王達の屹立(11)
秋風が冷たくなってきましたね。風邪などお引きにならぬようお体にお気を付け下さい。
寒い中でもまた皆様に会えまして心がホットな東の外記です。
さて、今回の新ログホラはログホラ10巻のリーゼの視点で描かれたシロエの〈全力戦闘管制〉を、シロエ自身の視点から解説した物になっております(第3者視点も有りますが)。シロエ自身がどうやって戦闘を処理しているのか関心のある方は御期待を。
それでは、いよいよアキバもミナミも対立しながら力を合わせ(?)インブリウムに挑みます、ドキドキハラハラの本編をどうぞ。
m(--)m
―第22話:王達の屹立(11)―
-1-
ウェストランデ、イコマ、プラントフロウデン本部。
居並ぶ鋼尾翼竜と、その乗り手たち。
ロレイル=ドーン率いる近衛騎士団の6人小隊と、インティクスとその直轄の4名。
そしてアカツキ。
これに濡羽自身を含めたハーフレイド12人が、今回の〈インブリウムの空中庭園〉攻略の為のフロウデン側のメンバーだ。
「お待たせしました、濡羽様」
伊達男のロレイルがいつものように気障ったらしく恭しい礼を施す。
当初他の面子を揃える算段だったのだが、何処から聞きつけたのか、この男は付いて行くと主張し折れる事が無かった。
だがそれより、もうどうでもよかったのだ。
もう『お嬢』の仮面を被り取り繕う気も失せていた。きっと彼等は自分に幻滅するだろうが、それはそれで清々する。
この金髪の色男が、自分をさも繊細な壊れ物の様にナイト気取りで鳥籠に閉じ込めていたのは、結局、自分のせいだったと気付いてしまったのだ。
あまりに臆病だった自分。
結局異世界にまで来て、まるで地球にいるかのように有りもしない強大な力に怯え、自分を守る鎧を過剰に求め過ぎてしまった。
ただそれだけの事。
「そう」
濡羽は鋼尾翼竜に跨る。
「行くわよ! 野郎ども!」
「「「―――は?」」」
「ど、どうされたのだお嬢は?」
「まるでヤンキーの様な?」
「なにかお機嫌を害す事でもあったのか?」
「………なんかイイ」
「え?」
濡羽の後に跨ったアカツキは、当惑する近衛騎士達の様子にクスクスと笑った。
-2-
そして役者達はナインテイル自治領、タネガシマこと遺跡島ジャクセアに集う。
「アカツキ!」
「主君!」
アカツキはシロエに駆け寄り、軽く抱擁を交わす。
だがそれも束の間の事、シロエは気迫のこもった視線を濡羽とインティクスに向ける。
濡羽が口を開く。
「返したからには、約束を果たしてもらうわよ」
「―――ええ」
そしてインティクスは殺意を込めた眼差しをシロエに注ぎ続ける。
「ッ! まともにやり合えば、私が勝っていたっ!!」
「ああ。だから僕は同じ土俵には立たなかった。常に別の土俵を用意した。それだけだよ」
「だから貴様はノイズなのだっ!この卑怯者!!」
「否定はしませんよ」
「もうよせよ」
カズ彦が割って入る。
「そうやって勝ち負けに拘ってるから、シロに勝てねえんだよ。分かってんだろ?」
「裏切るのかっ!?」
「俺は俺の味方だし、シロもお前も今でも仲間だ。カナミもな。拘ってんのはお前だけだ」
「ふざけるなっ!」
「いい加減にしなさい、見苦しいわよ」
「濡羽?」
「そんなに白黒付けたいなら、このダンジョンの戦闘指揮で決着を付ければいいじゃない?」
「――――っ!?」
「それとも自信ないの?」
「やっぱり貴女は底意地の悪い女よ!」
「承諾と取っておくわ。みんな、いいわよね?」
「構わないにゃあ」
にゃん太が頷くと、皆も次々と頷く。
「いいでしょう」
シロエの眼鏡が光る。
「友達で仲間だからこそ、今回は容赦なく叩き潰します」
その言葉にインティクスは頬をひきつらせた。
-3-
シロエ側パーティーにはアカツキが入った代わりにミカサが抜けて、インティクス側の指揮下に入った。
一同は〈砕かれた天塔〉に突入する。
次々と襲い掛かる雑魚モンスター達を、シロエパーティーとインティクスパーティーはその神懸った指揮の下、凄まじい勢いで撃破して行く。
両者一歩も譲らず、優劣がつかない。
だがそれもフロアボス戦までの事だった。
〈付与術師〉は不人気職である。
にも拘らずシロエは何故それが好きなのか?
