王達の屹立(12)
これを読む全ての人に良きクリスマスを、そして良き新年を。
初めまして&お久しぶり、皆様にお会いできまして感謝感激の東の外記です。
いよいよ王達の屹立も残り2話、クライマックスでございます。
ままれさんの様な流麗筆致な文章も無い、小説と言うよりは勢いだけのプロットにお付き合いいただき有難うございます。まあ所詮プロットなので、書籍化される時はきっとままれさんか他の誰かがちゃんとした文章に仕立て直して、ついでにあちこちの間違いも修正してくれるでしょう、と勝手に丸投げし、とりあえず問題片付けりゃいいやと更に勢いだけで突き進んでおりますwww。
それでは勢いだけは自信ある(カ◎リナかよ)本編をどうぞ。
―第23話:王達の屹立(12)―
-1-
数学の天才と呼ばれた頃は沢山の人に羨ましがられたが、無論嫌な事もたくさんあった。
羨望と同じくらい向けられる、沢山の敵意と嫉妬。
それに何より全てが数字で見えてしまうと、日本の先行きや世界的な人口増加、資源不足、環境問題等が全てどん詰まりになっている事が、普通の人よりも余計に実感としてわかってしまう。
そんな世界で父が強引な手段ででも力を欲しがる理由も止む無しとも思えたが、結局その強引さで余計に敵を増やしている本末転倒を見て、馬鹿馬鹿しく思えた。
私はすっかり無気力な怠け者になった。
剣道の部活には打ち込むものの、家では何をするでも無くゴロゴロ過ごしていた私を見かねた兄は、エルダー・テイルと言うゲームを奨めてきた。
「君は自分独り悲劇を気取る物語のお姫様か何かですか? 世界は広いんですから、もっと友達でも作ってみたらどうです?」
そうして始めたゲームの世界で出会ったのだ。
主君と――――
-2-
地球、東京。
今日も世田谷のヤマトサーバー本部では、運営スタッフが見守る中、ヒリュウとソロモンがPC画面の前で必死のメール入力を繰り返す。
都合数千、数万件のメール送信。
文面は『これを見たなら返事を百回送ってくれ』。
そして奇跡は起き、返って来たメール。
『本当にヒリュウなのか?』
もう一度繋がるべく、懸命にメール送信を繰り返す。
-3-
セルデシア、中国サーバー。
クラスティ率いる〈黒龍結社〉は〈封禅の義〉の大イベント、≪猛将呂凱討伐≫に挑む。
だがクラスティの真の狙いは、呂凱を陰で操る魔性の美女、〈典災〉蝶鈴。
万全を期したフルレイド24人メンバーは順調に敵を降して行く。
このまま他の相手は他人に任せ、クラスティは蝶鈴ただ一人に的を絞りたかったが、そう甘くは無かった。
「お助け下さい、呂凱様っ!」
蝶鈴は呂凱の後ろに隠れる。
止む無くクラスティも下がり、メイン盾の守護戦士、盤古とポジションを交代する。
クラスティのHP回復手段は〈典災〉からのHP吸収しか無く、それが敵わない現状、前に立ち続ける事は無謀でしかない。
だがそんな常識的な判断も覆すのが、中国サーバー最強のNPC、呂凱であった。
「がはあぁっ!!?」
巨大な方天戟が盤古の鎧を砕き、盤古が崩れ落ちる。
クラスティは静かに大きく息を吐き、滑る様に呂凱の前に進み出る。
「クラスティ様っ!」
「大将!?」
「仕方ないでしょう、滄溟、朱恒」
クラスティは副官たちにそう告げると、呂凱とデモンアックスで猛烈な打ち合いを始めた。
-4-
セルデシア、衛星軌道、インブリウムの空中庭園。
「手こずらせやがって」
カズ彦が刀身に付いた血糊を振るって払う。
別にそんな事をしなくとも、その内光の粒子になって分解して残らないのだが、そこは気分と言う奴である。
