手を差し出して
「美味しいね、シャロ」
「そうだね。食事の魔術は味覚の影響が出るけれど、やっぱりお姫様だね」
リビングにあるテーブルに、たくさん並んだ美味しい料理に、テンションが上がったリリーが、ご飯を食べるシャロの周りをグルグル回る。シャロの右肩に止まり、リリーが食べやすいように小さく切ってもらった野菜を頬張る。二人が美味しそうに食べる様子を見ているシャーロットが、はぁ。とため息をついた
「食べないの?魔力使ってお腹すかないの?」
「お腹はすいてないわ」
リリーに返事をしながら、リリーが玄関から持ってきた魔術書をぎゅっと抱きしめ、少しうつ向く。そんなシャーロットを見ながら、シャロが一口サイズの少し硬めのパンを齧った
「魔術使ってみたかったんでしょ?喜ばないの?」
「私は、元々魔術や魔術師が嫌いなの。今さら使えたって困るのよ」
そうシャーロットが言い返すと、今度はシャロがはぁ。とため息をついて、持っていたパンをテーブルに置き、椅子から立ち上がった
「じゃあ、魔術を……」
シャロがシャーロットに向け手を差し出す。シャーロットがうつ向いていた顔を上げ、向けられた手と言葉が分からず、魔術書を抱きしめたまま首をかしげていると、リリーがシャロの肩に乗りリビングにある窓を見た
「シャロ、待って」
リリーの声に手を伸ばしてたまま、少し顔を横に向ける。シャーロットもリビングを見渡した後、椅子から立ち上がりリリーが見ている窓を見た
「お父様とお母様……」
シャーロットがそう呟くと、シャロも窓を見る。シャロにはいつもと変わらぬ、外にある木々や晴れた空が見えた。リリーがシャーロットの左肩に移動し、一緒にリビングを見渡していると突然シャーロットが足をおぼつかせバタンと勢いよく倒れた
「大丈夫?」
倒れる直前にテーブルに移動していたリリーが、シャーロットの頬に飛び降り、羽根で鼻先を触って目を閉じ動かないシャーロットを起こそうとする。シャロはシャーロットがテーブルの下に落ちた魔術書を拾い、まだ叩き起こそうとしているリリーに声をかける
「リリー、何が起きてるの?」
「えーとね……」
シャロの質問に答えようと、リリーがリビングの入り口の方に目線を向ける。シャロも入り口を見てリリーの言葉を待つ。リリーからすぐに言葉は来ず
、倒れているシャーロットの方に振り向くと、体を触り、シャーロットを起こしていたはずのリリーが居なくなっていた
「リリー、どこに……」
と、シャロが呟き、シャーロットを起こそうと魔術書を持ったまま、体を触ろうとした時、コツコツと廊下を歩く足音が聞こえてきた。シャロが睨むように音のする方を見ると、ディオロイ城の魔術師を連れたクロームがリビングの入り口で立っていた。倒れているシャーロットと側に居るシャロの二人を見て、シャロに向けて手を差し出し、にこりと微笑んだ
「この家は、とても似ている魔力が溢れているね。この魔力はシャーロットにも合いそうだよ」




