真夏の情景
真夏の情景
胸の奥がちくちくと波立つように収まらない。オンラインゲームの画面内では、せっかく買い集めた南国のパラソルや涼しげな水槽のオブジェ、そして瑞々しい夏野菜の飾り付けが、設置上限の壁に阻まれて中途半端な形で宙に浮いている。この十二年間、一体どれほどの小遣いをこの仮想の世界に注ぎ込んできただろうか、手元にあるはずの愛しい道具たちが窮屈そうにアイテム袋に眠ったままであることがどうしても納得いかなかった。画面の向こうにいる気心の知れたはずのフレンドに、つい「もう少し自由に置けたらいいのに」と軽い気持ちで愚痴をこぼした。
「このゲームはハウジングをやるためのものじゃないから」
受話器の向こうから返ってきた冷ややかな声に、思わず喉の奥が詰まった。
カチカチとマウスを握る右手の指先が、怒りで心持ち震えている。液晶画面の強い光に照らされた机の上には、先ほどから放置されたままの冷えた麦茶のコップが結露し、古びたコースターに大きな染みを作っていた。楽しみ方なんて人それぞれなのに、まるで自分の十二年間の愛着を根底から否定されたような理不尽さが頭を駆け巡る。同じ家キットを使ったとしても、住む人の感性次第で全く違う美しい景色が生まれるのがこの世界の醍醐味なのだから、使えないなら最初から売るべきではないとさえ叫びたかった。
「買ったものを使いたいと思うのは私のわがままなの?」
お気に入りの薄古びた木綿の部屋着の裾をぎゅっと掴みながら、私は精一杯の反論をキーボードに打ち込んだ。
どうしてもこの不完全燃焼な気持ちをそのまま引っ込めることができない。同じお金を払って購入したマイタウンなのに、なぜサブキャラクターの敷地だからといって制限を甘んじて受け入れなければならないのか、データの容量が半分で済むわけでもあるまいにという疑問が次から次へと湧き上がってくる。いっそのこと、同一のキャラクターでもう一つ別の敷地を持てるようにシステムを改良してくれれば、こんな狭苦しい思いをせずに済むのにと、思考はどんどん意固地な方向へと突き進んでいった。
「それとも、サブキャラが持てるマイタウンは容量が半分で済むとでもいうの?」
画面の向こうの相手はしばらく沈黙したあと、ただ短く「仕様だから仕方ないよ」とだけ返し、結局二人の意見が交わることはなかった。
どっと押し寄せてきた疲労感に耐えかねて、私はノートパソコンの画面をそっと閉じた。台所からは、夕食のために仕込んでおいた圧力鍋から、鶏肉と生姜がかすかに焦げ付いたような独特の匂いが漂ってきて、現実に引き戻される。せっかくの夏の模様替えも、長年の友人とのたわいもないお喋りも、すべてがすれ違ってしまった重い空気だけが部屋に満ちている。私は大きくため息をつき、冷え切った麦茶を一気に飲み干すと、重い腰を上げて夕食の支度を再開するために薄暗い廊下へと歩き出した。