「まあ敵さんにしてみれば、最重要拠点だからね、最強の駒を置くのは当然でしょ」
シロエ達のHPもMPもギリギリである。
それでも初見殺しをしてのけた、このレイドパーティーの勢いを褒めるべきだろう。
「これが最後の扉…………」
濡羽が呟く。
この扉の向こうに二つの宇宙を繋ぐ転移装置が有る。
まず一度実験をし、その後は濡羽がその装置の処遇を決めていい。
だが、未だにどうすべきかその答えは出ていない。
「じゃあ、開けるよ」
シロエが懐からアイテムを出すと、最後の扉が開いた。
宇宙ステーションに相応しい科学装置と、複雑な魔法陣が入り混じった不思議な部屋。
シロエがコンソールに手を触れると、表示が浮かび上がる。
「やっぱり、これで間違いは無いみたいだ。実験を始めよう」
「では、吾輩の出番ですにゃあ」
「え?」
セララの表情と精神はその一言に絶対零度に凍り付く。
-5-
中国サーバー、呂凱との闘い。
激しい打ち合いは続く。
これ以上HPを減らすわけにはいかないクラスティは、呂凱の攻撃を打ち払う事のみに全力を注いでいるものの、それで勢いを減らしても尚、浅手が積み重なる。
このままでは呂凱よりも先にクラスティのHPが底を尽きる。
たまらず副官の滄溟が無駄と分かりつつも叫ぶ。
「呂凱っ! 貴方が庇う蝶鈴も禍卓も悪党なのですよっ! 戟をお引きなさいっ!」
「確かに、俺の背に居る蝶鈴も禍卓も悪党と呼ばれて止む無し者。そして俺の手下も俺を含めて悪漢揃いよ。
だがな、こうして俺を頼るからには、守るのが悪漢と言えど漢の筋よ!!」
クラスティの脳裏をよぎる過去。
『何で君らそんなに特撮の悪役が好きなんですか?』
『リアルじゃ悪党面っすからねえ。刑ドロ遊びとかじゃあ、いっつも泥棒役ばかり押し付けられてたからかなあ』
『つい余計な一言を言ってしまう性分ですしね。悪役が他人に思えないんですよ』
『ミ・ロードもでしょう?』
『確かに。そうですね、なら、ギルマスは僕が引き受けますよ』
『よっ大将!』
『日本一!』
ガアアァァンッッ!!!
クラスティが弾き飛ばされる。
「社主様っ!?」
叫ぶ滄溟。
たちまちのうちに仲間が3人呂凱に斬り伏せられる。
立ち上がらねば。
だがそう思う一方で、クラスティはこうも思った。
もう十分遊んだんじゃないか?
所詮自分と呂凱に何の違いが有ろうか?
似た者同士の悪漢の親玉。
単に強い方が勝ち、弱ければ負ける。
退屈な人生の中、何度も思った。
戦いにただ狂い、戦いの中で戦いに溶けて消えて行きたいと。
今がその時かも知れない。
「クラスティ様っ!!」
「駄目だっ、クリアはもう無理だあッ!」
「落ち着けぇっ!」
叫ぶ部下たち。
クラスティが死を受け入れようとしたその時。
「美味しい所に向かって突撃―――っ!!!」
そう言いながら、自らも〈ワイヴァーンキック〉で呂凱に突撃するカナミ。
「〈オーロラヒーリング〉」
生き残りたちをたちまち回復するコッペリア。
「私との決着を付けずに死ぬ気か?」
「呂凱は俺達が引き受けるっ!!」
吠えるエリアスとレオナルド。
「〈ベコンっキャーット!〉」
キュートな招き猫ポーズを決めるカナミ。
「ぬぬうぅっ!?」
呂凱は磁力で吸い付けられたようにカナミに引き寄せられる。
「これでっ、呂凱は釘付けさっ! クラ君は蝶鈴をやっちゃえやっちゃえー!!」
「―――――頼んでませんよ」
額から血を流し、そう言いながらも、クラスティの唇には笑み。
「さあ、蝶鈴。喰い散らかしますよ」
