペースでも飼育できる最高の蛋白源でもあったのさ」

あ:「豚食を禁じていれば彼等は滅びていたかもしれないのだな」

筆:「そこまで言わないけど、貧相な辺境に過ぎず、今の発展は無かったかもね」

く:「城塞都市が無い=侵略し放題だから(苦笑)」

あ:「なるほどな。ではまた続きは来月」

一同:「「「じゃあね~(^^)/」」」


 またまたもあとがきのオマケ

 劇中のシロエですが、僕とか喋る品のいい所とか、偶に格好いい所とか都会っ子な所はどちらかと言うと作者のままれさんの方に似ていて、筆者は俺とか言うしもうちょっと田舎者で品が悪くて(田舎者は標準語で喋る時丁寧語になる)、目付きもホントに悪いし更に腹も黒いです。ええ、インティクスへの毒舌とか、旧ログホラのシロエに無かった所見りゃわかりますけど(^^;)。

 ちなみに俺の知るままれさんは脱ぐと凄いガタイの上にハンサムな顔の持ち主の眼鏡で、仕事にも遊びにもまじめで誠実(に見える)人であり、それでいて普段は旧ログホラのあとがきでも皆様ご存知のように愉快犯でサディストでろくでも無い人です、ええ。基本ゲームのイベントでしか実際には会わないんですがね。そんなクラスティとシロエとKRを足して割らない素敵な人ですよ、ホント。


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