お節介で苦労性な彼の性格と、この職業がハマっているのも理由の一つではある。
だが何より、彼がそれを選ぶのは、〈付与術師〉がフルレイド戦に於いて、最強の職業だからである。
ソロプレイや6人パーティープレイランクのモンスターとの戦闘に於いては、戦闘はほぼそのほとんどが短時間で決着がつく。
なのでそんな時には単位時間火力に優れた〈死霊術師(召喚術師)〉のロエ2を使う事もある。カードゲームで言えば黒の速攻アンデッドデッキである。
だがハーフレイドやフルレイドに於いては、雑魚戦ですら数が多過ぎてそれなりの時間を擁し、ボス戦に至っては、必ずと言っていいほど様々なギミックを駆使した長期戦である。
つまり、相手はカードゲームで言えば、長期戦略のコントロールデッキしか使ってこない。
そんな遅い相手には、圧倒的と言ってもいい程の勝率を誇るデッキが存在する。
黒の手札破壊、または青のカウンターデッキである。
〈付与術師〉とは、まさしくその両者を合わせた存在とも言えるのだ。
多彩なバフ(味方強化)とデバフ(敵弱体化)で敵の戦闘ギミックを破壊しカウンターする事に於いて、右に出る者はいない。
そして〈付与術師〉の性能を120パーセント引き出す彼のプレイテクニック。
話は音楽に変わるが、ハイドンとモーツァルトとベートーベンと言う音楽家がいる。
ハイドンは手塚治虫の漫画で完璧に調和された立体構造物で表現される程の完成度を誇る交響組曲を作り上げ、クラシックを完成させた人とも称される。
対してモーツァルトは感性のままに自由奔放な楽曲を作り、むしろその手法は現在のポップミュージックにも通ずるとも言える。
そしてベートーベンはその両者から学び、劇的な音楽という手法を造り上げた。
感性のままにノイジィ(雑音)とも言える音で意表を突いたかと思えば、続く音はそれと完璧に調和する音を組み上げ、兎に角劇的としか言いようのない構成の楽曲を造り上げた。
それは現代におけるドラマやゲームや映画音楽の祖とも言える。
それに黒人音楽のアドリブも取り入れ、もっと自由とノイジィを推し進めたのが、ビートルズとローリングストーンズの始めた「ロックミュージック」である。
特にストーンズのミック・ジャガーはやんちゃな人物で、まるでバンドを始めたばかりの中学生の様に調子は外す音程は外す、気分のままにがなりまわり譜面通りに歌わない。それなのに必ず音とリズムの帳尻は合わせ、聴き終わってみると凄まじく格好いい。周りのメンバーも一緒に悪ノリする悪ガキばかり。
シロエはストーンズが大好きであり、また、音や物事を立体構造物として捉えて(ただし譜面は読めない、苦笑)いいのだという事を手塚治虫の漫画から学んだ。
ダメージはスカラープラス即ち火行。回復はスカラーマイナス即ち水行。バフはベクトルプラス即ち木行、デバフはベクトルマイナス即ち金行。ヘイトとモラルは全てを支える土行。
陰陽両義四象八卦。数多のスキルは分類されそれぞれの色と形のパーツとエネルギーの流れにイメージされ、パズルとして組み上げられて行く。
基本は精密に理論立てて行っても、結局イメージを決めるのは自分の直感。数字で計算などはしない。それでは戦闘スピードには間に合わない。ある意味心の赴くまま。
それにどんな手段で精密に組んで行っても、結局実際の戦闘は水物、ズレは出る。
そんな時にはリックリック、リック。
〈付与術師〉には、詠唱や再詠唱の時間の短く威力の弱い、所謂セコイ呪文が多い。
長い大仕掛けのフレーズの隙間に挟む小石には持って来い。
些細な、しかし継続したダメージを与えるそれらは長期戦で積み重なればやがて、単位時間火力においても通常魔法職のそれを上回って行く。