最早〈典災〉蝶鈴との間に立ち塞がる者は何もない。
「……やれるものならやってみればいいわ」
-6-
地球、世田谷。ヤマトサーバー本部。
「駄目だ!何度やっても!?」
「もう一度やってみろ!」
「わかってるって」
「そう急かしなさんな」
ヒリュウとソロモンが何度も同じ入力を繰り返し、背後でスタッフ達が見つめる。
「待て、何だこりゃ?」
「??」
画面に突然表示される、見覚えの無い魔法陣。
-7-
インブリウムの空中庭園。
23人の見守る中、部屋の床の中央の魔法陣の上ににゃん太が乗る。
「吾輩は妻に先立たれ身寄りも無く、また若くも無く未来も無い身。我輩以外にこの地球との往復の実験台に相応しい人間はいませんにゃあ」
「そんな――――――」
絶句するセララ。
メモリシアのカートリッジ3本、往復と予備の為のそれがシロエの手で装置にセットされる。
「これで理論上は班長を地球まで往復させられるはずです」
「頼みますにゃ」
「嫌ですっ! にゃん太さんっ!行かないで下さいっ!!」
止め処なく頬を伝い落ちる雫。
「そう言う訳にも行きませんにゃ」
「嫌ですっ! 私、地球に還れなくってもいいんですっ!」
その言葉に濡羽は頬をぶたれたような衝撃を受ける。
「私っ、にゃん太さんのお嫁さんになれるなら、ずっとセルデシアに居たままでもいいんですっ!行かないで下さいっ!!」
その言葉に濡羽の頬にも涙が伝い落ちる。
(馬鹿な娘………。ううん。もっと馬鹿なのは私)
にゃん太は溜め息を衝く。
「やれやれ、女の子と云うのは一度はパパのお嫁さんになりたがるものなんですにゃあ。その言葉はとても光栄ですが、やはり、セララちは御自分に相応しいナイトを探すべきにゃ。我輩のパパ役は卒業ですにゃ」
ほろ苦い笑み。
「セララちの父親役を努められて光栄でしたにゃ。ですが………おさらばですにゃ」
魔法陣が光り輝き、皆の目が眩しさにくらむ。
「いや、いやあ!! にゃん太さあぁんっっ!!!」
そして――
にゃん太の姿は光の中に掻き消え―――――
-8-
自由都市同盟イースタル、エターナルアイスの古宮廷。
ここにはマイハマ公セルジアッドの呼びかけの元、同盟に属する20余りの都市の領主が集っていた。
今回の古宮廷会議の議題は大きく二つ。
スワ太守の提案を呑み、平和条約を結んだ上で、対〈狂王ダノーブ〉軍事派遣を東西間で行い合う事を了承するか否か。
もう一つは、派遣軍のリーダーを誰に任命するかどうかである。
アキバからは〈互助会〉代表トウヤ、〈円卓〉代表アインス、この度正式にアキバ商工会長になったミチタカ、補佐としてミノリとヘンリエッタとカラシンの面々が参集された。
このほかにも護衛として〈西風の旅団〉の主要メンバー、そしてアキバ側では無く、イセルスの後見としてアイザックも参加している。
そんな彼等に、いや、ミチタカに群がる貴族たち。
「いやいやいや、これはミチタカ様」
「一体どの様にイセルス殿の御教育をなされたのですか?」
「まったくです! あの堂々としたお姿、見違えましたぞ!」
「どのような秘訣が御有りで?」
「出来れば我が愚息も〈水楓の館〉に預けたいくらいです」
「俺は大したことをしちゃいない。ここにはいないがリーゼと、何より教育プランを立てたシロエの手柄だと思ってくれ」
「御謙遜を」
「いや、本当だ」
うんざりと溜め息を衝くミチタカ。
それを遠巻きに見るセルジアッドとアイザックとカラシンの3人。最早マイハマで馴染みの面子である。
「やれやれ、ミチタカの旦那も可哀想に」
