足音を聞いて
ディオロイ城の庭にある書庫の側にある牢屋に、コツコツと足音が響く。警備をしていた魔術師が足音の主を見て、ペコリと一礼をする。その魔術師を通り過ぎ、鉄格子で出られない牢屋の前に止まる。足音が止まり、牢屋の中にあるベッドで寝転がっていたシャロが体を起こし、牢屋の前で立つシャーロットを見て、ふぅ。と一つため息をついた
「まだ居たのね」
シャーロットもシャロを見て、そう言うと持ってきたサンドイッチを乗せたトレーを差し出し、魔術師が牢屋の扉を少し開け、シャーロットが持っているトレーを、扉の隙間から牢屋の中に入れる。それを見たシャロがベッドから立ち上がり、トレーを受け取ると、ベッドの上に置き、シャロもベッドに座って、サンドイッチを一つを取る
「ここから逃げないの?魔力があれば簡単に逃げれるでしょ?」
シャロが食べる姿を見ながらシャーロットが問いかける。シャロはすぐには答えず、食べているサンドイッチを食べ終え、トレーに置かれていた冷えた紅茶が入ったコップを取り一口飲むと、またふぅ。とため息をついて、牢屋の前に居るシャーロットに目線を向けた
「結界を解いて、ここを出れるほどの魔力もないし、あの家は色々調べるって言っているから返れない」
「あの子は?えっと、リリーは?」
「リリーを呼べるなら、こんな所にいない」
シャロがそう言いながら、もう一つサンドイッチを取る。シャーロットが急に辺りを見渡しはじめ、先ほど、牢屋の扉を開けた魔術師が外に出ているのを確認し、すぅ。と息を大きく吸った
「呼ばなくていいよ。またここで倒れたら困るから」
シャロに先に言われて、大きく吸った息をゆっくりと吐き、もう一度、ゆっくりと深呼吸をして、おかわりのサンドイッチも食べ終えそうなシャロにまた話しかける
「食べたならもう魔力は戻るでしょう?もうここから出れる?」
「いや、すぐには無理だね」
「じゃあ、いつになったら戻るの?」
シャーロットがまた問いかけても、シャロはまた答えずに、冷たいお茶を飲む。二人に静かな時間が流れ、シャーロットが鉄格子の柵を掴み、ガシャンと鉄格子の音が牢屋に響く
「私がお父様に言って、ここから出すように言うから。そうすれば、魔力が戻って、また呼べるわ」
シャーロットがそう言っても、シャロは横目で話す様子を見ているだけ。また二人の会話が静かになり、シャロが持っていたコップをトレーに置く音が
聞こえる。シャーロットがまた話しかけようとした時、牢屋の入り口が開き、そよ風が牢屋の中に流れた
「シャーロット」
入り口にいた魔術師と入ってきたクロームがシャーロットに声をかける。突然、現れたクロームにシャーロットが一瞬驚いて、近づいてくるクロームを見る。牢屋の前に止まったクロームが、シャロを見てフフッと微笑むと、シャーロットに目線を変え、また微笑む
「お話がある。ちょっといいかい?」
「……ええ、わかりました」
シャーロットの返事を聞いて、魔術師と共に先に牢屋を後にする。残ったシャーロットがふぅ。と一息ついて、服の中に隠し持っていた魔術書をシャロに差し出した
「また後でね」
鉄格子の間から魔術書をいれ、地面に置き去っていたシャーロット。魔術師が開けていた重々しい牢屋の扉が閉まり、一人残ったシャロがベッドから立ち上がり、シャーロットが残していった魔術書を取る。パラパラと適当にページをめくり、魔術書の中を確認すると、パタンと魔術書を閉じ、持ったまま牢屋の壁に手を当てた
「この本のお礼に、メアリさんに会いに行こうかな。リリーも来るかもしれないし」




