第18話 分からないもの
部屋に戻り、今日学んだことの復習を始めた。
今日は「防御魔法の攻撃魔法への応用」という授業を受けた。
過去には、自分の魔力防壁を武器にして戦った英雄もいるらしい。
しかし、その攻撃をするには大量の魔力が必要で、この国には片手で数えることができるほどしか使える人がいないという。使えるといっても、ただ使えるだけで、実戦で使えるわけではない。それだけ魔力を消費するなら、過去の英雄はどれだけすごかったのか。王国の歴史も踏まえた授業だった。
僕は復習を終え、本を閉じた。
ベッドに入り、もう眠っていたジーンに、「おやすみ」と声をかけ、眠った。
模擬戦から3日経ち、2日後の特別授業の授業内容が告げられた。
夜、部屋に戻った時、急に頭に直接言葉が流れ、ものすごいびっくりした。
ジーンも部屋にいて、僕と同時に頭に言葉が流れたらしい。きょろきょろと周りを見渡し、挙動不審になっていた。
言葉が流れるのが終わり、ジーンに話しかけた。
「ジーン。ジーンも聞いたよね?」
「う、うん。びっくりした」
「薬草採取だってね。特別授業にしては、簡単そうだから、ちょっと驚いてるよ」
ジーンが目を見開き、首を振り言った。
「え、違うよ。
薬草採取じゃなくて、魔物退治だよ」
「え?あ、そういえば授業内容は3日前の模擬戦の戦いぶりで変わるみたいなこと言ってたな。
僕の授業内容が薬草採取ってことは、記録が悪かったんだろうなー。
何が悪かったんだろう……」
「え、絶対何かの間違いだよ。
フィン頑張ってるし。模擬戦は見れてないけど、勝ったんでしょ?
僕の魔物退治のほうがおかしいって。負けたんだから」ジーンは、思案顔になる僕を必死で慰めるかのように言った。
「いや、何かがダメだったんだよ。
やっぱり、魔力の量が問題なのかな。
なんだろう」
魔力が少ないなりに、作戦を練って戦ったが、やはり魔法使いが魔力が少ないというのは、根本的にダメなのかもな。
僕はいつもポケットに入れて持ち歩いている、赤のもやが中心にあるような透明な石に触れた。
落ち着け、僕。
なぜかこの石に触ると、落ち着く。
故郷で拾ったからかな。
もしくは、この石に垣間見える強大な力に守られていると感じるからか。
はたまたどちらもなのか。
僕は落ち着きたい時によくこの石に触る。
この石は、転生の経験が僕に力を与えてくれていることを実感させてくれた。
「フィン、大丈夫?」
ジーンが顔を覗き込んでくる。なんかこの場面、経験したことあるなー。
ジーンが言葉をつづけた。
「フィンのことをあんまり知らないし、僕が知ったかぶって言えることじゃないけど、
……フィンは大丈夫だよ。
魔力が少なくても、一つのなにかに向けて、努力できる才能があるもん。
だから、あんまり気を落とさないで」
ジーンは優しいな。
でも、ジーンも……
「……ありがとう。
でも、ジーンも気を落とすなよ。
最近下を向いてることが多いからな。困ったことがあったら、相談しろよ」
僕は最後のほうは、ジーンの肩を軽くたたきながら、ぶっきらぼうに言った。言葉が荒くなったが、仕方ない。ちょっと恥ずかしかったんだから。
「うん……」ジーンは下を向きながらも、声は嬉しそうだった。
ジーンとの距離が、少し縮まった夜だった。
次の日は、いつも通り授業を終え、明日の特別授業のため、早めにベッドに入った。
明日は集合が早い。
日の出には集合場所に行かなければならない。
薬草採取だからって、手を抜かず、気を引き締めていこう。
人生何があるか分からないからな。転生もするし。
朝、まだ日の上っていない暗い時に、僕は集合場所にいた。
僕以外に人はまだ来てない。
早く起きすぎてしまったので、ゆっくり準備をして、ゆっくり向かってきたのだが、それでも早すぎたようだ。
集合場所は、廊下に続く、僕が入ってきたドアと、どこに続いているか分からないドアが一つある、ドア以外何もない部屋だ。
大きさはそれほど大きくなく、いつも授業を受けている教室くらい。しかし、僕一人だけしかいないのですごく広く感じられる。
本当にすることがない。最初は目的なく杖を出し入れしていたが、それにも飽きて、この部屋と目の前のドアについて考えた。
この部屋には、「森林:赤」という名前がついている。
まず謎なのが、この部屋がなぜ森林なのかだ。
薬草採取は、森でするとは思っていたが、ここは学園のど真ん中の部屋だ。薬草採取なんてできそうもない。
赤という言葉も気になる。
もしかしたら、この木のドアの奥には赤色の森が広がっているのかもしれない。
このドアは、青色の狸が出すドアと同じような機能があって、赤色の森に行けるのかも。
そして、赤色の薬草を採取して、終わり。
この特別授業は、こんな森もあるんですよーっていう紹介だったりして。
……いや、さすがにありえないな。
今思ったんだが、考えても絶対に分からないわ。
情報が少なすぎる。
いくら寂しい空間にいるからって、この時間は無駄だった。
はぁ、なにやってるんだろう。
僕が馬鹿な事を考えていると、後ろからドアの開く音がした。
あのドアは廊下にでるドアだ。
誰か来たのかもしれない。