飲み物を口にしながら同情するアイザック。
「まあ、本人謙遜してますけど、あの御仁が僕らの中じゃ一番堅実で地に足着いてますからね。夢見がちな子供に地に足着けさすには、一番のハマり役だったんじゃないですか?」
「それもシロエ殿の計算の内かね?」
「そうでしょうね」
「しかし儂もどのような教育方針でシロエ殿が孫を育てたのか知りたい。説明できるかね?」
「何でも優秀なディスカッションリーダーを育てるには、早い内から大学研究室、ああ、まあこっちで言う賢者や魔法使いの学院みたいなものですね。まあその様なディスカッション形式の授業内容にするのが一番だとかなんとか。そうする事で効率よく理想的な専制君主の能力、即ち明確でブレない意志や戦略目標を持ち提示しつつも、柔軟に優秀な戦術を聞き入れ取捨選択する能力を磨くようにしたんだそうです。つまり、最初から会議や会合でみんなに助けてもらうのを前提の上で、善き君主になる様に教育した訳だそうですね」
「ほほう?」
「どういうこった?」
「ゴリラにもわかるよう説明すると、机の上で一人勉強して自分独りの考えや教科書の正解に固執する狭量な人物になるよりも、みんなと一緒にロール(役割)プレイ、つまりごっこ遊びをした方が社会勉強になる。それをより実践的な形式にしただけ、だそうです」
「何だ、俺らがゲームで遊んでて、誰か見込みの有るヤツにギルマスやらせりゃ、その内そいつがギルマスらしくなるってだけの話か。ならそう言えよ」
「アンタじゃ無くセルジアッド様に説明してるんですよっ!」
そんな二人のやり取りを見て鷹揚に笑うセルジアッドであった。
一方、控室の一つで旧交を温めるイセルスとトウヤとミノリ。見守るヘンリエッタ。
「僕は決めました、トウヤ」
意気込むイセルスの瞳を黙って受け止めるトウヤ。
「派遣軍のリーダー、征夷将軍に立候補します! 御爺様の許可はもう貰っています!」
「そうか」
トウヤは我が事の様に誇らしげに笑む。
はにかんだ笑みで返すイセルス。
「頑張れよな」
「はいっ!」
固く手を握り合う二人。
そしてそんな二人を見て胸熱くするミノリとヘンリエッタであった。
(これはこの話をしたら後でマリエに羨ましがられますわね)
-9-
中国サーバー。
呂凱とカナミ達、蝶鈴とクラスティの激しい戦いは続く。
「雑魚は任せたまえ! 清らかな水の乙女よ、今こそ我が敵を薙ぎ払う神秘の力を与えたまえ。往け、千の刃よ! 煌めけ!〈水晶の清流〉!! 〈アクアサウザンドストリーム〉!!!」
相変わらずの華麗な活躍を決める英雄エリアス。
「アンタの決め台詞何パターンあるんだよっ!? そのパターン初めて聞いたぞっ!?」
「けろナルドのツッコミおもしろーい」
そう言うレオナルドとカナミもコンボを呂凱に叩き込む。
全ての技に〈デッドリーダンス〉を絡めつつ、忍者らしく〈フリーティングゴースト〉での隠行からの〈サドンインパクト〉、〈ヴェノムストライク〉、〈アクセルファング〉と緻密な職人技の組み立てを繋げるレオナルド。
対してその場のノリと感性で、〈ワンツーブロウ〉から〈トリプルブロウ」キャンセルで〈ターニングスワロー〉に繋げ、反撃技の〈シャドウレスキック〉を上級蹴り技の〈ドラゴンテイル〉に変化させ、投げ技の〈グリズリースラム〉からそのまま落下を待たずに〈エアリエルレイブ〉〈オリオンディレイブロウ〉〈タイガーエコーフィスト〉の空中コンボフルコースを我が儘贅沢放題に喰い散らかすカナミ。