アドリブでも帳尻が合えばそれは最初から完璧に組み上げたそれと変わりはしない。
いや、音楽でも戦闘でも、結局その場その人に合わせた丁度いいを積み上げた結果が、むしろ完璧を越えた完璧になるのだ。
ノイズで上等。それはむしろ褒め言葉。
雑音の様に気ままに、だけど心地よく響き合う様に。
ライク ア ノイジィ バット ハーモニー
ジャスト ライク ア ローリングストーン
悪魔の様に気ままにそそのかし、だけど天使の様に美に導く。
ライク ア デヴィル バット エンジェリック
ジャスト ライク ア ローリングストーン
カナミの自由奔放な我が儘に鍛えられ、数多の戦場で練り上げ磨き抜いた〈全力戦闘管制〉。
〈付与術師〉こそフルレイドに於いてボスの初見殺しを可能とする最強の職業。
戦場のドミネイターなのだ。
『うーん。まあ、ダンスが最高に乗ってる時に、何かズバッとフィールが合うのと同じか?』
『多分同じですね。それを意識していつも必要な時にできるようにするんですよ』
『スゲーな』
『いえ、シロ先輩の方がすごいんですけどね』
『?? あの人運動神経鈍そうじゃん』
『ええ。子供の頃は駆けっこでいつもビリだったそうです。今でも鍛えても人並みって嘆いてましたし。なのに、あの戦闘指揮が出来るって、凄い事なんですよ』
マヒルはそんなソウジロウとの会話を思い出していた。
確かにその通りだ。
自分の得意なダンスで最もしてはいけないミスは、音の早取りだ。
オーディエンス(観客)も実際に流れる音楽も無視し、自分の頭の中だけの振り付けを順番通りにこなす事に腐心し、肝心の観客が音楽にノれない、振りだけ綺麗でテンポやリズムがちぐはぐなムーブを見せてしまう事だ。観客だって一緒に音楽にノりたいのだ。
大切なのは音を聴いてから乗って動く事、観客の呼吸を掴む事。
シロエの指揮はまさにノリに載っており、インティクスの指揮は彼女の頭の中だけの完璧を求めるあまり、早取りを繰り返す素人ダンス。
明らかにロレイル達と呼吸が有っていない。
そして無駄にプライドの高い彼女は、それを自分の思い通りに動かないロレイル達のせいにして自分を省みはしない。お互いの気持ちはどんどん離れて行く。
それにひきかえシロエはメンバーがどんなミスをしようがアドリブを繰り出そうが、自分もそれにアドリブで合わせ、互いの気持ちを盛り上げていく。
モラル(士気)の差は歴然だ。
人は思い通りに動くチェスの駒ではない。
温もりと熱を欲しがるエモの生き物なのに、結局インティクスにはそのセンスが無い。
シロエはカズ彦が焦れて来たのを感じる。
ちらりとアカツキに視線を送りソーンバインドホステージをディレイキャストで唱えておき、その隙間に緊急スペルのマナリークで玲央人の〈放心〉を解除。
すると回復の必要の無くなったナズナがスペルをヘイト減少のパシフィケーションに変更、カズ彦に掛ける。
炸裂するカズ彦の大ヘイト技、〈斬徹刀〉。
大ダメージと共にボスの鎧が破壊され、防御力が大幅に減少。そこに殺到するマヒル、玲央人、アヤメのケルベロスコンビネーション。班長とセララとヴァディスの援護射撃が飛ぶ。
ソウジロウとテツロウが体ごとぶつかり、敵ボスは壁に叩きつけられる。
そしてソーンバインドホステージディレイ発動と同時に次のソーンバインドホステージ詠唱。
アカツキの〈影遁〉の分身がその無数の茨を全て弾けさせ、ボスを切り刻む。
派手な散華のエフェクトを遺し、敵ボスは沈んだ。
-4-
そうしてボス戦を繰り返した一同は、〈天塔〉の最上階に辿り着いた。
ここから先は崩れていて進めない。
