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異世界でチート狩り始めます  作者: 灰色猫
第2章 ハーレム王の世界編
22/38

21 呪いの言葉

 随分と小柄だ。それが第一印象だった。

 空間の歪みから現れたそんな少女。

 身長はカナメの胸辺りまでしかない。

 青みがかった髪色と、フリフリのレースが所々にあしらわれた可愛らしい服装が目を引く。

 だが、そんな可愛げのある服装に対し、表情は挑発的だ。

 自分の透明能力がバレたというのに、不敵な笑みは崩れない。あくまで自分が優位にいる、そんな主張が聴こえてきそうだった。


 いかなる手段を用いたのかは分からないが、少女は自分の姿を消す事が出来る。

 だからカナメは注意を怠らない。視線外さない。


 だが、少女はゆっくりと、両手を上げた。

 それが示すものはこの異世界でも同じだ。つまりは降参、降伏。抵抗の意思がない事を表す。


「どういうつもりだ?」


 カナメが問う。

 少女は手を上げたまま。


「どうもこうも、透明化が見破れる相手に抵抗しても無意味だしさ。暴れる事は出来るけど、効果は薄いだろうし、ならさっさと話進めた方がいいじゃない?」


「勝手な奴だな。こっちがお前の話を聞く義理もないぞ。先を急いでるからな」


「ふーん、そう。なら、交渉って事になるのかな」


 どうにも抵抗する気は本当にないようだ。

 魔力の動きも全く見られない。格好的に武器を隠し持っていそうでもない。

 再び透明になる事にさえ注意していれば問題はなさそうだ。


 とはいえ、まだ警戒レベルは下げられない。相手の正体は不明なままなのだから。

 左手で抱えたメリアの肩に込める力がやや強まる。

 柔らかい女の子の感触も、緊急時だからか気にならなかった。ともかく思考も身体も、全神経を目の前の相手に集中させる。


「か、カナメさん……」


「悪い、メリア。しばらくこのままでいてくれ。君を守るためだ」


 視線を合わせないまま、そう告げる。

 戦闘力的にはメリアの方が上だろう。だが、相手の能力を考えればここはカナメが主導で行うべきだ。


 透明だった少女は、意地の悪そうな笑みを浮かべながら言う。


「こっちは真面目な交渉しようとしてるんだからイチャイチャしてんなよー」


「うるさい、茶化すな。それで、要件はなんだ?」


「ふん、冗談の通じない奴。まあ話が早くて助かるわ。本題はあなた方にお願いが……いえ、依頼があるのよ」


「…………依頼?」


 怪訝そうな顔をするカナメ。

 だが、その辺りも少女は折り込み済みだったようだ。平然と話を進める。


「あなたに倒してほしい人間がいるの。もちろん報酬は支払うわ。それが金品でも身体でも」


「こらこら、女の子が軽々しく身体とか言うんじゃないの。とりあえず、内容を聞こうか」


「さすが、王女様の豊満な身体を知っている勇者様は違うわね。私程度の貧相な身体は興味ないってわけか」


「コラコラやめなさい。それは冤罪だよ、俺は手も足も出してない!!あと貧相とか体型にはこだわらない主義だ!!」


「いや、そこで胸を張られても……。まあとにかく報酬はそちらに任せるわ。オススメは一夜の思い出」


「あのなあ……冗談はもういいから、本題を話せよ。俺はメリア一筋なんだ」


「あっはっはっ、酷いなあ。まあいいや、依頼としてはわかりやすいと思うよ。君と同じ勇者倒してほしいって話さ」


 少女は、笑いながらなんでもない事のようにそう言った。

 絶対的な強者の象徴である勇者を倒せと。


「冗談はもういいって言ったろ。勇者を倒せとか無理ゲーだから」


「そっちこそ冗談でしょ。だって、君は成し遂げたじゃない。エレノアを襲撃した勇者を撃退した。もう一回同じ事をしてくれればいいのさ」


 簡単に言ってくれる。

 あの勝利にどれだけの背景があって、どれだけの奇跡があったか。

 あれは全く再現性のない勝利だ。

 奇跡は二度は起こらない。

 ジャイアントキリングがそう続くものか。


「無理だ。事情は知らないけど、勇者ってのは簡単に倒せるもんじゃないんだよ」


「だろうね。私だって彼らの力は知っている。けど、だからこそ君に頼むんだ。そんな在り得ざる奇跡を起こした君に」


「買いかぶり過ぎだ……。それに、俺たちは先を急いでる。そんなよく分からない頼みに構ってる余裕は────」


「いいや、君は私の頼みを受けるしかない」


 どこから湧いてくるのか、自信満々の笑みで少女は言う。


「そうだね、まず交渉材料としては……私はそこの彼女の正体を知っている。第五王女アルメリア・ヴァーミリオン様。今の状態でそれがバレるのはリスクがあるんじゃないかな?」


「リスクはあるが、訳の分からない頼みを受けるほどのリスクではないな」


 そもそもなぜメリアの正体を知っているのか。

 疑問は尽きないが、そこに突っ込んでいる場合ではない。この舌戦は今後を左右する。


「そりゃ間違いないね。でもまあ、それも結局は関係ない。ある一言で、君たちは私を助けざるを得なくなる。……それにもう彼の重力場に囚われてるだろうし」


「…………何を」


 警戒心を一層強めるカナメ。

 だが、確かに無視出来ない一言を、少女は告げる。


「ここまでの流れは全部忘れてくれていい。だから、これだけ言わせてくれ」


 一度区切り、心の奥底から絞り出すように。



「────助けて」


 それは、確かにどんなやり取りよりも心に響く言葉だった。

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