表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: しんぎつ なない
学園編
PR
20/22

第19話 部屋に入ってきた人

 ドアを開け入ってきたのは、水色の服を着た、髪が肩くらいの女性、キーラだった。

 キーラは僕を見るなり、嬉しそうに言った。


 「フィン!フィンも同じなんだね!

 薬草採取って聞いて、模擬戦の結果悪かったんだなーって思ってたけど、フィンがいるなら大丈夫だ」


 僕は思いもしなかった人の到来に、あっけにとられながらもなんとか返した。


 「え……、キーラも同じ授業内容なんだ……。

 びっくりした。

 え、え、てことはもしかしてこの薬草採取、滅茶苦茶難しいとか……?」


 キーラのように優等生が来るとは思ってもみなかった。

 キーラと同じ授業内容ということは、キーラと同等近くの力を認められたということだ。それは素直にうれしいが、難しいであろう授業内容が気にかかる。

 すごい希少な薬草なのかもしれない。

 

「そうかもね……。

 授業内容は薬草採取としか伝えられてないし、分からないことだらけだよ」


 キーラと授業内容について話していると、廊下から足音が聞こえた。

 足音がドアの前で止まると、ドアが開いた。

 入ってきたのは、同い年と思われるブロンドの髪の、鼻の高い男だった。

 多分同じ授業を受ける生徒だろう。

 キラキラとしたきらびやかな服装をしている。数少ない、ローブを着ていない生徒の1人だ。

 その男は部屋の中を一度見渡してから、キーラをじっと見つめた。

 

 「え、なんですか」


 キーラにしては珍しく、一歩後ずさるようにしていった。


 男は僕には目もくれず、一直線にキーラの前に早歩きで進んだ。


 「美しい……」男が声を漏らした。「君、名前は?」


 「き、キーラです」


 キーラは顔を近づけて話してくる男から、逃げるように後ずさった。

 男はその距離を埋めるようにしてから、言う。


 「キーラ……。いい……名だ。

 こんなに理想的な女性とは会ったことがない。

 キーラ、今度お茶でもどうかな?」


 「え……嫌です」キーラはまた一歩後ろに後ずさり、頭を小刻みに左右に揺らしながらきっぱりといった。


 男もまたキーラに近づく。

 そして……、抱きついた。


 「え……?」僕とキーラが同時に驚きの声を出す。


 「君が好きだ。

 キーラも僕を好きになってくれるよね」


 男はキーラの耳元で囁くように、でもはっきりと言った。


 立ちすくして、キーラと男の様子をほぼ放心状態で見ていた僕には、キーラの顔がみるみるうちに青くなっていくのがよく分かった。

 

 「ん?」


 キーラが拳をつくっていた。


 え、あの手、風まとってないか……?

 やばくね?

 

 キーラは腕を引くと、思いっきり男の腹部にパンチをした。

 

 「ぐほっ……」バキッという音とともに男の体が、くの字になってとんだ。


 そして、その勢いのまま後ろの壁にぶつかった。

 男は床に倒れたが、ふらふらと立ち上がり言った。


 「愛の……拳……」


 あ、倒れた。


 男がばたっと崩れ落ちた。


 キーラのほうを見ると、やってしまったという表情で、男を見ている。


 死んでないよな?

 キーラの拳には明らかに風魔法がまとわれていた。

 詠唱も杖もなかったとはいえ、キーラの魔法は強力だ。

 死んでないといいが……。


 男が起き上がる様子はない。


 呆然とキーラと男を交互に見ていると、ドアが急にひらいた。

 ドアから顔をだしたのは、目が前髪で隠れているローブの女性。


 「え……」女性はドアの横に倒れている男をみて固まる。


 そして、ドアを閉め、廊下に出て行った。

 しばらくして、またドアが開いた。

 

 「あ、あの……。

 と、特別授業の会場ってここであってますか?」


ちゃんと見えているのか分からない目で、きょろきょろとしながら僕に向かって訊いてきた。


 「うん、多分あってると思うよ」僕はこの状況にはあえて触れずに、できるだけ優しい声で言った。


 「わ、私、アマリアといいます。

 薬草採取の授業できました。

 あの、本当にここであってるんですか?」アマリアという女性は、周りをみてから言った。


 「たしかに屋内で、学園のど真ん中で疑うよね。

 でも、実際みんなここに集まってきてるんだし、あってると思うよ。

 間違ってたら間違ってたで、それは先生が悪いよ。誰もわからなかったんだから」


 「そう……ですね。

 結構人は、いますからね。

 あ、あの、名前を教えてもらえませんか?

 これから同じチームとして一緒に授業を受けるなら、名前を知っておかないといけませんし」


 「ああ、そうだね。言ってなかった。

 僕はフィン、よろしく」


 「よ、よろしくお願いします。フィンさん」


 「フィンでいいよ。同い年だろうし」


 「それなら私のことはアマリアと呼んでください」


 「わかった」


 僕はキーラのほうを向いて言った。


 「キーラ、いつまでもボーっとしてないで自己紹介しなよ」


 キーラはそれでやっと目を覚ましたのか、ドアの横で倒れている男から目をはなし、首をふった。


 「ふぅー、やっちゃったよ」キーラがアマリアに目を向けた。「ごめんね、アマリア。私はキーラ・フィオレンツァ。キーラって呼んでね」


 「はい、キーラさん。

 あの……フィンさん、キーラさん」アマリアは自分の横で倒れている男を一度見た。「ずっと気になってたんですけど、この人は一体どうして倒れてるんでしょうか?」


 キーラはバツの悪そうな顔をしていった。


 「色々あって、殴っちゃった。

 ほんとはここまでするつもりはなかったんだけど。

 まぁ、ね。びっくりしちゃって」


 「キーラ、あれは確かにあっちも悪いけど、魔法を使うことはないだろ」


 「たしかにね、たしかに魔法使ってまで殴ることはなかったよ。

 でも、仕方ないじゃん。無意識なんだもん。

 私自身殴ってから気づいたし」


 「まぁ、もうこれ以上いってもやってしまったものは遅いんだけどさ。

 死んでないよね?」


 キーラはそれを聞いてぎょっとした。

 

 「……私、もしかして人殺し?」


 僕は男のほうを見た。

 するとアマリアが男のお腹に手を当てているのが見えた。


 アマリアはしゃがんだ姿勢のまま、前髪の長い顔だけをこっちに向けて言った。


 「安心してください。まだ生きてるみたいですよ。

 内臓はいくらか傷ついてますが……」


 「え、それってやばいよね?」キーラが訊いた。


 「命の危険があります」


 キーラの息をのむ音が聞こえた。


 「でも、このくらいなら軽く治せますよ」


 「え?」僕とキーラは同時に声を出した。


 アマリアは、腰につけていた杖をとると、呪文を唱えた。


 「スペシャライズ・インターナル・ミドルヒール」


 アマリアが呪文を唱え、杖を振ると、倒れている男のお腹が青く光った。


 「私、こういうの得意なんです」

 

 アマリアが見せた微笑みは、会ったときとは違った、自信のあるものだった。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