シロエは懐から〈ウチュウ遺跡〉で手に入れたアイテムを取り出す。
すると、そこに光が満ちた。
光は崩れた〈天塔〉の本来あるべき形をかたどり、光の塔頂部を築く。
一同は光の階段を登り、光の天守閣へと至る。
24人はそこで更なる光の繭に包まれ、天空へと上昇を始めた。
上昇を続ける繭の中、一同はしばらく無言だったが、シロエがやがて口を開く。
「僕達の勝ち、でいいですよね?」
「……………」
何も言い返さぬインティクスの態度が苦渋の肯定を示す。
「インティクスには人のモラルを感じ取るセンスが無い。だから自分のギルドを潰した時も、今さっきの戦闘も、人の気持ちを逆撫でする言動しか出来ない。君の短所だ」
「――――――っ!!!」
「でもそれは大した問題じゃない」
「な!?」
「僕だって君も知るように、セコイし臆病だし悪辣で卑怯でその癖潔癖だ。君の言う様にノイジィな存在さ。でもそれは裏返せば武器にだってできる。君にもできる。でもそれには条件が有る」
「何だと言うのっ!?」
「敬意さ。君には人への敬意が無い」
「そんなもの何の役に立つっ!!?」
「役に立つさ。それが無い人間は自立しているとは言えない」
「私は一人で何だってできるっ! 私の考えは完璧だっ! 単にお前らが思い通りに動かないからだっ! カナミもっ!あの裏切り者っ!!! カナミさえいればみんな私の思う通りに動いたのにっ!!」
「その考え方がカナミに依存していると言うんだよ。だからカナミは君に自立して欲しくて君を大人として突き放したのに、君は代わりに濡羽さんを従属させて依存する事を選んだ」
「濡羽よりも私の方が精神的に優位なんだ!利用しているだけだっ!! 自立しているのは私で、依存しているのは濡羽の方だっ! 侮辱するなっ!!?」
「言わなきゃわからないのかい? 君の言ってる事は、典型的なマザコンファザコン患者のそれだよ。依存は必ずしも悪い事じゃない。例えば体に障害を持っていて他人に依存しなくては生きて行けない人でも、依存する相手にちゃんとした敬意を以って、言葉や日頃の態度でそれを現している人は立派に精神的に自立しているんだよ。
君の態度はまるで親に手取り足取り面倒を見させながら傲慢に生きる寄生虫の馬鹿娘だ。
君にはモラルを感じるセンスが無い。だからこそそれを補ってくれる、周りのモラルを盛り上げてくれるカナミや濡羽に依存するしかない。でも君は依存しながらカナミに敬意を持たなかった。もし持っていたのなら、その代わりになってくれた濡羽にも敬意を払うはずだからね」
「~~~~っ!~~~~~ッッッ!!!」
「敬意は憧れさ。それがあれば、人は本当の意味で学び見習う。同じ事は出来なくとも、その人なりの真似事ぐらいはできるようになる。それこそ自分の短所を裏返して使ってでも。
君もカナミや濡羽の真似事ぐらいはできるようになってたはずなんだ。
そして憧れそのものになれない事を思い知る度に、より深い敬意を持つようになる。君がそう出来ないのは、依存するのが当たり前の都合のいい親扱いした何よりの証拠じゃないのかい?」
「………………」
「それに僕やカズ彦やアヤメやマヒルにももっと敬意を持っていれば、彼等だって君を本当の意味で君を助けれた。僕にだってギルドを立ち上げる前に相談してくれていれば助けれた。君は自分が自立してないからこそ、自分独りの考えに固執して他人の手を借りるのを恥ずかしいと思って拒んだんだ。違うかい?」
「―――――――」
「あのさ、シロエ、何かアタシも耳が痛いんだけど」
濡羽が溜め息を衝く。
「それは良かった」
「どこがよ!」
「人のふり見てわがふり直せって言うじゃないですか。濡羽さんもインティクスに対して敬意を持ちきれなかった事を認めてくれて何よりです」
