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異世界でチート狩り始めます  作者: 灰色猫
第2章 ハーレム王の世界編
26/38

25 失敗

 チートで無双する主人公。活躍によって好意を寄せてくれるヒロイン。

 誰だって憧れる。カナメだってそうだった。

けど今は違う。それが起こる事の影響を知ってしまった。それがどんな絶望を撒き散らすのか知ってしまった。

 つまりは、こういう事。


 ────もし、逆だったら?



 異能。チート。それらは良くも悪くも周囲の環境を変化させる。

 では。

 主人公でもヒロインでもない。周りの人間にとってはどうだ。

 それまであった積み重ねや交流を無視して結果や好意を掻っ攫う。突然レールが切り替わったかのように意識がそちらに向いてしまう。

 まるで……まるで人が変わってしまったかのように。

 そしてそれは、誰にとっても自然な事になってしまう。だから何も感じない。

 けど。

 けど。


 外側からそれを観測出来る者がいたとしたら、あまりにも理不尽に映るのではないか。

その役目は、きっとカナメに回ってきたものだ。







 ◇◇







 結論から言うと、カナメ達は失敗した。

 あまりの人の量と動きに近寄ることさえ出来なかったのだ。

 遠くから声をかけようにも、そもそも冒険者連中のバカ騒ぎでうるさいのがギルドだ。すぐにかき消されてしまった。

 というわけで、二人は外で待っていたレナの元へ戻ってきたのだった。


「顔を見れば分かるけど、やっぱ失敗したようだね」


「分かってて行かせたんかい。いやまあ、おかげさまで状況は理解したけどさ」


「凄まじい圧力でした……」


 特に何もしてないのに二人はぐったりだ。


「ちなみに聞くけどこの世界──国って一夫多妻制あるの?」


「いっぷたさい?」


「いや複数人との結婚というか……関係もつというか……」


「はあ、それの何が問題で?」


「うん、もういいや理解した。文化の違いって恐ろしい」


 つまりあの状態は本当に自然なものというわけだ。

 だが、やはり疑問点はいくつか存在する。


「なあレナ、その……言いにくいがお前もあのハーレムの一員だったんだろ? そこからどうやって抜け出したんだ?」


「それは…………」


 異常な規模のハーレム。街を飲み込む程の歪み。

 それを当事者本人が自覚出来る、というのは本来あり得ない。言うなれば漫画のキャラクターがここは漫画の中だと気づくようなものだ。

 そこには必ず何か理由がある。


「実際のところ、本当に自分でも分からない。ある日、なんの前触れもなくそれを自覚した。それで、怖くなって、逃げ出して……それで……」


 レナは言葉に詰まり出し、よく見れば身体も震えていた。

 そんな彼女の手を、メリアがそっと握る。


「すいません。無理に思い出さなくて大丈夫ですから」


「ごめん……取り乱した。ありがと」


 レナを支えながらメリアはカナメに視線を戻す。


「どうします?」


「ひとまず今日はここまでだな。落ち着ける所を探そう。レナ、落ち着いたら宿の場所を教えてくれ」


「泊まる所? それなら────」







 レナに案内され辿り着いた宿。

 街の外れに佇むそこは、超がつく程の豪邸だった。屋敷という言葉が正しいか、ともかく一般人が泊まるような所には見えない。

 もしかしてまた文化の違いが出ちゃった? 俺の宿泊感覚が間違ってる?

 と脳内が疑問符で埋め尽くされるカナメに対し、レナは。


「どうぞお入りください。ここは我が家です」


「…………………………………………え、マジ?」


「私の家は魔導士としては大成していてね。まあそれなりの地位はある。アルメリア様に比べれば大した事はないけど……まあ、それすら私には受け継がれなかったわけだけど」


 そう、二人の反応にややバツの悪そうな顔をするレナ。


「それに地位という事なら私というより亡くなった父がね。私はあくまでその資産を受け継いだだけ。屋敷には使用人なども含めて数人しか住んでいないし、空いている部屋も山のようにある。だから、使っていいんだ」


「そ、そうだったのか。でも助かるよ。正直、貯蓄も多いとは言えないし」


「そうですね。ここはレナさんに甘えさせてもらいましょう。それに、拠点が出来るのはいい事です」


「まあ、これに関してはそこまで気にしなくてもいいわよ。私としてもこのまま一人に戻るのは寂しいから」


 それでは、とレナは身を翻す。

 屋敷の周囲は壁に囲まれ、出入りが可能なのは巨大な鉄格子の門だけのようだ。

 街そのものと同じ構造。街の中に街があるみたいだ、などと素っ頓狂な思考が巡る。

 門は使用人が開けてくれるのだろうか。そんな風に考えていたカナメだが、一方のレナは門に手をかざした。

 すると、レナの手から波状に光が広がり、門全体に行き渡った。

 そして────。

 ギイイイイイイイイ、という音と共に門が開く。

 そんな状況をただ呆然と眺めるカナメ。


「ただの魔力認証よ。特別な事をしたわけじゃない。登録すれば誰だって開けられるから」


「マジか……。久しぶりに異世界カルチャーショックだわ。俺が知ってるのとか指紋認証と顔認証くらいだよ」


「逆にそっちの方が気になるんですが……。まあ、とりあえず中に入りましょう。お部屋の準備等は使用人にさせるので少しお待ちを」


「お、おう。サンキュー」


 能力はともかく、この世界の知識も増やしていかないと……そんな事も決意するカナメ。

 何はともあれ無事レガリアでの寝床を確保したのだ。

 順調、とは言えないが最低限はクリアしたはず。

 うん、明日から頑張ろう。とダメ人間的思考をするのだった。


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