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異世界でチート狩り始めます  作者: 灰色猫
第2章 ハーレム王の世界編
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28 事態混迷

 ゴクリ、喉が鳴った。

 手汗は酷いし心臓の鼓動も馬鹿みたいに早い。

 だが、動けない。

 指先の一つでも動かしたが最後、彼女らは自分達に襲いかかってくるのではないか。そう錯覚する程の威圧感があったからだ。


 逃げ場は本当にない。

 入り口からは遠い席に座ってしまったし、カウンター席だから後ろにも道はない。

 だから、対峙するしかない。

 今ある武器はカナメの口先一つだけだ。


(くそっ、やっぱ欠陥スキルだぜ……この状況で大火力を一発もらったらそれまでだ。分析する間もなく俺は死ぬ……)


 そう、カナメの観察スキルは見たものを解析、分析その詳細を見抜くというものだ。

 つまり、初撃には対応出来ない。

 街のチンピラくらいなら、エレノアの路地裏でやったように多少対応は出来るだろうが、今回みたいなレベルの相手ではそうもいかない。


 となると頼みの綱はメリアというわけになるが、いかに彼女でもここまで囲まれていてはどうしようもないだろう。

 八方塞がりだ。逆転の一手がない。


「容赦はしない。だが、まずは聞こう。お前らは何のためにこの街に来た」


 投げかけられる質問。

 だが、そんな問いですら命がけだ。答えを間違えればその時点でジ・エンドだ。

 一瞬だけ、レナに視線を移す。

 そして後悔した。


(ったく、なんて顔してんだよ……)


 何でここにいるのかという困惑と、こんな状況になってしまった後ろめたさと。様々な感情がごちゃ混ぜになって酷い顔をしていた。

 いや、させてしまったのか。


 とはいえカナメにとっては不利な要因が増えただけだ。

 なにせ、おかげで彼女に頼まれてきたとは言えなくなった。そうなると、取れる選択肢は────。


「えっと、なんか凄い注目集めてるけど何の事なんだよ。何のために来てるかって観光だよ。噂の貿易の街はどんなもんかってさ」


「なるほど、まあ理由としては全うだ。けど、気になる点が多すぎるんだ」


「き、気になる点?」


「君らがレナと一緒にこの街に入ってきた事は分かってる。まず、なぜ彼女と一緒だった。そしてなぜここにいる。さらに言えば、レナの知り合いだというならなぜ声すらかけてこない。それにその格好、身バレしたくないみたいじゃないか」


「あ、あはは。レナとは旅の途中でたまたま知り合っただけだよ。それにほら、レナと貴方がいい雰囲気だったもんだからさ、声をかけづらかったんだよ。格好はほら、お洒落だよ俺の国じゃ流行ってるんだぜ」


 もしも本当に勇者──召喚者だとしたら生まれは同じ……というのは野暮か。

 とはいえ答えとしては間違っていないはずだ。

 おそらくだが、彼がカナメ達を怪しんでいるのは直感的なものだろう。

 あとは視線の動きや警戒心、状況的な怪しさの複合だろう。

 あるいは、仲間であるレナには温情をかけているだけで全て知っているか、だが。


「そうか。そこまで詳細に答えられるなら、俺の勘違いかもしれない。何となく敵の気配みたいなのは分かるんだけど、今回は外したかな」


「そ、それじゃあ────」


「それで、コイツらの言っている事はどうだ、フラン」


 そう、誰かに確認を取った。

 その言葉に答えるように、一歩前にでる少女がいた。

 しかし、その姿にカナメ達は驚く事となった。


 なにせ、その容姿はレナにそっくりだったからだ。

 着ている服装こそ違うが、顔や体型雰囲気に至るまでほぼ同じ……!?


「えっと、分身してるとかでなければひょっとして……?」


「はい、私はレナの双子の姉フランと申します。妹がお世話になったようで」


「い、いえこちらこそ……まさかレナさんに姉妹がいたとは知らず……でも、そのフランさんは何を?」


 フランは落ち着いた表情と冷静な声で答えた。


「私には特殊な分析魔法が使えるのです。それは相手の表情や仕草、そして口にする言葉から嘘をついていないか見極めるというものです」


「…………なるほどな、俺に色々答えさせたのはこういう事か」


 言うなれば精神分析に長けた観察スキル。

 この世界の魔法の傾向から、おそらく現地人ではレアな魔法持ちなのだろう。

 カナメも似たような事は出来るが、彼女程ではないと思う。少なくとも嘘かどうかまでは分からない。


 つまるところ、あの問答に意味は無かった。

 最終的にはこの嘘発見器とでもいう魔法によって嘘か真かを判断する。それによって処断するかを決める。そういう事だろう。

 なるほど考えられている。

 そして、大ピンチだ。カナメが先ほど答えた内容は嘘が八割なのだから。

 それを察してか、メリアが小声で話しかける。


「ど、どうするのですか。このままは私たち二人ともここで…………」


「分かってる、今何か策を考えてる……けど、いざとなったら俺を置いて逃げてくれ。君ならそれくらい出来るだろう」


「そんな事────」


「いいや、それしかない。それに君はこんな所で死ぬわけにはいかない、そうだろ?」


「……………………」


 それは卑怯な言葉だったかもしれない。

 メリアの事情を分かっててそう言ったのだから。

 けれどそうでも言うしかない。考えているとは言ったが、この状況を打開出来る方法など所詮は凡人のカナメには思いつかない。

 咄嗟に大逆転の策が思いつくほど、カナメは主人公ではない。


 重要なキーパーソンであるレナも、悲痛な面持ちで俯いているだけだ。

 姉であるフランが表立って出てきても無言を貫いているのは、どういう心境か。

 少なくとも、カナメ達が頼りに出来ないのは確かだ。


 ケントの唇の端はつり上がっている。

 アレは嘘である事を確信している表情だ。おそらく、嗅覚的にカナメ達が敵であると判断したからこの流れに誘導したのだろう。

 この街の中心なのは伊達じゃない。


 どうする。

 どうする。

 どうする。

 どうする────!?


 いくら観察スキルを使っても、何も返ってこない。

 それはそうだ、今は何も起きていない。

 周囲の女の子もケントの合図一つで動き出すだろうが、今は沈黙したままだ。動きがあるのはあくまでフランとケントのみ。

 何もなければ、対応も出来ない。


 唯一分かった事と言えば、レナとフランでは髪の長さと立ち振る舞いがやや違うという事くらい。

 だが、そんなものが分かったところで何になる。

 彼女が、カナメの言った事は嘘だと言った瞬間自分達の命はないのだ。


 だが、それでも、何かを口にせずにはいられなかった。


「ふ、フランさんはレナより髪が長いんですね。姉妹の見分けの仕方はそこなんでしょうか?」


 当然の如くそれはスルーされる。

 フランはジッとカナメを凝視する。嘘かどうか、最終のジャッジをしているのだろう。

 カナメの観察スキルと同質の魔法だった場合意識して顔に出る事を抑えようとすれば逆効果だ。しかしそのままでいても解析されるだけ。つまりは何をしても無意味。

 本当に、詰んでいる。


「さあ、フラン。真実を教えてくれ」


 そんな、ケントの言葉。

 カナメは覚悟を決める。おそらくメリアも、きっとレナも同じ思いだったろう。

 だが。

 急変した事態は、さらなる混迷を見せる事となる。

 なぜなら。




「彼は、嘘をついていません。無実ですね」




 あろう事か、フランはそんな事をケントに言ったのだ。

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