「ハア、ああ言えばこう言う」
見れば背後の方でも、「ううっオレも耳が痛い」「僕も」「私も」などの呻きが聞こえる。流れ弾に当たったようだ。特に実際子供の玲央人などガタガタ震えている。
「シロエちやり過ぎですにゃあ」
「うーん。こう言う所、カナミだと手加減美味いんだけどなあ。僕もまだまだだよ」
-5-
果て無き暗黒の虚空、それを彩る絢爛の光の粒子。
「見て~カズ彦さん、星空ですよ」
はしゃぐアヤメ。
「ああ。宇宙に来たんだな」
感慨深く肯くカズ彦。
「綺麗ですよね!マヒルさん」
努めて明るく話し掛けるソウジロウ。
「……そだな」
マヒルの気の抜けた返事。
嗚呼、ソウジロウが涙目でこっち見るけど掛ける言葉が見つからない。と頭を抱えるシロエ。
やがて光の繭は遂に目的地へと辿り着く。
「国際宇宙ステーション、いや、〈インブリウムの空中庭園〉ですにゃあ」
「ネットやニュースで見た通りだ」
「いや待て、あんなにデカい訳ねえぞ」
「そうなんですか?」
「ああ、多分、庭園且つダンジョンである都合上、実際のステーションよりもずっと尺が拡大されて作られてるんだと思う」
「へー」
ドッキングハッチの一つが開き、一同を包んだ繭はその中に吸い込まれる。
ハッチが閉じ、空気が満ちると繭が解除され、一同は床に降り立つ。
次のモジュールへの扉が開く。
待ち構える機械のモンスターたち。
「へっ、御出迎えかよ」
「熱烈歓迎ですねっ!」
「さあ、食い散らかすにゃ」
「美味しい所へ向かって」
「「「「突撃ぃっ!!」」」」
-6-
一方、インティクス側の12人は未だ呼吸が合わない。
「何でっ?私の思う通り動かないっ!?」
「こっちだって精一杯やっているっ!全く!! 確かにシロエ殿の言う通り、貴公には、他人への敬意が無いッ!!」
激昂して言い返すロレイル達。
最早パーティーは崩壊するしかないかと思われたが、その時―――
「五月蠅いわボケぇっ!!!」
濡羽の一喝。
「お、お嬢!?」
「ひ、姫様っ!?」
「テメーらもアタシの舎弟ならっ、バカ女の要求の一つや二つ、きっちり応えて見せんかあっ!! インティクスもっ、ちょっと仲間が計算外の動きをしたぐらいで泣き言喚いてピーピーしてんじゃねえっ! きっちり計算し直して帳尻の一つも合わせてみんかいっ!!このヘタレっ! だからテメエらまとめてシロエに負けんだよっ! 気合い入れ直せ!このボケぇっ!!!」
「ハ、ハイいっ」
「お、お嬢!?」
「そそんな、これが姫様の本当の姿だと言うのか?」
「ええそうよ。コイツ酒に酔って本性出た時はいっつもこんな醜いのよ。幻滅したでしょう?」
ここぞとばかりに言うインティクス。
「ああ、お前ら、こいつこんなに性格悪いけど、本気で自分の計算通りならみんな幸せになれるのよーとか思ってるアホ女だからねコイツ。見捨てずにいてやって頂戴。可愛い所もあんのよ」
相手にしない濡羽。
「は?」
「え?」
「そーだったのか?」
「そうよ!みんな私の計算通りなら上手く行くし幸せになるのよっ!それをどいつもこいつも計算外のノイズ放題っ!!」
「志は立派だが狭量すぎる」
「それアタシも耳が痛いわ」
「いやお嬢の描く世界はいつも美しい、間違いは無いッ!」
「やめてそれ余計にダメージ来るから。そのせいでアンタらも狭量なのね、ハア」
「そ、それを言われると」
「確かに………」
「お互い悪かったと言う事か」
「なあ、思うんだがお嬢よ、最初っからこのノリでやっときゃあ、フロウデンももっと風通しが良かったんじゃねえの?」
敵と鍔迫り合いしながら口を挟むカズ彦。
