↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御曹司と令嬢のハラハラドキドキ新婚生活  作者: ひだまり
彩花の生誕記念祝賀パーティー
PR
14/18

14

 ある日。

 彩花の誕生日を祝うため、彩花の実家である大きな屋敷では、盛大なパーティーが開かれていた。

 広いホールには華やかな料理が並び、親戚や友人たちが集まっている。そこには彩花の父と母、兄夫婦の姿もあった。


 彩花の隣には響がいた。

 黒髪を整え、タキシードを着用、眼鏡をかけた響は、普段よりもさらに隙がなかった。


 客の一人が近づいてくる。


「本日はお招きいただき、ありがとうございます。奥様のお誕生日、誠におめでとうございます」


 響は穏やかに微笑んだ。


「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます。こうして多くの方々に祝っていただき、彩花も私も嬉しく存じます」


 その声は落ち着いていて、表情にも一切の乱れがない。

 次から次へと訪れる客たちに、響は丁寧に挨拶をしていく。

 時には相手の仕事について尋ね、時には軽い冗談を交えながら会話を続ける。


 誰に対しても礼儀正しく、知的で、完璧だった。

 彩花は少し離れたところから、その姿を眺めていた。

 家にいるときの響とは、まるで別人だった。


 家ではソファに寝転がり、彩花に髪を撫でさせたり、料理に文句を言ったりする。

 眠くなれば子供のように甘え、彩花に抱きついてくることさえある。

 けれど今、目の前にいる響には、そんな面影がまったくなかった。


「……本当に、別人みたい」


 白いドレスを身に纏った彩花が小さく呟いた。

 そのとき、遠くにいた響がこちらを見た。

 ほんの一瞬だけ、外向きの完璧な笑顔が消える。

 そして彩花にだけ分かる、いつもの少し気の抜けた表情になった。

 彩花は思わず微笑んだ。


 ♢


 響は人の間を縫うように歩き、彩花の兄である直樹と、その妻の架純の前までやってきた。


 直樹は三十代前半で、彩花より少し年上だった。黒髪を短く整えた端正な顔立ちで、背が高く、穏やかな目をしている。

 その隣に立つ架純は、二十代後半の美しい女性だった。肩まで伸びた艶のある黒髪に、柔らかな目元。上品なドレスを身にまとい、控えめな笑顔を浮かべている。物腰が柔らかく、どこか安心させるような雰囲気を持っていた。


 響は二人の前で立ち止まり、丁寧に頭を下げた。


「お久しぶりです、直樹さん、架純さん」


「久しぶりだな、響くん」


 直樹は笑いながら響の肩を軽く叩いた。


「元気そうで何よりだ」


「はい。直樹さんもお元気そうで」


「俺はいつも元気だよ」


 直樹はそう言って笑った。

 そして、ふと響の顔を見つめる。


「それで、どうだ?彩花との結婚生活は」


 響は少しだけ彩花のほうを見た。

 彩花は少し離れたところに立っていた。

 響は再び直樹を見る。


「綺麗で優しい妻と一緒に暮らせて、日々、幸せを感じています」


「……」


 彩花は思わず響を見つめた。

 その言葉はあまりにも自然だった。

 けれど、彩花の胸には小さな疑問が浮かんだ。

 ――本心なのだろうか。

 家では自分に好き勝手なことを言い、他の女性との関係についても平然としている。

 そんな響が、今はまるで理想の夫のように話している。


 直樹は嬉しそうに笑った。


「それを聞いて安心したよ」


 そして、彩花を見る。


「彩花はああ見えて負けず嫌いなところがあるから、響くんが大変な思いをしてるんじゃないかと心配していたんだ」


「兄さん、響さんは寛大な人ですから、ご心配には及びません」

 彩花が直樹に歩み寄り、小さく笑った。


「そうだな」

 と直樹が笑った。


 隣にいた架純も優しく微笑んでいる。


「まぁ、この先、なにかあった時は、遠慮せずに俺達を頼ってくれ」


「ありがとうございます、直樹さん」


 響は自然な笑顔で答えた。

 その完璧な受け答えを見て、彩花はまた思った。

 やっぱり、家にいるときとは別人みたいだ。

 直樹はしばらく響と話していたが、やがて彩花を見る。


「彩花、ちょっといいか?」


「え?」


「少し二人で話したい」


 直樹はそう言って、彩花に手招きした。


「なに?」

 と彩花が直樹に歩み寄る。


 響と架純をその場に残し、直樹と彩花は静かにパーティー会場を離れていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。