「スゲエ、俺達がいくらやっても歯が立たなかった呂凱のHPがどんどん減って行く」
「あの防御力を貫くなんてアイツラ化け物だ」
「感心してねえで俺らも雑魚をやるぜ」
「す、すみません、朱恒さん」
「滄溟もボーっとしてねえでクラスティの大将にバフ掛けてやんな」
「あ、ああ。済まない」
息を吹き返す〈黒龍結社〉。
「旗色が悪くなってきたようですね。どうします? 蝶鈴」
蝶鈴の鉄扇での防御を詰将棋の様に的確に切り崩すクラスティ。
「くうっ!?」
苦痛に顔を歪める蝶鈴。
だが、ふと何かを思い出したのか、一転顔を邪悪な歓喜に染める。
「そう言えば、貴方にはうってつけのモノが有ったわ」
懐から吹き矢を取り出す。
「喰らいなさい」
咥え息を吐く。
呼吸を見切ったクラスティはその瞬間僅かに身を反らす。
だが実際には矢は飛んで来なかった。
姑息な技だが僅かに口を離し吐息を漏らしていたのだ。
躱しようの無い姿勢に本命の矢。
咄嗟に払いのけようとした腕に刺さる。
「それはちょっとした嫌がらせ程度の毒。戦闘終了後にHPの何割かがランダムに減る毒。普通の冒険者にはフレーバー程度の呪い。戦いの勝敗には関係無い、でも私との戦闘以外には回復できない貴方には致命的な毒よ」
くつくつと笑う蝶鈴。
「そしてこの毒は私の〈典災〉としての能力で解毒不可能の〈呪毒〉とさせてもらったわ。
貴方も命が惜しいでしょう?
なら私を逃がしていつまでも私との戦闘を継続中にするしか無いのよ。
素敵でしょう。
もうこれで私の負けは無い」
勝ち誇る蝶鈴。
「貴方もよく見れば素敵じゃない? どう? 私もこのアバターは絶世の傾国の美女。私の手下になって手を取り合うのも素敵だと思わない? 協力するなら道具として大事にして上げるわ。貴方も私の身体位、いくらでも好きにしていいのよ?」
そう言って妖艶に両手を広げ、クラスティを誘う。
「……………」
クラスティは棒立ちになった後、だらりとデモンアックスを下げ、ゆっくりと歩み寄る。
「いい子ね」
蝶鈴はクラスティを抱きとめようとする。
だが―――
「ぎゃあああっ!!!??」
クラスティはデモンアックスを下段から振り上げ、蝶鈴を逆袈裟に斬り裂く。
「たとえ戦いの度に死のうとも、空虚で無意味な生よりは余程マシです」
「や、やめっ!」
「教えて差し上げましょう、私の名はクラスティ。戦いに狂い戦いの中の死を望む者、〈狂戦士〉その人ですよ」
それは見る者全てが戦慄する、凄惨な笑みだった。
―第24話に続く―
筆者(以下:筆):「今月のテーマは『達人と達観』でーす」
アカツキ(仮名、以下:あ):「題からしてここ一連の続きだな」
インティクス(仮名、以下:い):「何故私まであとがきに?」
濡羽(仮名、以下:ぬ):「そりゃこの件に関してはアンタが一番の未熟者だからでしょ」
い:「ぐぬぅ」
あ:「何か一回りして可愛らしいな」
ぬ:「wwwwwww」
筆:「さて、達人とは脳の使い方に於いて、感覚野やミラー細胞まで連結させて、即ち全身全霊を以って、物事の気持ちになって思考できる人の事だと以前お話ししました」
あ:「昔の人の言う事には意味が有る物だな」
い:「私だってそれくらいできてる、はず、よ」
ぬ:「言いよどんだわね」
筆:「実際知能指数高いですし、脳が連結している可能性は高いです」
い:「ほら見なさい」
筆:「でもそれだけじゃあねえ」
い:「何ですって?」
筆:「脳の処理容量が上がると言う事は、一度にたくさんのデータを同時閲覧できるようなものなので、この状態を達観と言っても差し支えないでしょう。でも同時閲覧量が増えたとしても、インティクスだと大してそれに意味は無いと思いますよ」
