名前を呼んで
ディオロイ城から飛び立ち数分後、村からも遠くなり、お城も見えなくなった。シャーロットから見える景色は、人や動物等は見えず木々が広がる。ボーッと景色を見ていると、リリーが少し体を下げ、大きく羽根を動かし、ゆっくりと地上へと降りはじめた
「着いたよ」
リリーが降りた先に、見覚えある一軒家があり、リリーの背中に座っていたシャーロットが、羽根伝いにゆっくりと降りる。はじめて来たこの場所に見て回りたい気持ちを押さえつつ、家の回りを見ていると、大きかったリリーがいつもの姿に戻り、シャーロットの右肩に乗る
「意外と遠い場所まで引っ越したのね」
「魔力を避けるためだからね。仕方ないよ」
「ふーん、そう……」
「それより早く扉を開けて」
リリーが羽根を玄関がある方に向ける。シャーロットが玄関の取っ手に手を掛けゆっくりと開ける。そーっと開いた扉の隙間から家の中を見ると、見覚えのある間取りが見えて、玄関の扉を一気に開けた
「シャロ!ただいま!大丈夫?」
シャーロットの右肩に乗っていたリリーが飛び出し、家の中に入る。バサバサと聞こえるリリーの羽根の音を聞きながら扉を閉めシャーロットも家の中に入ると、一足先にリビングに入ったリリーの声が家の中に響いて聞こえた
「シャロ。良かった、生きてた」
椅子に座り本を読んでいたシャロを見つけ、シャロの周りをグルグルと飛び回る。シャーロットもリビングに着き、シャロとリリーを見ると、シャーロットに気づいたシャロが、はぁ。とため息をついた
「やっぱり連れてきた」
読んでいた本を閉じ、テーブルに置いていた飲み物を取る。シャロの様子に、シャーロットもため息をついてリビングの中に入る
「魔力がない人を連れてきたって意味ないって顔ね」
そうシャーロットが言うと、リリーがテーブルの上に止まり二人の顔を交互に見る。シャロも飲み物をテーブルに置いて、シャーロットに読んでいた本を差し出した
「ちょうどいいや。これ返す」
差し出された本を取る。受け取った本は、無くなったと思っていたメアリからもらった魔術書でシャーロットが驚きつつも魔術書を開く
「リリーを呼ぶのに助かったよ」
シャロの言葉を聞きながらページをめくり、勝手に書かれていたはずのシャロの文字が消えていた。ページを最後までパラパラとめくり魔術書を閉じると、目を閉じ休んでいるシャロに声をかけた
「体調はどうなの?」
「最悪だね。ご飯でも食べてまた眠らないと」
シャロがそう返事をすると、ふとリビングが静かなことに気づいて、テーブルにいたはずのリリーが居ないことに気づいて、リビングを見渡す
「リリーはどこ?」
シャロに聞かれて、シャーロットもリリーを探すため、リビングを見渡す。リリーのいる気配はなく、ふとシャロの家に向かう前のリリーの言葉を思い出す
「もしかしたら、私を連れてきたから魔力が……」
そうシャーロットが言うと、シャロがまたはぁ。とため息をつく
「そっか。困った、リリーが居ないなら、どうしようか」
「でも、あなた達、前にも魔力が無くなるとか、同じようなことがあったって……」
「リリーから聞いたの?」
「そう。だからそんなに焦らなくてもって言ったんだけど……」
シャーロットが話している途中で、目を閉じ考え込みはじめたシャロ。また静まり返るリビングにシャーロットの話し声がまた響く
「前はどうしたのよ?私にも手伝えるなら手伝うわ」
「手伝えないよ、だから帰っていいよ。リリーとどうにかする」
「でも、いないのにどうやって」
シャーロットがシャロに聞き返すと、閉じていた目をゆっくりと開いて、椅子に座るシャロの前に立ち、魔術書を持つシャーロットを見た
「ちょっとリリー、呼んでみて」
「えっ、私が?なんで?」
「いいから早く。リリーが居なくなるよ」
少し言葉強めに言われ、ぎゅっと魔術書を抱きしめシャロを見る。目線が合い、少し怖じ気づいて一歩後ろに下がり、シャロの願いを断るように、静かに顔を横に振る。それでもシャロはシャーロットがリリーを呼ぶのを待っている。また魔術書を強く抱きしめて、ふぅ。と深呼吸をした
「リリー、おいで」
シャーロットがか細い声でリリーを呼ぶ。静かなリビングでは、シャーロットの小さな声はとても響く。シャーロットがリリーを探して、リビングを見渡すがリリーの姿は見当たらず、不安そうにシャロを見る。声をかけようと一歩踏み出した時、シャロの後ろを見覚えのある影が一瞬通りすぎていった。シャーロットが影を追いかけるようにリビングをぐるりと見渡すと、いつの間にか居なくなっていたはずのリリーがシャロの左肩に止まり、嬉しそうにシャロの頬に顔をすり寄せていた。リリーが戻り、シャロも嬉しそうにリリーに手を添えた
「お帰り、リリー」
「ただいま。まだまだ魔力が足りないから、お腹空いたね」