「そうです~。そうすればもっとみんなもお嬢にもインティクスさんにも親しみを持ってくれてたはずです~」
「お嬢がキレイ綺麗にし過ぎるから、みんなキレイ綺麗にし過ぎようとして無理が来たってか? そりゃ言えてるな」
「臆病だったんだよ。俺もお嬢も。だから独りぼっちだったんだ」
アヤメとマヒルも玲央人もここぞと言う。
「喧嘩は避けられないモノだよねえ。むしろ、喧嘩してからが本当に仲良くなるチャンス。いつも〈茶会〉じゃそうだったじゃないか? インティクス?」
「そうですよ」
「雨降って地固まる、ですにゃあ」
シロエとソウジロウとにゃん太も。
「~~~~~~ッッ!!!」
地団太を踏むインティクス。
「ほら、可愛いもんでしょう?」
笑う濡羽。
つられて皆が笑いだす。
ある者はクスクスと、ある者はゲラゲラ腹を抱えてて転げ回らんばかりに。
シロエも指揮を変える。
12人では無く、24人を包むように。
インティクスの計算も呼吸の合わなさも織り込み済みで、フォローさえして。
快進撃が始まる。
-7-
そして一同は辿り着く。
「ここがコアユニットか?」
「おや?」
「お出ましになりましたよ」
「ココハ我等ガ〈典災〉ノ要ェッ! 貴様ラヲせるでしあニ縛リ付ケル牢獄の出入リ口っ! 断ジテ渡セルモノカアッ!」
敵ボスが吠える。が―――
「「「知った事かああっっ!!!」」」
若者たちは止まりはしなかった。
―第23話に続く―
筆者(以下:筆):「今月のテーマは『一芸は多芸に通ず。達人』でーす」
アカツキ(仮名、以下:あ):「今回も脳機能の話なのか?主君」
筆:「そうです」
マリエール(仮名、以下:り):「何でうちらが今回のゲストなん?」
直継(仮名、以下:な):「そうだぜ祭り」
筆:「マリ姉の笑顔と直継の大らかさは、最早芸と言って差し支えないレベルかと」
な&り:「「―――――あははははは?」」
な:「褒められてるのかどうか微妙だぜ」
り:「ほんまや」
筆:「人間一芸に長けると大体の事はそれでカバーできるようになります。マリ姉の笑顔と直継の大らかさと言う問答無用の力技には幾度助けられてきた事か」
り:「何やそう言う事か」
な:「お互い様だぜ祭り」
筆:「また、一芸に長けた人間はいい意味で敏感になるモノです。本来自分の土俵や分野で無い事も、なんとなく分かるようになります。またこれも二人のなんとなくにはいつも助けられてますよねえ」
り:「まあなんとなくやけどな」
な:「細かい事は任せたぜ祭りっ!」
あ:「それは何故なのだ?主君」
筆:「ポーズで無く、全身全霊でやってるからですね」
あ:「?、脳機能はどうした主君?」
筆:「全身全霊とは、全身の感覚野と言う、脳のほぼ全てを繋ぐ領域を使っていると言う事だよ」
あ:「なんと!?」
筆:「つまりその一芸をこなすのに、脳回路の全てを連結させると言う事だからね。そして一度繋がった脳回路は、他の事を理解するのにも使える。達観、達人とはこの脳のレベルとも言えるよねえ。一芸は多芸に通ずと言う事なんだよ」
り:「ほーなるほどー」
な:「ちゃんと理屈になってるぜ祭り」
筆:「理屈とは人聞きの悪い、理論と言ってよ」
あ:「成程、だから一芸を修めた達人は他の事も習得が速かったりする訳なのだな」
筆:「脳のリソースには限界があるから他の分野はそれなりだったりもするけれど、やっぱり何かの努力が無駄にならない事は間違いないんだよねえ」
な:「これから新しい事を本気でやりたい人は、これから脳のリソースを全身全霊全部注ぎ込めばいいんだぜ祭りっ!」
り:「頑張ってーなー!」
あ:「それではまた来月初旬」
筆:「じゃあっねー(^^)/」