い:「はあ?」
筆:「狭量ですもん」
い:「それのどこが関係あるのよ!?」
筆:「まあ仮にデータを自分にとって扱い易さや自分の役に立つ順に0点から100点の点数付で格付けして分類したとしましょう」
い:「それは当然するわね」
筆:「普段自分が使うのは80点以上の評価を付けたものばかりですね」
い:「評価の低いモノなんて使う価値が無いもの」
筆:「さて、それで脳が達観状態になって連結されたとしても、80点以上しか使用しないのであれば、大して使用できるデータ量は増えません。何故なら80点以上のデータは普段使っている狭い領域にほとんど保管されているからです。後のデータは路傍の石なので結局使用しません」
い:「あ???あー!!! なら達観に何の意味が有るのよ!!??」
筆:「それはカナミ(仮名)がいつも言ってるじゃないですか。大事なのはドキドキワクワクだって」
い:「は?」
筆:「世界中からなんの変哲もない、だけどこの上もなく必要なたった一つの小石を探し出すのが冒険なんですよ」
い:「意味わからないわよ!」
ぬ:「アホねえ。他人にとって意味なくてもその時その人にとって意味のある事ならそれでいい。それは点数じゃ計れない。自分の脚で赴いて自分の目で見なければ分からないって言ってるのよ」
あ:「それは大切な事だな。濡羽(仮名)殿の小説にも同じような言葉が幾つも出てくる」
筆:「大事なのはセンス、心なんです。ありのまま受け容れ愛する心、仁徳と言っていい」
い:「また潔癖且つ胡散臭い事を!」
筆:「では言い方を変えましょう。物事は7つくらいの評価軸でそれぞれ判断した方がいい。貴女の評価は単純過ぎます」
い:「ぐうっ!」
あ:「可愛いな」
ぬ:「それ余計傷付かない?」
筆:「『千の技を知る者、一つの技を知る者に能わざるは、暁光(太陽)無かりせば七彩有らざるがごとし、仁徳無かりせば七徳あらざるがごとし』 武術の言葉ですが全てに言える言葉だと思いますよ。一つの技や人や物事を欠点や短所まで含めて丸ごと愛せる人が一番強いんです。悪い事を企む人は夜月明りで物事を見るようなもので、白黒つまり単に自分に有利不利でしか判断しない。だから有利なモノばかりを幾らでも欲しがり、いつまでも満足する事が無い。善き人は自分の愛するモノを陽の光の下、七色の光全てで、ありのまま受け入れ見ているのだ。それは一つしか持たなくてもすべてを手にしているのと同じ事だ。という意味です」
ぬ:「まるでインティクス(仮名)とカナミ(仮名)そのままね」
筆:「七つの評価軸で判断すれば、時に他は0点でも一つだけ100点の尖った石が必要な時もあり、全て50点の丸い石が必要な事も理解できる。欠点や短所も時に状況に応じた長所として活用できる。そうすると連結した脳の全てのデータを等しく有用に活用できる。仏教や禅が本当は宗教では無く哲学だと言われるのは、現代の脳機能学においても見劣りしないモノの見方をしているからなんですよねえ」
あ:「一流の人は人を差別せず、駐車場の警備員一人にも礼を尽くし、個人として敬意を払うと言うのは、そういう脳構造を持っているからなのだな」
筆:「そう言う人は、全力戦闘管制で会社を動かしているんですよwww」
あ:「では来月は遂に『王達の屹立』最終話だぞ!」
一同:「「「「それじゃあ、まったねー(^^)/」」」」
い:「はっ、何で私まで?」




